昔話や童話からタイプを理解する方法                 
    
   シリーズ3    


  
  寝太郎は、タイプ4w5かタイプ9w8なのか?

                        
1  寝太郎は意外と人気者

 今回、「三年寝太郎」をとり上げるにあたって、インターネットなど
で調べて見ると、人気のあるお話だと分かりました。さまざまなサイト
で引用しているようです。

 例えば、働きたくないとかフリーターをしている人たちは、もっとス
ローでのんびりした社会であってもよいのではと言います。怠け者の自
分を弁護したいのか、寝太郎みたいな奴がいても良いだろうと述べたり
します。確かに、現代社会は余裕がなく、のんびり屋は評価されにくく
なっているかもしれません。

 不登校の子どもたちと関わるサイトでも、寝太郎は人気者です。不登
校になると、朝昼逆転した生活になりやすく、昼間はずっと寝続けたり
しますからね。親たちの焦りや苛立ちを緩和させるためには、このお話
は癒し効果があり、説得力があるように見えます。

 また、睡眠障害という疾患があり、「原発性過眠症」と名づけられて
いる病気があります。昔、この病に罹っていた人がいたので、それで寝
太郎伝説が生まれたのではないかと言うのです。そして、いつでも眠く
なってしまうような人たちは、「自分は三年寝太郎症候群に罹っている」
のだというわけです。 
 釣りにも「寝太郎釣法」と名づけているものがあるようで、もしかし
て、「果報は寝て待て」式の釣りなのでしょうか。


2 各地に伝えられている話の内容は少しずつ違う

 さて、寝太郎物語は、いろいろなバリエーションがあるようです。よ
く聴くものは、
寝てばかりの怠け者が、やがて起きだして、村人を災難
から助けるというお話です。また、寝ている間に、金儲けの方法を編み
出して、それで大金持ちになるというお話もあります。神様に化けて、
隣の庄屋の娘婿に収まるという、ちょっと詐欺師的な寝太郎もいます。
そこで、今回はよく知られているものを紹介します。
 

 
昔、長門の国は厚狭の里に、ものぐさな若者がいました。父親の庄屋
は、村一番の金持ちでしたが、毎日寝てばかりいるので、いつか村中の
ものに「寝太郎」と呼ばれ、物笑いの種にされていました。3年と3ケ
月をまるまる寝て暮らし、ある日ひょっこり起き上り、「おとっつあん、
わらじでいっぱいの千石舟を用意しちょくれ」と言いました。庄屋さん
は寝太郎の言いなりに用意してやり、どこへ行くやも知れない千石船を
見送りました。船出した寝太郎は40日経った明け方、泥んこのすり切
れたわらじをいっぱい積んで帰ってきました。「おとっつあん、大桶に
水をはってくれ」 またまた寝言のようなチンプンカンプンの寝太郎の
頼みを、庄屋さんは聴いてやりました。泥んこのわらじを桶の水につけ
て洗います。きれいになったわらじは捨てても、泥水は大切に・・・。
それから、そーっとそーっと桶の上水を捨てると、なんと! 泥水の底
には、ぴかぴか光る山盛りの砂金がありました。


 これは山口県に伝わる寝太郎物語です。儲けたお金で堰をつくり、水
利をよくし、それまで荒れ地だった野原を水田に変えたと伝えられてい
ます。現在、JRの厚狭駅前には、立派な寝太郎像が建ち、毎年2回、
「寝太郎のお祭り」もあるそうで、地域の人々に親しまれているそうで
す。


3 力持ちで無欲な寝太郎

 
最もよく知られているものは、以下のものです。
 
昔、昔あるところにいつも寝てばかりいる変な男が住んでいました。
村人から悪口を言われても、子供からからかわれても一向に気にしませ
んでした。ある日、とつぜん眠り始めて、床から出てくるのは、お手洗
いに行くときだけでした。
 ところで、村は干ばつで困っており、神様にお祈りしても無駄でした。
村人は寝太郎が寝てばかりで働かないから、神様が怒ったのだと思いま
した。寝太郎をこらしめてやろうと家に行くと、寝太郎は目を開け起き
上がり、あくびをして、ぶつぶつ言いながら家を出ました。山の上にゆ
っくりゆっくり登ると、寝太郎はぶつぶつ言いながら、大きな岩を押し
はじめました。みんなはそれを見て、とても無理だと思いました。それ
でも寝太郎は、一生懸命に岩を押しつづけました。すると、岩が揺れは
じめ、とうとう谷に向かって転がりました。そしてもっと大きな岩にあ
たり、そしてもっともっと大きな岩にあたり転がって行きました。そし
て、川の流れをせき止め、川は流れを変えて、畑に流れ始めました。み
んなは大喜びです。畑は田植えの水で一杯になりました。寝太郎はいつ
も干ばつのことを考え、良い方法はなないかと考えていたのです。そし
て、寝太郎は家に帰るとまた眠ってしまいました。

