エニアグラム上級者理論                         

(改定版 2007/11/26)
   

         プライドが高いタイプとは?


1 プライドとは?
 
        
 
「私はプライドが高いので、なかなか謝れない!」などと言う
人がいます。「あいつはプライドが高いから、安物は身につけな
いだろう!」という使われ方もよくあります。逆もあります。
「あの子はプライドがないから、あんな下品なことができる」と
か「あの人は、プライドが低いから、いじわるされても怒らない」
などです。

 さて、プライドに高い低いがあるのでしょうか? また、「プ
ライド」とは一体、何を意味しているのでしょうか? よくよく
考えてみると分からなくなってきませんか。そこで、広辞苑で調
べてみました。しかし、以下のように、調べてみても分かるよう
で分からず釈然としないままです。  
        

 
pride   誇り  自尊心  自負心  矜持(きょうじ)  
 誇り   ほこること  自慢に思うこと  得意気      
 自尊   自ら尊大にかまえること  自らたかぶること
      自重して自ら自分の品位を維持すること    
 自尊心  自尊の気持ち 自分の尊厳を意識・主張して
      他人の干渉を排除しようとする心理や態度。
 自負   自分の才能をたのみほこること  自惚れ 
 自負心  自負する心   
 矜持   自らの能力を信じてほこること  誇り
 
              
            
2 人によって違うプライド!

 そこで、いろいろな人たちに、「あなたにとって、プライドと
は何を指していますか?」と尋ねました。
 「他人にはできず、自分にしかできないことを誇る気持ちのこと
です」「自分は優秀な人間であると証明したり、自負しているこ
とではないか」「他に変えられない大切なものを持っていること
だと思う」「自分が生きている証みたいなもんだよ!」等々。 
    
 しかし、再度、もっと具体的に言って欲しいというと、答えら
れない人が圧倒的でした。何気なく使われていたり、深い意味も
なく使う人も多く、考え出すと容易に答えられることではないよ
うです。

「自分はプライドが高い!」と公言する人があります。しかし、
公言はしなくとも、自分はプライドが高い人間だと心の中で思っ
ていて、それが態度や物腰から分かる人もいます。

 プライドと言えるのか分かりませんが、「あいつは自分を優秀
な人間だと思っているに違いない!」とか、「私は、あなたたち
と身分が違うのよ!」とはっきりと言う人間がいます。そして、
そんな素振りを態度では示しても、口では「平等意識がある」な
どと語る人もいます。


3 すぐに謝るのは、プライドが低い?


 
ところで、ある人は、スポーツ部の厳しい訓練が続いて、つい
に退部してしまいました。そこで、「なんて自分はプライドがな
いのだろう」と言います。また、ある人は、他人から非難された
のに反撃できないとか、いじわるされても何も言えなかった人た
ちは、「自分はプライドが低い」と独白するようです。

 そうしたことは調和タイプ(369)と防御タイプ(714)
に多く、きつくて攻撃的な人に反撃できない自分や、自己主張が
うまくできない、言葉が出て来ない、などという悩みを持つ傾向
があります。

 一方、攻撃タイプ(825)は、「やられたらやり返す」とい
う傾向がありますから、そういう悩み方は少ないでしょう。相手
が目上の人や上司でも、怒りと腹立ちが大きく、最終的には怒り
を爆発させてしまうからです。しかし、怒りを押さえられず、我
慢強くない自分を嘆いているかもしれません。
                              
 また、攻撃タイプは、自分が過ちを侵して、相手に悪いことを
したと思っても、頭を下げられない人が多いのです。素直に謝れ
ないので、「自分はプライドが高いので、謝れない!」とか「プ
ライドが高いので妥協できない」などと言うのかもしれません。 

 ところが、防御タイプのなかには、自分の過失でもないのに、
早々と相手に謝る人たちがいます。日常的にも、すぐに何気なく
「ごめんなさい」「済みません」が口をついて出ます。

 攻撃タイプは、そんな人を目の前にすると、「すぐに謝るなん
て、なんてプライドの低い奴だ!」と心の中で考えているかもし
れません。しかし、その防御タイプからすれば、口先で謝ってい
るだけで、プライドか低いとは考えていないかもしれません。

    
4 腹を立てるのはプライドが高いから!

