上級者用エニアグラム理論              


「正しい」に到る道はタイプによって違う!


1 赤信号、みんなで渡れば怖くない!


 
さて、ある人が「正しい!」と言ったら、「本当かな?」と疑
ったことがありますか? また、正しいか間違いなのか判断せね
ばならない時、あなたはすぐに答えられましたか?

 例えば、自動車を運転して交差点にさしかかり、黄色信号に変
わった時、止まるべきか通り過ぎるべきか、判断に困ったことは
ありませんか? 
 どんな時でも、スピードを上げないことが、一番に正しく、一番
危険に遭わない方法です。しかし、家族が大怪我をしており、急
いで病院に連れて行くとしたら、スピードを上げねばなりません。
この場合、あなたなら、どうするでしょうか? スピードを上げ
て事故に遭ったら元も子もありません。しかし、出血多量になっ
たら危篤事態となります。
  
 例えば、数学問題のように、一つの正しい回答しかなければ、迷
うことはありません。運転免許試験のような模範解答というものが
あり、答えが一つと定められているなら、定めに従っていたことで
しょう。しかし、回答が一つとはならず、考え方の違いによって正
しくもなり間違いになるものばかりではないでしょうか。私たちの
日常生活上での問題は、たった一つの正しい回答などそれほど多く
はないと考えられます。 


2 正しい躾け

 
「自分は絶対に正しい!」と、強く主張して退かない人が少なく
ありません。例えば、よくある事例として「人の道に外れることを
するのは間違っている」と言うのです。そこで「人の道とは何か?
」と訊ねると、「たとえば、嘘をつくのは人の道に外れるだろう!
」と、いとも簡単に答える人がいます。
 それでは、ガンに罹っている人には、ガンであることを正直に
知らせたほうが良いのでしょうか? ガンを告知されたくないと思
っている人は案外といるものです。 

 「正しい躾けとは、子どもたちにしてはいけないことをしっかり
と教えることだ」と語る母親がいました。そこで、具体的な事例を
上げて教えて欲しいと頼みました。すると、「私の友人宅に子連れ
で訪ねたことがあります。そこで、息子は“ちいさな家だね”と言
うので、わたしはあわてて、そんな失礼なことは言ってはいけませ
んと、友人には聞こえないように諭しました」  
                             
 その事例を聴いて、私からは母親のほうが失礼な人に見えました。
子どもは少しも失礼なことは言っていないと思われるのです。この
母親の価値観には、「小さな家は恥ずかしい」があるようです。

 これは、単に価値観の違いであり、「してはいけないこと」の部
類には入りません。どうやら、「正しいこと」は価値観の違いによ
って違うらしいのです。このように、絶対的に正しいことは何か?
 とよくよく考えはじめると、容易に答えられないとは思いません
か。



3  正しさの範囲と種類が違う 

 
「正しい」と判断するためには、知識がいるだけでなく、いわば
「知恵」のようなものも要ると考えられます。また、狭い価値観し
かない人と、広い価値観を持つ人とは、明らかに「正しさの範囲」
が違います。つまり、狭い価値観しかないのであれば、正しいと思
う範囲は狭くて硬直的になりがちです。広い価値観を持つ人ならば、
正しいと考える範囲は広くなり、柔軟性もあるではないでしょうか。
                              
 また、その人の性格によって、正しいと判断する事が違ってきま
す。なぜなら、性格タイプが違うと価値観まで違うことが明らかに
なっているからです。
 例えば、人間関係を良好にしたいと願うタイプは、そちらを良い
関係にすることが正しいのであり、正しい行動なのです。しかし、
物事の道理とか順序にこだわる人は、人間関係が悪くなっても、そ
ちらを正さねばならないのです。

 また、責任の所在を明確にすることが大切だと考える人と、事実
関係をはっきりさせることが大切だと考える人とでは、問題が起き
たときに追求することが違ってきます。

 動機を大切にする人間と、結果を大切にする人間では、やはり、
人間として「正しい行為」だと認定するものが違ってきます。そし
て、「正しい」と決めるのは、人間ですから、人間には過ちが付き
物だということを自覚せねばならないでしょう。 

