特集シリーズ                                 
                                  

(改定版) 

  
常識から逸脱しやすいタイプとは?


1 自分以外のタイプは変人に見える          
                  
 
調和タイプ(369)は、常識から逸脱するのを恐れる傾向が他の
タイプより強いようです。そして、このような説明をすると、
「常識人は調和タイプで、それ以外のタイプは変人なのか?」と
問われることがあります。その場合、このように応えます。「い
えいえ、そういうことではありません」と。
   
 ところで、何を指して「常識」というのか、よくよく考えると
分からなくなります。どんな人を見て「変人」と言えるのか、そ
れもじっくりと考え出すと意味不明です。ところで、エニアグラ
ムで、他のタイプの考え方や感じ方を知るとあまりにも落差があ
ります。自分の想像だにしないことを、自分と違うタイプの人た
ちは考えているらしい、と分かって来るのです。   
                                
 ですから、厳密に考え出すと、性格を描写したり、タイプに関
する話題を取り上げることはできません。ですから、ここでは、
あまり奇異な行動を取らない人たちを「常識人」と、とりあえず
名付けることにします。

 また、おおかたの人たちが、「奇異だ!」と言いたくなるような
行動を取ったなら、その人をとりあえず「変人」と呼ぶことにしま
しょう。なお、大抵は、自分の考え方や感じ方を奇異だとは思いま
せんから、自分こそは「ふつう」で、普通人なのです。自分と違う
タイプの人たちがおかしな人たちで、奇異に感じるようです。
 

2 とりあえずの枠組み  
                          
 とりあえず、それを前提にして、つぎのステップに入ります。ま
ず、エニアグラム性格学では、全タイプを比較検討してみたら、
「3・6・9」の人たちに、「常識人」が多いように見えます。そ
うなると、「変人」と呼べる人たちは、その3つのタイプから、遠
く離れたところにいるタイプになります。
 すなわち、1w2・2w1・4w5・5w4・7w8・8w7
6つのタイプで、以下の図のような位置にいます。        
                           
      

3 変人の代表格      

 当会の初級講座では、テレビに登場する人たちを事例としてよく
取り上げます。たとえば、「よく出演する人のなかに、奇異に感じ
ることが多い人、威容な風体をしたり、度肝を抜くような発言をす
る人たちがいます。その人たちのタイプは、ほとんどが、
2w1・4w5・7w8
です」等々。 
                         
 不思議なことに、1w2・5w4・8w7に該当する方が出てき
ません。それは、この3つタイプが人数的に少ないタイプだからで
はと、当会ではと考えています。ワークの参加者、カウンセリング
を受けた人、講演会を聴講した人など、たくさんの方からタイプ判
定を依頼されます。その場合、この3つのタイプと判定したことは
かなり少なく、出会う確率は低いのです。めったに出会わない人た
ちと見ています。

 とくに、タイプ8をテレビ以外では見たことがないと言う方たち
ばかりで、タイプ8の女性オーナーのいるレストランにわさわざ出
掛けたこともあるくらいです。また、有名人のタイプも公表してい
ますが、やはり少ないみたいです。大きな統計調査をしない限りは
分からないことですが、かなり少ないだろうと予想しています。


4 おかしな人たちのレポート

 受講生たちが、自分の知りたい人がいるとレポートして、話して
くれることがあります。「親戚で変った人がいるんです。ぜひ、タ
イプを判定してください」「近所に、どうしても理解できない人が
いるんです。おかしな人だと評判で、タイプを知りたい」等々。
 この場合も、そのほとんどが「2w1・4w5・7w8」です。
たまに1w2・4w3・7w6の人たちが登場しますが、その他の
タイプは、「変わった人」とか、「奇異で分からない」などと報告
されることは、これまでのところありません。

 知りたい方のレポートを書き上げて、毎回のように読み上げ、タ
イプ判定を求める受講生もいます。そんな受講生は観察が進んでい
るためか、タイプ判定に習熟して、次第に間違えずに判定できるよ
うになっています。

 また、おかしな人だと思い込んでいたのに、タイプが分かるよう
になると、その動機や価値観も理解できるようです。
 つまり、私たちは、相手を理解できないために、奇異に感じたり、
おかしく見えるのです。タイプが分かり、考え方がわかったなら、
特別におかしい人には見えなくなってしまうのです。


5 協調性がゼロの人はいるか?

 しかしながら、2w1・4w5・7w8の全ての人たちが、おか
しな言動を取っているのではありません。グループとしてみると、
奇異なことをしやすく、常識から逸脱しやすいという傾向があるに
過ぎません。それは例えば、癌になりやすい体質があっても、全て
の人たちが癌になるとは限らないのと同じです。

 全てのタイプが他人に合わせられる性質を持っています。協調性
がゼロという人などいないと考えられます。仮に、協調性ゼロとい
う方がいたとしたら、それはかなり後退した人なのではないでしょ
うか。実際、追い詰められて、社会的なルールを守れない人は存在
します。不運続きで自暴自棄になった人かもしれず、また、他の原
因もあるでしょう。

 攻撃タイプ(825)や防御タイプ(714)も、常識から逸脱して人々か
ら非難されるようなことはしたくないほうです。しかるに、ある時
に逸脱してしまうのです。それを自覚している場合と、そうでない
場合があるはずです。
 当サイトに届くメールのなかにも、常識外れの不躾なものがしば
しばあります。そのほとんどが、2w1・4w5の人たちです。
7w8の人たちからメールが届くのは少ないので分かりません。こ
のタイプはワークに参加することも少なく、心理学に興味がない人
たちが多いのではと予想しています。また、思考タイプ(567)も、
そのような傾向があるのではとみています。