 
調和タイプも、防御タイプと同様に、目上には謝りやすく、目
下には謝りにくい傾向があります。しかし、攻撃タイプにとって
は、謝ることは屈辱感の強いもので、相手が目上でも目下でもな
かなか謝れません。

 防御タイプは、比較的、容易に謝るという行為ができるほうです
が、それだからといってプライドが低いとは言えません。自分に過
失がなく、理不尽にも謝ることを強要されたなら、意地を張って謝
らないこともあります。
 また、口先で謝りながらも、心の中では腹立ちが収まらず、いつ
か復讐してやると硬い決意をしているかもしれません。それは、プ
ライドが高いからこそではないでしょうか。

 自分に過失はなく、謝るつもりもなかったのに、平身低頭してし
まったことを悔やむこともあります。そんな時、自分を情けない奴
だと自嘲したり自己嫌悪をするでしょう。しかし、そのような気持
ちになるとしたら、十二分にプライドが高いのだと考えられます。
            
 そして、どこにプライドを持つのか、それがタイプによって違う
のではないでしょうか。そのために、互いに違和感を持ち、誤解す
るとも言え、プライドが高いとか低いなどと、自分勝手な判断をし
ているのです。


5 ケンカ別れの原因!

 
さて、タイプ6の男性とタイプ2の女性が付き合っています。
「この前、頼んだ物、忘れてない?」とタイプ6の男性が問います。
タイプ2の女性は「あ、忘れてた!」と返事をしました。すると、
タイプ6の男性は、「君ね、ごめんねくらい言ってもいいんじゃな
い!」、「あら、そうだった?」とタイプ2はそっけない返事で、
やっぱり謝罪の言葉はないままです。
 タイプ6は、 「君は、これまで一度として謝ったことがないね
!」ちょっと気分を損ねたらしく追求しました。すると、ムッとし
たタイプ2の女性は、「あんただって、この前、頼んだことを忘れ
たじゃない!」と、過去のことを持ち出して反撃します。

 さて、謝りなさいと強要されると、よけいに謝れなくなることは
全タイプにあります。とくに攻撃タイプは頭を下げられない傾向が
強いので、反撃に転じることがあります。むろん、すぐに謝れるタ
イプ2の女性もいますから、一様ではありません。
 ちょっとしたいさかいですが、調和タイプにとってはわりあい簡
単に謝れますが、攻撃タイプには難しく、それが原因で、ケンカ別
れしたカップルが存在するかもしれません。

 タイプ7の男性も職場の上司にはすぐに頭を下げるかもしれませ
んが、家庭内でも同じではありません。妻には謝ったことがない、
というタイプ7の男性はしばしばあるようです。相手との関係に拠
るのですから、防御タイプがすぐに「済みません」と言うものだと
思い込んだとしたら、それは大きな間違いです。


6 タイプが違うと驚くことが多い!


 タイプ1の上司が、タイプ5の男性部下が侵したミスを指摘しま
した。しかし、タイプ5の部下は、「自分のミスではない、確かめ
て」と言いました。

 タイプ1は男性を怖がる傾向があるので、男性部下に対しては注
意がしにくい気質です。それで再度、事実を確認したら、やはりそ
の部下の過失だとわかりました。そこで部下を呼んで、ミスの原因
など事実関係を調べてみたこと、部下のミスだと確認できたことを
告げました。

 タイプ5は、「あ、そうですか」と少し頭を下げたかに見えるく
らいではあったようです。タイプ1の上司からは、謝るでなく、恐
縮するでもない図太い態度の部下を見て、唖然としたと言います。

 タイプ1にとって、自分の仕事のミスを上司から指摘されたなら、
青ざめてうろたえることもあります。過失の大きさにもよりますが、
小さなミスであっても、緊張してしまう気質です。そんな人から見
たら、タイプ5は傲慢で厚顔無恥にみえてしまうでしょう。信じら
れない人間がいるとも感じるかもしれません。