 そこで、今回は、「正しいに到る道はタイプによって違う」とい
うタイトルをつけて、3グループごとにある傾向を説明したいと思
います。

                    
4 タイプ1の正しさ

 
タイプ1にとって、物事の処理は簡単みたいです。正しいか正し
くないか、○か×かの二者択一だからです。正しいことを見つける
のは簡単で、いつも絶対的に決まっていると考えやすいタイプです。
×だと分かれば、即座に止めて、○に乗り変えればよいのであり、
×だと知らずにしているときは許されると考えます。しかし、×だ
と気付いたら、即座に○の移動しなければいけないのです。

 タイプ1は、とかく、物事に対して、相対的な見方をすることが少
ない傾向があります。そのためすぐに行動に移せるのでしょう。決
まりとして定められたら、守るのは当たり前です。約束事を守るの
も当然であり、守らない人間は罰せられても仕方ないと考えます。
 また、正義を貫くには、手段も正当でなければならないのであり、
多数決で決まったことなら、自分の不利益になっても、それは守る
べきであると考えます。従って、何も決められていない段階なのに、
「決まったら、守らなければいけない!」と、語るぐらい、守るこ
とに意識が向いています。

 または、みんなで決めて一致できることを守るのであり、「みん
な」とか「全体」と、「自分」に一体感があるかのようで、「公」
に従うのが、「個人」の義務だと捉えています。そして、一致団結
して、事に当たれば、物事は良い方向に行くと見て、みんなで決め
たことでも間違うかもしれないという心配をあまりしません。タイ
プ1にとってはみんなが団結して、それぞれが懸命に自分に与えら
れた責務を遂行することに意義があり、価値もあるかのようです。


 
タイプ1にとってはどうやら、「絶対的な正しさ」があるようで
す。その正しさは誰にとっても明らかなもので、人々はさながら神
のような絶対的なものに導かれることを望んでいる、と考えている
ようです。

 「正しさ」というものは、人知を越えたところにあるもの、絶対
的な高見に聳えているもののようでもあります。そして、その輝き
が示すところに従っていれば、自分の価値は認められると考えてい
ます。また、定められた通り、いつものように正しい順序で行動す
るなら、自分の安全も確保できるようです。

 タイプ1は、物事にあまり疑念を抱かずに進むことができますか
ら、一本気で誠実で、裏表のない安定した気質です。陰ひなたなく、
よく働き、ごまかしたり、怠けることなど考えられないほどです。
それゆえ、示された通りに行動して、そこから外れないことに意識
を集中させます。従って、「間違ってはならない」だけとなりがち
で、「正しさを模索する」という発想が少なく、「正しさを探す」
という意識も、当然ながら低くなる傾向があります。 

 
                 
5 タイプ2の正しさ

 
タイプ2にとって、物事の処理はタイプ1ほど簡単ではありませ
ん。いわば○と×と△があり、○だと思われたことが、いつのまか
に×になってしまい、その中間もあるかもしれず、どちらとも言え
ないことも多いのです。正しいことを見つけたいが、見つけられ
ない場合もあるので、「正しいことを探す」ことがあります。

 タイプ2にとって、決まりとして定められていても、自分がその
決まりを作るために参加して、かつ、その決まりに賛同していなけ
れば守る必要がないものです。多数決で決められたことなら、大抵
は守るべきものと考えます。しかし、タイプ1のように従順になり
にくく、必ず守るとは限りません。約束事も、誰とどのような立場
と状況の中で交わされたことなのか、それによって対応が異なるの
は当然だと考えるでしょう。

 タイプ2は感情タイプなので、情が絡みやすく、そのため正誤の
判断が簡単には決められません。一方、タイプ1にとって「正しさ」
は、自分の外からやってくるもので、「権威者や権力者」、または
「おおやけ」や「全体」の側にあります。
 しかし、タイプ2が自分が権威者になりたいのですから、権威者
となるには、自分の中に「正しさの基準」を作り出したり、見つけ
出さねばさねばなりません。
 従って、正しいことは何かと探したり、いろいろと模索します。
そして、見出したときは、「正しさ」は常に「自分の中にあるもの」
となり、つまりは「自分がすることは正しい」「自分の考えは正し
い」と主張することになります。

 
従って、タイプ2は自信たっぷりに見えることがあり、自分の間
違いに気づきにくく、他人から忠告されたり指摘されても、受け入
れにくいタイプです。

 タイプ2は正しいことを探しますから、まず、それに関する情報
を、外から取り入れます。つぎに、その情報を整理して練り直し、
自分の中でまとめあげて、整合性のあるものにします。そして、人
々に自分で考えた「正しさ」を示します。
 それゆえ、広い知識や高い見識を持たないままでも、自分なりに
正しいと考えた意見を、周囲の人たちに示します。たくさんの外部
情報を得ようともしないで、狭い視野や低い判断力でも、正しいと
強く主張する傾向もあります。その場合は、かなり自己中心性の強
い、その人以外には受け入れられない正しさとなっています。
 しかし、視野が広く、価値観も広い賢いタイプ2は、柔軟性もあ
り、その正しさで、人々をより良い方向に導びけるでしょう。

