特集シリーズ                                        

     9タイプのエネルギーの向け方 

                     
1 外向型と内向型

 私たちは、よく「あの人は内向的なタイプだから、自分を見せ
ない」とか、「彼は外向的な性格で社交性がある」などと語るこ
とがあります。               
 この「内向」と「外向」という言葉は、心理学者カール・グス
タフ・ユングが唱えた性格分類法から来ています。今日では日常
的に何気なく使われる言葉です。が、ユングの意味した「外向型」
「内向型」とは違って来ています。   
 ユング学者によると「自分の外にあるものに価値を見て、そち
らに心のエネルギーを向かわせる人を外向的な人といい、逆に、
外には向けず、関心が自分の内界に向かう人を内向的な人」とす
る考え方です。 この学者はある雑誌に、簡単な説明をしています
が、ユング自身が論じているものはかなり難解なものです。

  
ユングの考え出した8つのタイプ 
                        
 外向的なタイプ         内向的なタイプ       
 (自分→意識の方向→対象)  (自分←意識の方向←対象)
    外向型感情タイプ      内向型感情タイプ  
    外向型思考タイプ      内向型思考タイプ   
    外向型直観タイプ      内向型直観タイプ   
    外向型感覚タイプ      内向型感覚タイプ
  

                      
2 エニアグラム性格学の外向型と内向型  
                   
 ところで、この「外向型・内向型」という表現を、エニアグラム
性格学として採用してみたところ、性格を知るうえで、非常に分か
りやすくなる概念と分かりました。しかし、ユングの唱えた内容と
は全く異なります。その点で誤解のないようにしてください。 
              
 まず、エニアグラム性格学では、外向型を「自分や世界との関わ
り方において、そのエネルギーを外に向ける傾向が強いタイプ」と
考えます。また、内向型を「自分や世界との関わり方において、そ
のエネルギーを内に向ける傾向が強いタイプ」と考えます。
 最後に、「エネルギーを外にも内にも向けるため、どちらが強い
とは言えないタイプ」の三つに分けます。 
                            
 さらに、三つのグループごとに、特長的な性格傾向があります。
それはエニアグラム性格学の解く「自我の座理論」から来る特長で
す。
 つまり、脳内にある「自我の座」の違いによって、おおまかに三
つのグループに分けられますが、それは「行動タイプ・感情タイプ
・思考タイプ」です。少し説明すると、「行動タイプ」は基底脳
(大脳辺縁系)に自我の座があるために、本能的な行動力のあるタ
イプです。
 「感情タイプ」は右脳に自我の座があるために、右脳機能が発
達して、感情的になりやすいタイプです。
  最後に、「思考タイプ」は左脳に自我の座があるために、左脳機
能が発達して、積み上げ型の思考をしやすいタイプです。性格の特
長は、脳内に「自我の座」があるため、ある機能が発達しますが、
その機能のエネルギーの向け方に、方向性があると考えられます。
 そこで、九つの性格をその観点から、以下に分類しています。
                         
 
・行動タイプ              
     タイプ8 外向型行動タイプ   
     タイプ1 内向型行動タイプ       
     タイプ9 両向型行動タイプ       
 ・感情タイプ             
     タイプ2 外向型感情タイプ    
     タイプ4 内向型感情タイプ   
     タイプ3 両向型感情タイプ     
 ・思考タイプ             
     タイプ5 外向型思考タイプ     
     タイプ7 内向型思考タイプ      
     タイプ6 両向型思考タイプ
        
  

 
3 行動タイプのエネルギーの向け方      

                          
【タイプ8】外向型行動タイプ
         (自分  行動のエネルギー  対象)

          
 タイプ8は行動を起こす機能が発達しています。それは本能的
な働きであり、主にアクセル機能が強いことを指しています。タ
イプ8はアクセル機能が強く、ブレーキ機能が弱い傾向がありま
す。従って、パワフルで行動力がありますが、ブレーキ機能(制
御機能)が足りないために、人とぶつかることが多くなります。
また、勝たねばならないという思いが強いので、勝つまでストッ
プがかかりにくい傾向があります。
 

【タイプ1】内向型行動タイプ
         (自分  行動のエネルギー ← 対象) 

         
 タイプ1は行動をセーブする機能が発達しています。それは本
能的な働きであり、主にブレーキ機能が強いことを指しています。
タイプ1はブレーキ機能が強く、アクセル機能が弱い傾向があり
ます。 従って、自分を強く律しており、強く制御するために緊
張しやすくなります。また、何事も間違えてはならないという思
いが強いので、見られている自分を意識して常に正しい行動を取
ろうとする傾向があります。


【タイプ9】両向型行動タイプ
         (自分 
 行動のエネルギー  対象) 
                         
