上級者用エニアグラム理論           

改訂版(2007/05/06)


     
エニアグラム性格学は「分類学」?!
                                                
     旧タイトルは「性格を分類するのは難しい!」


1 気質を分類するのは難しい


 分類学(taxonomy)という学問があります。生物を分類したり命
名して記載するための理論や実践を学ぶものです。生物を分類す
るなぞ、一見、簡単そうに見えるかもしれませんね。しかし、こ
れがなかなかに難しく、初歩から本気になって真剣に学ばないと
理解できるものではありません。
 
 人間の性格分類も、これと同様で、習熟した人に付いて、初歩
から学ばなければ理解できません。しかし、なぜか、エニアグラ
ムに関しては、聞きかじった程度で、すぐに他人のタイプを判定
しようとします。

 当会に問い合わせがあり、メールなども数多く来るようになり
ましたが、約8割近くの人たちは、自分の正しいタイプさえも見
つけられないのが実態です。いわんや、他人のタイプ判定など、
とてもできるような段階ではありません。しかし、困ったことに
間違えているとは気づかず、自信を持って判定しているのです。
                             
 ところで、分類学のルーツは、古代ギリシャにあり、その頃は
外見や構造上の特長で分類していたようです。例えば、人間なら
ば、男女という外見上の違いによって、二つに分類できます。し
かし、ご存知のように、外見だけでは分類できません。外見が男
であったとしても、構造上は女性であるかもしれません。外見も
構造上も男性だとしても、「性自認は女性」ということがありま
す。
                          
 つまり、簡単そうに見える男女の分類でも、簡単には行かない
のです。他の生物のオスとメスの分類もは、一筋縄では行きませ
ん。成長途中で性転換する動物もいれば、両性具有の動物も存在
するからです。
 また、魚類の中には、オスなのに、メスと同じ体型で、体の縞
模様もメスにそっくり同じものがいます。植物か動物なのか、分
類できない生物がいます。有機物か無機物か分類できないものが
あり、生物なのか鉱物なのか、判別できないものさえあるのです。

 まして、性格分類は、簡単に違いを説明できるものではありま
せん。タイプ判定の難しさをもっと知って欲しいと思います。
                             

         
2 男女の性格分類 
                              
 
まず、男女で性格を分類すると、男の方が非平和的で、女の方
が平和的であると言えるのではないでしょうか。何故ならば、犯
罪者は圧倒的に男性に多いと、どの国の統計にも示されているか
らです。長寿も女性に多く、男性のほうが短命です。女性は平和
的でバランスがよく、結果として破滅的になりにくいのと関係し
ているのかもしれません。
             
 これは男女というグループに別けて見ると、その傾向があると
言うに過ぎません。なぜなら、タイプ9の男性はかなり平和主義
的で、バランス感覚が優れています。また、何事にもこだわりが
なく、流れに従って生きるので、いわば省エネルギータイプです。
敵を作らず、生活者としては自立的に生きられるため、長寿にな
りやすいのではないでしょうか。
 一方、タイプ8の女性は、タイプ9の男性よりも非平和的な傾
向が強いと言えます。

 つまり、この段階で、最初に上げた傾向と、食い違っていると
わかるでしょう。すなわち、男女で性格分類した場合と、エニア
グラムで性格分類した場合では、既に違っています。

 
次に、タイプ8の女性たちが全員、同じように攻撃的で非平和
的だとは言えません。なぜなら、当人の置かれた環境が違い、そ
れによって精神状態がそれぞれ違うはずです。余裕と自信のある
タイプ8の女性は、余裕や自信のないタイプ8の女性より、ずっ
と攻撃性を抑制できるからです。
 となると、あるタイプ8の女性をある状況の中で観察して、攻
撃的な性格ではないと見たら、その人をタイプ8から外しますか
? それとも自信を持って、タイプ8だと判定できますか? 

@ 男女の性格分類は、エニアグラムの性格分類には当て嵌らない
A エニアグラムの性格分類は、個々人の性格分類に当て嵌らない
B 個々人の気質あるいは性格は、精神状態によって違っている。

 このように、タイプ判定は難しく、同じタイプは、どこまで同じ
なら、同じタイプだと言えるのか、大変に難しいと分かるはずです。

                    
3 大人と子どもで性格分類する

 
また、大人と子どもに分けて性格を分類できます。一般的に見る
なら、大人よりも子どものほうが恐怖感は強いでしょう。エニアグ
ラムで見ると、恐怖心の強いタイプは、防御タイプ(7・1・4)
で、大胆不敵になりやすいのは攻撃タイプ(8・2・5)です。
 しかし、あるタイプ1の大人より、あるタイプ8の子どものほう
が大胆で勇敢かもしれません。

 また、大人のほうが動作が遅く、腰が重いことが多く、子どもの
方が動作が早く、腰が軽いと言えるでしょう。しかし、これもグル
ープとして別けて見ると、その傾向があるだけです。
 エニアグラムのタイプとして見ると、タイプ9や5が、動作が遅
く腰が重いタイプです。動作が早くて腰の軽いのは、タイプ1・タ
イプ7・タイプ4・タイプ6・タイプ3などが該当します。
 しかし、あるタイプ9の子どもよりも、あるタイプ4の大人のほ
うが、腰が軽いことが少なくありません。グループとしての特長が、
そのまま特定の個人の特長に当て嵌められないのです。 
                               
