cinema eye

『雨あがる』

鑑賞日00/12/17(ビデオ)
 故黒澤明監督が映画化を熱望し脚本まで残しながら撮ることができなかったという作品を、かつての黒澤組が完成させたクロサワ映画。小品ながら、なかなか味わいのある作品に仕上がっています。

 ストーリーは単純です。雨で川越えができず宿で足止めをされている浪人とその妻。ひょんなことから、浪人はその腕を藩主に認められ、剣術指南役にと請われる。しかし、という、本当に大きなドラマもないし、どんでん返しもない淡々とした筋書きです。

 ただ簡単なストーリーですが、それゆえに描かれているメッセージもシンプルに伝わってきます。人が生きていく上で優しさとは何か、という問いかけです。主人公の浪人は、凄腕でありながらその優しさゆえに成功できません。それでも彼とその妻は、あくまでも優しくあることを選びます。それは強い意志を持った優しさであり、優しくあり続けるためには、別の強じんさが必要であることを黒澤明は訴えかけてきます。

 主人公2人のキャスティングがまたはまっています。寺尾聰と宮崎淑子は見事にこの強くて優しい夫婦を演じています。これなら黒澤明も満足してくれたのではないでしょうか。

今回の木戸銭…900円