 タイプ9は行動を起こすアクセル機能と、セーブする機能が同
じように発達しています。しかし、タイプ8よりはアクセル機能
は発達しておらず、タイプ1よりブレーキ機能が発達していませ
ん。従って、どちらの機能も適度ですから、バランスがよく、状
況に合わせて行動できます。しかし、危険時はアクセルもブレー
キも強く踏むため行動が起こせず、立ち往生します。
 一方、平穏時は、どちらも踏まないために、省エネルギーで済
みますが、腰が重く、怠惰となりやすい傾向があります。

  
4 感情タイプのエネルギーの向け方

【タイプ2】外向型感情タイプ
         (自分  感情のエネルギー  対象)
 
      
 タイプ2は肯定的な感情が発達しており、その感情を周囲に発
散させます。それは「喜悦・満足・快感」などの神経ニューロン
が発達していることで、明るく陽気です。また、ナチュラルハイ
状態になりやすく、すぐに自己満足に浸れる傾向があります。
 それゆえ、うぬぼれが強く、ポジティブになりやすい傾向もあ
ります。しかし、否定的な感情である「苦悩・悲哀・恐れ」など
の神経ニューロンが発達していません。物事が悪い方向に進むと
は考えにくいために、慎重さが足りず、軽率でアバウトになりや
すく、自分には問題はないと考える傾向があります。また、自分
を善い人間と思いたいので、人を助けたり救う自分に満足します。
              
                
【タイプ4】内向型感情タイプ
         (自分  感情のエネルギー  対象)  

    
 タイプ4は否定的な感情が発達しており、その感情を自分の内
に押し込めます。それは「苦悩・悲哀・恐れ」等の神経ニューロ
ンが発達していることで、落ち込んだり、自己嫌悪して、うつ的
になりやすい傾向があります。また、肯定的な感情である「喜悦
・満足・快感」などの神経ニューロンが発達していません。また
自分への肯定感が少なく、自分とは何者なのかと、自分に固執し
ます。そして、不幸な人への共感能力が高い傾向があります。一
方、楽しみ方がへたで、自己満足しにくく、幸福な人をうらやみ、
避ける傾向もあります。
                             
【タイプ3】両向型感情タイプ
         (自分  感情のエネルギー  対象)

                      

 タイプ3は肯定的な感情と、否定的な感情がともに発達していま
す。しかし、タイプ2よりは肯定的感情が発達しておらず、タイ
プ4よりは否定的な感情が発達していません。
 従って、どちらの感情も適度に発達しているため、感情的には見
えません。しかし、感情の揺れ動きが多く、ある時、満足感に浸っ
ていると、少しの状況の変化で落ち込みます。しかし、落ち込んで
も励まされたり褒められると、すぐに浮上して、元気を取り戻すこ
とができます。つまり、状況によって、気分が変化しやすい傾向が
あります。また、注目されたいという思いが強いので、注目される
と元気となり、無視されると落ち込み、お天気屋となる傾向があり
ます。


5
 思考タイプのエネルギーの向け方

【タイプ5】外向型思考タイプ
         (自分  思考のエネルギー  対象)
 
         
 タイプ5は思考が発達しています。思考とは大まかに分けると
「点」と「線」で構成されており、点は「記憶」を意味し、線とは
「記憶を繋ぐもの」です。タイプ5は記憶力が弱く、記憶を繋ぐ線
の機能が強い傾向があります。また、外界にある現象をすべて知ら
ねばならないという思いがあります。それゆえ、現象を解明したり、
熟慮して究めようとします。対象を客観的に把握して、事実をより
多く知りたがります。しかし、すべてを記憶することは不可能で不
得意です。また、不正確にもなります。そのため情報収集に執念を
燃やし、些細なことも書き留め、書籍類や辞典類を集めたり、確保
したがります。 
                  

【タイプ7】内向型思考タイプ
         (自分 ← 思考のエネルギー  対象) 
 
        
 タイプ7は思考が発達していますが、とくに「点」の機能が発達
していますから、記憶力が高い傾向があります。しかし、点を繋ぐ
機能が弱いので、熟慮できにくく、究める力が弱い傾向があります。
またタイプ7は人生を楽しみ、苦難は避けたいという思いがありま
す。従って、情報収集に熱心で、難なく記憶できる傾向があり、そ
の記憶力を役立てて、辛いことは避け、より多く楽しもうとします。
それゆえ、考え方に一貫性がなく、軽率になりやすい傾向がありま
す。  
                       

【タイプ6】両向型思考タイプ
         (自分  思考のエネルギー 
 対象)
                          
 タイプ6は思考が発達していますが、タイプ5ほど「線の機能」
が発達しておらず、タイプ7ほど「点の機能」が発達していません。
どちらの機能も適度であるため、状況に合わせて考え方を変えるこ
とができ、柔軟です。
 また、危険が近づくと、敵や状況を混乱させねばならないという
思いが強くあります。周囲を混乱に陥れて、自分を守るタイプです
が、しかし、自分も同時に混乱して、パニックに陥ります。従って、
どちらの機能も適度にあるため、不安の材料を思い出し、かつ、不
安を突き詰めたり、さまざまな方面に展開してしまいます。
 なお、タイプ6は強い権威の傘の下で、安全を確保しようとする
傾向があり、男集団に意識が向いています。それは不安感が強いた
め、頼りになる人間に取り囲まれると安心できます。また、元々に
策の多い性格ですが、それもこの機能に起因しています。 

