症状からみた診断のポイント

作成　たらお皮膚科
かゆみの激しい皮膚疾患
疾患名 好発年令 性 好発部位 特徴
アトピー性皮膚炎 全年令 頚部、四肢関節屈側、顔 ステロイド使用者と
ステロイド未使用者で症状に大きな差がある。
接触皮膚炎 全年令 原因により異なる。 部位・症状から診断がつきやすい。
じんましん 全年令 とくになし（圧迫部位は強い） 一過性の場合と慢性の場合がある。
結節性痒疹 青年 女 下腿伸側 虫刺されの跡がいつまでも治らないことから発展。
アミロイド苔癬 中年 下腿伸側 長年症状が固定している。
疥癬 全年令 腹部、腋窩、陰部、四肢 病院や老人の介護などで感染する場合が多い。
夜、ふとんに入ってからかゆみが強くなる。
自家感作性皮膚炎 全年令 四肢、背部 いずれの原因であっても、汁のでる湿疹・皮膚炎から発展する。


疼痛を伴う皮膚疾患
疾患名 好発年令 性 好発部位 特徴
帯状疱疹 青年〜高齢者 とくになし 神経痛を伴う。神経痛のみ残る場合がある。
単純疱疹 陰部は成人 女 口腔内、陰部 初期はいたがゆい水疱ができ、びらんになると痛い。
化膿性皮膚疾患 全年令 適切な治療により短期間で治る。
結節性紅斑 青年 女 下腿伸側 有痛性のしこりのある紅斑で、関節痛、発熱などを伴うことがある。
グロムス腫瘍 思春期〜成人 手指爪下 有痛性小結節、治療は手術。
血管平滑筋腫 成人 下腿、前腕 圧痛が強い皮下腫瘍、治療は手術。
血管芽細胞腫（中川） 幼児〜成人 とくになし 腫瘍部位に多汗をみることが多い。
熱傷 全年令 とくになし 受傷直後の痛みは冷やせば治まることが多く、それ以後の痛みは細菌感染
を疑うこと。
ステロイドの誤使用 全年令 陰部、臀部 ステロイドの使用歴を聞き出すこと。痔の薬でも発生しやすい。多いのは
男性の陰部にステロイドを使用した場合。


環状の皮疹を生じる皮膚疾患
疾患名 好発年令 性 好発部位 特徴
白癬 全年令 股、臀部 徐々に拡大してくる。ステロイドの誤使用が非常に多くみられ、そのため難治性になる。
じんましん 全年令 とくになし（圧迫部位は強い） 一過性の場合と慢性の場合がある。
多形紅斑 青年〜成人 女 四肢、顔 薬剤による場合もあるので、薬の使用中に発生した時は中止する。
環状紅斑 成人 四肢 季節的に出る場合が多い。
尋常性乾癬 成人〜高齢者 頭、四肢、背部 乾燥した皮疹で鱗屑が多い。かゆみは不定。
エリテマトーデス 新生児、〜青年 女 顔、四肢 日光過敏あり。
シェーグレン症候群 成人 女 口腔内、眼の乾燥症状を伴う。
貨幣状湿疹 成人 四肢、背部 かゆみが強い
扁平苔癬 成人〜高齢者 男 手背、四肢、口唇、口腔内 薬剤による場合が多い。
サルコイドーシス 結節性紅斑を合併しやすい。
annular elastolytic giant cell granuloma
リポイド類壊死症
Sweet病
Hansen病


顔面に一過性の潮紅（赤み）をきたす疾患
疾患名 好発年令 性 好発部位 特徴
糖尿病 中年以降 男 顔面、耳、下顎部 淡紅色
高血圧 中年〜高齢者 顔面、耳、下顎部 淡紅色、多くは本態性高血圧症。
更年期障害 中年（更年期） 女 顔面 いわゆる、ほてりを伴う、漢方薬が有効な場合が多い。

酒さ

中年 女 鼻尖、頬、額、頤 寒冷、飲酒で増悪。毛細血管拡張、にきび様皮疹を伴う。
クッシング症候群 青年 女 頬部、眼瞼、耳朶 肥満、満月様顔貌、多毛などもあり。ステロイドの副作用によっても同じ様な症状が出る。
じんましん 全年令 とくになし（圧迫部位は強い） 一過性の場合と慢性の場合がある。
酩酊症 成人 男 顔全体 酒気あり


顔面に蝶形紅斑をきたす疾患
疾患名 好発年令 性 好発部位 特徴
エリテマトデス 新生児〜青年 女 顔、手、足 全身症状、腎炎、関節炎などの症状あり。
皮膚筋炎 小児、中年以降 女 顔、四肢 筋炎、発熱
多形紅斑 青年〜成人 女 四肢、顔 薬剤による場合もあるので、薬の使用中に発生した時は中止する。
アトピー性皮膚炎 全年令 頚部、四肢関節屈側、顔 ステロイド使用者と
ステロイド未使用者で症状に大きな差がある。
接触皮膚炎 全年令 原因により異なる。 部位・症状から診断がつきやすい。
光接触皮膚炎 全年令 顔、耳朶、手、前腕 日光過敏症あり。
伝染性紅斑 小児、成人も時々あり 顔、四肢 成人は浮腫、関節痛などを伴う。
風疹 幼児、青年 顔、全身 妊娠初期に感染すると奇形児が生まれる可能性がある。
凍瘡 幼児、小児、青年 頬、耳介、手、足 夏は消失
脂漏性皮膚炎 乳児、中年 鼻唇溝から頬、額 頭皮に鱗屑（フケ）をみる。
溶連菌感染症 小児 顔（口囲を避ける）、全身 発熱、咽頭痛、苺舌、ＡＳＯの上昇。
丹毒 成人 顔 再発しやすい。腎炎の発生に注意。
ペラグラ 中年 男 顔、手、下腿 アルコール多飲者に多い。日光過敏、精神症状、下痢などの胃腸症状あり。


