特集シリーズ                               

(改定版2007/12/)
  
        
犬と猫と9つのタイプ 
 
                  
 
犬や猫のペットを幾匹も飼ったことがある人なら、それぞれ性格
(気質)が違うことを知っていると思います。乗馬クラブなどに行く
と馬と騎手の相性が合うようにと気配りされます。従って、もしか
したら、あなたも「動物たちにも9ツノタイプがあるかな」と予想し
たことがあるかもしれませんね。


1 性格は脳にあり

 昔、「心は心臓にある」と思われていたようです。驚いたり感情
が高ぶると心臓の鼓動が早まったので、そのように考えたのでしょ
う。古代ギリシャのアリストテレスは、「精神の座」は心臓だと説
きました。

 さて、最新の脳科学によって、「心は脳にある」ことが証明され
ました。言い方を変えると、「性格は脳にある」のです。 

 ところで、人間の脳は、38億年の進化の過程を経て、現在に至
ったもので、脊椎動物の脳のレイアウトは基本的に同じです。魚類
は、終脳が発達しておらず、大脳は小さく、両生類や爬虫類は、終
脳はやや発達しているが、小脳は小さいようです。鳥類では小脳が
相対的に大きく、哺乳類は大脳が発達しました。そして、哺乳類の
中でも、霊長類はとくに大脳が著しく発達しました。なかでも、ヒ
トの大脳新皮質は、比較すれば異常に大きく発達しています。


      



2 大脳辺縁系=動物脳              

 大脳新皮質は、系統発生的にはもっとも新しいもので、古い旧
皮質や古皮質の前方に発達したものです。この旧皮質や古皮質か
ら成る部分を「辺縁脳」と言います。下等な哺乳類では、この辺
縁脳が大脳の大部分を占めており、進化の進んだ哺乳類や霊長類
でも、辺縁系の大きさはあまり変わりません。

         


 この辺縁脳とへん桃核やその他を合わせて、「大脳辺縁系」と
呼びますが、情動や本能行動の中枢的な役割をつかさどっていま
す。食欲や性欲、喜怒哀楽や集団欲、攻撃や恐れ、やる気などの
本能的な行動です。また、辺縁系は記憶のセンター海馬とも繋が
っています。嗅覚もここでキャッチするようですから、臭いと記
憶、恐怖と記憶はセットされやすいようです。犬や猫にとって、
臭いを知り怖い相手をしっかりと記憶することは、最重要なこと
ですから、当然と言えば当然です。また、それは人間でも同じで
あろうと考えられます。

 大脳辺縁系のことを、「動物脳」と呼ぶことがあり、この脳の
上に新皮質が建て増しされました。つまり、新皮質はヒトをヒト
たらしめる脳ですが、動物と共通する脳も持っており、ヒトと動
物とは連続していることが分かります。

    
3 動物にも性格はある  
    
 ヒトは、原生生物→魚類→両生類→爬虫類→哺乳類(食虫類)
→霊長類へとたどる、進化の頂点に立っています。どの段階で、
脳を獲得したのかは分かりませんが、脳のある動物ならば心があ
り、ひいては性格(気質)もあると考えられます。

 例えば、ブルーギルという魚のオスの性格は2つのタイプがあ
るらしく、攻撃的な性格のオス同士が闘い、メスを獲得します。
そこへ、闘いには参加しなかった平和的なオスが、スキを見つけ
て自分の精子を卵子の塊にふりかけます。

 また、ガマガエルのオスには、積極的なオスと消極的なオスと
に分かれているようです。他のオスを払いのけて、メスの散乱し
た卵に精子をかけるオスがいます。しかし、その攻撃的なオスが
夢中になってメスを抱きしめている時に、密かに近づいて、横か
ら自分の精子をかけるオスがいます。

 また、草原に棲むライオンたちが、みな獰猛な性格ではありま
せん。オスが怠け者で、メスが餌を取り縄張りも守っているので、
メスは働き者だと知られていますが。しかし、そのメスライオン
も、4タイプに区分できると言います。

 「常に率先して反応するタイプ」・「常に後方にいるタイプ」
・「必要とされると前に出るタイプ」・「必要とされている時に
はなるべく離れていようとするタイプ」の4っつです。ライオン
はみな勇敢だと思われがちです。しかし、意外に感じるかもしれ
ませんが、危険を冒して先頭に立つ勇敢なライオンばかりではな
く、ぐずぐずしているライオンは、いつもぐずぐずしていると報
告されています。

 なお、この段階から見ても、性格(気質)というものは、遺伝
子に書き込まれているのであり、後天的に形成されたものではな
いようです。従って、当サイトでは、「性格(気質」とか、「気
質(性格)」などと書き加えています。

 このように見ていくと、進化の初期の段階から、性格というも
のがあり、そして、大脳辺縁系の機能の中にも、性格に関するゲ
ノムがあると予測できます。

             
 これまで、心のような複雑で高等な機能は、人間だけのものだ
と言われて来ました。しかし、さまざまな調査研究によって、動
物たちの意外に高い能力が立証されています。たとえば、ハトが、
画家の作品を見比べられる能力があるとか、ネズミには数の概念
がありそうだとかスズメがその場の状況に応じて取捨選択して行
動しているなどです。