 
このお話は、どの地方で伝えられたのか定かではありません。それ以
外にも、灌漑事業を起こした寝太郎がいます。天狗に化けて金持ちの庄
屋を脅して娘婿になる悪知恵の働く寝太郎もいます。
 「ものぐさ太郎」というお話もありますが、ようは怠け者でもいつか
立派な働きができるという訓話みたいな話
だったりします。いつか起き
出して心を入れ替えるので、気長に待っていなさいというわけです。

4 怠けがちなタイプ〔5・9・4〕

 ところで、3年もの長い間を眠り続けるのんき者は、エニアグラムで
見たら、どのタイプなのでしょうか。当会の理論では、「世界と両価的
に結びついていると世界認識するタイプ〔5・9・4〕」は、怠けやすい性
格だと分析しています。無欲でのんびり屋で、生きる目標が見つかりに
くく、無気力にもなりやすい傾向があります。

 
比較すると、この3つのタイプは、他のタイプより無欲ですが、どの
タイプも、どんな人でも社会的に成功したり、人々に役立つ人間になり
たいという願望はあります。

 能力がなく財産もないなら、怠け者とかものぐさな人間だと言われて
も、簡単には、その不評を跳ね返せるものではありません。人からやる
気がない奴だと蔑まれても、ますます自己嫌悪に陥るだけでしょう。手
をこまねいているしかなく、または、ふて寝したり狸寝入りするか、家
に引きこもって他人と顔を合わせないようにするしかないと思います。

 誰にでも、いつか成功したいというという気持ちはあります。山口県
の寝太郎のように、深慮遠謀を働かせて財を成したいと願う人たちがい
たはずです。なお、この3つのタイプで知恵の働く人ならば、厚狭の寝太
郎になれるはずです。しかも、自分の欲得だけで動くのではなく、世の
ため人のために尽くすことを好むタイプです。
  
5 いつか郷土の英雄になりたい9w8

 さて、この3つのタイプのうち、日頃からゴロゴロとして怠け者だと
評判になるとしたら、タイプ9w8と4w5から探します。タイプ9w
8は、「縦のものも横にもしない」といつも紹介しているように、一旦
横になると、そこに根が生えたようになります。めったなことでは動き
出しません。しかし、一旦、バリパリ働き出すと、負けん気が強いので、
エネルギーが持続しやすく、アッと驚かされるようなことをするかもし
れません。

 つまり、大岩を押した力持ちの寝太郎のようになるのです。小さなこ
とはしたがらない怠惰な一面があるにも関わらず、大胆なことには挑戦
したがる気質です。8のウイングがあると、いつか成功したい、ヒーロ
ーになりたいという願望を持っています。

 あるタイプ9w8の男性が「自分の本当にやりたいことは、こんなこ
とじゃない。今は世を忍ぶ仮の姿だと思ってねえ」と語っていました。
あるタイプ9w8の小学校の男児は、「ノーベル賞を絶対に取る!」と
真顔になって母親に話したそうです。

 ある中年の9w8の男性は、家庭内にいることは少なく、町内の集まり
には熱心に出掛けます。しかも、事が紛糾していると意欲的になります。
家族のことを尋ねても、関心がないのかあまり答えになっていないのです。

 9w8の人たちは、今は、怠け者と言われて甘んじていても、いつか
偉大なことをしたいという野望を持っているのですから、そのいつかが
来るかもしれません。しかし、その割には努力をせず、すぐに飽きてし
まうので、やる気を起こしても長続きしません。

 そして、タイプ9は体内時計がよく効いているのか、夜になると自動
的に眠くなります。辛いことがあっても、とりあえず眠ります。明日の
仕事や勉強のことを考えて、何はさておき眠ります。何がなんでも、ひ
とまず眠るのです。


6 知恵で人々から評価されたい4w5

 
タイプ4は、もっとも眠り時間が多いほうです。夜は頭が冴えて眠り
につけず、昼間に眠たくなってしまうので、あくびをよく連発します。
ぶつぶつ独り語も多く、何十時間と眠り続けられるような人は、タイプ
4にしばしばいます。かのアインシュタイン〔4w5〕も、毎日10時間
は寝たそうです。

 一方、偉大な発明家・エジソン〔タイプ2〕は、ほとんど寝ないくらい
な人だったようです。そこで、偉大な科学者になるには、寝ないほうが
良いのか、よく寝たほうが良いのかと論争になったくらいです。 
 
