特集シリーズ                                                  


     
  タイプ8は太っ腹! 

1 怒りの大きさ
 
  

 
古代ローマの皇帝として有名なのはネロです。ネロの師である
ストア派の哲学者・セネカが、「怒りについて」という著書を残
しています。
 セネカは「怒りは憎むべき相手に害を加えることを望むのであ
って、害が加えられることを望んでいるのではない」と述べてい
ます。しかし、そうと言い切れるでしょうか? 
 同じ状況にいても、怒りや憎しみが、それほど大きくはならな
い人もいます。例えば、相手の不幸を心の中で念じる程度で、そ
れで気が済む人もいるかもしれません。

 エニアグラムの9つのタイプを知ると、タイプによって怒りの
感情の大きさや、怒りとの付き合い方が違うように見えます。と
なると、セネカ本人が憎むべき相手に害を与えたくなる性格だと
考えられ、セネカのタイプも推測できるというものです。

 ところで、9つの気質(性格)を知ると、怒りや憎しみの心が激
しくなりがちで、確実に相手に害を加えねば気が済まないタイプ
がいると分かります。攻撃タイプ(825)が該当しますが、その最た
る人がタイプ8です。

 しかし、タイプ8は怒りの激しい人とはいっても、よく怒りを
抑えているタイプです。とくに8w9はかなり制御できるほうで、
自分が怒り出すと、全てを破壊しかねないことを自覚しているか
らでしょう。

 それゆえ、タイプ8は軽々しく怒るようなタイプではありませ
ん。度量のある人たちが多く、小さなことでは怒りだしません。
しかし、自分への侮辱、裏切り、軽く扱われるなどがあれば、怒
りは大きく、いったん怒り出すとなかなか収まらず、長引くほう
です。

 ただし、もともとの声が大きく、押し出しも強いので、本人は
怒っていなくとも、他人からは怒っているように見られます。タ
イプ8自身からすれば単なる威嚇であり、効果的に優位に立つ方
法を、生まれながらに体得しています。

           
2 自律的な性格か

 さて、タイプ8の性格を知るには、日本語の「腹」に関する用
語を探っていくと理解が深まります。
                
 
腹が太い      度量や胆力が大きい 
 腹が据わる     度胸がすわる 覚悟する
 腹にいちもつ    心中に何かたくらみがある
 腹黒い       心に悪企みがある 心根がよくない
 腹を探る      人の心中をそれとなしにうかがう
 腹を割る      包み隠さず真意をつげる
 腹を見られる    自分の心中をさぐられる
 腹ぎたなし     心がきたない 
 腹合わせ      共同して事をはかること
 腹が立つ          しゃくにさわる、立腹する.
 腹いせ       怒りや恨みをはらすこと
 腹の虫が承知せぬ  腹立たしくて、我慢ができない 
 腹たちまぎれ    腹の立つのにまかせて事をすること 
 腹立たば手をひけ 
 腹に据えかねる   怒りをこらえることができない
 腹がない      胆力がすわっていない 
 腹を癒す      怒りや恨みをはらす
 腹をえぐる     人の意中を見とおして尋ね問う
 腹を絶つ      断腸 悲しさにたえぬさま
 腹芸        形式や論理を超えて度胸や経験で物事を処理
 腹散散       思う存分
 腹ずもり      自分の腹に納めてあるおおまかな予定・予算
 腹の中       心の中
 腸(はらわた)   心 性根
 はらわた煮えくり返る 怒りに耐えられない様 
 腹は借り物      親の腹は一時の借り物で、生まれた子の
            貴賎は、母よりも父によるという意


3 タイプ8は腹が座っている
 
 そこで、タイプ8の性格について、独特の雰囲気のある日本語の
「腹」に関する用語を使って説明してみましょう。

 「タイプ8は腹が太く腹の据わっている大胆で勇気のある攻撃
的な性格です。タイプ8にとって世界は否定的で、驚異と暗闇の支
配しているところです。
 人の本性は悪で、誰もが自分のことしか考えず、強欲で腹にいち
もつある
ような腹黒い人間たちばかりですから、とても信用できま
せん。相手が何を考えているのか、互いに
腹を探り合って
おり、
をわって
話し合うなどは考えられないことです。それゆえ、スキを
見せず、腹をみられないように、警戒を緩めません。