 
6 特長が著しいタイプと、特長が著しくないタイプ  
              
 タイプ3とタイプ6とタイプ9は、両向型タイプですから、特長
が著しくありません。この3つのタイプは別名を「調和タイプ」と
言います。調和タイプは人々や状況の変化に合わせる性格です。
 人や状況に合わせるために、自分の考え方が定まりにくく、主体
性が少なく見えます。ゴーイング・マイウェイができにくい性格で
す。 
                     
 他の6つのタイプは、エネルギーを一定の方向に強く向ける傾向
がありますから、その言動ははっきりとしています。協調性は少な
く、我が道を行きやすいタイプです。それゆえ、「主体性が強い」
性格に見えています。しかし、詳しく見ると、攻撃3タイプが「最
も主体性が強い」性格に見えます。そして、防御3タイプは「客体
性が強い」性格に見えます。

     

攻撃タイプ(8・2・5)  a  主体的に見える
                          b  自分と仲間を防衛
                          c  エネルギーが外向き
                          d  外向型タイプ(内→外)

調和タイプ(3・6・9) a 多勢や周囲に従がう
             b 衆にまぎれて自分を守る
             c エネルギーが外と内向き
             d 両向型タイプ(内⇔外)

防御タイプ(7・1・4) a 客体的に見える
             b 日頃から自己防衛心が強い
             c エネルギーは内向き
             d 内向型タイプ(内←外)


 六つのタイプは、わが道を進みやすく、協調性が足りず、人の動向に
気が付きにくい傾向があります。そのために敵を作りやすく、人々から
離反されたり、浮き上がったり、集団行動がとれにくい傾向もあります。
                                    
 一方、調和タイプは、人に合わせすぎて、主体性を持ちにくく、その言
動は分かりにくく、どのような性格なのか理解できにくい傾向があります。
しかし、調和タイプは、敵を作りにくく、人々の絆を繋ぎとめ、調停者の
役割をすることがあります。

     
タイプ3・タイプ6・タイプ9 
    ・世界を見る自分と、世界から見られている自分(自分⇔世界)
    ・社会や人々がOKというなら、自分もOKと言える
    ・自分にも関心が強く、周囲にいる人々にも関心が強い
    ・協調性があり、常識的
    ・優柔不断で、八方美人になりやすい
    


7 内向と外向の意味について
                         
 一般的な使い方として「内向的な人」とは、おとなしく静かで落ち着い
た性格の人を指しています。「外向的な人」は社交的で明るく、はっきり
と自分の意見を主張する性格を指しています。 
 その使い方ではタイプ5は「内向的」で、タイプ7は「外向的」になるで
しょう。しかし、エニアグラム性格学の解く概念はそれとも全く異なるも
のですから、混同しないでください。
                                  
 タイプ5は「世界の中心にいると自己認識するタイプ」ですから、自分
のことは自分でOKと言えます。自分には問題がなく、自分の心配をし
ないことが多い性格です。ですから、自分に対する関心が薄いと解析
しています。

 一方、タイプ5とよく間違えるタイプ4は、「世界の淵にいると自己認識
するタイプ」です。従って、存在の不安があるため、自分の心配、自分
自身に関わることに関心が向きます。また、自分に対して自分でOKと
言えません。自意識過剰と思われるほど、自分のことばかり考える傾
向があります。

 タイプ5の関心は主に外に向けられ、タイプ4の関心は主に自分に向
けられています。同様に、存在の不安のあるタイプ7も、関心は主に自
分に向けられていると考えられます。
    
 
タイプ8・タイプ2・タイプ5          
  ・世界を見る自分    (自分→世界) 
  ・自分に対して自分でOKできる         
  ・自分自身に関心が薄く、社会や人々に関心が高い  
  ・開拓精神高く、優位性を保ちたがるが、ゼネラリスト的
  ・自己中心的で、傲慢で横柄になりやすい

 タイプ7・タイプ1・タイプ4                
  ・世界から見られる自分 (自分←世界)     
  ・自分に対して自分でOKと言えない  
  ・自分自身に関心が強く、社会や人々から
    攻撃されたり監視される恐怖心 
  ・視野が狭いが、スペシャリスト的
  ・自分勝手で、自意識過剰になりやすい 


          
 さて、エニアグラム性格学の解く九つの性格を知ると、それをエニアグ
ラム図の中できれいに、整合的に配置できます。
 どうやら、エニアグラムが人の心をうまく説明できる図形であると、あな
た自身、驚きの目を向けて、実感し出したところではないでしょうか。