水曜日の快楽

           
さぼさぬけ

 水曜日の夜は、いつの間にか快楽を連れてきてはくれない。
 一週間の始まりは日曜日だけれども、なんとないスタートは月曜日。とりあえず一区切りの金曜日まで、まったり過ぎる一週間の、折り返し地点は水曜日。
 水曜日が好きだった。
 ウェンズディの響きは何となく心が弾んで、道端にあるハンバーガーショップに飛び込んでみたい気分を駆り立てる。
 おかげで水曜日、私の中のカロリー濃度はほんのちょっと高い。
 水曜日の夜は、半週間頑張ったご褒美。家に帰ってすぐに眠ると、夜遅くに起き出してくる。地方チャンネルのレイトショウは、どことなく滑稽で、安っぽくて、微妙に面白い。同じ言葉を繰り替えす番組のプログラムが、どことなく私の脳内物質をコントロールしそうになるのも好きだ。
 水曜日から木曜日に曜日が変わっても、呼ばれ方は水曜深夜。木曜日の水曜深夜二時、ソファに転がって見るテレビジョンは何となく普段の生活と切り離された具合がしてたまらない。
 けれどいつの間にか深夜が深夜でなくなって。いつまでも砂嵐に切り替わらない都会のチャンネルは、曜日と曜日の境目を一層分からなくしていって。
 どこまでが水曜日で、どこからが木曜日なのか。水曜日の快楽を、押し流してしまうのだ。
 本当に。私は思う。あのころの気持ちは、どこへ行ってしまったんだろう。
 遅すぎる時間の流れをじれったく感じて、今か今かと週末を待ちわびていたあのころの、水曜日の快楽は。
 ただやるせない深夜番組だけが、時を留めようと今日もリピートを繰り返す。

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