cinema eye

『きらきらひかる』

鑑賞日96/4/21(ビデオ)
 『バタアシ金魚』で鮮烈なデビューを飾った松岡錠司監督の第2作。もう4年くらい前の作品になりますが、今でも新鮮な印象を与えてくれる佳作です。

 妻(薬師丸ひろ子)はアルコール依存症、夫(豊川悦司)は同性愛者。しかも大学生の愛人(筒井道隆)がいる。見合いで2人が結婚したことから、この3人の間は当然ぎくしゃくし始める。と言うことで、実に繊細で微妙な、そして奇妙だけど純粋な愛情の物語が淡々とした描写で綴られていきます。

 現実の社会からどうしてもはみ出してしまう3人が、世の中から受けるプレッシャーと戦いながら傷ついて、それでも力強く生きようとするその姿は、妙に清々しくて、しがらみと慣習に囚われて生きている常識人の心を揺さぶる力があります。

 主演の薬師丸ひろ子も熱演ですが、何と言ってもこの作品でますます注目を浴びることになる豊川悦司のクールな魅力が光ります。立ち居振る舞いの美しさが際だつ豊川を見るだけでも、女性ファンなら価値がある作品でしょう。また『バタアシ金魚』に続いて松岡作品に出演した筒井道隆も、難しい役を彼ならではのナイーブな演技で表現しています。

 残念だったのは、あれほど美しい映像を前作で見せてくれた松岡監督が、この作品ではロケが多い割には大した絵がなく、いかにも悪い日本映画的な、魅力のない映像に終始していることです。役者ばかりが光っている感じでした。

今回の木戸銭…1100円