cinema eye

『フォレストガンプ〜一期一会』

鑑賞日96/1/22(ビデオ)
 昨年の話題を独占した『フォレスト・ガンプ』をようやくビデオで見ることができました。期待が大きかっただけに逆に見る前はちょっと不安でしたが、一応合格点をつけられる作品だと思います。ただ日本でのこの映画に対する評判の高さには少々疑問を感じました。

 基本的にはこの映画はフォレスト・ガンプという狂言回しを据えたアメリカ戦後史を振り返る一種の懐古ドキュメンタリー映画なんですが、日本ではそれよりも知的障害がある(これ以降日本のTVドラマでこの設定が大流行しているのも妙です)ガンプの無垢な心の美しさを中心に賞賛されているように感じます。これは感情過多・センチメンタリズムが好きな日本人の特質ということもありますが、それ以上に、この寓話で語られるアメリカのごく近い歴史を知らない観客が多い、ということが大きいと思います。

 はっきり言って、アメリカ戦後史に全く興味がない人間に、この映画が本当に面白いなんて僕には信じられません。それは例えば『ホットショット』という映画が、過去の名作映画を知らずには楽しめないのと同じことで、この映画は「ウォーターゲート事件」を知らずに、また「イマジン」の歌詞を知らずに面白がれるような映画ではないはずです。

 もちろん、こうした知識は、それほど大げさなことではありません。アメリカ人なら常識、というレベルのことです。だから逆にアメリカで大ヒットしたのはとてもよくわかります。アメリカ人が良く知っている懐かしいアメリカの姿を、軽いユーモアとパロディで味付けしながら、そこにヒューマンなおとぎ話を展開する。まさにアメリカ人が求めていた映画という気がします。

 だから映画としては、さすがによくできていると感心させます。話題になったいろんなニュース場面と組み合わせたCG技術の高さ、長時間でも飽きさせない構成や、ガンプのママの格言が次々と登場する脚本、ツボをおさえたわかりやすい演出。まさに一般大衆受けする王道を行く娯楽映画だと思います。おとぎ話だけに、少々展開に安易な印象は受けますが、それも気にはなりません。ただ印象としては職人芸的なうまさと裏表のあざとさも感じるだけに、素直に感動することもできませんでした。トータルとしては、よくできた面白い映画ですが、絶賛というには弱いかな、というところですね。

今回の木戸銭…1500円