上級者用エニアグラム理論            

(改定版2007/11/30)

   
優りたい性格・勝ちたい性格
                               
   
                         
1 人は皆、優勝を目指している 

 
「優勝」という言葉があります。これは「優っている人が
勝つ」のであり、「勝った人は優っている」ことを表わして
います。簡潔で優れた言語だと思われます。
 さて、この「優れた人が勝つ」と考え、それにエネルギー
を注ぐ人たちがいます。それはタイプ1です。一方、「勝っ
た人は優る」と考え、そこにエネルギーを注ぐ人たちがいま
す。それがタイプ8です。
 つまり、比重のかけ方が違うために、それが気質の違いに
なっています。そして、そのどちらもあり、どちらでもない
と考える人たちがいます。それはタイプ9です。


 ・
優りたい性格             タイプ1 
 ・勝ちたい性格             タイプ8  
 ・どちらもあり、どちらでもない性格  タイプ9

                        
 
しかし、比重のかけ方が違うだけで、どのタイプも、優勝
したいと願っています。仮に、比重のかけ方が、どのタイプ
も同じだとしたら、タイプの違いはなく、ひいては気質の違
いも出てきません。

 

2 優りたい性格・タイプ1
                           
タイプ1は、世界と肯定的に結びついているタイプです。
信じ合い助け合い努力すれば、この世界はよりよくなってい
くと考えます。そのためには、自分が模範とならなければな
りません。生来の優等生気質であり、真面目で誠実、信頼の
おける人たちです。
    
 人々の模範となるには、優れた人間になる必要があります
から、一番になることを目指します。学業でもスポーツで、
その他品行などでも、つまり何に対しても一番になりたがり
ます。また、礼儀正しく、いつも最大の努力する人間が、人
々の模範なのですから、陰ひなたなく努力します。
 優れた人間は、手段も優れて模範となるものでないと認め
られません。従って、いつも公明正大さが大切だと考えます。
また、タイプ1にとって「優勝」とは「名誉」とつながるも
のです。優勝することに意味があり、賞金や賞品のないもの、
利益や実利のないものでも、懸命に頑張る傾向があります。
              
 なお、タイプ1は、「見られている自分」を強く意識して
いますが、それは主に父親であったり、教師や上司など、目
上の男性や権威者たちです。自分を裁く厳しい父親の目があ
るため、父の前では怠けることができません。従って、母親
に甘えたりわがままとなり、母親の前では怠惰にもなります。

 
しかし、父親がいると緊張してしまい、羽織はかまを付け
てしまうのです。例えば、くつろいで寝ころんでいる時に、
厳しい父親が帰宅すると、さっと起きて身繕いをします。寝
ている時も緊張して、寝返りは一度もしないという人もいま
す。最近、聞いた話では、その寝姿によって、「ツタンカー
メン」と、あだ名された男性がいるようです。

 タイプ1にとって、正しい行いをして、正しい方法で勝利
しなければ、模範にはならず、父や権威者に「優れた人間だ
!」と認めてもらえません。権威者の指導のもとで、立派に
命令通りに忠実に遂行していく性格です。

                    
   
3 勝ちたい性格・タイプ8  
                         
タイプ8は、世界と否定的に結びついているタイプです。
世界は脅威と暗闇の迫り来る厳しいところですから、その中
で生き抜くためには、強い人間にならねばなりません。誰よ
りも強くなり、戦いに勝利できなければ、死が待っているだ
けです。従って、力強い人間になることが最も重要だと考え
ます。
           
 誰よりも強くなるには、勝敗を決する場面では、とにかく
勝たねばなりません。勝つためには学んだり、訓練したり、
努力が必要です。タイプ8も優れた人間になろうとして懸命
となることがあります。学業やスポーツや武道などで活躍し
たいと願っています。

 しかし、自分より強い人間など、数えきれないほど幾人も
います。相手が弱ければ、難なく勝てますが、強い人間に勝
つためには、通常の手段や方法では不可能です。それゆえ、
勝てないと予想すると、汚い手も使う可能性があります。敵
の背後から不意打ちに攻撃したり、策を巡らして陥れること
もあります。ケンカにルールはありません。勝つためには手
段を選びません。

