cinema eye

『毎日が夏休み』

鑑賞日96/3/30(ビデオ)
 大島弓子原作のマンガを映画化した作品です。監督は若手の星から中堅どころになりつつある金子修介。主演は佐野史郎、佐伯日菜子。

 いじめによる登校拒否児の中学生スギナ(佐伯)と、その義父で、会社の方針に従えず辞めてしまったサラリーマン林海寺(佐野)が、2人でなんでも屋を始めます。一流企業のエリートの夫と名門女子中学の優等生の娘だった2人が、近所にビラをまいてなんでも屋を始めたため、妻であり母である良子(風吹じゅん)は、世間体もあって大ショック。しかし、義理の父子であった2人は、慣れない仕事を通して、次第に心を開き、お互いを知り、自分を見つめ直すことになっていく。。。というヒューマンな物語です。

 いかにも大島弓子らしい、現実感に欠けるふわふわした不思議な物語を、金子監督はうまくその雰囲気を出しています。これは佐野史郎という役者の力、それに新人ながら好演している佐伯日菜子の素質によるところも大きいのですが、手慣れた上手な周りを固める脇役(風吹、高橋ひとみ、益岡徹など)が、いかにもリアリティがあるだけに、余計この浮き世離れした2人のコンビが浮いてきておかしみを増すという演出の力は大したものです。

 映画は淡々と進んでいきますが、その中で現代の日本社会が抱える様々な問題(家族、いじめ、教育、エリート、会社…)をクリアに描き出していいきます。このあたりは大島弓子の原作をより現実的・社会的に映画化している部分です。マンガと違い生身の人間が話し動く映画においては、やはり現実離れした設定との隙間を埋める工夫が必要になってくるのでしょうが、それを金子監督はうまく昇華していると思います。

 原作がいくらよくてもマンガを映画化すると思わぬ駄作になることがありますが、大島弓子の作品は『四月怪談』といいこの作品といい、うまく映画化されています。意外と映画向きの作家なんだろうか、なんて思ってしまいました。

今回の木戸銭…1300円