 その他、好奇心の強いのは子どもであり、大人になると好奇心は
薄れる傾向があります。しかし、大人になっても、タイプ7やタイ
プ4の好奇心は衰え知らずで、子どものタイプ9の方が好奇心が少
ないと言えるほどです。

 
                   
4 地域別に分類すると……  
                       
 
また、国民性や地域性、気候風土などで、性格を分類したがる人
がいます。
 例えば、時間を厳守せずいい加減で、陽気な国民がいると思われ
ることがあります。それは、アジアや前近代的な生活をしている国
民に多いと言われるかもしれません。ところが、その中にはタイプ
1が存在しており、どんな場合も時間をキチンとよく守っています。

 逆に考えるならば、時間や規則を守り、礼儀正しいと評価されて
いる日本国民が、全てタイプ1で占められているわけではありませ
ん。時間にルーズで、礼儀知らずの人も沢山います。従って、「民
族性」とか「国民性」などというものがありそうに見えますが、そ
れもあいまいで、かなりいい加減な観方ではないでしょうか。
 
 私たちの社会には、性格に関係して、いろいろな分類の仕方があ
ります。「県民性」とか「大陸的気質」「島国根性」「東北気質」
「南国気質」「田舎者気質」などがあります。

 そのような分類は数え上げられないほどあります。どうやら、ど
うしても分類したり、違いを見つけて、相手方を非難したい人たち
がいるようです。それとも、区別をつけると心が納得したり整理で
きるのでしょうか。 

            
 
それ以外にも「この頃の若いものは……」「このごろのオバサン
は……」「このごろの年寄りは……」などと、巷ではよく会話にの
ぼります。何千年も前の落書きに「この頃の若いものは……」が残
っているそうで、有名です。
 いつの時代も、自分のことは棚上げにして、気に入らない人間を
一束ねにして、非難したがる口うるさい気質の人がいたのでしょう。



5 9つの性格分類を調べるのは難しい  
    
 
エニアグラムの性格タイプについて、どのタイプが一番多いのか
は、まだ正式に調査されたことはありません。統計調査は、いつ、
どこで、誰が、どのように調べたのか、はっきりと示さないと、一
般に認知されません。
 従って、9つのタイプが等分にあるのか偏っているのかは、正式
で確かな手順で調べられていないので不明のことです。また、占め
られているタイプの比率が違うので、国民性や文化などが異なって
来るのかという疑問を持つ人がいます。これも大規模に調査がされ
ていないので答えることができません。

 ただ、身近な人々を見ていくと、タイプによって占める数に片寄
りがあるように「見える」と、当会では「感じています」。

 エニアグラムが社会から認知されて、統計調査されるよう
になら
なければ確かなことは言えません。そして、もし調査されるとする
と、一人ひとりの自己認識が相当にあやふやなため、正しく自分の
性格を判定できない人たちが多いことを知っていなければならない
でしょう。

 そして、「どのように調べたのか」、それが問題になります。正
しいタイプを判定できる調査票は作成できるのかという問題もあり
ます。調査内容によって、タイプが違ってくると考えられるからで
す。調査員の質の問題もあります。従って、タイプ判定に手間取る
ことが予想されるので、正しい統計資料ができる可能性はあるのか
疑問です。


6 性格を階層に分けて比較する

 このように見ていくと、頭の中がゴチャ混ぜになって、ますます
分かりにくくなりませんか? そこで、どの段階での比較なのか、
階層をはっきりさせると整理できます。

A 1階層  性格を男女別、年齢別などに分けて比較する
  2階層  性格を9タイプに分類して比較する    
  3階層  性格を個々人として比較する 
                      
B 1階層 3分類 攻撃タイプ ・調和タイプ ・防御タイプ
      3分類 行動タイプ ・感情タイプ ・思考タイプ
  2階層 9分類 1・2・3・4・5・6・7・8・9 
  3階層 18分類 1w9・1w2 2w1・2w3 3w2・3w4 4w3・4w5 
          5w4・5w6 6w5・6w7 7w6・7w8 8w7・8w9
          9w8・9w1              
  4階層 27分類 1w9・1w1・1w2   2w1・2w2・2w3 
          3w2・3w3・3w4  4w3・4w4・4w5  
          5w4・5w5・5w6   6w5・6w6・6w7 
          7w6・7w7・7w8  8w7・8w8・8w9  
          9w1・9w9・9w8
        
                         
 A群のように、大まかに3つの階層に分けて、その同じ階層で性
格を比較します。
 また、B群という細かな分類をしても、同じことが言えます。頭
の中を整理できるとしたら、それは、階層に分けて見ることであり、
同じ階層の中で比較しなければなりません。その中にある一部分に
ついてのみ比較したり、限定して比較検討してください。そうすれ
ば、「気質の傾向」はクッキリと浮かび上がって来ます。