エニアグラム性格学の基本理論  

  
6つ目の理論 自我の座理論                           
 
                                       
 1990年代以降になって、脳の働きをモニターする技術が格段と
進歩して、脳の構造と機能が飛躍的に解明されつつあります。そ
して、脳のそれぞれの部位の働きと、心との関係が、相当なとこ
ろまで調査され発見されています。しかし、それでも「意識」と
か「自我」といった、最も人間らしい心の働きが脳のどのような
働きによるものなのかは、依然として分かっていません。     
                                        
                               
                            


 エニアグラム性格学では、性格とは「心の働き方の一定のパターン
である」とか「自己防衛戦略である」などという考え方をしています。
 心の働きには一定のパターンなど全くないとか、自己防衛戦略を状
況によって変えて使っているのなら、性格は脳には書かれていないで
しょう。しかし、一定のパターンがあることが見えるので、性格を類
型できるのです。
 また、人間は誰もが、生まれ持った防衛戦略を使っており、状況に
よって戦略を変えてはいません。九つの性格があると知ると、危機的
な状況になるほど、本来持っている戦略しか使うことができないと納
得できるはずです。しかし、危機な状況ではない場合は、人は理性的
な判断ができ、状況によって戦術を変えています。

 エニアグラムは、性格タイプがあることを示しており、しかも遺伝
的に継承されて、決定づけられていることは事実です。従って、脳の
構造や機能の中に、性格を決定づける“自我の座”があると考えられ
ます。それがこれから取り上げるもので、「自我の座のある位置によ
って、基本性格が決定づけられている」と見て、これをエニアグラム
性格学の重要な理論の一つとしています。まず、この理論を表にまと
めたものを紹介します。                
                                        
 【8・9・1】   【2・3・4】   【5・6・7】 
・行動タイプ      
・本能的な行動力がある 
・自我の座=辺縁系に近く
 発生学的に古い層  
・運動能力が高い    
・感情タイプ      
・感情機能が発達している
・自我の座=右脳にあり 
・空間・視覚・音楽・直観力
 など高い     
・思考タイプ      
・思考機能が発達している
・自我の座=左脳にあり 
・言語力・思考力が高い 
            
                                        


                       
                                        
                            
 
脳内の自我の座が九つあり、その部位によって
   九つの性格に分かれる
        


 
思考の肯定機能が
発達している

 
思考の両価機能が発達している
 
思考の否定機能が
発達している

 
感情の肯定機能が
発達している

 
感情の両価機能が発達している
 
感情の否定機能が発達している

 
行動の肯定機能が
発達している

 
行動の両価機能が発達している
 
行動の否定機能が発達している
        前部脳              中間部脳          後部脳 
       (前方領域皮質)     (前方と後方の中間部) (後方領域皮質)         
                           
                                                                                                                          

   《上記の表の説明》                               
【タイプ5】は思考の肯定機能が発達しています。 
  
            
 
思考とは記憶という「点」と、点を繋ぐ「線」によって成り立つものです。
ですから、思考の肯定機能とは、この「線」に当たるもので、記憶を結び
合わせる機能のことです。タイプ5はグループで見ると思考力が高く、し
かも、知識を積み上げていきますから、洞察力が高くなる傾向がありま

す。
【タイプ7】は思考の否定機能が発達しています。
 
  
            
 思考の否定機能とは、「点」すなわち、記憶のことを指しています。タイ
プ5が思考力が高いとすると、タイプ7は「点」の機能が高い傾向があり
ます。タイプ7は過去の出来事、日時、場所、会話の内容などや、意味
のない些細なことでも、よく記憶してます。従って、知識量も多く、博学な
人が少なくありません。しかし、タイプ5の持つ「線」の機能が低いので、
その知識が思考力になりにくく、洞察力も低くなる傾向があります。

                   
            
【タイプ6】は思考の両価機能が発達しています。
 
              
 
