上級者用エニアグラム理論                    

     
   タイプ4・自分らしくにこだわる人たち


「自分らしく生きたい」と、人はよくつぶやきます。では「自分
らしく」とは、何を指しているのかと尋ねると、多くの人たちは
「本当には、分からない」と言うのではないでしょうか。自
分がどんな人間なのか分からなかったら、自分らしく生きること
など不可能なのに、おかしな言い回しです。

 しかし、逆もまた真なりで、人は誰もみな自分らしく生きてい
るのではないでしょうか。全ての人たちが、自分らしい振る舞い
方をしているのであり、自分らしい言動をしています。それだか
らこそ、タイプ判定ができるのですからね。エニアグラムで見た
ら、終生同じタイプで、タイプが変わることもありません。

 もしも、その人らしくない言動をしたならば、その時のタイプ
判定では違うタイプになってしまうでしょう。しかし、そういう
ことは有り得ません。他のタイプに見えることも全然有りません。
たとえば、「子どもの頃、自分はタイプ9だった」などと言う方
はいますが、他人からは、そのように見えていないことを知らな
いだけなのです。勝手に自分の性格をそのように解釈しているに
過ぎません。

 他のタイプの生き方や振る舞い方を深く知るようになると、ま
るで自分とは違うと分かるのですが。また、他のタイプを知れば
知るほど漸くにして、自分は、いつも自分らしく生きていたのだ
なあと分かるのですが……。

   

1 自分らしく生きるとは……

 たとえば、自分をうまく表現できないのも、その人らしい振舞い
方です。つい我慢したり抑圧するタイプは、つい手が出てしまうの
でなく、我慢したり抑圧するのがその人らしい自己表現です。(こ
れはタイプ1・9などが持つ傾向)

 一方、つい手が出るタイプは、我慢しにくいのでそうなるのであ
り、我慢を強いられると「自分らしくない」と思ったりします。(こ
れに近いのは、タイプ2w1・7w8・タイプ8などが持つ傾向)

 ただ黙り込んでしまうだけの人は、その場をうまくごまかすとい
う発想が無いのです。(タイプ4・5・9によくある傾向)
 ついその場をうまくごまかしてしまう人は、そのごまかし方の中
に、その人らしさが出ています。(タイプ2w1・4w3・6w7
・7w6などにある傾向)
 おしゃべりな人も、「黙ってなさい!」と命じられて、少し黙っ
ているだけなのに、「自分らしくない!」と言い出すのです。(1w
2・2w1・6w7・7w6などによくある傾向)

 もしも、私たちの知っている或る人物が、次にどんな振る舞い方
をするのか、全く予想できないとしたら、どんなにか狼狽するでし
ょう。私たちは、大方の予想がつくので、安心して、人と付き合う
ことができるのではないでしょうか。たまに予想が外れるので、意
外だと驚くくらいですからね。そして、意外だと思うことはよくあ
るかも知れませんが、心の動き方を理解できるようになれば、意外
なことは一つも無いと分かるでしょう。



2 幸福な人は自分らしく生きている

 
一般的に言う「自分らしくない」とは、自分を素直に表現できな
い、出せないだけでなく、自分を抑圧しているなどがあると、「自分
らしくない」などと言うのかもしれません。また、理不尽な目に遭う
とか、強圧的に命じられて従うしかないと、「自分らしく生きられな
い」と言ったりします。

 あるいは、返答しないで曖昧にごまかすしかないと思って、自分
を素直に表現していない場合に、そんな言い方をするのではないで
しょうか。そして、自分の意のままにならないと、「自分らしくい
られなかった」とボヤくのです。

 そうなると、一般的に言われる「自分らしい」とは、上記と意味
が逆になるでしょう。自分を素直に表現できて、抑圧もされず、正
直な自分を出せて、誰からも命じられることなく、ありのままに自
分が受け入れられることです。誰からも縛られず、自分の思い通り
に出来て、曖昧さはなく、いつもクリアであり、周囲からよく理解
されるなどになるでしょうか。

 それは、とても幸福な状態にいる人たちのことで、どのタイプで
も幸福で満ち足りていれば、自分らしくいられるのではと思います。
つまり、「自分らしくない」とは、ただのボヤキかグチ、また不満
を吐くときの「お定まりのセリフ」の類と考えてもよいでしょう。


3 主体性が無いようにみえる

 
上記のような「自分らしさ」というものは、どのタイプの人でも、
同じように感じているものです。しかし、なぜかタイプ4に著しい
ものがあります。

 たとえば、タイプ4の人たちに多いのは、「つい従ってしまう」
「つい命じられたままにやってしまう」という傾向が顕著にありま
す。後から、「従いたくなかった」とか「やりたくなかった」と思
い出し、「理不尽だ!」と立腹したりしますが、後の祭りになって
います。この「理不尽」という言葉使いは、タイプ4がよく使う言
い回しなのですが、どうやら、従順な気質が原因なのではと考えら
れます。

