長良川河口堰の問題


1995年7月6日より本格運用開始


長良川概略図を見る


1. 汽水域の破壊(堰下流)

A. 低〜底層の高塩濃度(鉛直方向の塩分濃度勾配が固定)
B. 低〜底層の低酸素(塩分濃度層形成により鉛直方向の撹拌不良)
C. 低〜底層の逆流(淡水に巻き込まれて流下する海水表層の流れによって常時発生)

このため、河口より3kmあたりから堰直下(5km)までは河床に真っ黒なヘドロが積もり、ヤマトシジミもほとんど生き残っていない。わずかにゴカイ類が散見される程度(96年5、7月の調査)。しかし、97年の調査では、ヘドロの中はゴミだけで、もはやヤマトシジミの死骸すら見られなくなった。

上左=河口より5kmの川底のヘドロ(96.5.26)
  上右=フルイでヘドロを除くとシジミの死骸(96.5.26)


  下左=河口より5kmの川底のヘドロ(97.7.7)
  下右=フルイでヘドロを除くと、もはやゴミだけ!(97.7.7)


揖斐川の河口より5km地点の川底はきれいな砂、ヤマトシジミが沢山生きている(97.7.7)
 

私達はこれを「死の河口底」と呼びます。

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超音波探査でも最大1.1m (計算値)のヘドロの堆積が確認できる。

探査結果を見る


2. 湖沼化(堰上流)

A. 夏期の堰湖底の無酸素状態
B. 藻類の異常発生(クロロフィルaは堰運用後80-150μK/Pに達している。←流れが充分にあれば通常はひと桁台)。さらに毎年アオコの発生が報じられた。
C. ユスリカの増加(運用前、6〜10kmあたりは塩水遡上のためユスリカはほとんど発生していなかった。現在桁違いの発生が始まっている。)ユスリカはダニに次ぐアレルギー性喘息の原因。

C. ヘドロの堆積

堰上流にもヘドロが堆積し、秋〜春にはメタンを発生(98.5.9)

C. ヨシ原の壊滅的衰退
沈水のため、ヨシ原は壊滅的打撃を受けた。水質浄化能、生物生息の場は消滅しようとしている。

View from 6.9km point on August 30, 1996 (photo by Prof. Yamauchi)


View from the same point on September 2, 1988

3. 回遊魚のそ上〜降下の妨げ

A. アユ仔魚の降下
長良川下流域生物相調査団の調査では、仔魚の密度が河口堰までに1/5に減少していることを明らかにした。仔魚の平均日令は13.4日に達していた。8日で降らなければ全滅とのデータもある。仔魚は堰上流ではエサが無く絶食で下らざるを得ない。川の流れは緩く、潮流に乗ることも出来ない。自力で泳がなければならない。長良川研究フォーラム参照

B. アユ、サツキマスの不漁 
本流にダムの無かった長良川は、天然のサツキマス(降海型アマゴ)が上る数少ない清流だった。河口堰が運用になってから、サツキマスの漁獲は激減しており、絶滅が危惧される (38km地点のサツキマス漁獲高推移参照)。  かつての長良川は、アユの友釣りのメッカとして知られていた。放流漁 獲量をはるかに上回る総漁獲量が記録されており、両者の差は天然アユの漁獲量と推 定される。河口堰運用の1995年以後は、両者のグラフは逆転し、天然アユの漁獲分が 完全に失われてしまった(漁獲統計参照)。 また、 川底を住みかとする回遊魚はほとんど姿 を消すほどの激減である。代わって、ブラックバスやブルーギルが増えている。 


4. 揖斐川への影響

揖斐川の河口から河口より8km(東名阪鉄橋)あたりのヤマトシジミが激減し、現在はここより上流の約1kmあたりが漁場になっている。一方19.5kmあたり(海津大橋)から25kmあたりにかけてマシジミが全く獲れない(95年秋以降)(川漁師)。 長良川河口堰の閉鎖で河口を同じくする揖斐川へ塩水が回る。このため、塩分濃度が上がり、ヤマトシジミ(塩水と真水が混ざりあう所を好む)、マシジミ(真水で棲息)ともに打撃を受けたものと考えられる。
河口部でのヘドロの堆積が明らかになった。

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