 さて、タイプ4w5の男児は、自分の興味のあること以外は、まったく
したがりません。校庭のど真ん中で大の字になって寝て、みんなを驚か
せたり、ゴロゴロと横になって遊ぶので、怠け者に見えます。動きが遅
く、お菓子ばかり食べたがり、「くっちゃ寝」をするので、太ってしま
うのです。このタイプは、なぜか超肥満体児がしばしばいます。よく言
えば、体つきが赤ん坊のように、水々しくてぽってり丸々としていたり
します。

 また、人間恐怖症にも罹りやすいので、引きこもりやすく、まさに
「寝太郎症候群」に罹ってしまうのです。しかし、頭の中は忙しく働い
ており、想像力があるので、お話を一杯に作り出すかもしれません。ど
ちらかというと深慮遠謀タイプであり、5のウイングがあると、知恵の
ある軍師的な働きをしたがります。厚狭の寝太郎の知恵の働かせ方を見
ると、いかにもこのタイプが考えつきそうです。

 どちらかというと、非日常的なことばかり考えているので、非日常的
なことを仕事にしたほうがうまく行くのかもしれません。実際、科学者
や研究者や芸術家は、タイプ4の人たちが多勢を占めているように見え
ます。

 なお、あまりに深慮遠謀が過ぎて、何が言いたいのか、何を考えてい
るのか全く分からない人がいます。著名な哲学者たち〔例えば、ニーチ
ェやキュルケゴール〕の多くは、このタイプなのですから、さもありな
んと思うことでしょう。タイプ4は、飽き症とは言えませんが、本当に
したいことが見つからなければ、長続きなどしないものです。そうなる
と、何もしない怠け者で、のろまでのんびり屋に見られてしまうのです。

       
7 対極の位置にいるタイプ

 エニアグラムの図形上で見ると、この2つのタイプは、対極に位置し
ます。表面的に見ると似た性格に見え、よくタイプ間違いをします。不
思議なことに、体型もよく似ており、顔が大きい、腹回りに肉がついて、
ふっくらとした肥満体型の人をしばしば見かけます。どっしりとして動
きにくく、敏捷には見えず、「くっちゃ寝」ばかりになる人もします。

 また、両タイプとも、他人の悪口を言わないとか、よく我慢して何も
語ろうとしない傾向があるので、何かをはじめると唐突に見られたり、
突然に何かを仕出かす人にも見られがちです。また、一見すると鷹揚そ
うに見え、穏やかで人あたりもよく、誠実な人柄で、多くの人たちから
好かれやすいのも共通しています。むろん、痩せて細い体型の人もいま
すから、全てがそうだと言っているのではありません。

 タイプ9は「おばあさんタイプ」ですから、縁側で日向ぼっこしなが
ら、ウラウラと昼寝をするイメージがありますが、まさに昼寝をよくし
ます。そして、「独身男にウジが湧く」などと言われるのも、タイプ9
w8の男性か、タイプ4w5です。

 なお、講座で「タイプ4は、果報は寝て待て式にもなる」と説明して
いると、タイプ4w5の男児を持つ母親から、「それはうちの子がよく
言ってます」と報告されたことがあります。タイプ4は、「末っ子タイ
プ」で9人家族の中では、一番年下ですから、睡眠時間が長くなると予
想できるでしょう。

 また、両者は、さながら「おばあさん」と「孫」なのですから、この
2つのタイプが最もよく寝るのは納得できると思います。そして、両タ
イプは惹かれやすいのか、よくカップルになり友だちにもなっているよ
うです。

 ついでながら、タイプ9は本性がおばあさんだからなのか、お菓子は
あまり好みません。一方、タイプ4は本性が子どもタイプだからなのか、
お菓子好みが顕著にあります。

 さて、そんなわけで、三年寝太郎物語が、この2つのタイプのどちら
なのか判定できません。どちらも有り得るからです。ただ、どちらがこ
のようなお話を創作する可能性があるのかというならば、タイプ4w5
のほうでしょう。イメージ力があリ、言葉の理解力や表現力に優れた人
が多いからです。

  最後に、青年たちは人生を急ぎ過ぎではないかとよく思います。また、
親たちも、我が子の成長を待てない人たちが多いようにも感じられます。
じっと「その時が来るまで待つ」ということが必要ではないでしょうか。
機が熟してこそ、次のステップに上がれるのです。そのきざしが見えな
ければ、せっついたり、歩み出すのは危険です。三年寝太郎は、そんな
諸々のことを考えさせられる良いお話のように感じられます。