cinema eye
鑑賞日94/7/31(ビデオ)
伊丹十三が癌の告知をテーマにした映画です。いわゆる伊丹監督らしい実録風社会派映画ですがテーマがテーマだけに、なかなか深刻な気分にさせられます。
物語は伊丹監督を彷彿とさせるような俳優にして監督の三國連太郎が、癌で死ぬ夫婦の映画を撮っていたところ、自分も癌に侵されていて死ぬまでの1年間を描いています。
癌を告知するかどうかで、医師である津川雅彦や妻である宮本信子らが葛藤するわけですが、結局それは「生」と「死」に対する尊厳の問題であることを映画は語ります。いかに死ぬか、ということそれこそが、いかに生きるか、ということであり、人間らしく生き死ぬためにはどうしたらいいかを考えさせられます。
映画は最後主人公が幸せな死を迎えることで終わりますが、それはいかにも恵まれた死であり、現実にはあり得ないことも見ている者に感じさせます。リアルな映画が最後にはファンタジーになってしまうところに現代の医療の貧しさが浮き彫りになります。
芸達者な役者たちが、演じる生と死の世界、少々難があるとすれば、臨死体験をしている時のイメージがどこかで見たことのあるような平凡な光景だったのが 残念でしたが、全体にはラストに向かってだんだん盛り上がっていく計算された映画でした。
今回の木戸銭…900円