思考の両価機能とは、否定機能と肯定機能が同程度に備わっている
ことで、機能の偏りが少ないことを意味しています。従って、タイプ7ほど
記憶力は高いとは言えず、タイプ5ほど思考力があるとは言えません。し
かし、両方の機能が適度にあるため、バランスがよいと言えます。タイプ
6は適切な思考力と記憶力があるため、常識的になりやすいと言えます。
なお、この機能が悪く作用して、次々と心配の種を思い出し、それを考え
すぎてしまうため、不安が高まりやすい傾向があります。      
【タイプ2】は感情の肯定機能が発達しています。 
              
 
感情の肯定機能とは、喜悦・満足・快感・解放感などを主に指してい
ます。タイプ2は、明るく陽気で楽天的、悲しいことや辛いことを忘れや
すく、大胆で、前向きになりやすい傾向があります。また、タイプ2はか
なり感情的で、感情を発散させるので、オープンです。人生や世界を肯
定的に見る傾向があり、イメージ力があるため、思いつきが多くアイデ
アマンです。しかし、物事を自分の都合よく解釈して、独りよがりで間違
いが多く、ソコツにもなりやすい傾向があります。

          
【タイプ4】は感情の否定機能が発達しています。

 感情の否定機能とは、苦悩・悲哀・羞恥・憤怒・妬み・不安・恐れなどを
主に指しています。タイプ4は恐怖心が強く楽しみ方がへたで、悲しい出
来事はいつまでも忘れにくく、後ろ向きになりやすい傾向があります。ま
た、感情的ですが、それを外に発散できにくく、自分の思いをため込みま
す。また、イメージ力があるため、直観力もあり、自分だけの空想の世界
にはまり込みやすいのですが、そのため創造性が高くなる傾向がありま
す。人生を苦と感じて、現実逃避的となり、人生や世界を拒絶して、否定
的に見る傾向があります。

                     
      
【タイプ3】は感情の両価機能が発達しています。
   
            
 
感情の両価機能とは、肯定機能と否定機能が同程度に備わっているこ
とで、機能の偏りが少ないことを意味しています。従って、タイプ3はタイプ
2ほど明るく陽気ではなく、前向きとは言えませんが、タイプ4ほど暗くて陰
気ではなく、後ろ向きとも言えません。しかし、両方の機能が適度にあるた
め、バランスが良く、自分の感情を状況によって発散させたり、ため込んだ
りします。感情的で好き嫌いが多いが、イメージ力があるため、周囲の人
々の気持ちや動向を感知して、協調していきます。なお、この機能が悪く作
用して、感情機能が昂進しすぎて、感情の渦に飲み込まれやすい傾向があ
ります。

【タイプ8】は行動の肯定機能が発達しています。
 
   
           
 
行動の肯定機能とは、前進・攻撃・制御などの遂行能力が主な機能です。
すなわち、運動したり行動する時に必要な機能で、アクセルを意味していま
す。タイプ8は事を起こすときには、前進し続けていき、退却や後退ができ
にくい傾向があります。また、前進するときには、自分を強くコントロールで
きますが、ブレーキが利きにくく、アクセルをふかし過ぎるために、興奮しや
すく、強引に歩を前に進めてしまう傾向があります。 

                         
       
【タイプ1】は行動の否定機能が発達しています。
  
 
            
 
行動の否定機能とは、防御・抑制・後退・逃避などが主な機能です。すな
わち、運動したり行動する時に必要な機能で、ブレーキを意味しています。
タイプ1は何か事を起こすよりは、何かをしないような歯止めがかかってい
ます。間違えないように、失敗しないように、慎重に歩を進めていき、少しの
異変でも、すぐにブレーキがかかります。従って、ブレーキ機能が強いため
に、緊張しやすく、リラックスしにくい傾向があります。

  
                              
タイプ9】は行動の両価機能が発達しています。
 
   
           
