エニアグラム上級者理論  
         
助言や忠告、提案から、タイプ判定ができる?

 自分のタイプが見つからない人があまりに多いのですが、まして
他人となると、絶望的です。また、気質とか性質というものは、

る人によって、さまざまに違って見えます。例えば、一人の方から
の情報だけで、相手方の性格を予想した場合、実際に会ってみ
たら、かなり違っていた、ということがあり ます。

 人は、それぞれに主観的に判断しているのですが、自分は客
観的に見ているつもりのようです。さらに、自分ほど正確で客観
性のある人間はいないと主張する方も存在します。
 そこで、カウンセラーのような第三者で、かつ専門家ならば、客
観性があり、物事を正確に見ていると考えられています。しかし、
本当に、そうなのでしょうか?


1 カウンセラーによって助言が違うのはなぜか?

 ある母親が、息子のわがままな行動に困り果てて、カウンセラ
ーのところに相談に行きました。「息子は何かといえばオキチャ
を買って欲しいとねだります。私がやさしく諭してもダメで、強く怒
っても言うことをききません。道端であろうとわめきちらして、買う
まで泣き続けます。父親やおばあちゃんが、この子には甘くて、
ねだれば何でも買ってもらえると思っているので困っています」と、
困惑の表情を浮かべます。      

 さて、あるカウンセラーは常識的な?判断をして、次のように助
言しました。「父親やおばあちゃんとよく相談して、わがままをそ
のまま受け入れないほうがよいでしょう」 

 別のカウンセラーは、「一時的なことかもしれないので、もう少し
様子を見てから判断した方がよく、とりあえず、今あるオモチャで、
充分に遊べることを教えてください」と、かなり慎重です。

 しかし、あるカウンセ ラーは「そのまま放置して息子さんの言い
なりになっていると、将来に禍根を残します。きっぱりと拒絶して
親としての威厳を示したほうがよいでしょう」と厳しい意見です。

 また、あるカウンセラーは「大したことではないじゃありません
か。おかあさんの思い過ごしですよ。子どもにはよくあることで、
そのうち、わがままもなくなります」と、状況判断が甘い ようです。

 この程度のことでカウンセラーを訪ねる人はいないと思います
が、幾人ものカウンセラーを訪ねたことがあるなら、よく知ってい
ることです。つまり、カウンセラーによって、助言内容がかなり違
うのです。
 ですから、どのカウンセラーの助言を採り入れたらいいのか分
からず困惑します。カウンセリングを受けるほど混乱して、「訪ね
なければよかった」と、悩みが深くなった経験を持つ人は予想以
上にいます。

                         
2 助言内容にカウンセラーの性格が反映されている
            
 A子さんは16才の娘さんです。母親との関係がうまく行かないの
で、カウンセラーに相談に行きました。「母が、私にいろいろなこと
で指図して操ろうとしています。例えば、受験するのは、この大学
にすべきだと言います。塾も探して来て、私にそこに行けと言うん
です。とても耐えられません」  
               
      
 最初に相談したカウンセラーは、「あなたのお母さんは、あなた
のことが心配でそのように言ったのでしょう。操るつもりはないと
思いますよ。もっと、お母さんの身になって考えてあげたら、どう
でしょう」
と語ったそうです。A子さんは、カウンセラーが自分の苦
しみを少しも理解せず、母親の身になれ!というので、二度とこ
のカウンセラーのところには来まい、と思いました。

 次に訪ねたカウンセラーは「あなたの母親はどうやら子どもに
対して支配的な人のようですね」
と告げました。これを聞いて、A子
さんはとても安堵し、自分の悩みを真に理解してくれる人だと思い
ました。また、カウンセラーの受容的な態度も好感が持て、このカ
ウンセラーのところに通うことに決めたそうです。
                                        
 さて、A子さんはエニアグラムではタイプ4に該る性格です。母親
の言うことに過剰反応しやすい傾向を持っています。最初のカウン
セラーは、Aさんの悩みが理解できず、母親の側に立ったカウンセ
リングをしていると考えられます。

 このカウンセラーはタイプ2の可能性があります。タイプ2は子ど
もへの思いが強く、子どもが良い大学に行き、より良い人生を享受
できるように配慮する性格です。自分がそのように考えるため、他
の母親たちも同じであろうとみます。また、タイプ2の本質が「お母
さんタイプ」なので、どうしても、母親の側に立って判断しがちです。 

 次のカウンセラーは、タイプ4の可能性があります。カウンセラー
自身が母親に支配される恐怖心が強いので、A子さんの悩みを理
解できます。また、タイプ4は「末っ子タイプ」なので、いつも子ども
の側に立ち、母親の側には立ちにくい傾向も持っています。 

 しかし、真の原因が、このカウンセラーとA子さんには分かってい
ません。タイプ4が生来に持ちやすい「母親コンプレックス」が、一
方の原因としてあります。もう一方の原因は、母親もタイプ4ではなく、
タイプ2の可能性があり性格が全く違うことです。母娘は理解し合え
ないどころか、全てのことで意志疎通が円滑ではないと考えられま
す。従って、このような事態に至った真の原因を明かにして、それ
を母娘が理解できなければ、解決策は見つかりません。


3 友だちの忠告は、受け入れられない忠告だった! 
               