 とくに、タイプ8にとって、「優勝」とは「勝利」につな
がるものです。そして、「利」とは賞品があるもの、利益や権
益が得られないもので、それがないならば、つまり賞状だけ
では、勝ってもさしたる価値はありません。実利があるから
こそガンバルのであり、単なる旗取り競争ならば、熱意を示
さない人です。

 タイプ8は権力者になりたがりますから、権力を握れば、
財産も獲得できると考えます。また、牛尾となるよりは鶏頭
になり、いつも指導する側にいたがります。また、勝利すれ
ば、利益を得られるだけでなく、人の上に立つことができま
す。

 
そして、人の上に立てば、優れた人間として敬われると考
えます。そうなれば、母親や女性たちから称賛され愛され、
美しい配偶者も思いのままに獲得できます。タイプ8は、自
分だけ愛して欲しいと、母親を独占したがります。そして、
多くの人間を自由自在に操り、欲しいものを手に入れること
が、最も勝る強い人間だと考えます。


               
4 無欲になりがちな性格・タイプ9 
                    
タイプ9は、世界と両価的に結びついているタイプです。
世界が否定的か肯定的か、それは分からず、自分の進むべき
道も見つかりにくい性格です。社会や人々に合わせて、状況
に逆らうことなく進めば、あつれきや争いにも遭わずに済み
ます。平穏な暮らしをして、のんびり過ごすほうが楽です。

 タイプ9も優勝できる範囲内にいるのなら、優勝を目指し
ます。しかし、人に勝つために、人より優るために、どんな
努力もいとわず、周囲の非難をものともせずに、突き進む気
にはなれません。少しの努力で手に入り、かつ周囲の人たち
に応援されて、それで優勝できればベストです。
 しかし、敵を作ったり、友だちを蹴落としてまで優勝した
いとは思いません。無欲になりがちで、積極性が乏しく好奇
心や物欲も少ないほうかもしれません。
              
 楽して到達でき、しかも、自分の力量内でできることを目
指す傾向があります。つまり、優りたい勝りたいという思い
はありますが、その欲望はタイプ1やタイプ8ほど強くない
と言えます。また、どちらの比重が重いか、それも定かでは
ありませんし、どちらでもよいと考えているでしょう。


          
5 その他のタイプ 
                            
タイプ3は基本的に「勝ちたい」のであり、勝つことがカッ
コイイことで、優勝旗を手にすると、多くの人たちの注目を浴
びることができると考えます。ただし、調和タイプですから、
タイプ8のように、やみくもに勝つことだけを目指しません。
 注目さえ受ければ、優勝できなくても満足することができま
す。逆に、優勝しても、ほんの少しの人にしか注目されないと
分かっていたならば、優勝を目指さないかもしれません。また、
自分の周囲にいる競争者に勝てば良いのであり、なるべく競争
者のいない分野に行き、容易に勝てるものを選ぶ傾向がありま
す。

タイプ7も基本的には「勝ちたい」という思いがまさってい
ますが、優等生気質ゆえ、「優りたい」も少ないとは言えませ
ん。ただし、防御タイプですから、すばしこく意表をついた行
動を取ります。瞬時に状況を把握する能力が高い傾向がありま
すから、その面で活躍するでしょう。
 勝ちたい意識よりも、楽しみたい意識の方が高いこともあり、
競争心も意欲も長続きしません。長期間ガンバレルという気質
ではありません。目の前の賞品や褒美が欲しくて努力するかも
しれませんが、なるべく楽しく、簡単に手に入れる方法を考え
ることでしょう。

タイプ2は基本的に「優りたい」のです。世界の中心にいる
と自己認識するタイプなので、「自分は優っている」と、自分
で判断できる傾向があります。うぬぼれが強いので、相手を見
くびり油断してしまうことがあり、その気にならなければ真剣
に取り組みません。緊張感がなくなり、すぐに気を抜く傾向も
あります。
 また、正しい手段で勝てなければ、勝ったことにはなりませ
ん。相手がルールを守らず、汚い手を使うと怒り心頭になりま
す。また、賞品や褒美がなく、単なる旗取り競争であっても、
熱意を示して努力するかもしれません。名誉のある行為をした
がる気質です。しかし追い詰められると、ルール違反をするよ
うになり、勝つために執念を燃やすかもしれません。

