cinema eye

『ライフ・イズ・ビューティフル』

鑑賞日99/4/20(劇場)
 「ライフ・イズ・ビューティフル」とは、ロシアの革命家トロツキーの最後の言葉。それにインスパイアされてロベルト・ベニーニが監督・主演したのが、このアカデミー賞主演男優賞、外国語映画賞、作曲賞を受賞したこの映画です。

 1939年、イタリアのトスカーナ地方で本屋を開く夢を持つユダヤ系イタリア人グイド(ロベルト・ベニーニ)。ある日、教師のドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)と出逢って、猛烈に口説き落とす。グイドの熱情によって結ばれた2人は息子ジョルエ(ジョルジオ・カンタリーニ)とともに幸福な家庭を築くが、彼らを待ち受けていたのはナチスによる強制収容所行きの運命だった、という激動の物語です。

 映画の前半は陽気なグイドの明るい口説きが爆発していて、結構楽しく見ることができます。ロベルト・ベニーニはイタリアの国民的喜劇俳優だそうですが、確かにその動き、間、言い回しの巧みさ、どれをとっても見事なもので、ハリウッドのマシンガントークに対抗できる「口先男」ぶりです。

 しかし幸せの絶頂から一転、ナチスの強制収容所に連行されるところから映画はグッと湿度を増します。とは言え、相変わらずここでもグイドは明るく前向きなイタリア男。息子にユダヤ人に対する差別を見せないために、徹底して明るい嘘をつきつづけます。しかし、意地っ張りと言えるほどのグイドの嘘は、明るいだけに見る者には心に堪えます。

 「人生は美しい」。そう、確かに人生は美しいかも知れません。しかしその美しさを守るために払われる努力はどれほど大変で尊いものなのか。この映画について、単に「感動的な愛の名作」という風な紹介を映画会社はしているようですが、そんなハリウッド的単細胞映画ではありません。人種や民族、戦争、差別、教育、親子、夫婦。さまざまな人間の根源的な問いに触れようとする、もっと哲学的な深みを持つ作品です。

 『ニューシネマ・パラダイス』以来、久々に感動したイタリア映画の登場にアカデミー賞同様、拍手を送りたいと思います。

今回の木戸銭…1600円