特集シリーズ                                  
                                  

  
 タイプ9は隠蔽色、タイプ3は警戒色で身を守る


                                          

 
あなたが目立ちたがり屋だとすると、目立ちたがらない人がいることを信
じられないでしょう。また、あなたが目立つのを恐れる人だとしたら、なぜ
目立ちたがる人たちがいるのか、不思議に感じていたことでしょう。あるい
は、そんなことには無関心で、どちらでもいいのに、目立つ目立たないと気
に病む人たちを全く理解できない人もいます。今回は、そんな不思議な性格
について、それがどこから来たのかを、分かりやすく紹介しようと思います。



 「擬態ぎたい」という自己防衛戦略

 
遺伝子の本体はDNAで、すべての生物に共通しています。また、人間は
他の生物たちと連続しており、生命の連続性というものを考えざるを得ませ
ん。そうなると、他の
生物とヒトの生存戦略(自己防衛戦略)も、連続性の
あるものと考えられます。
 
下図は、古典的な生物系統樹ですが、現在はDNAを考慮した新たな系統
樹作りが進んでいるようです。


       

  
 
さて、「擬態」という言葉は、中学校の生物の時間に学んだことがあるで
しょう。19世紀末頃に、ベイツというイギリス人がアマゾンを探検して、
チョウを採集しようとした折りに発見しました。発見者の名がついて、「ベ
イツ型擬態」と呼ばれているもので、警戒色を出して、自分の身の安全を図
る動物たちのことです。その後も、ミュラーという人が、別の擬態を発見し
たり、さまざまな動物たちの自己防衛戦略が発見されています。   

              

 
     写真・アゲハチョウに擬態している「ガ 」で、名前は「アゲハモドキ」 
   提供者は「虫撮り散策記」の真さんからお借りしました。下の「ハムシ」も。
    
http://www.fuji.sakura.ne.jp/~shin/index.html
         

                       
 目立たないほうが安全だ!


 
擬態として最も有名なものは、コノハチョウです。枯れ葉にそっくりで、
葉の虫食いの様まで同じです。これを「枯れ葉に擬態したチョウ」と言い
ます。シャクトリ虫は、小枝に擬態しており、静止している時は、まるで
枝のように見えます。枝のようにザラザラとした触感まで同じで、驚くほ
どです。
 このような擬態をする生物は、チョウだけでなく、ガや昆虫、カエルな
どの両性類から、魚類や爬虫類、哺乳類にいたるまであります。枯れ葉だ
けでなく、小枝、岩、排出物(糞)に擬態している動物もいます。また、
擬態には、視覚的な姿形だけでなく、鳴き声、臭い、振る舞い方もあり、
自然界では枚挙にいとまない、ごく普通の形態です。

 また、擬態とは言えませんが、背景に合わせた体色や形をして、目立た
ないようにして、自分を守る生物も数えきれません。例えば、カマキリは
棲家である緑色の葉と同じ色をしています。もちろん、赤いランの花とそ
っくりに擬態しているカマキリもいますが。
 カレイやヒラメ(下の写真)は海底の砂や石と似ていたり、オコゼは海
底の岩に似ているために発見されにくいようです。野ウサギやライチョウ
は、冬は白く、夏は灰色や茶色に変わり、背景に溶け込んだ体色を持って
います。ライオンはサバンナの草むらの中で、獲物を待ち伏せていますが、
その体色は背景の色と似ています。ヒョウの班紋は体の輪郭を分かりずら
くしており、派手そうに見えるシマウマでさえも、実はかえって発見され
にくい体色であると知られています。

                 
 
       
写真は、海底の砂模様に擬態している「ヒラメ」
       「宮崎海中紀行」AKIHIKO SHINCHIさんからお借りしました。

         
http://www5a.biglobe.ne.jp/~shinchi/hirame.htm 
                           

 目立つほうが安全だ!
                              
 
ガの多くは、目立たない黒ずんだ地味な色をしていますが、あるガ(ハ
ナアブ)は、黒と黄色や赤の縞があり、よく目立つ体色をしています。そ
れはハチに擬態しており、鳥もハチだと思って、手を出さないようです。
ゴキブリも大抵は、地味な体色をしていますが、目立つ色彩のテントウ虫
に擬態しているゴキブリがいます。ゴキブリは味がよく、狙われやすいの
ですが、テントウ虫は味が悪いために捕食者に狙われにくいようです。そ
れゆえ、そのゴキブリは、テントウ虫のソックリさんになって、身を守っ
ているのだと考えられています。猛毒のサンゴヘビに擬態した無毒のヘビ
がいますが、この場合も、捕食者から狙われる危険性が減ります。

