大統領の死

2004年11月2日にザイアッド大統領が亡くなりました。

 初代大統領として7選を果たし,今日まで国を治めてきた大統領でした。アラブ諸国と欧米との間でバランスを考え,UAEをこれ以上ないくらい豊かで,安全な国に作り上げた大統領でした。7つの首長国を一つにまとめるために,砂漠の中を奔走し,国民には富を与え,周辺諸国の労働者を潤わせました。緑を愛し,砂漠の中に街を出現させ,雨まで降らせてしまいました。町中のいたるところに大統領の肖像や写真を見ることができ,意図的ではあるにせよ,大統領を中心とした国づくりが行われてきたことを物語っていました。実際,大統領の悪口を聞いたことはありませんでした。

 9・11を経て,アラブ諸国は日本外務省による危険度が上がりました。しかし,アブダビは平和そのもの。心配された暴動も,もちろんテロ行為も見当たりません。いつもと変わりない日常が続いたことを覚えています。つくづく大統領としての感覚や価値観,存在感,バランス感覚,外交感覚などが優れているものだと感じていました。

 数年前から大統領の死はうわさされていました。はっきりとした住民登録もない時代に生まれた人だったので,実際の年齢も分からない。ニュースでは86歳とされていましたが,私たちはとうに90歳を超えている,と聞いていました。病気がちだったため,入退院を繰り返したり,どこかのパレスに閉じこもってしまっているという噂がたったりしていました。同時に,次に大統領になるであろうカリファ皇太子の力量についても話をしていました。いろいろと心配な噂が多い皇太子だったのと,あまりにも初代大統領の存在が大きいため,次を心配する声が多かったのです。アブダビの町中でカリファの存在感は確かに大きいのですが,次の国づくりとなると少々心配にはなってしまいます。

 この大統領の死を受けて,街がどうなるのかはこれから見守りたいと思いますが,まずは大統領の死にお悔やみを申し上げたいと思います。たった3年間でしたが,暮らした国の大きな大きな大統領。残念ながら実際にあったことは無いのですが,あれだけの肖像に囲まれていたためか,とても身近な人のように感じていました。大統領を見たことがある私の知り合いは「ちっちゃなおじいちゃんだった」と教えてくれました。つくづく,彼の死が残念でなりません。

平成16年11月3日 記