アサヒ発泡酒参入へ

2000年12月期連結最終損益
日経2000-10-18。アサヒビールは10/17、2000年12月期の連結最終損益が従来予想の20億円の黒字から100億円の赤字になる見通しであると発表。最終赤字は上場来初。 これは退職給付債務を前倒し処理し、有価証券の含み損も一括処理するため。バブル崩壊移行の課題だった財務リストラに一応のメドをつけたといえる。

中期経営計画
また、同時に中期経営計画を発表。骨子は以下の通り。 計画では、2004年12月期に連結売上高で1999年12月期比6%増の1兆4800億円、連結純利益で同11倍の450億円を目指す。外食産業では店舗数を4割程度減らし、物流事業を4社体制から1社に統合するなどグループの再編を一段と進める。株式市場では99年8月に中期計画への期待から株価が一時1772円を付けた。しかし業績の下振れなどを懸念して下落が続き、8月には5年ぶりに1000円を割り込んだ。市場は、今回打ち出された計画が確実に実行できるかどうかを注視している。ちなみに配当は年間12円を予定通り実施する。
中期経営計画で、ビール・発泡酒、飲料を基幹事業と位置づけ、本体と26の連結子会社で2004年をメドに1割に当たる1000人を削減することを盛り込んだ。また最近はデータ重視で人気商品以外は陳列しないコンビニ流の売り方が広がり、最初からビールに絞り込んでいたのでは販売機会を逃しかねない。そこでアサヒは完全子会社化するニッカウイスキーとの営業拠点の統合や低アルコールの商品開発を盛り込み、アサヒ飲料には副社長経験者を送り込んで経営戦略を立て直す。
キリンは洋酒部門のキリン・シーグラムと営業や物流を統合するなど、総合酒類メーカーとしての戦略を打ち出している。ビールメーカー同士のシェア争いから経営環境は大きく変わっており、グループ経営の巧拙が明暗を分けそうだ。
・・・「総合酒類・飲料メーカー」への転換をキリンやアサヒがめざしているが、そのお手本はビールシェア4位のサントリーにあります。キリンもアサヒも初めての経験といっていいでしょう。ビールのシェア争いで一喜一憂してきた時代は終わったといってよく、これからはグループ企業としての強さが問われる時代となっていきます。

発泡酒参入
日経産業、日経: アサヒは、2001年春の発売を発表。茨城、名古屋、西宮の3工場で製造する。 「需要全体が下がり続けるビール市場でトップを維持するだけでは経営が成り立たない。ビール離れを起こしているユーザーをとらえる商品を持たなければ5年後には打つ手がなくなる」とアサヒのある幹部は悩みを明かす。1994年にサントリーが「ホップス」で参入して開いた発泡酒の市場は、キリンが参入した98年に7600万ケースと97年に比べ倍増。今年は1億2千万ケースに迫る。シェアはキリン:サントリー:サッポロでざっと5:3:2。キリンはビールのシェアは98年にアサヒに抜かれたが、総市場ではトップを堅持する。
アサヒの市場での位置はトップであって、トップでない状況にある。収益力を長期的に維持するには、ビール首位とはいえ勢いが鈍化した「ドライ」頼みでは心許ない。打開を狙ったのが発泡酒への参入であり、総市場への成長を今後5年の糧にしようという明確な戦略転換だ。
発泡酒市場で成功するかどうかは、チューハイなど低アルコール飲料の強化も含め、販促費・広告費の負担増をどこまで九州できるかがカギを握る。昨年発表した単体ベースでの2004年の売上高営業利益率の目標は10%だったが、今回の中期経営計画では早くも7.0%に引き下げており、収益力の鈍化は避けられない見通しだ。 [福地社長記者会見での一問一答]
ー利益重視というが、新発売する発泡酒や低アルコールは決して利益率は高くない
「利益率は低いが、利益の額では貢献できる。またビールを伸ばすためにも、発泡酒などとの総合的な提案活動をすることが求められている。」
ー発泡酒は出さないと公言していたが
「ビールの遜色ない製品の開発に成功したから発売する。また、発泡酒市場は今年の当初予想よりも急成長している。それにスーパードライが市場に完全に定着し、発泡酒を発売しても、ビールの売り上げに大きな影響は出ないと判断した。」
[各社反応] サントリー 鳥井信一郎社長「ビールに比べて(350ml缶で)1本70円ほど安く、まとめ買いする主婦は発泡酒を選ぶ。アサヒもやらざるを得なかった」

・・・[私のコメント]
昨年からスーパードライの鈍化傾向はあきらかであり、今年初めに各社が発売した麦芽100%ビールによる「ビールへの回帰」作戦も事実上の失敗。その中で、アサヒだけが発売していなかった発泡酒はこの夏の猛暑の勢いのごとく伸びついに総市場の25%に到達した。こうしたことが背景にあったが、これまでのスーパードライ一本槍の戦略を見直さなくてはならないのは、時間の問題であったといえ、むしろ変に「本物のビール」にこだわりすぎていたと言わざるを得ない。ただ、スーパードライのドライな味とこれから出す発泡酒の味をいかに差別化ができるか、また更なる市場を喚起できるかがポイントであり、下手をするとアサヒ自身、スーパードライと発泡酒でシェアの食い合いをする可能性も大きい。 要は、グループとして総合飲酒メーカーの舵取りができるかにかかっており、福地社長の経営能力が問われることになる。

「とりあえずビール」へのメールはこちらへどうぞ shungen@he.mirai.ne.jp

 Home「とりあえずびーる」ホームページへ