 そして、立場が上の人たちに何も言えず従うというならば、理解
できますが、どうもそれだけではないみたいです。全ての人たちか
ら、「強いられている」、「従わせられている」と捉えがちです。
嫌いなことならキッパリと拒絶したり、それでもダメなら逃げ出せ
ばよいのに、それもできなかったりします。むろん、うまく逃げら
れる人もいますが。

 攻撃タイプからみたら、「それくらいのことでなぜ拒絶できない
の?」と驚いたり怪しまれるような些細なことです。そんな些細な
ことで悩んでいるなど、「おかしい」等と思われているのです。

 たとえば、クラスの中にたまらなく嫌いな子がいて、つきあいた
くないのに、どこかに行こうと誘われたら、断われず付いて行くこ
とがあります。アッシーさせられたり、利用されていると分かって
いるのに、利用されるがままになっている人もしばしばいます。夫
が怖いと震えているタイプ4の妻がいますが、そんな夫と離婚しよ
うという発想さえ思いつかない人がいます。 いろいろのエピソー
ドを知るにつけ、「主体性が無い」と感じさせられます。



4 指示を求めるタイプ

 
いじめっ子がいて、池に落ちた靴を「取ってこい」と言われて、
自分は泳げないのに、取りに行って溺れた子がいましたが、タイプ
4ではないかと予想しています。また、友人は、「やってくれない?
」と頼んでいるのに、タイプ4自身は「やれ!」と言われているよ
うに感じ、また、そのように実際受け取っていたりします。

 「親に塾に行かされた」とか、「試験を受けさせられた」「病院
に行かされた」などもあります。多くのことで、「〜された」となっ
ています。親から脅されたのかもしれませんが、脅しに乗ってしまい、
否と頑張り通せない傾向があります。たぶん、怖がりだからでしょう。
しかし、怖がりな子がどうして、命じられると、泳げないのに池に
入って行くのでしょうか? 溺れて死ぬほうが怖いはずなのに、不
可思議な行動です。

 つまり、怖い人の命令、声高に威圧的に命令されると、つい従
ってしまうというところに、タイプ4の特長があると考えられます。

 また、タイプ4は、「どうしたらよいのか」「何をしたらよいのか」
と、指示を求めに行くことも多いタイプです。尊敬している人物の言
うことは、素直に聞き入れる傾向があります。尋ねる必要がないよう
な些細なことでも、つい尋ねてしまうのです。

 問題だと思うことは、一旦尊敬すると、祭り上げてしまうくらいに
信奉してしまう傾向も持っていることです。大した人物ではないのに、
異様な持ち上げ方をするのです。ある歌手の大ファンが、コンサート
で興奮しまくって気絶してしまったようですが、どうも、タイプ4に
多そうです。異様な熱狂ぶり、絶対的な信奉をする人たちがいるので、
「カリスマ」たちが誕生するのではないでしょうか。ビートルズのジ
ョン・レノンを批判したために、タイプ4から大変な攻撃を受けた方
もいます。



5 タイプ4は、一番年下?

 
当会の理論では、タイプ4は末っ子タイプです。末っ子は一番年
下で、全ての人たちは年上になります。それゆえか周囲の人たちの
命令や指図に従いやすいという傾向は顕著にあると考えられます。
しかし、当人は従いたくないのですが、断りきれずにいて、それで
悩み疲れてしまいます。拒絶したら何されるかと不安一杯になりま
す。極端には、池に飛び込むほうを選んでしまうのです。

 また、強い命令とか強い拒絶に遭うと、それに縛られてしまう傾
向もあります。たとえば、タイプ4の夫に愛想をつかしたタイプ9
の妻は、実家に帰ってしまいましたが、実は心の中で、夫が迎えに
来てくれるのではないか期待していました。しかし、タイプ4の夫
は去っていった妻はもう取り戻せないものだと思いこんでしまった
ようです。

 次のような例もあります。妻の父親がタイプ
の婿を快く思って
いなかったので婿からの電話をガチャリと、にべも無く切ってしま
いました。しかし、この父親は婿を試していて、熱心に自分を説得
するならば、熱意や誠意があると認められると考えたようです。不
実な婿であっても許すつもりだったのです。しかし、タイプ4は一
度、拒絶されたら、二度とトライできなくなります。妻の父親を説
得するという発想に欠けるからです。

 むろん、心の中では、「相手は自分のような人間が説得しても、
聞いてくれないだろう」とか、「そこまでやる意味があるのか」、
「そんな無駄なこと面倒だ!」と自問自答しています。しかし、そ
の多くはトライする方向に行かず、めったに行動的になれません。
自分に対する言い訳ばかり考えているのです。そして、人から拒絶
されると、かなり傷つき、その傷は深くて、容易に癒えません。

 さまざまなエピソードを集めていくと、タイプ4は人間が怖いの
だとわかるでしょう。そして、人間関係では受け身で、自分で切り開
いていくことが困難になっている方が少なくありません。「来るもの
は拒まず去るものは追わず」という諺がありますが、「来るものは拒
めず、去るものは追えない」のが、タイプ4によくある珍しくもな
い傾向です。


