異星人と少年は、指先をつなげて心をつなげた。身体をつなぐことは、心をつなぐこと。
だから、ヒトはセックスするの。単純なことよ。ヒトとヒトはつながっていないものだから。だから、懸命に互いをつなごうとするの。相手の奥深くまで、身体の底までつなごうとするのよ。
そこに、心が在るみたいに思っているの。
我が儘な女性がテレビでそう語っていた。妖艶な美しさ。老いを感じさせないスタイル。それらでもって男性を惑わせ、幾度も結婚と離婚を繰り返してきた彼女。
彼女は言う。
私は心をつなぎたいだけ。けれど、心がどこにあるか、誰も分からない。だから、身体をつなぐの。身体をつなげば、きっと身体の中のどこかにある心もつながるから。
彼女は繰り返す。
私が欲しかったのは妻の地位でも、母親の座でも、夫の存在でも、まして相手の財産でもなく。ただ心が欲しかった。本当に愛した相手との、愛し合ったという証が欲しかった。だから身体をつないだ。心をつなぐために。
彼女は泣かない。笑って、そう言う。
不思議だね、と、少年は言った。
どうして、身体をつなぐことが心をつなぐことになるのだろう。身体をいくらつなげたって、心をつなぐことはできないのだから。何が彼女をそこまで駆り立てているのだろう。不思議、と。
仕方ないよ。と、少年は言った。
彼女は寂しいんだよ。絶対に手に入らない心が欲しいものだから。手に入らないものを追い求めるのは、とても辛いことだから。身体の中に心があるんだって、彼女がそう納得してしまってもしょうがないんだよ。それは誰が責めることでもない。彼女が、納得しているのならばそれでいい。
だって、見てごらん。彼女は笑っているし。
本当に、彼女は笑いたいのかな。少年は不器用に首をかしげる。
分からないよ、少年はそう答えて、不自由そうに肩をすくめる。
けれど、笑うしかないんだよ。もう、それ以外に彼女を救う道はないのだから。自分が求めてきたものがそこにないだなんて、そんなことを認めてしまったら彼女はこわれてしまう。彼女はとても弱くて、そしてその弱さを押し隠せるほどには強いんだ。
すごいね、と少年は言った。
僕にはそんなこと考えも付かない。
分かるさ、と少年は言った。笑いながら応えた。
僕がそうだもの。
いくら身体を繋いでいたって、相手の心は手に入らないものさ。そのつらさを押し隠すために、笑うしかすべがないって事も。
少年は笑う。
ベッドの上に、少年が一人。
正しくは二人。
互いに下肢を共有しあう彼らは、まだ、どこに互いの心があるのか見つけられないでいるのだから。