GROOVY (PRESTIGE)

 RED GARLAND (1957)

GROOVY

【解説】

 最近はやや下火になったようですが、一時期、街角に落書きが溢れたことがありましたよね。書いているほうは「アートやん。」と認識していたようで、事実、中にはなかなか芸術的なものもあったりしましたが、大半はゴミでした。中には歩道橋の上の部分の横のところ…って、ちょっと説明が難しいんですが、よく「祝・○○女子高校なぎなた部 全国高校なぎなたフェスティバル出場!」などという横断幕が掲げられたりするところ。あの部分に落書きがあったりして、どうやって書いたんや?…と関心することもあるんですが、しかし何ですな。“全国高校なぎなたフェスティバル”というのは、見て楽しそうな、そうでもなさそうな、微妙なところに位置しておりますな。で、落書きアートでありますが、どこかに“落書きアート図案集”といったガイド本があるのか、あるいは型紙のようなものが用意されているのか、何だかほとんど似たようなものばかりでありまして、独創性というものが感じられません。元々、アメリカかどっかで、「どうやら“落書きアート”というのが流行っているらしい。」というので、それを真似しただけのムーブメントのようですから、底が知れてますよね。単なる物真似からは真の芸術は生まれません。せめて、「あっちが“落書き”なら、こっちは“お品書き”や!」くらいの気概を持って、家でこっそりボール紙に「ラーメン 450円」と書いたりするくらいの独創性が欲しいところでありますが、いや、家でこっそり“お品書き”を書いたところで、何がどうなるものでもないんですけどね。

 昔を懐かしむのはトシをとった証拠でありますが、昔の落書きというのはもっと風情がありましたよね。“始皇帝参上! 2代目”(←“2代目”は後から付け足した風)とか。どうして“2代目”を後から付け足したのか部外者の僕には窺い知ることは出来ませんが、おそらくこの“”は世襲制度を採用しているんでしょうな。で、“始皇帝参上!”と書いたのを初代始皇帝に見咎められて、「お前は2代目やろ!」と怒られて、リンチされて、泣く泣く“2代目”を付け足したと。そういえば“2代目”の文字は心なしか涙で滲んでいるように見えました。おそらく水性ペンキのスプレーを使ったんでしょうな。「だって、油性だとシンナーとか入ってて、カラダに悪いしぃ。」…とか言って。わりと健康とかにも気をつかうタイプなんですよね、“2代目”は。しかし“2代目始皇帝”というのは、ちょっと矛盾してるんじゃないですかね?始めての皇帝だから“始皇帝”なワケでありまして、初代が“始皇帝”を名乗ったのなら世襲制はヤメて、2代目以降は何か他の“中国史英雄シリーズ”にしたほうがよかったんじゃないですかね?例えば、契丹国(きったんこく)建国の祖、“耶律阿保機(やりつあぼき)参上!”とか。そんな難しい漢字、覚えられないぢゃん。…という、やや頭の弱い2代目には…って、いや、僕も書けませんから人のことは言えませんが、中国史にはそういう人達にとって格好の人物がおりますよね。清朝の創始者、“ヌルハチ参上!”これはいいですね。僕でも書けますね。ただ、いざという時に“参上!”という漢字を思い出せるかどうか、今ひとつ自信はないんですが、最悪の場合は“ヌルハチさん上!”と、一部を平仮名にしておけば、ま、何とかなるのではないかと。ちょっと分かりにくいですけどね。見るほうとしては、「え?ヌルハチさん(うえ)?」と読んでしまって、上を見上げて、そこにいる筈の“ヌルハチさん”の幻を追い求めることになろうかと思いますが、そいういうことでまあ、“グルーヴィ”です。

 さすがは“落書きアート”の本場だけあって、センス抜群ですよね。ただ、いざ自分でジャケ絵を書いてみると、コトのほか面倒でした。右側の煉瓦の部分はわりと忠実に書いたつもりなんですが、左側の壁の質感は、なかなか絵では表現しにくいですなぁ。で、チョークで書かれた文字は鉛筆書きでは再現不能です。ま、今日は雰囲気だけでもわかっていただけたらと。ま、基本的には“ヌルハチねた”を書きたかっただけだしぃ。ということで、今日はおしまい。


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