上級者用エニアグラム理論              

  ( 改定版)2007/11/19

  あなたは自分の特長を知っているか?


1 「強くて優しい人」は、理想の人 

  性格とはいろいろな性質を、アトランダムに無作為に寄せ集
めたものではありません。あなたには、そうなる必然性があっ
たのです。ですから、「私はタイプ1の正直さと、タイプ8の
大胆さがあるから、この二つが合わさった性格です」とあなた
が主張しても、有り得ないと返答するでしょう。 
  
 例えば、「強くて、やさしい」性格の人は、「理想の人」で
、たぶん有り得ないだろうと見ています。得ないと見ています。
「強い人は傲慢になりやすい」と見ており、「やさしい人は、
頼りにできにくい」のではないでしょうか。 

 「力強い人」が「やさしさ」を獲得するのはかなり難しいと
考えられます。また、「やさしい人」が「力強い」を獲得する
のも、無論、難しいことと考えます。しかしながら、「力強い
人」に「やさしい」という性質が全く無いのではありません。
「やさしさ」があっても、それが「力強さ」と均衡できないの
です。オモリをつけて計ったら、いつも「力強い」が重いので
全ての行動がそれに引きずられます。

 同じことですが、「やさしい人」に「力強い」という性質は、
多少の違いはありますが、やはり備わっています。しかし、オ
モリをつけて計ると、「やさしさ」の方が重く、ここぞ! と
いう大切な時にも、「力強い」がなかなか出て来ないのです。

 例えば、「彼はすごくやさしいの。だから、結婚することに
しました」とある女性が言いました。しかし、結婚して数年経
つと、「彼って、やさしいだけ! の人なのよ‥」  

 人間は誰もが、ある性質が強くて、ある性質が弱いようで、
それが特長となっており、個性でもあります。または、ある強
い性質がその人の行動を牽引する原動力になっているために、
別の弱い性質が隠れて見えないと考えられます。  
 つまり、エニアグラムの9つの気質とは、その牽引車が9種
類あるために、9つのタイプがあると考えるものです。


2 あなたの牽引車は何ですか

  では、あなたの全ての言動を、一番大きな力で引っ張っている
ものがあるとしたら、あなた自身、それを自覚できますか? こ
れまでの人生を振り返ってください。すると何か胸の奥で思い当
たるものがあるでしょう。これは本能的な行動ゆえに、本人には
分からず、他人の方が意識しているようで、客観的にならないと
わからないことのようです。 


 
・ 自分は力強い人間である
 ・ 自分は善い人間である
 ・ 自分は賢い人間である
 ・ 自分は目立つ有能な人間である
 ・ 自分は役に立つ誠実な人間である
 ・ 自分は誰ともうまくつきあえる人間である
 ・ 自分は堅実な正しいことをする
 ・ 自分は明るく楽しいことをする
 ・ 自分は自分らしいことをする

  まず、「自分は力強い人間である」が気質の中で一番重くて、
それが全ての行動の牽引車になっている気質を、エニアグラムで
【タイプ8】と呼んでいます。またの名は「おとうさん気質」
です。子どもの頃から我が強く指図されることを嫌がり、他人を
指図したがるタイプです。

 例えば、タイプ8の人が小学校2年生の男子だとして、弟が1
年生で、誰かに苛められたとします。そんな時、タイプ8の子は
「俺は力強い人間である」という気質が、グンと前面に出て来ま
す。弟をいじめる子には容赦せず、必ず見つけ出して相手を傷め
つけずにはいられないでしょう。

 しかし、そんな子でも、何事もなく平穏で、両親も担任教師も
やさしく命令的ではないとすると、そのような攻撃的な気質は、
奥の方に隠れて見えないと考えねばなりません。
 しかし、例えば、担任教師が理由も聴かないままに、人を傷つ
けたと、強く叱責したら、激しく食ってかかる可能性があります。
 
 次に、「自分は善い人間である」が性格の中で一番重く、それ
が全ての行動の牽引車になっている気質を、エニアグラムでは
【タイプ2】
と呼んでいます。またの名は「おかあさん気質」で
す。
 しかし、ボクシングで試合をしているときに、タイプ2の人が
善い人間でいようとするでしょうか。その時は「力強くありたい」
という性質がグンと外に出てくると考えねばなりません。

 仮に、タイプ8とタイプ2の子どもが、オモチャのとりあいを
して、ケンカになったとしましょう。タイプ8は絶対に勝ちたい
ので、全力で戦います。勿論、タイプ2も同じように力一杯に戦
うでしょう。しかし、タイプ8の方が体が小さくて年下だとする
と、タイプ2に勝つのは容易なことではありません。

 そんな時でも、タイプ8は絶対に力強い人間でなければならな
いので、なかなかへこたれず、ギブアップしないと予想します。
もし、近くに石コロがあったら、思わず、石で相手の頭をブチの
めすかもしれません。