水疱・膿疱を生じる皮膚疾患
疾患名 好発年令・性 好発部位 特徴
帯状疱疹 中年〜高齢者 疼痛をともなう水疱。
単純疱疹 全年令 顔、陰部 再発しやすい。アトピー性皮膚炎の場合は重症化しやすい（カポジ水痘様発疹症）。
水痘 乳児、小児、成人 全身 四肢はやや少ないが、ほぼ全身に同じ様な水疱が散在する。発熱等かぜの症状を伴う。
水疱症 成人 重篤な疾患もある。
虫刺され 小児、青年 四肢、顔 難治性の結節性痒疹に発展しない様早期に治療することが重要。
熱傷 全年令 四肢、顔 初期に充分冷やすことと、細菌感染が起こらない様にすることが重要。植皮の時期を逃さない。
疥癬 全年令 腹部、腋窩、陰部、四肢 病院や老人の介護などで感染する場合が多い。夜、ふとんに入ってからかゆみが強くなる。子供は手足に水疱ができやすい。
掌蹠膿疱症 中年 手のひら、足の裏、下腿 長年続くことが多い。
好酸球性膿疱性毛包炎 中年男性 顔面、足底 治療薬によく反応する。
足白癬、手白癬 全年令 足底、趾間、指間、手指 水疱のある時はかゆみがあることが多いが、カサカサのみの時はかゆみが少ない。
白癬疹もできやすい。
汗疱 小児〜青年 手掌、指腹、足底 季節的にできる。白癬との鑑別が重要。
手足口病 乳児、小児 足底、手掌、臀部、ひざ、口 流行がある。
接触皮膚炎 全年令 原因により異なる。 部位・症状から診断がつきやすい。


顔面に丘疹を生じる疾患
疾患名 好発年令 性 好発部位 特徴
尋常性ざ瘡 青年 前額、頬、下顎 面靤あり。胸、背にも皮疹あり。
酒さ 中年 女 鼻尖、頬、額、頤 寒冷、飲酒で増悪。毛細血管拡張、にきび様皮疹を伴う。
青年性扁平疣贅 青年 前額、須毛部 ケブネル現象をみる。
脾粒腫 小児〜成人 眼の周囲 長く変化しない。
汗管腫 成人 女 眼瞼 長く変化しない。ダウン症では高率にみられる。
酒さ様皮膚炎 成人 女 口囲、鼻唇溝、頤部 ステロイド外用剤の副作用のひとつ。
毛包虫性ざ瘡 成人 頬 ステロイドを使用すると発生しやすくなる。
ステロイドざ瘡 成人 ステロイド塗布部位 ステロイド外用剤の副作用のひとつ。面靤はない。
ビタミンＢ１２、抗結核薬（ＩＮＡＨ）、フェノバルビタールなどでも同じ様な皮疹ができる。
新生児ざ瘡 新生児 頬、前額
カンジダ性ざ瘡、毛包炎型白癬 ステロイド塗布部位 多くはステロイド誤使用による。
白くみえる皮膚疾患
疾患名 特徴など
尋常性白斑 後天的な白斑。早期に治療すれば治る場合が多い。
サットン後天性遠心性白斑
脱色素性母斑
化学的（職業性）白斑 化学薬品や手袋との接触による。予防が大切。
日光白斑黒皮症 降圧剤による場合が多い
老人性白斑
まだら症 white forelock（前額部の三角形の白斑）と前頭部の白毛が特徴。優性遺伝。
結節性硬化症（pringle病）
癜風 白色癜風は早期に治療しないと白が残る場合がある。
強皮症、慢性円板状エリテマトーデス
炎症（乾癬、アトピー性皮膚炎、ヴィダール苔癬など）後の白斑 消失する場合が多い。
慢性ＧＶＨ病（graft-versus-host disease) 骨髄移植や輸血後にみられる反応性病変。
incontinentia pigmenti achromians 幼小児期から編状、渦巻き状の脱色素斑。拡大傾向がない。
じゅくじゅくする疾患
主に水疱を形成する疾患 帯状疱疹　単純疱疹　カポジ水痘様発疹症　水疱症　伝染性膿痂疹　熱傷　褥瘡
水疱の形成が主ではない疾患 自家感作性皮膚炎　貨幣状湿疹　うっ血性症候群　アトピー性皮膚炎　虫刺され
水虫の外用薬によるかぶれ 皮膚悪性腫瘍


線状の皮疹を生じる疾患
線状皮膚炎、線状苔癬、幼虫爬行症、列序性疣状母斑、linear porokeratosis,
Mondor病、毛髪皮内潜行症、しいたけ皮膚炎、ブレオマイシンの薬疹