 
 
6 タイプ6の正しさ

 
タイプ6は、人々とよりよく調和し、強い絆をつくり出し、人々
に役立つ人間になることが自己実現になるタイプです。
 タイプ6にとって、物事の処理は簡単にはいかないことばかりで
す。○も×も△も、その時々によって違って来る可能性があります。
なにしろ、状況や人との関係、立場などいろいろと考慮しなければ
ならないからです。自分のしたいことも見つかりにくく、何が正し
いのか、いろいろな人の主張を聞きますが、さまざまに違います。

 タイプ6にとって、どの人の考えが一番正しいのか、それを判断
することさえ困難で難しいものです。どの人の言うことも一理ある
ように思えて決めかねるのです。最終的には、最も力のある人の考
え方に従い、権力者・権威者の教え導くことに従い、多数に従いま
す。
 孤立することを恐れるので、一人で正しいことを追求するより、
人間関係を重視しがちです。従って、マイペースにはなりにくく、
いつも周囲の様子を見てから、自分の進むべき道や態度を決める傾
向があります。
      

 
タイプ6にとって、決まりとして定められていても、正当な理由
があれば守らなくとも致し方ない場合があります。約束事は基本的
に守るべきものですが、事と次第によって情状酌量できる場合もあ
ると考えます。また、正義を貫くには手段も正当であるべきだが、
身に危険が及ぶときはこの限りにあらずなどとも考え、かなり柔軟
です。

 タイプ1は「絶対的な正しさ」があると思い、それは自分の側に
はないとするなら、タイプ2は絶対的な正しさはなく、自分のうち
に作り出すものです。そうなると、タイプ6は、正しさは相対的な
もので、人々とともに作り出すもので、その総意が正しいことであ
り、それに従うのが自分の義務になります。それゆえ、断定した言
い方ができず優柔不断となりがちです。

 タイプ1が疑問を抱かず、絶対的に正しいものがあると思い、硬
直的になりやすく融通が効かない傾向があるとすると、タイプ6は
融通性があり過ぎるがゆえに、疑念を抱きやすく、それが不安定さ
の一因にもなっています。



7 9タイプの正しいに到る道

 
ところで、この3つに分けた見方は、他の6つのタイプにもあて
はまります。つまり、タイプ1と同じような傾向がタイプ7と4に
あります。タイプ2と同じような傾向を、タイプ8と5が持ちます。
そして、タイプ6と同じような傾向を持つのが、タイプ3と9です。
以下はまとめです。


☆タイプ7・1・4「防御タイプ」
                
 
・絶対的な正しい基準があると思い込む傾向あり。
 ・正しいに到るには、権威者や権力者、あるいは全体が決める
  もので、人々や自分はそれに従うしかない小さな存在。
 ・真理は、高みから、人々や自分に指し示されているものと考え
  る傾向あり。
 ・万事に受け身になりがちである。権威者から指示されないと動
  けない傾向あり。決断力がなく、優柔不断だが優等生的な行動。
   

        

                        
☆タイプ8・2・5「攻撃タイプ」 
             
 
・外部から幾つかの正しいと思われる情報を取り入れて、それを
  参考にして 自分の中に、正しいと思われる考え方を作り出す。
 ・自分が権威者や権力者となり、人々の中心に位置して、その
  「正しさ」を人々に指し示して、人を教え導きたがる傾向あり。
 ・真理は、常に自分との関わり合いの中に見出すものと考える
  傾向あり。
 ・万事に主体的に関わりやすい。指図されたがらない傾向がある。
  決断力があるが、独断的になりがち。


               
                         
                       
☆タイプ3・6・9「調和タイプ」         
                
 
・人々とともに歩みを進めて、より正しいと思われものに近づく。
 ・絶対的な正しさがあるとは言えず、全ては相対的なもの。
 ・真理は、人々とともに探し出すもの。
 ・権威者に従うが、多勢に従う傾向のほうが強い。決断力がなく
  優柔不断  で八方美人になりがち。