 マリアン・S・ドーキンズさんは著書
「動物たちの心の世界」
の中で、次のように語っています。
「動物たちのなかには、自分
で学習し、自分の間違いから教訓を得ているだけでなく、他の動
物の経験からも同様に学習している。また、学習したことを複写
や真似を通じて、社会集団全体に広げている」


4 哺乳類は9つのタイプに分けられる 

 当会には、「自我の座理論」があり、脳には自我をつかさどる
部位があり、それによって、基本的な性格が決定づけられるとす
る理論です。

 人間は大脳新皮質が特別に発達した動物ですが、人間ほどでは
ありませんが、大脳新皮質が発達している動物は、性格がはっき
りと分かります。とくに、私たちの身近にいる犬や猫の性格につ
いては、よく知られています。従って、人間と同じように、おお
まかに9つの性格に分けて把握できると考えます。

 もしも、ライオンの生態を調べた報告者が、エニアグラムのタ
イプ判定ができる人ならば、ライオンは4タイプではなく、9タ
イプだと報告しただろうと考えます。


 なお、魚など大脳新皮質の発達していない動物は、3タイプだ
けかもしれないと予想しますが、まだわかりません。なお、魚に
は2つの性格があるらしいと言われていますが、仮に、上記の性
格を「攻撃タイプ」と「防御タイプ」だとすると、残りの「調和
タイプ」は把握できにくかったのではと推察します。魚類も人間
と同様に、群れを成して生き延びてきた動物ですから、「調和タ
イプ」が存在するはずではないでしょうか。


   


5 いつから9つのタイプに? 

 また、性格は3か、3の倍数として発現するのではないかと、
エニアグラム図が語っていると考えます。 

 例えば、魚集団を導くボス的な魚が存在しており、それはタイ
プ8の可能性があります。そして、ボスに従いやすいタイプ1の
魚が存在するので、他の多くの調和タイプ(タイプ9)が、それ
に同調して行動するのではないかと予想されます。魚集団が三つ
のタイプに分かれていないとしたら、魚群は一定の方向に集団と
して行動できるでしょうか。たぶん、その地域を動き回るだけで、
方向性というものはないと予想できます。
      

 また、タイプ8やタイプ1のタイプが多いと、魚類は主導権争
いとなるか、小集団に分かれるのではと予想します。従って、タ
イプ8とタイプ1が発現する数は少なく、それは人間にも受け継
がれているのではないかと考えられます。そして、3つのタイプ
に分化する過程として9w8か、9w1だったのかもしれません。


 ところで、大脳辺縁系に自我の座があるのは、タイプ8・タイ
プ9・タイプ1であり、大脳新皮質に自我の座があるのは、残り
の6つのタイプです。それゆえ、原型タイプであるタイプ9は、
生物の最初に発現した気質であり、もっとも環境に調和しやすい
のではないかと。

 次に、そこから3つのタイプに分かれて、タイプ8とタイプ1
が発現したと考えられます。また、脳は「建て増し構造」なので
すから、気質も「建て増し構造」でなければならないはずと考え
ます。

 従って、原型タイプ(タイプ9)と、そこから建て増しされた
形で、残りのタイプが作られたのではないかと、当会では考えて
います。しかしながら、どの段階で、9つのタイプになったのか、
現在のところまだ分かりません。

   
 


6 犬と9つの性格タイプ 
 
 身近にいる犬の性格は、飼い主ならばよく知っていることでし
ょう。なお、犬は言葉が話せませんから、その行動から推察しま
す。そして、今回、猫を取り上げませんでした。犬よりも多少分
かりにくいかもしれませんが、同じような行動バターンがあり、
9つのタイプとして見分けられます。
 


  
・攻撃タイプ(8・2・5)  
 この3つのタイプの犬は、自分を人間のペットだと認識してい
ないようで、さながら、自分を人間だと思い込んでおり、怖いも
のがないようで、しぶとくて可愛げがありません。その家の主の
ようなつもりらしく堂々としています。散歩などで、他の動物と
鉢合わせすると、一歩も退かず、縄張りを主張して譲りません。

              
 
タイプ8の犬に出会うことは少なく、人間と同じで、数に片寄
りがあるのではないかと予想します。タイプ8の犬は、自分がボ
スであると認識しているようで、威嚇的な目つきと姿勢をしてお
り、警戒心を緩めませんが、いつも悠然としており、吼えたてる
ことは少ないようです。なお、牧羊犬には、タイプ8の犬がいる
だろうと見ています。愛玩犬にはなりにくく、羊の集団を率いる
にはこのボスタイプが最適だからです。


 タイプ2の犬は、警戒心が少なく、明るく活発で、馴染みやす
く、人好きで子ども好きです。しかし、主人に対しては割合と忠
実で、敵とみなすと容赦しません。世話焼きですから、盲導犬や
介護犬になっていることが多いように見受けられます。このタイ
プは人間も数が多いのですが、犬も多数派みたいに感じられます
が、統計的な調査をしたわけではありせんから本当のところはわ
かりません。