 一方、年上のタイプ2の子どもは、石で頭を打たれたので、腹
を立てて同じく石を使うかもしれません。しかし、タイプ2の子
どもが冷静で落ち着いていたなら、年下の子どもに石を使うのは、
「善い人間ではない」行為なので、腹を立てつつも、反撃しない
可能性もあります。どちらになるかは、そのタイプ2の子の精神
状態によります。または、普段の相手との関係が良いか悪いかに
よって、反撃するか停戦となると、それぞれに異なるでしょう。 

 そして、この逆の場合、つまりタイプ8が年上で、年下の子に
石で頭を打たれたとすると、それよりも大きな石でその子の頭を、
より強く打つ可能性があります。
 タイプ8には「自分は善い人間である」という性質が少ないた
め、強い自分が、年下の子から傷を受けるなどは、ダメージが大
きいものなので、けっして許せるものではありません。強い人間
であるべき自分が、年下の子どもに油断して、石をぶつけられた
のですから、怒り方も強く、容赦することはないと考えられます。

 
タイプ8にとっては、年下だから許せないのであり、タイプ2
にとっては、年下だから許そうかなあ!という気持ちなりやすい
と言えます。従って、迷いが起きるのがタイプ2であり、迷わず
反撃するのがタイプ8です。
 つまり、タイプ8の牽引車は「自分は強い人間である」、タイ
プ2の牽引車は「自分は善い人間である」ために、こうした分析
ができるのです。なお、ここでは、この二つのタイプの説明しか
していません。

3 自分の主要な性質はなかなか発見できない

 
ここに上げた、9つの牽引車は、全ての人間が持つものです。
しかし、この性質を均等に持っているのではありません。誰もが
9つの動機を均等に持っていたとしたら、人間はみな同じ性格に
なってしまいます。 
           
 ところで、エニアグラムの本を読み、チェック表で診断しても、
自分のタイプを正しく探し出せない人があまりにも多いのです。
その理由として考えられるのは、「誰もがこの
つの牽引車を全
て持つためだ」と考えると納得できるでしょう。しかし、本能で
していることは、本人にとって当たり前のことゆえ、客観的にわ
かることが難しいようです。

 例えば、タイプ8が勝ち負けが問題になっているのではないの
に、それだけに関心があることが、他人からはしっかりと見えま
す。しかし、タイプ8本人にとって、それを「勝ち負けに関する
問題だ」と捉えるのは自然なことで、そのように取らない人の方
がおかしく見えるのです。

 従って、「私だけが勝ち負けにこだわっているのではありませ
ん。こうした場合、誰もが勝ちたいと思ってますよ!」という可
能性が高いのです。全ての人が「自分にとっては当たり前」なこ
とが、「相手にとっては不可解」なことになっていると知りませ
ん。

もう一つ例を上げます。タイプ5の人が争いの真の原因を知り
たいと思いました。事実関係を洗い出して、原因を探ろうとしま
すが、タイプ9の人が「原因を探るのは止そう」と言い出しまし
た。タイプ9は「周囲の誰ともうまくつきあえる人間である」こ
とが、主要な牽引車です。

 従って、誰にも嫌われず穏やかに暮らしたがり、「事実を知る
と、これまで通りに付き合えないかもしれないので、探るのは止
そう!」と主張するかもしれません。白黒をはっきりさせるので
はなく、グレイのままにして、静観して、時間が経つのを待つの
をごく自然に選び取ってしまう気質だからです。

 しかし、タイプ5は「自分は賢い人間である」が牽引していま
すから事実を正確に知ることが最も大切なことです。タイプ5に
とって、人間関係を円滑にすることは、二の次になる傾向があり
ます。

4 あなたの中にある「ねばならない」こと

  なお、前のところでは、タイプ8を「自分は力強い人間である」
と書いていますが、別の表現をするなら、「勝たねばならない」
という「ネバ人間」だとも言えます。それゆえ、これを「9つの
ネバ人間がある」として紹介することがあります。

  あなたの中にある「ネバ人間」

勝たねばならない            …【タイプ8】   
助けねばならない            …【タイプ2】   
知らねばならない            …【タイプ5】   
目立たねばならない           …【タイプ3】   
役立たねばならない(絆を築かねばならない)…【タイプ6】   
合わせねばならない           …【タイプ9】   
楽しまねばならない           …【タイプ7】   
正しくあらねばならない         …【タイプ1】   
自分自身であらねばならない       …【タイプ4】

  前のところで、タイプ8とタイプ2の子どものケンカを例に
上げています。同じ例を使って説明すると、タイプ8は「誰より
も強くなり、勝たねばならない」ので、年下であろうと年上であ
ろうと容赦なく攻撃していく傾向があります。
 もし、相手が格段に強く、酷く痛めつけられたとすると、闇討
ちでさえも考え出して、復讐をとげようとするでしょう。エニア
グラム性格学では、タイプ8を「勝つためには手段を選ばない性
格」と分析しています。