 擬態しているのではありませんが、目立つほうが安全だ思い込んだのか、
そうした防衛戦略を持つ動物もいたるところに存在します。例えば、海に
いるミノカサゴは非常に目立つ体色で、有毒で危険なトゲがあり、自分は
危険な動物だと警告しているように見えます。カエルの多くは、生息地に
溶け込んだ体色で、多くは緑色です。しかし、あるカエルは、赤い紅彩を
持ち、まるで「私は有毒で危険だから立ち去りなさい!」と警告していま
す。その他、このような生物を取り上げたなら、紙面はいくらあっても足
りません。よく知られているものだけを紹介しています。

       
             
        http://www.fuji.sakura.ne.jp/~shin/galleryhamu/kurotutu.html
         
写真・テントウムシのように鮮やかで目立つ色彩の「ハムシ」 
                                
 目立たないのが安全か、それとも目立つほうか?

 このように、基本的に、自分を隠して身を守る戦略としての「擬態」が
あります。この場合は、マイナスの情報を発して自分を隠すので、「隠蔽
色」と呼ぶことができます。しかし、これとは逆で、自分を目立せて守る
戦略としての「擬態」があり、こちらはプラスの情報を発していますから、
「警戒色」と呼べるでしょう。

・隠蔽色(自分を隠して守る)  マイナス情報を発する 
                 コノハチョウ シャクトリ虫
・警戒色(自分を目立たせて守る)プラス情報を発する 
                 ハナアブ   スカシバ  
                               
 
では、自分の身の安全を図るには、どちらの防衛戦略を持った方が安全
なのでしょうか。よくよく考えると、それはなかなか予測できないもので
す。どちらもトライする価値がありそうですし、どちらも戦略としては理
にかなっています。ただ、生物たちは、それぞれに棲み分けており、その
環境に合った戦略を持っています。その環境の中で、他と違う戦略を持た
ないと生き残れず、棲み分けることもできません。それだからこそ、共存
でき、かつ生存率も高められるのではないでしょうか。
             
 また、9つのタイプを知ると、防衛方法を9つに分けて、絶滅しないよ
うに、危険分散させているとも考えられます。また、既に公表している「
9つのタイプを家族名で現す」という文を読めば分かるように、9つのタ
イプは、役割分担をもしています。
 ヒトは、かつて野性の世界にいて、群れを作って生活していました。群
れを作っていたほうが安全度は高まりますから、動物も群れるもののほう
が多いようです。そんな時代には、役割を明確にして、防衛方法も分散し
て、互いに助け合い支え合わねばならなかったはずです。仲間を守り、そ
して自分を守る方法として、「性格」という自己防衛戦略が必要不可欠で
あったと考えられます。

                     


 9つのタイプは、演技する

 なお、「擬態(mimicry)」の語源は、 mime (=演技する)で、擬態と
はお芝居をしているのだそうです。自分を守るために、色彩を利用してい
るのですが、色彩だけでなく、臭いや鳴き声、目玉模様、はては「擬死」
いう死んだふりをする名演技者もいます。
 例えば、世界中に分布しているナナフシは、脅かすと体が硬直して死ん
だようになり、折れた小枝のように地面に落ちます。その他、テントウ虫
・シジュウカラ・コガネ虫・ヘビ・きつね・タヌキの中にも死んだふりし
危機を免れるものがいると分かっています。

 このように、野性動物たちが演技して自分を守っているとしたら、私た
ち人間はもっと演技のうまい動物ではないでしょうか。そして、動物たち
の自己防衛戦略は、人間の性格の中に色濃く残っていると考えられます。
また、そのように考えると、各タイプの性格がよく理解できます。 

 
例えば、
タイプ9は、周囲の人々に同調して、自己主張をあまりしませ
ん。地味な服装をして、その場に合った自然な態度で人に接し、周囲と違
和感のない行動をしています。つまりは隠蔽色を出しているタイプと言え
ます。  
 
そして、目立ちたがる性格は、
タイプ3です。タイプ9と同じく調和タ
イプで、協調性があります。しかし、有能であるとアピールしたり、人々
をアッと驚かせたり、フットライトを浴びることを夢見ています。ここぞ
!という時に人々の話題をさらい、カッコつけて派手な服装をして、人気
者になりたがります。
 さて、9つのタイプは以下のようになります。

                    
目立ちたがらない性格                5・9・4
  
マイナスを隠し、プラスも見せない! 
・目立ちたがる性格(自己顕示欲の強いタイプ)  8・3・7
  
プラスをアピールして、マイナスを隠す!