6 他人からコントロールされる恐怖

 
むろん、全てのタイプ4がそうなのではありません。意志の力が
極端に少なく、物事を遂行するためのエネルギーが枯渇していたり、
あきらめきっている人たちが、自分の意志を使っていないという状
態にいます。
 そうなると、ほとんどのことで「仕組まれている」、「他人に操
られている」、「縛られている」となり、自分には自由がないと嘆
き苦しむようになります。自分を苦しめる人たちへの恨みとひがみ
が果てしなく続き、ボヤキとグチ、不平不満の塊になっているので
す。

 尾崎豊さんの「卒業」という歌は、まるまるとそんなタイプ4の
心理を表わしています。一度、確認してください。それで沢山の同
じタイプ4の人が共感して、ファンとなり熱狂したのではないかと
想像します。
 自分自身でいることが「風前のともし火」みたいになっていて、
いつも自分らしくないことを強いられていると感じているのです。
ついには「川辺の葦」のような儚い存在に思われ、ついには自分を
見失ってしまうのではないでしょうか。

 つまり、もともとに自分を見失いやすいがために、自分らしくい
られず、自分でいることさえも困難になると考えられます。それで、
そうはなりたくない、自分は自分であり、自分に命令できるのは自
分だけなのだと、訴えるのではないでしょうか。

 しかし、いつも自分で考え、それを少しずつでも行動に移している
タイプ4の人たちも少なくはありません。そんな前向きなタイプ4は、
ほとんどボヤキません。愚痴も言わず、不平ももらさず、とても建設
的で健全に見えます。その上慎重で丁寧で誠実で、謙虚でもあるた
め、理想的な人物に思われているはずです。



7 緊張すると優等生気質丸出し

 
タイプ4を家族に持つと、「とても従順なところがあるとは思えな
い」とよく告げられます。身近な人たちからは、どちらかというと、
頑固でマイペースで協調性のないことばかり着目されているようです。

 しかし、よく考えれば分かるはずです。慣れ親しんだ人たちに囲
まれていると、安心できるのですからね。安心できれば、言いたい
ことが言え、たとえ反対されても拒絶できるはずです。タイプ4は、
実は自分のしたいこと、好きなことだけをしていたいのです。

 仮に、それが「自分らしい」ということならば、どのタイプでも
「自分らしくない」ことを強制されています。誰もが自分のしたい
ことだけしていたいのです。

 タイプ4は、穏やかで優しい人間には、八つ当たりもします。わ
がままになり、依怙地にもなり、頑固にもなり、自分の意志を押し
通そうとします。しかし、怖くて厳しい人たちを前にすると、つい
本性が出て、優等生的な振る舞い方をしてしまいます。
 たとえば、初めて外国旅行をしたタイプ4は、現地の誰に対して
も、「イエス・サー」と返事していたようです。ある人が気付いて、
それを指摘しましたが、無自覚なまま使っていたようです。

 また、緊張すると、優等生気質が出ますから、言葉使いが丁寧と
なり、誰に対しても敬語を使ってしまう人もいます。後輩にも敬語
を使ってしまい、後から苦い思いをしたと語ってくれた人もいます。
 なお、上記のようなことは防御タイプに共通によくあることです
が、防御タイプのウイングが重い調和タイプ(3w4・6w7・9
w1)にも、このような体験はあるようです。



8 最後に
 
 
ところで、当サイトには、タイプ 4の性格分析をしているとこ
ろがたくさんあります。そのなかに、タイプ4の人たちのことを、
「自分自身であらねばならない」人たちと、述べています。その
ような「ネバ人間」であると述べているのですが、それは、自分
を見失いがちで、自分らしくいられない傾向を強く持つがゆえな
のではないでしょうか。

 それに良く似たことで、他のタイプを紹介すると、タイプ7が
楽しまねばならないのは、明るく元気に人生を楽しみたいのに、
そうはなれない傾向を強く持つからなのです。
 また、タイプ2が善い人間であらねばならないのは、善い人間
になれない自分を強く意識するからなのだと考えられます。タイ
プ8が強い人間であらねばならないのは、弱い自分をよく知って
いるからだと考えられるのです。

 タイプ4にとっても、自由になれないのは、元々にそんな自分
だからなのであり、不自由をかこつ根源的な原因は自分の中にあ
ります。自己認識の深いタイプ4の人たちならば、既に分かって
いることだとは思いますが。

 抑圧を跳ね返すのも自分であり、「命令には従えない!」と突
っぱねることができれば、強い自分になれるのです。「たとえ殺
されても君には従えない!」と拒絶できたならば、自由な自分で
いられるのではないでしょうか。命がけになりやすいタイプなの
ですから、命がけになったなら、拒絶することはそれほど困難で
はないとも考えられます。
 それができているタイプ4がいます。「自分らしく生きたい」
と、わざわざ言う必要のない意志の強いタイプ4の方も知ってい
ます。