タイプ6も基本的に「優りたい」性格で、いつも自分と他人
を比較しています。タイプ6は調和タイプですから、優りたく
とも、卑怯な手段で勝つと、仲間たちが離反する心配がありま
す。しかし、少しでも上位に行きたいので、「自分はここが優
っている!」とアッピールすることがあります。タイプ3より
も競争心はあからさまになりやすく、卑怯なことはあまり考え
ない傾向があります。また、それほど勝つことに執着心はなく、
仲間と仲良く励まし合って、よりよく競争できることを求める
でしょう。 

タイプ5は基本的に勝ち負けに興味がありませんが、頭の良
さに関する勝ち負けなら退かないでしょう。しかし、タイプ2
と同様に、世界の中心にいると自己認識するタイプなので、
「自分は賢い」と自分勝手に判断しています。競争の場に出る
ことを避けて、一人で書斎にいたがるため真に賢い人間である
かどうか、全く分かりません。また、他人から賢いと認めても
らう気もないため、賢さをアピールしません。
 従って、賢さとは関係のない分野での勝ち負けには関心が薄
くなります。つまらない勝負事に血道をあげている人たちを、
冷やかな目で見ているかもしれません。また、どうしても勝た
ねばならない立場にいるならば、考えられる全てのことを考え
出すので、勝つために手段を選ばないこともあります。
  
タイプ4 も基本的に勝ちたいのですが、優等生気質があるの
で、優りたいという思いも強い人たちです。また、関心が狭い
ので、全く勝ち負けに関心を持たないこともあります。些細な
ことで一喜一憂すので、些細なことでも勝てばうれしがってい
ます。些細なことでも負けたら、かなり悔しがります。しかし、
自分にとって勝つ意味や価値があるなら、努力するかもしれま
せん。集中的にもなれるほうで、一端、目的を持つと、執拗と
なります。従って、勝つことが目的となったら、さまざまなこ
とを考え出し、卑怯なこともするかもしれません。


6 ウイングについて 

 
以上、基本タイプとしての傾向を述べてきましたが、ウイン
グの気質も考慮しなければなりません。

 まず、タイプ8の傍にいる9w8と7w8でウイングの重い
人は、勝ちたいという意識の強い気質です。次ぎに、タイプ1
の側にいる2w1と9w1で、ウイングの重い人は優りたいと
いう意識の強い気質と考えられます。 

 例えば、9w8は、勝ちたいという意識が強烈となり9w1
は無欲さがあるとは言え、優りたいという欲求がはっきりと見
えます。同様に、7w8も勝ちたいという意識は強烈にあり、
7w6は周囲の人に合わせながらも、自分の利益はすばやく確
保します。
                        
 2w1と2w3と比べると、確実に2w1の競争心は高く、
バリバリにライバル意識を出します。2w1のライバル意識は
強く、負けたとなると地団駄踏んで悔しがることがあります。
「あんたにはけっして負けないよ!」と公言することがあり、
強烈な競争心を出すのは、このウイングに最も多いようです。
 なお、タイプ2は元々にタイプ8の性質を内包していますか
ら、勝ちたいという意識も同時にあります。従って、勝ちたい
という比重が状況によって強まることがあります。とくに2w1
は最も人数が多く、そんな自分をオープンに見せるため、しばし
ば、この人たちの競争心が話題となります。       

 一方、負けても悔しい思いを外に出すのは、カッコ悪いと考
えるのがタイプ3です。ですから、競争心があると外からは見
えにくいようです。これは、w2に強い傾向で、w4はとかく
内向的で怠惰となりやすく、目立つための努力が足りないかも
しれません。一喜一憂しやすいので、勝った負けたと、些細な
ことでうれしがり、悔しがっているかもしれません。 

      
7 まとめ 

 
これまでの説明をまとめると、以下のようになります。
                     
 ・
勝ちたい性格            8・3・7
 ・優りたい性格            2・6・1 
 ・どちらでもあり、どちらでもない性格 5・9・4



 
そして、以前に公表している「努力を重視する性格と、チャン
スを重視する性格」という文と併せてお読みください。ここと関
連性があり、併せて読めば、各タイプへの理解が深まることでし
ょう。