 行動の両価機能とは、肯定機能と否定機能が同程度に備わっているこ
とで、機能の偏りが少ないことを意味しています。従って、タイプ8ほどアク
セルを踏まず、タイプ1ほどはブレーキを効かせません。タイプ9はグルー
プで見ると、両方の機能があるために、バランスよく、状況に合わせてそれ
ぞれを踏み分け、うまく行動できます。なお、この機能が悪く作用して、アク
セルとブレーキをともに踏み込むことがあり、立ち止まり、何もできないまま
になる傾向があります。一方、アクセルもブレーキも踏まないため、のんび
りと穏やかで、何もしないままとなる傾向もあります。

   
                                        
                                        
                                        
                            
                                                                            

 「自我の座理論」は脳内に自我の座があり、その座の位置に
よって、性格が異なるということを指しています。一般には、
「自我の座」は「前頭前野」にあるとされ、最終命令を下す司
令塔だと考えられています。

 エニアグラム性格学では、性格は能力と関係が深いと見てお
り、例えば、グループとして見ると、タイプ7の性格の人が記
憶力が高いとか、タイプ6は言語能力の高いという発見から次
第に見つけ出した理論です。

 また、「世界とともにあると自己認識する369」が人の声
を聞き分ける聴覚が敏感であることも、不思議な発見です。ま
た、「私は私の世界にいると自己認識する714」が、物音を
聞き分ける聴覚が敏感であることなども発見しています。

 つまり、防御タイプ(714)は、物音に敏感になる必要があ
り、早めに態勢を整えて防御できなくてはなりません。性格と
能力が関係しているとは、結局、脳の機能とその位置との関係
となり、性格を決定づける座があるためではないかと考えられ
ます。 
                  
 また「自我の座」の位置は人によって違います。似た地点に
いても、少し位置がズレるだけで性格が変わり、その違いを「
ウイングの違い」や、「ウイングの軽い重いがある」と表現し
ています。

 そして、自我の座が2つに分裂しているタイプは、分裂症に
なりやすい傾向があると予想しています。あるいは、多重人格
とは、自我の座がうまく形成できなかったからではないかと予
想します。しかし、こうした予想はできても、それを確認でき
る環境や立場ではなく、それらの研究機関でもありませんから、
単なる予想に過ぎません。

 従って、これらの見方や考え方を仮説として取り上げて、研
究して下さる人が出てくることを願う次第です。

                                        
                                        
         (補足として)





  さらに、「エニアグラム進化論」に書かれていますが、グルジ
 エフの説いた「人間有機体の内部構造の見取り図」です。上のと
 ころで図示した「人の頭を左上から見た見取り図」と、はっきり
 とした相似形です。  
    これは、人間の体を左から見た見取り図と言われていおり、また
   「グルジエフの教え」の「大蓄積装置の図」とも言います。神秘学
    は自己の内部構造を理解することから、大宇宙と小宇宙とのつな
    がりを理解する思想と言われています。つまり、ミクロコスモス
    とマクロコスモスが照応していることを、図形などを通して観想
    していく学問なのです。

     偶然の一致とは言え、この発見は大きな衝撃でした。神秘学と
    は、近代の科学的な研究に明らかになってきたものを、観想によ
    って理解してきたものではないかと思います。

     また、これからは、一層に脳内の科学的な研究調査がされ、そ
    の構造と機能が明らかにされて行くでしょう。そして、まさにミ
    クロコスモスとマクロコスモスは照応していると、認められてい
    くと思われます。

     なお、グルジエフは、人間を四つの部屋に分けて理解しようし
    ています。四つ目の部屋には高次の思考センターと、高次の感情
    センターがあるといい、その部屋に行くには、感情センターを発
    達させ、活動させることが必要だと説いています。                
  
     さて、エニアグラム性格学では、アインシュタインやダーヴィ
    ン、野口英世など、名だたる著名な発見をした人をタイプ4と判
    定しています。また、ノーベル賞受賞者の多くはタイプ2と判定
    できる人たちです。つまり、感情タイプです。

     アインシュタインの右脳は、かなり肥大していたという事実も
    あり、右脳タイプが感情タイプであり、感情センターの発達した
    人(当会の理論では右脳優位タイプ)が、名だたる発見をする可能
    性が高いことを表わしています。