2003年ビール大手販売計画


大手ビール会社の2003年に販売計画が出そろった(参考「日経産業 2003-1-16」)。 表には2002年初の計画と実績を比較で示す。これをみると、キリンとサントリーが計画の 達成率がそれぞれ98.4%、99.3%とほぼ達成レベルに対し、アサヒは93.5%、サッポロは89.7% と大幅未達に終わっている。2003年の各社の計画では、ビールはサントリーを除いては前年比減となり、 発泡酒は伸びるということになっているが、さて発泡酒増税がどう響くかに注目したい。それをにらんだ各社 の戦略の出来不出来が将来の姿を占うとみてもいいでしょう。

アサヒビールは、ビール、発泡酒とも大きく未達となった。ビールはスーパードライ、発泡酒は本生と単一商品に しぼった戦略は、「売りまくる」というシンプルな形をとりやすくメーカーや流通の立場に偏った姿勢 である。これまでのアサヒのやり方に行き詰まりが出てきたといわざるを得ない。それでも池田社長は 「発泡酒だけをとるとまだキリンを追う2位。ビール・発泡酒で過半数のシェアを目指す戦略に変わりがない」 と目の前に迫る問題が見えていないようなコメントである。これは2003年の販売計画をみてもわかる。根拠の弱いただの 数字を掲げたにすぎなく、昨年の反省が生かされてはいないのである。 アサヒのシェアがアップすることで、消費者の期待に答えられていると考えているのだろうか。目に見える 姿勢を示してほしいものだ。ビール・発泡酒でシェアは1位だが、消費者の立場から見て、ビールという分野を アサヒがリードしているとは感じない。

キリンビールはビールの落ち込みが大きかったが、それを発泡酒の伸びでカバーした形となった。昨年は6月、12月の 決算月でも無理な押し込みをやらなかったことは評価できる。新聞ではアサヒとのシェアを縮めたという表現が目立ったが キリン自身も決して好調であったわけではなく、むしろ上記アサヒの項で述べたとおりアサヒの頭打ち、低迷の兆しが 結果的にシェアを縮めたのである。したがって、決して状況は楽観的ではなく、今年もいかにビールの低迷を押さえ、発泡酒を 伸ばしていくかという気の抜けない状況ではある。品揃えと市場への提案という意味では昨年も着実な成果が見えており、 今年も期待はできる。荒蒔社長は、ビールにおいては「ラガーと一番搾りの2本柱は崩さない」としており、「新しいビール を加えた品揃えの中から、地域によっても異なる重点商品を訴える」とコメントしている。またシェアでなく、 収益性を重視した姿勢も示しており、アサヒの躍進に押されて長期的に低迷してきたキリンに、ようやく底が見えてきたよう に感じる。

サッポロビールは苦戦であった。経営姿勢に一貫性がなく、他社の戦略への対抗策を後手後手で出すだけに終わったと言える。 特に発泡酒は品種だけが増えて、消費者への認知度アップに結びつけられず、結局多くの銘柄が短命に終わっている。せっかく よい新製品を出しても、出だしはよいが、肝心な商品を伸ばすフォローの時期の戦略が曖昧であったことが最大の原因であろう。 我々のように外部から見ていても、サッポロ社内の混乱が目に見えるようである。 社内に評論家がはびこり、方針を決められるものも決められない状態なのだと想像する。 2003年の計画は無難な数字であるが、何がなんでも達成するという空気が社内に必要でしょう。まずは社内改革が必要です。

サントリーは発泡酒依存率が67%と高いため、発泡酒で全てが決まるといってもよい。 一昨年は打つ手打つ手がほとんど空振りに終わったが、2002年は、低価格タイプや季節限定など考えられる仕掛けをどんどん提案してきた結果、過去最高の出荷量となり、着実な成果となって表れた。 2003年は更に強きの数字を計画しているが、発泡酒の増税をうまく乗り切り、ビールの低迷を押さえ込めれば、悲願のビール事業 の黒字化も夢ではないところまできている。

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