 一方、タイプ5からすれば、「人間、少しくらいのミスはするも
のである」というだけで、あまり気にならないことになる可能性が
あります。もしも、上司から謝罪を求められたら、「あ、そう」と
言いつつ、「申し訳ない」と一言告げるかもしれません。謝罪しに
くそうでもなく、こともなげに謝罪するタイプ5の部下を見て、タ
イプ1の上司は再度ビックリするやもしれません。

 タイプが違うと「驚くことが多い」というのは本当のことです。
「なんで???」とか、「言葉が通じない!」と思うのではないで
しょうか。それほどの違いがあります。それは気質が違うことであ
り、価値観が違うことでもあるのですが‥‥。


7 へいこらする人のプライドとは?


 同僚たちにも嫌われないように配慮しているのか、否と言えず八
方美人に見える人がいます。
 調和タイプ(369)は、家庭外ではいい子ぶると言うべきか、
自分を抑えてしまうほうで、とかく他のタイプからは「八方美人」
に見られます。しかし、調和タイプにとっては、特に八方美人をし
ているのではなく、自然にそうなってしまうだけのことです。「み
んなに嫌われないように、みんなと適度にうまくやっていける」と
いう自分だからこそ、プライドが持てるのです。

 みんなから嫌われたり、変人に見られたり、避けられている人
を見たら、その人たちのほうが「おかしな人間」に見えているの
です。

 仕事場などで、上司や客に対して、ご機嫌取りをしているように
見えたり、自分と違う意見でも、相手にうまく調子を合わせる人が
います。「へいこらしている」ように見える人です。

 調和タイプの中にも、この「へいこらしている」と見られること
があります。しかし、他のタイプにもいます。たとえば、タイプ2
w1です。仕事で成果を上げたいので、客にペコペコして褒めちぎ
っているのです。そうすれば、購入してくれる、再度来店してくれ
ると期待しているからでしょう。

 いつもはズが高いので、同僚たちは、彼が態度が豹変する姿を見
て嫌味を感じたりします。しかし、この2w1からすれば、「お客
様は神様ゆえ、頭を下げるべきもので、それだから自分は営業成績
がよい」のであり、そこが誇れるところでもあります。頭を下げた
くはないが、ペコペコしながらも、プライドを誇示しているとも考
えられます。

 タイプ5w6は、絶対に「へいこらしない」と思われていること
でしょう。しかし、客のために車のドアをあけて、少し愛想笑いし
ていることがあります。酒席で、盃を持って回っていることがあり
ます。その姿は、日頃の様子とは違いますから、「ちょっと変」で
す。やりなれないことをしているので、挙動がおかしくて、他の人
たちから気づかれしまうのです。ズの高いと思っている人でも、と
きに腰を低くすることはあるのです。


 
8 自分を律する人はプライドが高い?

 タイプ1は恥意識が強いので、人前では恥ずかしい言動はしない
ようにと努めています。疲れていても、疲れた顔を見せないとか、
家族の葬儀でも泣き顔一つ見せないので、気丈な性格に見える人が
少なくありません。寝顔さえも人前では見せないようにする人さえ
います。腹が立っても怒りを出さず、どんな時にも弱音を吐かない
人もいますから、とてもプライドの高い人に見えるかもしれません。
しかし、家族やごく内輪の人間には見せるのですが、その家族にさ
えも、はしたない恰好は見せず、ベッドの中だけしか寛げないとい
う人さえいます。

 従って、そのような性格の人から見ると、感情的になりやすく、
すぐに腹を立て、泣き顔を人前で平気で出す人は、信じられない人
たちです。実にプライドがない人に見えるでしょう。たとえば、タ
イプ2は大勢の人前でも悔し涙を流し、「メチャくやしい!」など
とも言いますが、それを見ているタイプ1は、はしたない人にしか
見えません。

 タイプ1はかなりの悔しがり屋ですが、悔し涙は自室に帰ってか
ら流します。しかし、タイプ2からすれば、人間的な感情を素直に
出すことは、ごく当たり前のことです。そのほうが人間性が豊かに
見えるので、それを「プライドがない」と取られるなど心外でしょ
う。 
        
 なお、タイプ7もタイプ1とよく似た価値観があり、感情タイプ
が感情をあらわに出すと不快となり、恰好悪いとか、はしたない人
に見えるかもしれません。


9 従順な人はプライドがない?