 一方、タイプ2は、「助けねばならない」ので、年下で体の小
さい弱そう子を攻撃するのは、なぜか気が進まず、ひるんでしま
う傾向があります。しかし、ケンカ相手が年上で強いとなると、
そんな気持ちは起きませんから、相手が石を使うなら、「目には
目を!」と考えて、自分も石を使うかもしれません。しかし、自
分が最初に石を使うのは、躊躇してなかなかにできないかもしれ
ません。むろん使う子もいるでしょう。躊躇しやすいのは、つま
りは「善い人間」ではなくなる恐れがあるからです。しかし、こ
れは一回戦のときであり、前回のケンカで相手が汚い手を使った
ら、タイプ2でも躊躇しないで石を使うと考えねばなりません。




5  自分の無自覚的な行動を知っていますか

 上記の《あなたの中にある「ネバ人間」》を「9つの根源にある
行動プログラム」
と呼ぶこともあります。全ての行動の根源に
あるため無自覚的になりやすく、本能的にしてしまうことだから
です。つまりは、あなたの行動を支配している「牽引車」のよう
なものとも言えます。
 

タイプ1は「正しくあらねばならない」という特長があります。
権威者の指示通りにして、間違わないようにせねばなりません。
規則正しい健康的な生活を送り、日程を予定表にしっかりと書
き込んで、予定通りに事が進むと安心します。従って、その日
に何をすべきか、全く分からない状態に置かれると苛立ち落ち
着けないかもしれません。

タイプ2の「助けねばならない」という特長があります。例え
ば、電車の中でお腹を抱えてしゃがむ人に気づいたら、いち早く
発見したり駆け寄ります。それは「助けたい」という自覚がある
のではなく、無自覚的な行動です。気がついたら、体反応として
助ける行動を起こしてしまうのです。もし、窮地にいる人を助け
ず、そこから逃げ出したら苛立ち落ち着けないかもしれません。
                         
タイプ3は「目立たねばならない」という特長があります。自分
より目立つ人が傍にいると、自然な体反応として、その人物を避
けています。また、何かあると、つい目立つ行動を取ってしまう
のであり、後から何と大胆な行動をしたのだうと驚いているかも
しれません。多くの人たちに注目されると、幸せな気分に浸れま
す。

タイプ4は「自分自身であらねばならない」という特長がありま
す。自分を見失いやすく、「自己同一性を確立していない」と見
られることがあります。自分には心がないかもとか、自分が何者
なのかわからないという不安に襲われることがあります。自分自
身に確信が持てません。ついつい自分と向き合い、自問自答して
しまう傾向があります。自意識過剰に見られやすいところかもし
れません。
    
タイプ5は「知らねばならない」という特長があります。情報を
得られないことが最も恐いことのようです。人の噂などには惑わ
されず、自分で情報収集しようと必死に駆けずり回るかもしれま
せん。病気にでもなると、それに関する情報を捜し回り、熱があ
っても書籍類などを手放したがらないかもしれません。
              
タイプ6は「役立たねばならない」という特長があります。家族
や仲間たちの顔色をよく観察しており、心配したり手伝うなども
よくします。仲間のために連絡係をしたがります。それはまさに
「絆を築かねばならない」という囚われをもっているかのようで、
いつも周囲にいる人たちの言動を見て翻弄されるが、相手をも翻
弄しているかもしれません。
              
タイプ7は「楽しまねばならない」という特長があります。辛く
て苦しいことは考えないようにして、快楽だけを追いかけたがり
ます。しかし、どんなに頑張っても、やりたくないこと辛いこと
ぱかりに見え、つまらない、退屈だと不満ばかり訴えているかも
しれません。
              
タイプ8は誰よりも強い人間になりたいので、「勝たねばならな
い!」という特長があります。タイプ8にとっては危険な世の中
ですから、いつも身構えて警戒しています。常日頃から強い人間
に思われるように、目を光らせて、余裕綽々とした態度を取って
います。誰からも後ろ指を指されないように、一応は礼儀を守り、
決まりも守っているかもしれません。
       
タイプ9は「合わせねばならない」という特長があります。無自
覚的に相手に合わせてしまう傾向があり、体反応として、ウンウ
ンとうなづいて、相手の話を聞き、かつ受け入れてしまうのです。
その場だけ合わせていることもあり、敵を作らず、疎外もされに
くく、うまく行動できていると言えるかもしれません。



  エニアグラムの9つのタイプを知ると、「理想の人」はいない
と感じるのではないでしょうか。たとえば、タイプ9は、人柄が
良いと思われるようですが、他のタイプ同様に短所があります。
ズルイところや計算高いところもあります。

 また、以前は優等生気質(714)の人たちに、「純心」とか
「純粋などと紹介したことがありますが、現在はそのように説明
することはありません。やはりズルイところや計算高いところが
あるからです。
 みな生きていくことは大変なことのようです。清い心もあるが
汚い心もある、それが人間というものではないでしょうか。他人
がどうあろうと、「自分だけは後悔しない生き方をするしかない」
と思うのですが、あなたはどう思われますか


 さて、「自分の特長」、あるいは「牽引車」を見つけ出すこと
ができたでしょうか。エニアグラムの解く「9つの特長」は、あ
なたの本能的な行動様式を示しています。あなたが自分を深く知
るようになれば、いずれ発見できるでしょう。