(改定版2007/12/11) 人の性格を「推し量る」 1 心の中で反芻していること あなたが何かを気にしていたら、だいたいは心の中で幾度も 反すうしていませんか。「もう考えるのは止そう!」と思い、 気分転換に別のことをしようと捜します。しかし、うまく行か ず、また同じことを考え出しています。 さて、心の中で繰り返していると、それは、やがて言葉とし て出てしまいます。それは独り言かもしれません。風呂に浸か りながら、ブツブツしゃべっていることもあるでしょう。何か の折りに、心の中で考えていることが外に漏れます。 あなたの家族が、何を気にしているのか、あなたにはだいだ い察しがつくことでしょう。家族でなくとも、人が何を気にし ているのか知りたいなら、幾度となく何回も口にしていること を見つければよいのです。 例えば、あるタイプ7の人が「僕は母親に、特別に関心が高 いわけではありません」と言 いました。しかし、近くにいる人 たちは、その人にとって母親は特別の存在であると 知っていま す。しかし、当人にその事実を伝えても、なかなか得心しませ ん。得心しないどころか、異様に強く反論されます。ついには、 異様に怒り出して、指摘した相手が非難されてしまうかもしれ ません。これは、タイプ7の人が、母親のことをしばしば語る ので判明します。 あるタイプ4も、両親の映っている写真を見せてくれました。 ひとしきり母親の話をして盛り上がっています。そこで、「お 父さんの話を聞かせてください」と言いました。すると、父親 の話をしてくれましたが、次第に母親の思い出話へと移り変わ って行きました。しかも、毎度そのパターンになりますが、当 の本人は、あまり意識していません。が、周囲にいる人たちは 母親への関心が高いことをよく知っています。 2 短い会話でも分かる 長く付き合っている人なら、何を気にしているか、ほとんど は知っていることと思います。しかし、さほど親しくなくても 気にしていることは、わりあい簡単に分かります。 例えば、Aさんは久しぶりに友人と会うことになりました。 喫茶店で、一時間ばかり会話しました。友人は、「私、お金が ないけど気にしていない」、「蓄えが全然ないけど、それも仕 方ない。だって私、外国旅行ばかりして散財しているから」、 「老後が心配だけど、お金だけが人生じゃないよね」などとい うことを、さまざまに表現を変えながら話しました。 Aさんは、友人がお金に関することを何回、口にしたのか、 密かに数えてみました。すると、一時間の内で10回ぐらいあっ たように思われたと言います。「お金がないことを気にしてい ない」と否定しているが、実はかなり気にしていると分かりま す。 この友人は金への執着心が強いか、あるいは老後への不安感 が強いので、お金が欲しいのだろうと予想できます。 人は正直な自分を出さずに、言葉うらはらになり、自分を隠 したり飾ることがあります。特に「打ち消しや否定の言葉」を 幾度となく口にするときは、要注意です。問題を抱えているた め、それが気になっているようです。 なお、このAさんの友人はタイプ2w1にあたります。どの タイプも、不安感が高まると、そのことばかり考えて、何度も 口にしています。 3 新聞記事からわかる ある推理作家が「無防備な大学生」というタイトルの記事を 新聞に掲載していました。 「近年の大学生が、友だちの作り方が分からないと大学側に 相談しているのが分からない」 また、「個人的な私生活の悩 みを、公の大学に相談するのが理解できない」と書いてありま した。 この記事を見ると、「緊張」という言葉が九つ、 「無防備」 という言葉は4つ、「精神の張り」は3つありました。これら の言葉が短い文の中に、印象的な言葉として出ていま す。それ 以外にも「身構える」、「軽々と本心を明かしたりはしない」 「わが身の弱さを不用意に他人に知らせるなど論外だ」、「ま っとうな言葉を使うことで社会的な仮面を整える」などがあり ました。 この作家はタイプ8にあたります。この作家の作品の主人公 は、いつも緊張感があります。まさに精神の張りがあり、主人 公はけっして無防備にはなりません。 このように、文章に出ている回数の多い言葉を書き出してみ ます。印象的で重きをなしている言葉も書き出します。すると そこに、文を書いた人の性格がクッキリと出ます。文章全体を しっかりと読む必要はなく、ただ、煩雑に出る言葉を書き上げ るだけで、書き手のタイプを判定できるのです。 タイプ8は《世界と否定的に結びついている》タイプですか ら、「防備」「安全保障」「国防」に意識を向けることが多く、 無防備になることなど考えられない性格です。また、タイプ8 は、弱さをさらけ出さず、礼儀作法に厳しい性格の人が多く、 この作家も例外ではありませんでした。 4 蒸し返す言葉で分かる さて、Cさんは、エニアグラムで自分の性格が、タイプ2で あることを人づてに聞いていました。タイプ2はどんな性格を 指すのかを知りたがりました。そこで、講座の受講生が、「厚 顔無恥と天真爛漫という相反する性質を持つタイプです」と説 明したようです。 ところが、Cさんは最初は「エッ!」と言い、意外そうな顔 を見せていました。しばらく経ち、「俺は厚顔無恥ではないぞ! 」と言い出しました。友人は「タイプ2が全員、厚顔無恥では ないよ。譬えだから気にしないで!」と返しました。 二人でその夜、4時間あまり語り明かしたそうです。Cさん は話の途中で、「厚顔無恥とはどういうことなのか?」と、蒸 し返したそうです。かなり気にしているようなので、受講生は その都度、別の話しにもって行きました。が、そのうち、「厚 顔無恥とはどういうことか?」「俺はそんな厚顔無恥なことを した覚えがない!」となり、口調がきつくなったと言います。 友人は、酒も飲んでいないのに、どうして、しつこくからまれ るのか、怪訝な気持ちになったと、後から報告してくれました。 ここで分かることは、当たっていないなら気にする必要はな く、否定することもないはずです。Cさんは、どうやら自分に 厚顔無恥なところがあるのではないかと、不安になっ たと考え ることもできます。 5 量を把握すればわかる 他人が気にしていることを知りたければ、幾度となく、何回 も口に出していることを発見すれば分かります。ですから、 “量”を把握すればよ良いのです。気にしていることだけでな く、気質を知るためにも量的な把握が重要です。 ところで、あなたは 「エシュロン」という言葉を最近になっ て聞いたことがあるでしょう。 これは電話やファックス、Eメー ルなどの通信を全て傍受しようとするもので、巨大な通信諜報 管理システムのコード名です。 「エシュロン」はアメリカ国家安全保障局(NSA)の主導 で、米、英、カナダ、豪、ニュージーランドの5か国の諜報機 関が運用しています。そこで、傍受された通信内容が"要注意" となれば、自動的にチェックされると言います。 例えば、電話での会話や通信内容の中に、「爆弾」という単 語が含まれていると、テロリストと疑われて、ブラックリスト に載る可能性があるそうです。つまり、諜報機関は、「量的な キャッチ」で、要注意人物を割り出しているのです。 エニグラムの性格タイプを判定するには、「量的なキャッチ」 だけでも可能です。しかし、どの単語をよく使うと、どのタイ プになるか、それは各タイプの性格を熟知しないと、分かりま せん。つまり、傍受できても、解析できなければ価値はありま せん。さらに、解析できたとしても、そのことが、何を意味し ているのか理解できなければ、知っても無駄なことです。