 タイプ8は、人を指図したり、従わせたがる性格です。従って、
先生や上司などの指示に従うのは、非常に不本意なことです。プラ
イドを傷つけられるのです。しかし、タイプ8でも、子どもの頃は、
自分に自信がないため、従わねばならないとあきらめています。し
かし、成長するごとに、かつて、プライドを傷つけられたことを忘
れず、大人になったら、絶対に否やを言わせず人を従わせてみせる
と硬い決意をしています。
 そんな人なのですから、自分の命令に対して、従順に従がう人を
見ると、「なんというプライドのない奴だ!」と心の中で蔑みます。

 こんな実話もあります。ある女性が急ぎの用があり、実家に居合
わせた姪に「ちょっと駅まで車で送って欲しい」と頼みました。姪
はソファでヒマそうにしており、特別にすることもないと言うので
頼んだのでした。
 しかし、この姪はタイプ8です。たとえ叔母の頼みでも、運転手
をするなど、とてもプライドが許せぬことのようです。「タクシー
を呼んだら!」と。この叔母は、にべも無く断られたそうです。姪
の顔には、「誰に向かって頼んでいるの? 私はあなたに使われる
ような人間ではない」と言っているかのようだったと伝え聴いてい
ます。

 タイプ
8は、ほんのちょっとした手助けを頼んでも、人に使われ
た小間使いにされた、バカにされた、指図されたととる傾向があり
ます。タイプ8に、ものを頼むなどは、身近な人ならとてもできる
ことではないと知っていることでしょう。

 しかるに、タイプ8は、しばしば人を使いたがります。自分の指
図通り人々が従うときほど、タイプ8のプライドが満足することは
ないからです。とくに気位の高い人間や、嫌がったり反抗しようと
する人間を自分の思い通りに従わせたときほど、タイプ8にとって
気持ちのよいことはありません。

 ちなみに、9w8の男性も、腰が重くて動かないほうですから、
家族には、いろいろと指図する傾向があります。面倒臭がりやとい
うだけでなく、人を使いたがる気質を少し持っているからと考えら
れます。 

 さて、タイプ8自身は、従順な人間を「蔑まれているのに、それ
にも気づかないバカな奴」と考えているかもしれません。しかし、
言われた当人のほうでは、「人のお役に立ててうれしい」、「ぶつ
かりたくないので、それくらいしておくか」などと、軽く考えてお
り、そんなことで
相手が自分を蔑んでいるなど、想定外なのかもし
れません。


10 全タイプがプライドが高い!


 このように、タイプが違うと、価値観の違いからケンカしたり不
仲になったり、蔑まれたりしているかもしれません。

 多くの心理本には、「暴力に走る若者は自己評価が低い」とか、
「低いプライドしか持たないために、正しい自己愛を持てない」と
書かれていることがあります。しかし、自己評価が高いがゆえに、
相手が許せないとか、腹立ちがおさまらずに暴力に走るのではない
でしょうか。

 このような言い方を引用している論文はたくさんありますが、本
当にそうなのでしょうか。

 当会では、性格は自己防衛戦略だと定義づけています。誰もが、
自分を守っており、バカにされたり苛められ、卑しめられたりする
と腹を立てます。その怒りを他人に出せるタイプと、家族にしか出
せないタイプ、弱い人間にしか出せないタイプがあります。それが
タイプによって違います。価値観もタイプによって違うので、他の
タイプはプライドが低いように見えるだけではと考えられるのです。
 
 「プライド」の意味は依然不明です。しかし、どうやら、全ての
タイプ、全ての人たちがプライドが高いのだと考えたほうが、理解
できる現象ばかりです。