・どちらもあり、どちらでもない性格          2・6・1


  全てのタイプの根源にある同調的な性格

 「擬態」とは背景に溶け込んだり、他の種をまねる(演技する)ので
すから、調和タイプにこそ、色濃くある戦略と考えられます。


タイプ9は調和タイプであり、原型タイプとも言います。タイプ9にあ
るものは他のタイプも併せ持っていると考えられます。
いつも環境に適
応すべく行動をしており、仲間と行動をともにする同調的な気質です。
目立ちたがらず、浮き上がらず、おとなしい印象の強い人たちです。
 
タイプ8目立ちたがりで、明らかに警戒色を出しているタイプですが、
強いと見せたがるだけでなく、強くなろうとします。生まれながらの闘
士タイプです。さながら、毒ヘビ、ワニ、トラ、ワシ、サメなどとよく
似た自己防衛政略と言えるでしょう。

 一方、目立ちたがるとはいっても、
タイプ3は毒ヘビと同じような警
戒色を持ってはいても攻撃性は低いので、無毒です。従って、毒ヘビに
擬態している無毒のヘビと、よく似た戦略です。

 次に、
タイプ7は、警戒色を出しながらも、素早く逃げる戦略を持つと
考えたならば、タイプ7をよく理解できるでしょう。目立ちたがりやな
ところが最もよく出ている人たちです。
 
 
タイプ5は目立ちたがらず、「能あるタカは爪を隠す」というべきタ
イプです。賢さを高く評価するタイプで賢くなろうとします。
タイプ4
も目立ちたがらず、素早く隠れる戦略を持つタイプだと考えたなら理解
しやすいでしょう。

 ところが、上記のような戦略を持たない動物がいるように、ヒトにも、
警戒色や隠蔽色を出すのではなく、別の戦略を持つタイプがいます。そ
れが残りの「タイプ2・タイプ6・タイプ1」です。
 
 なお、
タイプ6の自己防衛戦略は、危機が迫ると、混乱させ惑わせて
自分を守りますから、さしずめ、カメレオンやタコ・カニ・ヒラメなど
とよく似た戦略です。これらは、体色を数秒間に6〜7回も変えたり、
黒い墨を排出して煙幕を張ります。捕食者は、混乱したり惑わさせられ、
そのスキに逃げ出せます。従って、隠蔽も警戒も、どちらの戦略も持っ
ています。しかし、それだけではないようです。

 なお、
タイプ1タイプ2
は、隠蔽と警戒のどちらを持つとは言えず、
どちらもあります。指導者に従い、一致団結して協力関係を築いて、自
分と仲間を守る意識が高いタイプです。タイプ6もこれに入っており、
これらの戦略とよく似た戦略を持つ動物は数えられないぐらいにありま
すが、現在、適切な例を上げることができません。その他のタイプにつ
いても、動物の防衛戦略と比較した場合、どこと似ているのか、あまり
に多く、適切なところが見つかりません。これまで調べたところのみを
紹介しています。



 9つの性格はどこから来たのか?

 ヒトは、大脳の発達した動物ですから、上
記で紹介したような単純な
防衛戦略を取りません。例えば、環境に合わせて体色を変えたのではな
く、環境に合わせた防衛方法や暮らし方を考え出した動物です。それは
順応できるように、大脳を発達させたからでしょう。従って、ヒトの自
己防衛戦略は、多様な知識と理解力、多様な戦術を考え出す能力を持つ
ことです。

 ヒトは複雑な戦術を取れる動物ですが、しかし、9つの性格タイプを
知ると、「戦略として9つを分かち持った」と考えねば理解しがたいも
のです。通常、私たちは冷静かつ適切に判断して、より効果的な方法を
考え出したり工夫することができます。もちろん、パニックに陥って何
も考えつかない人も当然ながら存在しますが。

 しかし、自分の損になると知っていたり、実害を受けると予想でき、
自分の命を落とす危険性があると分かっているのに、自分ではどうしよ
うもなく、何かにつき動かされることがあります。人間とは愚かな動物
だと思うのは、こんな状況の場合ではないでしょうか。つまり、自己防
衛戦略とは、本能的な行動様式なので、理性ではコントロールできない
のです。

 「こんな性格でなかったら良かったのに」と考えたことがある人は少
なくないでしょう。大脳が発達したために、人間は賢くなりましたが、
人間も動物であり、本能的な衝動に逆らうことはできません。このよう
に、動物たちの防衛戦略と、ヒトのそれとは共通のものがあると考えら
れ、そこに「擬態」を考え併せると、「9つの性格タイプ」が少しクリ
アになると考えます。 

 

 最後に、エニアグラム理論はいろいろとあり、性格分析も会派によっ
て違いがあります。しかし、「9つの性格は、どこから来たのか?」「
9つの性格になったその必然性は?」と訊ねても、答えてくれるところ
はありませんでした。この根本の問いに対する答を長年探し続けて来ま
したが、私自身(竜頭)は、ある程度の答えを見つけたと考えています。
 さて、これを読んだ皆さんは、どのように感じたでしょうか? ここ
を読む皆さんからの感想やご意見を待っています。