cinema eye

『ア・フュー・グッドメン』

鑑賞日93/6/3(飛行機)
 ハワイ帰りの飛行機で上映された映画が『ア・フュー・グッドメン』。まだ見ていなかったので、じっくりと見ましたが、なかなか面白かったのでラッキーでした。

 配役がトム・クルーズにデミ・ムーアということで、少々甘ったるい内容の軍隊映画かと(『愛と青春の旅立ち』とかね)思っていたら、結構しっかりした裁判モノでした。とは言え、裁判を題材にした映画はアメリカでは定番ゆえ数多いわけでその中で抜きんでている、というほどのものではないのですが、この映画の面白さは、裁かれる側が本当に悪とは言いきれない、むしろ裁く側の価値判断こそ間違っているのかも知れない、というところです。

 すなわち軍事裁判に題材を求め、その詰まるところのテーマは「軍隊とは何か」「軍隊は正義か」というところにあるところが、この映画が従来の裁判モノと一線を画するところでした。軍隊における上官への絶対的な服従がポイントになったこの映画の裁判では、結局「力と正義の国」アメリカにおいても、人道的な判断が優先されるべきだという、一応の結論を示してはいますが、それは「服部君射殺事件」が無罪になったことでもわかるように、決してアメリカの大勢の意見であるとは言いきれません。ジャック・ニコルソン演ずる迫力ある大佐が主張する意見にこそ、納得する観客も多いと思います。

 この映画の面白さは、そのどちらが正しいとも言いきれない状況の中でトム・クルーズとジャック・ニコルソンが、双方のプライドを賭けて争うところで、すなわち弁護士と証人(犯人でもあるわけですが)の対決が見物になるところも、通常弁護士対検事の戦いを見せる裁判モノとの違いを示しています。検事役のケビン・ベーコンも含め、全てのキャラクターが、それぞれの正義、それぞれのプライドをぶつけ合いせめぎ合う映画で、そのプライドとプライドの激突が楽しい映画でした。

 ただ、少々情けない役回りがデミ・ムーアで、登場するシーンは多いのですが、劇中重要な発見や行動はなんらせず、ただただオロオロしたり感情的になったりするばかり。ほとんど唯一出てくる女優なのに、こんなに頭悪そうに描かれてはかわいそうなくらいです。ドーソンという上等兵を演じた黒人俳優(名前知らない)の方が、儲け役だったのに比べ、ギャラは高くてもあんな役ではねぇ。。。

今回の木戸銭…1300円