 タイプ5の犬も、数少ないと考えられます。じゃれたり甘える
などがなく、おとなしく吠えることもないと考えられます。しか
し、敵とみなすと威嚇的します。愛玩犬には向きませんが、番犬
には向いています。


  
・調和タイプ(3・6・9)  
 この3つのタイプの犬は、人間と同じく協調性があるためか、
人間にとって理解しやすく、付き合いやすいでしょう。寂しがり
屋で、甘えたり拗ねたり、うれしいと騒いだりして、かわいいペ
ットに感じられるかもしれません。他のペットと鉢合わせすると、
相手が強そうだと逃げ出して、弱い相手ならば少しは威嚇するか
もしれません。

          
 タイプ3の犬は、寂しがり屋で飼い主から褒められたり、注目
を浴びていると、うれしそうで、無視されると辛そうにします。
女性を好むという傾向も見られるはずです。


 タイプ6の犬は、飼い主に何かをねだる時は、知能犯的なこと
をしでかします。留守番を嫌がり、後追いしたり、悲しそうなし
ぐさをするかもしれません。一家の主を認識でき、その主には忠
実で男性を好むという傾向も見えます。遊びたがりですが、しつ
っこくはなく、適度に付き合えます。愛玩犬に適しているためか、
タイプ6は意外とよく見かけます。


 タイプ9の犬もちょっと寂しがりますが、あきらめが早く、居
眠りの多い、おとなしいペットに感じられるでしょう。少し遊べ
ば喜びますが、あまり構われることも嫌がり、一番、聞き分けの
よい素直なところが見えます。飼い主を遠目に見て、安心して寝
そべっているかもしれません。               

   

  
・防御タイプ(7・1・4)          
 この3つのタイプの犬は、飼い主や家族にしかなつかず、気を
緩めず警戒心をしっかりと働かせています。神経質で怖がりなの
で、物音や匂いに敏感で、すばしこいでしょう。見知らぬ人が近
づくと盛んに吼えたり、すばやく身を隠します。体が小刻みに震
えていたり、人が遠く離れるまで、吼え続ける傾向があります。

 

 
タイプ7の犬は、警戒心が強く、ずっと動き回り吼えつづける
かもしれません。また、散歩に出たがり、要求が多く、知能犯的
なことをします。超寂しがり屋で、甘え上手で、飼い主にとって
は世話のかかる犬ですが、かわいらしさもひとしおになるかもし
れません。
 外出好きな犬ゆえ、散歩は欠かせないでしょう。飼い主が出か
けて自分だけ留守番になると不満が溜まり、何かイタズラをする
かもしれません。また、女性を好む傾向もはっきりと見え、かな
り甘えますが、慕いますから、愛らしさもひとしおになるかもし
れません。なお、このタイプの犬は大変に多そうです。愛玩犬に
適しているからかもしれません。 

 タイプ1の犬は、やはり礼儀正しくきれい好きで、躾けをしや
すい傾向があります。飼い主に忠実で、男性を好み、男の主の言
うことによく従います。しかし、怖がりなので、しばしば吠え立
てます。


 タイプ4の犬は、運動や散歩をしたがらない犬もいます。家族
にしかなつかず、その中でも、いつも世話をする人物にしか安心
して身を任せません。道路に面した人通りの多い箇所では神経質
となり、吼え続けることがあり、裏庭の隠れ家のようなところを
好む傾向
があります。 飼い主を手放したがらず、ベッタリと甘
えるので愛玩犬に向いています。このタイプも結構、よく見かけ
ます。

     
 なお、以下のホームページにタイプ7w8(ウイングは軽い)の
犬が紹介されています。ムックという名前の犬ですが、もう一匹の
ケビンという名の犬は、タイプ2w1と判定できます。犬の性格も
当然のことながらウイングまで判定できます。一度、読んで確認し
て頂きたいと思います。

  
「ムックとともに」かわもと文庫

      
http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/mukku00.htm  

 また、最近になってアップした「タイプ判定室」には、ペットの
タイプ判定もしています。知りたい方はご連絡ください。但し、タ
イプ判定については全て有料となり、ペットについても同様に扱っ
ています。 

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☆このページの参考図書
「進化から見たヒトの行動」ティモシーHゴールドスミス講談社
「生命科学が分かる」AERAMOOK NO15  朝日新聞社  
「動物たちの戦略」日高敏隆            読売新聞社  
「動物たちの心の世界」マリアンSドーキンズ    青土社    
「なぜカエルからヒトが生まれないのか」若原正己  リヨン社
「生命のストラテジー」松原謙一・中村桂子     岩波書店   
「動物の行動と心理学」藤田統編著         教育出版   
「知識・知能と情報」柄橋秀一編著         近代科学社  
「脳と神経の科学」小林繁他          オーム社出版局
「徳の起源」マッドリドリー            翔泳社