 尤も、初めから常識を破るつもりで行動する人もいるみたいです。
しかし、あるタイプ2w1は、いつも常識にとらわれており、自分
をがんじがらめに縛っています。この両者が同じタイプには見えま
せん。

 防御タイプ(714)も同様です。通常は礼儀正しい人たちです。しか
し、防御タイプは、杓子定規で柔軟性に欠けてしまい、ある時、人
々から奇異に見られたり、場にあった適切な行動が取れないのです。
「礼儀正しいって聞いていたが、それは本当か?」と問われてしま
うのです。


6 変人なのか、怖い人なのか

 人は、精神的に後退すれば確実に、常識外れなことをして、状況
に合った適切な行動が取れなくなります。どのタイプも例外ではあ
りません。
 しかし、調和タイプ(369)は、家庭内で逸脱しやすく、家族に対し
てわがままや乱暴になり、非常識的な行動も起こしています。しか
し、家庭から一歩外に出ると、他者の視線を意識して、おかしな人
間に思われないように、自分をコントロールできるようです。

 むろん、精神状態がさらに険悪になると、家の外でも次第にわが
まま勝手な行動を取ります。そうなれば何らかの治療や療養などが
要ると考えられます。それほどに調和タイプは、大勢が居る場では
自分を抑えており、めったに恥知らずな言動をしにくいタイプです。

 一方、攻撃タイプ(825)は、家の外でも大勢の人たちが見ていてさ
えも、自戒できにくい人がいます。反社会的な行動に走りやすいタ
イプです。とくにタイプ8と2です。タイプ5は人々から離れて孤
独を求めるほうなので、目立たず、たとえおかしな言動をしていた
としても、めったに見かけることはないでしょう。

 付け足すと、たった6人程度でワークをしているときでさえ、隣
の人とエニアグラムと関係のない話をし出すのは、ほとんどが2w1
の人たちです。次は4w5です。講師が真剣な話をしていても、講
師から見つめられていても気付かずにおしゃべりに興じていたりし
ます。

 防御タイプ(714)は優等生気質がありますから、通常は、調和タイ
プよりも優等生を完璧に演じているほうです。律儀で礼儀正しくて、
後ろ指されるようなことはしないほうです。また、家族とよい関係
ならば、家庭を捨てることはなく、自分にやさしい人に対しては攻
撃性を向けません。

 しかし、状態が悪くなれば、それ以外の人には威嚇したり執拗に
なり、自暴自棄にも陥ってしまいます。そんな状況が続くと、反社
会的な行為を働きます。まさに変人と言われるような言動を取りま
す。

 しかし、タイプ8と2は「変人」と言うよりも、「きつくて怖い
人」という印象になるかもしれません。ただし、ウイングの性格も
考慮しなければなりません。タイプ7w8はきつくて怖い変人とな
り、恐れられている人がしばしばいます。「怖い人」と言う場合、
ほとんどの人たちが、タイプ8だと思ってしまうようですが、その
ほとんどが、これまでのところ7w8でした。2w1も該当します。


7 全ての人たちにある協調性    

 エニアグラム性格学では、エニアグラム図の真上にいるタイプ9
を「原型タイプ」と呼んでいます。もっとも自然体で周囲の人たち
や環境に調和しやすいタイプです。人に対する好き嫌いが最も少な
く、物事に固執しないで、あるがままの世界を受け入れているかの
ようです。

 ちなみに、タイプ9自身はこのように考えていないかもしれません。
しかし、他のタイプの激しさ、嫌悪感の強さ、こだわり方、異質性を
キャッチする能力などを知れば、相当に違うと認識できるはずです。
                       
 他の8つのタイプは、全てタイプ9の性格の分派なのです。つまり、
本家がタイプ9で、分家がその他のタイプなのですから、本家の性質
を受け継いでいると考えられます。

 
 私たち人間は一人では生きられない動物なのですから、他の人たち
に合わせられる性質が備わっています。

 また、そもそも、「常識」というものが形成されたのは、全ての人
たちが「調和タイプ」の性質を持っているからではないでしょうか。
仮に、そうでないなら、常識とか社会的なルールが暗黙のうちに成立
するとは考えられません。今以上に、争いの多い社会となり、至ると
ころ誤解があり、かつ弱肉強食の世界となるかもしれません。


8 社会の安定に資するタイプ、社会の進歩に資するタイプ


 さて、常識は、時代とともに移り変わります。それは常識破りをし
た人たちがいたればこそであり、時代に合った常識を打ち立てたのも、
このタイプの人たちの功績かもしれません。 
         
 ノーベル賞を受賞した田中耕一さん(4w5と判定しています)は、
「常識にとらわれるなというモットーを大切にしている」とコメント
しています。常識にとらわれていたら、研究成果は出なかったでしょ
う。

  一方、常識的で協調性のある調和タイプがいたからこそ、社会は
安定して、争いも少ないのではないでしょうか。派手な受賞とは縁が
なくとも、地道な歩みをしている人たちがいたればこそと考えざるを
得ません。そして、安定して変化のない社会は、内部から腐ってしま
いますから、適度の安定があり、適度の変化があったほうがベストで
はないでしょうか。

 結論的に言うならば、どちらの存在もどちらの性格も、お互いに必
要不可欠であることを、深く知れは知るほどに思い知らされます。