cinema eye

『阿修羅のごとく』

鑑賞日03/11/14(劇場)

 いかにも東宝らしい豪華女優陣共演の女性映画。向田邦子の原作を、森田芳光監督があくまでも品を崩さずに、しかし軽やかに映画化していて、女性なら幅広い世代が興味を持って見ることができそうです。反面、あまりにも端正に作られているために、もう少しアクセントになるような崩れた部分があっても良かったかなと思いました。そのあたり、かつて才気走っていた森田監督も大人になったな、という印象です。

 基本は女性の視点で見た愛憎劇で、特に男の浮気心をテーマにしていますが、男から見ると、女の理屈ばかりが立ってしまって、少々辛いところがあります。男は浮気をするもの、女はそれを許すもの、という発想は、この映画の舞台になっている昭和54年頃でもすでにちょっと古いんじゃないかと思いますが、今となっては、かなりアナクロな感じです。たかだか20年くらいの間に本当に女性は奔放になったものだと思います。

 主演の4人は、それぞれに好演を見せています。大竹しのぶと深田恭子では演技力に差があり過ぎてミスマッチではないかと危惧していましたが、大竹が少し抑えていることもあって、深田恭子も何とか他の女優陣についていけたなという印象でした。さらに、母親役の八千草薫も、何気なくおいしいところをさらっていったという感じです。

 また女優陣を支える脇の男優陣も好演を見せています。小林薫も仲代達也も好演ですが、特に中村獅童が芸達者なところを見せて良い味を出していました。それから桃井かおりと大竹しのぶが対峙する場面は、かなり見物です。個性的な女優のぶつかり合い、真剣勝負でした。

 わざわざ劇場で見ることもなくビデオで十分ですが、ビデオなら見ても損はないという佳作だと思います。



今回の木戸銭…900円