 ところが、弱い奴ほど腹ぎたなく、一人では何もできないので、
腹あわせ
をするに違いないと、いろいろと悪い想像をしてしまいま
す。面倒を見てやったのに、恩を仇で返す不届き者がいて、腹の立
ことばかりの世のなかです。
 すると、腹の虫が承知せぬので、腹立ちまぎれに、思わず知らず、
家族に怒鳴り散らしてしまうかもしれません。腹いせに、ケンカを
売って、誰かを痛めつけないと、腹が収まらない場合もあるでしょ
う。
 しかし、腹を立てると冷静になれず、スキを見せるかもしれない
ので、「腹立たば手をひけ!」という格言にもあるように、自分自
身を諭します。なるべく落ち着いて、腹を据えて事に当たらねばな
らないと、慎重になろうとします。    
 しかし、これまでは一族郎党を守れましたが、こんな弱肉強食の
世界では、一寸先は闇です。こんなご時世ですから、自分の血の分
けた子どもしか信用できません。そこで、産めよ増やせよというわ
けで、子どもをより多く欲しがります。
 しかし、女は魔物で、男心を狂わせる危険な生き物で、タイプ8
は自分のしっと心を制御できにくいことを知っています。それゆえ、
腹は借り物」とドライに考えるようにして、女にかまけて油断し
ないようにと自戒します。

 さて、そんなに警戒しているにもかかわらず、敵に寝返る裏切り
者さえ出る始末です。タイプ8のはらわたは煮えくり返るほどで、
怒りと憎しみで一杯となり、容易に腹が癒えることがありません。
 腹がへっては戦はできないので、まず、腹ごしらえは十二分にし
て、戦いの準備を万端にして怠りません。そんな折りにも、身内の
一人が敵の矢にあたり倒れました。可愛がっていた我が息子です。
息子の亡骸を見て、はらわたがちぎれるほど慟哭するでしょう。
 タイプ8の情愛は深く、妻や子どもを守れなかったら、悔恨の慟
哭をするに違いありません。断腸の思いで死者を弔い、墓前で復讐
を誓うに違いないのです。たとえ、敵のほうにぶがあっても、果敢
に戦いを挑み、捨て身となって腹さんざんに戦い、勝利を収めるま
で戦い続けるでしょう」


4 実際にも、腹が熱くなっている 

 なかでも、「腹が立つ」「腹が煮えたぎる」「はらわたが煮えく
り返る」という用語は、印象深いものがあります。実際にも調べら
れ、腸が熱を帯びて、まさに腸捻転を起こしているかのようであっ
たと、撮影写真とともに紹介されていた著書がありました。

(なお、その著書は15年以上前に読んだもので、今回、紹介する
にあたり探し回りましたが、まだ見つけられません。タイトルも著
者名も忘れてしまい、信憑性が疑われるかもしれませんが、新書版
であったことだけは覚えています。もしも、心あたりがあれば、ど
うか、こちらまで知らせください。お願い申しあげます)

 さて、タイプ8は、軽々しく怒らない性格ですが、一旦、怒りだ
すと、その怒りは大きく、「はらわたが煮えくり返る」という表現
がピッタリとあてはまります。
 しかし、腸は熱を帯びてはいますが、頭は熱を帯びず、かえって
冷静になる傾向があります。また、はらわたで怒ると、なかなか怒
りは収まらず、静まるには時間がかかると予想できるでしょう。

 なお、8のウイングの重い9w8と7w8も、むろん、同様には
らわたが煮えくり返ってしまうようです。よく間違える2w1は短
気なので「カチンと来る」という表現がピッタリと当てはまるでし
ょう。そして、怒り方としては頭がカッカと熱を帯びるのであり、
はらわたのほうではありません。