 B君は、親友だと思っていた友人とうまく行かず、その悩みをC君
に打ち明けました。C君は「そんなにうまく行かないのなら、そいつ
とは付き合わなければいいだろう。受験が控えているんだから、こ
の際、キッパリと別れを告げたほうがいい!」と言ったのです。しか
し、B君にすれば、そんなに簡単ではないので悩みになっているの
ですから、取り入れられる忠告ではありません。 
                    
 そこで、B君は先輩のDさんに相談しました。Dさんは「自分の気
持ちをありのままに語ってみたらいいのじゃないか。君は正直な自
分を出していないよ。友だちなら、もっと信頼しなければいけない。
要は相手の問題ではなく、自分の問題なんだよ」    
 B君は、先輩の忠告ももっともだと思いました。しかし、親友の気
持ちを掴んでいないので、それによっては、自分の対応を変えねば
ならず、どこまで自分を出してよいのか分かりません。従って、先輩
の忠告も受け入れられないのでした。           
                                        
 さて、B君はタイプ6w7に該り、友だちがいないと心が安定せず、
受験にも力を注ぐことができない気質です。C君はタイプ1w2の可
能性があり、タイプ1にとっては友人よりも、受験のほうが大切です。
うまく行かない友だちならば、関係をすぐに切る傾向があります。

 タイプ1は防御的な対策を早めにとる気質ですから、自分にとって
はごく当たり前の忠告をしたのです。C君にとって、B君がそれを聞
き入れないなら、B君のほうが、おかしな人間に見えるでしょう。
 そして、先輩のDさんはタイプ2の可能性があります。タイプ2から
見ると、タイプ6は正直な自分を出していない人に見えます。従って、
「正直になれ」と忠告するのかもしれません。 
                                  
 忠告には、「なるほどな!」と納得できる忠告があります。しかし、
納得しても、実際には受け入れられないことが多いようです。どの
人も、自分が納得できるような忠告を相手に与えています。しかし、
自分と同じタイプでなければ、その忠告は受け入れられず効果も
ありません。 


4 担任教師の提案は、うまく行くか? 
                     
 小学校4年を担任しているHさんは、クラスの子どもたちの学習
意欲を引き出そうと、褒美や賞品を考えつきました。賞品があれば、
子どもたちは、それが欲しくて、一斉に勉学に励むだろうと予想し
たのです。しかし、意に反して一部の子どもたちには全く効果があ
りませんでした。
                         
 Hさんは、タイプ7w6に該り、目の前に賞品を積まれたり、たとえ、
シールのような些細な物でも意欲的になれる性格です。従って、そ
んな提案をしたり、教育方法として取り入れる可能性はあります。
しかし、実際には、賞品などで意欲的にはなれない子どもがいます。
例えば、タイプ8もタイプ5、タイプ9にとって、子ども扱いされるよう
な物では、動機づけにはなりません。
                              
 また、ある教師は、グループに別れて競技させたら、子どもたち
の学習意欲が増すと考えました。しかし、これも、効果のある子ど
もと、全く効果のない子どもがいます。この教師はタイプ2w1に該
り、生来的に競争心が強く、みんなが公平なルールのもとに一致
団結して事に当たれば、意欲は増すと考えます。自分自身がそう
であるため、その方法ならば、子どもたちの学習意欲は増すに違
いないと考えるのでしょう。  
                                        
 ある塾の講師が、「カリキュラムにとらわれず、個性を尊重しな
がら学習意欲を高める」という主旨を掲げて、塾を経営しています。
子どもの自発性を重んじるのだそうです。この場合も、うまく行く子
と、そうでない子どもがいると考えねばなりません。

 例えば、タイプ1と9の子は「自由に好きな学習をしなさい!」と言
われたら、かえって困惑する傾向があります。タイプ3もタイプ6も、
その傾向があると考えられます。教師から何を学習すべきなのか
キッチリと決めてもらわねばならず、なかなか自分では決められま
せん。そのためにこそ教師が要る人たちだからです。
              
 この塾講師はタイプ4w3の可能性があります。自分がカリキュラ
ムをお仕着せられると意欲が減退する傾向があるため、個人の自
発性とか、自由な雰囲気を尊重するというような教育方針を持ちや
すいのです。

 また、子どもによっはプレッシャーを与えたほうが勉学意欲が増
す子がいます。それは攻撃タイプ(825)にもっともよくあることです。
しかし、プレッシャーに弱く、テストや本番になると、実力を発揮でき
にくい子がいます。それは調和タイプ(369)や防御タイプ(714)
です。
 この塾の講師はタイプ4ですから、プレッシャーを与えたほうが伸
びる子がいることを知らず、理解することもできないでしょう。つまり、
「個性を尊重する」と言っても、その個性を知らないのですから、個
性に合わせる指導など不可能です。

                                
5 信じられない助言!
 
