cinema eye
鑑賞日91/5/24(劇場)
アカデミー7部門受賞、ご存知『ダンス・ウィズ・ウルブス』を会社さぼって見てきました。3時間に及ぶ大作ながら、さすが一時たりとも飽きさせることなく見応えのある作品でした。
なんといっても印象に残るのは映像の素晴らしさ。『フィールド・オブ・ドリームス』もそうでしたが、ケビン・コスナーという人はアメリカ、それもマンハッタンのようなアメリカではなく、カントリーなアメリカを本当に美しく撮ることができる人ですね。いまどきどこにあるのか、と思ってしまうような大草原、信じられないくらいの数のバファローの大群。映画を見るときの最もプリミティブな楽しみである、全く見たことない美しい映像。そんなシーンが次々と登場するのを見ていると、ケビン・コスナーは本当に映画の面白さを良く分かっている映画人なんだなと思います。
さて、この映画の楽しみは映像美だけではありません。3時間という長尺ながら決して退屈させない脚本と演出の確かさ。白人とインディアンの交流という、下手にやれば安手のヒューマン・ドラマにしかなりかねない題材を、見事にエンタテイメントとして仕上げつつ、社会派(アメリカにこういう言葉があるかどうか知りませんが)ドラマとしても見る者に深く考えさせるパワーを持った映画となっています。
世の中のこの映画に対する話題は、アメリカ人のインディアンに対する「侵略」の歴史を反省する映画、ということですが、確かに湾岸戦争がああいう形で終わった今だからそういう見方も重要でしょうし、そうした記号性を付加することも決して意味のないことではないと思いますが、それを別にして単純に「映画」として見ても面白い作品に仕上がっていると思います。もっとも、これはアメリカの歴史を再点検する映画に違いはありませんから、僕たちが見るのとアメリカ人が見るのとでは、自ずから感じ方に差はあるのでしょうけどね。
いずれにしてもアカデミー賞に相応しい映画であることは間違いないと思いました。ただ、そういうことだから『フィールド・オブ・ドリームス』のような思い入れはちょっとしにくい映画ですね。どうしても僕たちは部外者としてさめた目で見てしまいますから。
今回の木戸銭…1700円