ビール・発泡酒の原価のお話し

ビールの希望小売価格が218円に対し、ほとんどの発泡酒の希望小売価格は135円だが、 多くの酒類ディスカウントストアでは、350ml缶の発泡酒が1本百円程度で買える。 24本入りのケースだと1本百円を割ることも多い。発泡酒が「ジュースより安い」理由は 何か、どこに問題があるか、2002年夏のビール大手が繰り広げた発泡酒安売りの 勝者なき消耗戦を振り返る(日経2002-8-16等を参考)。
表2の通り、ビールと発泡酒の酒税は大きく異なる。350ml缶に換算すると上図の通り ビールが77.7円に対して、発泡酒は36.75円(麦芽比率25%未満)と約41円の差になる。
原材料に注目すると、発泡酒は麦芽を25%程度しか含まないため、大麦や糖類を加えて飲みやすい味 に調製している。麦芽に比べ、大麦や糖類、水あめ等の価格は安い。また、メーカー各社は缶ラベル 印刷や包装などの細かな費用を徹底して切り詰めた。その結果原材料費を推定すると、ビールが約39円 に対して、発泡酒は約27円となる。
限界利益(売り上げから原材料費などの変動費を差し引いたもの)を見ると、以前の発泡酒の希望小売価 格145円では約40円でビールの限界利益とほぼ同レベルであったが、希望小売価格135円では限界 利益は約30円となっていると予想される。
酒税と原材料費を加えても、ビールと発泡酒の差は約68円であるから、あと20円ほどがどこかから捻出 されていることになる。店頭価格1本95円とすると、メーカー出荷価格94円との差はわずかに1円しか ない。その低価格の原資はメーカーのリベートしかないことになる。店にもよるが、1ケース百円以上つく こともあるらしく、1本あたり4円換算にもなる。メーカーにとってみれば約30円の限界利益からその リベート代、さらには人件費、販売管理費を除くと利益がほとんど残らないことになる。
更に言えば、こうした発泡酒の値下げは、逆に無策のお役人に発泡酒増税の口実を提供することにもなり、 メーカーにとってなんの意味もない虚しい消耗戦であったと言わざるをえない。市場の原理からいけば 体力の劣ったメーカーのリベートが小さくなるはずであり、価格も正常にもどるはずであるが、 そもそも日本で発泡酒が広がった背景が出口の見えない不況によるものから考えると、しばらくは メーカーにとっては厳しい状況が続くと思われる。・・・悲しい話しですみません

表1 原料取引価格の比較
(1kg当たり、中心値)
原料価格
国産ビール大麦174.6円
国産大麦の麦芽252.1
異性化糖71.0
水あめ67.5

表2 主要酒類の酒税
酒類区分1リットル当たり税金
ビール麦芽使用比率67%以上222円
発泡酒麦芽使用比率50%以上222円
麦芽使用比率50%未満152.7円
麦芽使用比率25%未満105円
清酒アルコール15〜16度140.5円
焼酎甲類アルコール25〜26度248.1円
焼酎乙類アルコール25〜26度199.4円
果実酒56.5円
ウィスキーアルコール40〜41度409円

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