 
新聞や雑誌などには、よく相談室があり、カウンセラーや心理の
プロが回答しています。そのなかに、信じられない助言がありました。
 母親からの相談ですが、「大学生になった18歳の長女が自分の
腕をカッターナイフで傷つけています。小さい頃から我慢強い子で
したので、親もタカをくくっていたのかもしれません。今は大学の寮
に入っていますが、遠距離なので、様子を見に行けず心配です。
今、親にできることを教えてください」

 それに対しての助言は
「お嬢さんのような自傷行為が、取り返し
のつかない結果を招く例は究めて例外的です。過剰な心配をする
と悪循環になりがちです。無理に無理をかさねてきたお子さんの
ようです。言って聞かせれば納得して我慢するような扱いやすい子
ども、つまりは大人や親が覆いかぶせる無理や抑圧を必死にすべ
て請け負って耐えてきたお嬢さんなのだと思われます。そんなお子
さんを前に、お母さんにできる最良のこと、それはお母さん自身が
明るく屈託のない日々を過ごすことです。お母さんにのしかかって
いる抑圧ー例えば、お姑さんへの辛抱を突き破り「人生っていいも
んだよ。あなたもすばらしい子、いい人生を歩めるよ」と、いつでも
そう伝えられる心境になることです。なんとしてでも、そうなろうと示
すことが、親の愛ではないでしょうか。お嬢さんのことは心配かもし
れませんが、煩雑にたずねる必要はありません。電話やメールで
も十分です。お互いの間に心地よい軽やかな空気が行き交えば
十分です。お嬢さんのこと、とにかく褒めてあげてください。心全部
で包んであげてください」
(なお、これは新聞に載っていた全文です)
                                                                  
 これだけでは、タイプ判定できませんが、この娘さんがタイプ4、
母親をタイプ9、カウンセラーがタイプ2だと仮定したら、この助言
がなんの効果もないことは明白です。第一に問題なのは、このカ
ウンセラーは問題を全く理解していませんし、あまりにも安易な姿
勢です。自傷行為をするほど追い詰められているタイプ4の大学
生にとって、遠隔地にいる母親が明るく元気で屈託なく過ごしてい
ると、メールなどで分かったとして、それが一体、なんの助けにな
るのでしょうか。

 タイプ4の娘ならば、辛い自分を全く理解しないだけでなく、子ど
もが死にたいほど思い詰めているのに、母親だけが明るくて幸福
そうなんて、とても耐えられないことです。明るいメールを読んだだ
けで、悲しみがドット押し寄せて、落ち込みがひどくなるかもしれま
せん。そして、子どもを助けようとしない母親を怨むこともあり得ま
す。また、これほど追い詰められている娘さんと、軽やかな空気が
行き交うことなど、あり得るのでしょうか。

 タイプ9の娘さんなら、母親を怨むような方向には行かないでし
ょう。しかし、タイプ9が自傷行為をするならば、よほどのショック
があったと考えられますから、すぐに駆けつけねばなりません。

一方、タイプ4だけでなく、タイプ1と7も、自分を責めるので自傷
行為をしやすいとは言えますが、娘さんの状態を軽いと見ること
はできません。

 娘さんの性格と、現在の状況や精神状態を知ることが一番に大
切です。しかし、助言者は、それに関しては全く言及していません。
仮に、把握しているが、紙面の関係で省いたとしても、この助言で
は、全く意味をなさず、もっと状況が悪くなることもあり得ると考えま
す。



6 正しい解決法は「まず事実を知ること」 
 

 
のカウンセラーがタイプ2で、自身が大学生であったら、母親
が明るく元気で暮らしていること、屈託ない様子であるならば、安
心できると考えたのでしょう。それゆえ、この娘さんが、同じタイプ
2ならば、母親がメールで、爽やかな空気を送れば、少し息がつ
けるでしょう。

 このカウンセラーは自分ならば、そのような助言を受けたら良く
なるだろうと考えて助言したのです。しかし、娘さんのことはまるで
知らないと考えられます。問題意識のない安易な助言が取り返し
のつかない事態を招く可能性があります。

 このように、カウンセラーに助けを求めたのに、カウンセラーの
一言でショックとなり、問題がさらに悪化することは、よくあると聞
いています。

 当会でも、どの塾がよいのか、どんな教師だと良いのかと、その
類の相談をよく受けますが、子どものタイプによっても違うため、
一概には言えません。学校の教育方針を聴いて、その進学校を
選択する親もいますが、
その方針ではうまく行かない子います。

 どんな助言も忠告も、全て、助言者の気質を反映しているだけ
です。そして、真実を知らねば、永遠に正しい解決策は見い出す
ことはできないでしょう。

 さて、自分にとって当然のことは、相手にも当然のことになると
誰もが思っています。自分にとって良いと思われることは、相手
にも良いことに違いないと予想するのです。それゆえ、人は自信
を持って、相手に助言したり忠告したりするのでしょう。教育方針
も、同様な考え方で打ち立てられます。しかし、全てのことが、タ
イプごとに違うのです。従って、どのような助言をするのか、どの
ような忠告や提案をするのかで、その人の気質まで、ひいては、
タイプまで判定できます。