 また、怒り方には「キレタ!」という表現もあります。これは2
w1だけでなく、1w2・4w5・5w4の怒り方が、イメージ的
には合っているかもしれません。また、7w8で、8のウイングの
軽い人も、「キレタ!」が似合っているかもしれません。8w7で
7のウイングが重い人も、場合によっては、「キレタ!」という感
じで怒る場合もありますから、あまり厳密にあてはめられることで
はありません。

 つぎに、タイプ
エニアグラム図内で線がつながっているタイ
プ5も、めったに怒り出さないタイプですから、一旦怒り出すと、
タイプ8と同様に、「はらわたが煮えくり返る」が当てはまるでしょ
う。

 そして、「むかつく」という言い方のほうが合っているタイプも
います。例えば、タイプ6やタイプ3が怒ると、この言葉のほうが、
イメージ的に合うかもしれません。しかし、他のタイプも、「むか
つく」という表現が合う場合もありますから、タイプを特定したり、
狭く取らないことが肝要です。

 なにしろ、怒りの大きさは、時と場合、そして相手との関係、そ
の内容にもよるのですから、さまざまでなくては、かえっておかし
いのです。


5 怒りの出し方

 なお、タイプ8の怒りは大きいのですが、よく自制できるほうで
しょう。なぜなら、怒り狂ってしまうと、スキを見せてしまうかも
しれず、そのスキを突かれて負けるかもしれないと予想するからで
す。また、冷静にならねば、相手をしっかりと観察できず、相手の
スキを見つけられません。

 従って、タイプ8はかなり、自律的であり、自己コントロールの
できやすいタイプであり、本人も自己コントロールできることを、
自負しているかもしれません。
 一方、自己コントロールが最もできにくいのは、防御タイプ(714)
です。怒りを自制できにくいだけでなく、恐怖心が高まると、周囲
を見られず、無我夢中になって、または、自分を見失って攻撃的に
なる可能性があります。そうなると、最も怖い相手は、タイプ8より
も、むしろ防御タイプだと考えることもできます。

 調和タイプ(369)は、怒りを出せる相手をよく見ている傾向があり
ます。怒りを出しやすい相手は、自分より弱い者で、怒りを抑制す
るのは、自分より強い相手になります。むろん、防御タイプも通常
は調和タイプと同様だと考えてください。

           
6 言葉とこころ 
           
 このように、自分の感性にピッタリと当てはまる用語があります
が、自分とはちょっと違うと感じられる用語があります。感性の中
に、性格(気質)が滲み出ているのですから、どの用語を使うのか、
どんな表現をしたがるのか、よくよく観察すれば「性格タイプ」も
発見できます。 
              
 「言葉」は不思議なもので、「丸い・まるい」という言葉を聴く
と、「ま〜る〜い」のイメージがあり、なんとなく柔らかくて動く
ものを連想します。「硬い・かたい」という言葉を聴くと「か!た
!い!」となり、なんとはなしに、冷たくて動かないものを連想し
ているのではないでしょうか。

 最近は「ゲットしよう!」のような日本語化した言葉があります。
最初のうちは、違和感のある言葉でしたが、聞き慣れてくると、日
本語の「獲得しよう!」よりも、フィットしているような気にさえ
なります。 
         
 言葉は感性に直接に響きますが、その音の響きがよけいに、「ま
るい」ものを「丸い」と感じさせるのです。
 従って、タイプ8が怒った場合、その怒りは大きいので、「はら
わたが煮えくり返る」と表現したくなります。がしかし、「はらわ
たが煮えくり返る」と言葉にすると、その自分が発した言葉によっ
て、さらにイメージが膨らんでくると考えられます。そして、実際
に、下腹部が熱を帯びて、やがて、腸が捻じれてしまうのかもしれ
ません。

 「言葉」と「こころ」は、相互作用があると考えられます。それ
ゆえ、当会では「言葉」を慎重に聴くようにしています。言葉の使
い方、よく使うセリフ回しには、各タイプの特長が出ているからで
す。しかしながら、それは、また別の機会に紹介致しましょう。


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