作成 たらお皮膚科
このコーナーは最近の皮膚科学会雑誌に発表されたアトピーに関する論文を紹介します
成人型アトピー性皮膚炎患者における高ナトリウム血症下での抗利尿ホルモン異常高値・・・血漿浸透圧と血清Naと共に血漿抗利尿ホルモンが高値だった。成人型アトピー性皮膚炎では、新しい抗利尿ホルモン分泌異常が発生しているといえる。口渇は血漿抗利尿ホルモン異常高値と関係があった。血漿抗利尿ホルモン異常高値は、小学生以下でのステロイド外用経験と強い関係があった。小児アトピー性皮膚炎でのステロイイド外用は慎重であるべきと考えた。 皮膚科の臨牀 2002年12 VOL44. NO13 佐藤健二先生ほか

アトピー性脊髄炎・・アトピー性皮膚炎合併脊髄炎は、アトピー性皮膚炎が先行する、四肢遠位部の異常感覚(ジンジン感)を主徴とする、頚髄病巣が高率、高IgE血症、ダニ特異的IgEが陽性、髄液所見が正常、軽い頚髄症候が動揺しつつ長く続き、MRI上も小病巣が長く残存する、などの特徴を呈する。
臨床皮膚科Vol.54, No.5, 2000 堀内 泉先生 吉良 潤一先生(九州大学医学部)


現在は、ステロイドを使っていて、それから非ステロイド軟膏に変えるという治療が主流だけれど、この方法はリバウンドを促進させてしまう。ステロイドで前処置しておいて非ステロイドに変えると何もしない群よりも悪くなってしまう(動物モデル)。だから非ステロイド軟膏をステロイドの代替として使っていくのはよくないのではないかという提言あり。皮膚病診療Vol.22, No.6, 2000 学会ハイライト第63回日本皮膚科学会東京支部学術大会


アトピー性皮膚炎の網膜剥離・・多施設全国調査の結果(33施設から合計417眼)では、手術眼数は年々増加の傾向にあり、発症年令は16〜25歳にピークがみられた。白内障のあるもの、または手術既往のあるものが9割を占めた。通常の網膜剥離に比べ、手術成績は不良であった。臨床皮膚科Vol.54, No.5, 2000 平岡 智之先生 樋田 哲夫先生(杏林大学 眼科)


嗜癖的掻破行動によるアトピー性皮膚炎の臨床像・・かゆみ刺激によらない嗜癖的掻破行動により誘発される皮疹は、特異な掻破行動(掻く、擦る、叩く、剥くなど)に基づくために、左右対称性、手の届く範囲に限局、境界が鮮明などの特徴がみられ、掻破の道具としての手指にも独特の症状を形成する。臨床皮膚科Vol.54,No.5, 2000 川島 眞先生 檜垣 祐子先生 細谷 律子先生 小林 美咲先生


ステロイド外用薬の副作用 皮膚科の臨床 VOL43、NO1、2001 中川 秀己氏  自治医科大学皮膚科教授

私見;この論文にはステロイド外用剤の副作用の点で、指摘されていない部分があります。それは、リバウンド現象、離脱症候群は、ステロイド外用剤でも起こることに触れていない。タキフィラキシーはアトピー性皮膚炎でも明らかに認められるがそれにも言及していない。よって、これは実情とはかなりかけ離れた内容です。反面教師的TOPICSとしては価値があります。実情はステロイド外用剤の副作用今月の話題をご覧ください。


ステロイド外用薬の皮膚に対する副作用
細胞ないし繊維増生抑制によるもの 皮膚萎縮
皮膚線条
乾皮症
創傷治癒遅延
星状偽瘢痕
ステロイド紫斑
ステロイド潮紅
毛細血管拡張
ホルモン作用によるもの ステロイドざそう(ニキビ)
多毛
その他 酒さ様皮膚炎
接触性皮膚炎
ステロイド緑内障

外用ス薬は内服のステロイド薬と異なり、慎重に用いれば全身的な副作用を与えることはほとんどないが、皮膚に対して種々の副作用を生じる可能性がある。(上の表)

内服ステロイド離脱症候群の臨床症状
全身症状 脱力感(ほぼ100%に認められる)、易疲労感、発熱(ほぼ100%認められる)、体重減少
消化器症状 食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛(80〜90%程度に認められる)
筋肉関節症状 筋肉痛、関節痛(80〜90%程度に認められる)
精神神経症状 頭痛、不安、不眠、痙攣、意識障害(70%程度に認められる)
その他 低血圧、空腹時低血糖、低ナトリウム血症、高カルシウム血症


リバウンド現象 本来は内服ステロイドの急激な減量によって、原疾患をコントロールするための必要な治療量を下回る結果、
原疾患の再燃・増悪をきたす現象を意味する。
離脱症候群 元来、内服ステロイドの減量あるいは中止後に一時的な副腎皮質ホルモン欠乏状態が起き、
急性副腎不全に類似した症状を呈する現象を意味する。(上の表)
タキフィラキシー 慣れ現象とも呼ばれ、ある一定の強さの外用ス薬でコントロール可能であった皮膚病変が抵抗性となるものである。
この現象が認められるのは乾癬である。