cinema eye
鑑賞日99/1/13(ビデオ)
海外でも賞を獲得し、今や日本を代表する映画監督となった北野武監督入魂の一作。哀しく美しい映画です。
北野武演じる刑事の周りには、不治の病に冒された妻や、その妻を見舞いに行っている間に撃たれて下半身不随になった相棒の刑事、また一緒に捜査中に殉職した刑事の妻などがいます。刑事をやめた北野は、彼らに償うために、やくざから金を借り、その金を返すために銀行強盗までします。そして妻と旅行に出て、最後にかつての同僚の前で妻と心中をします。
唐突に表面化するハードで問答無用の暴力シーンと、不器用だが細やかな愛情を感じさせるラブシーンが交互に挿入されて映画は進みます。ひたすら破滅への道を歩む、破滅することしかできないと思われる主人公のせつなさが胸をうちます。
極力冗長で説明的なセリフを省いた脚本と切れ味鋭い演出、ブルーを基調とした寂しい色使いは、いかにも北野監督らしさが溢れています。『キッズ・リターン』を超え、『あの夏、いちばん静かな海』に迫る久々の北野監督の傑作だと思いました。
今回の木戸銭…1200円