上級者用エニアグラム理論              

   わたしは、転校生!


    見られている自分を意識しやすい「1・4・7」
あなたは「転校生」になったことがありますか? 体験済みだとし
たら、大変な立場であることを知っていることでしょう。多くの人
たちの関心の的になり、視線が自分に集中していると感じます。
 
 また、転校先では既に親密な関係が作られています。その中に
はスムーズに入っていけません。自分だけがよそ者です。疎外感
を強く感じるでしょう。あるいは、落ち着けず腰が浮いてしまい、
早く帰宅したくなります。以前の学校に戻りたくなるでしょう。  
      
 さて、ここにあるような「転校生の気分!」は、経験した者でな
いと分からないかもしれません。しかし、生まれてからずっと転校
生のような気分や立場にいると感じるタイプがあります。

 それは「1・4・7」です。しかし、この3つのタイプと言えども
個人差があります。あまり感じたことのない人と、ずっとそんな気
分でいる人がいます。 差が大きいものです。また、この3タイプ以
外のタイプでも、転校生気分の強い人がいます。

 
            
 例えば、人口的に少ないのではと予想している「8・5・1・3」
という4つのタイプは、「一生、転校生のような気分」と言うべき
か、疎外感を強く感じているかもしれません。あるいは、自分だけ
異質な存在で、常に周囲との違和感に悩まされているという可能性
があります。

 次は、家庭内で、自分一人だけ他の家族と違うタイプであると、
居場所がないと感じたり、自分だけ除け者扱いされている、おか
しな人間だと思われているかもしれません。

 従って、タイプの違いを越えて、誰もが、どのタイプでも「転校
生のような気分」に陥り悩まされた人がいると考えられます。し
かし、今回は3つのタイプ「1・4・7」だけに的を絞って、「転
校生気分!」なるものを紹介します。
1 転校生・タイプ1
タイプ1は、エニアグラム性格学では「父親を強く意識するタ
イプ」と分析しています。父親の監視する目が、自分に注がれて
いると感じますから、父の前では緊張します。
 例えば、登校したくないとグズッていても、父親の鶴の一声で
登校します。新しい学校には行きたくないと思っても、父親には
何も言えず、従うだけです。父親の一言が響くタイプです。

 父親が出張して3日不在となりましたが、体調を壊してしまっ
た小学一年の少女がいます。父親が帰宅したらケロリと回復した
ので、父親の存在の大きさが、その時に分かったと言います。

 しかし、母親には甘えたり反抗したり、わがままが言えます。
父親の前では我慢していることが多いので、母親へのわがままが
ひどくなることもあります。そんな場合、母親を手放したがらず、
母親にしがみついているかもしれません。そして、一緒に学校に
行って欲しいと願うこともあります。

 なお、タイプ1は父を強く意識したり、父に関心を向けていま
すが外からはなかなか分かりません。しかし、家族の絵などを描
かせると、父の存在の大きさが出ているはずです。母親にしがみ
つくことが多いので、父親を強く意識しているとは予想できない
のです。
 学校の教師も厳父的な男性だと緊張が強くなり、その教師から
やさしく受け入れてもらえると安心して登校できます。厳しいだ
けの教師では、なかなか転校生気分から抜け出すことはできない
でしょう。
 さらに、友だちの父親などにも関心を向け、また自分を受け入
れてくれる男性が見つかると、その男性に心を開く傾向もありま
す。
 そして、父親や教師の言いつけ通りに、しっかりと勉強しよう
とします。優秀な生徒として認められたり信頼されると、自信が
つきます。そして、高く評価されるようになると、転校生意識が
減ります。
 タイプ1は優等生のような雰囲気があり、放課中他の子が遊ん
でいても、自分だけは居残って一人学んでいる子がいます。「点
取り虫」に見えるので、それで他の子からいじめられることがあ
るかもしれません。そういうことでいじめられるなど、信じられ
ない思いがするのです。
 タイプ1は「あらかじめ少しの異変でも警戒して避ける」とい
う根源的な行動プログラムを持っています。いつもあらかじめ何
をすべきか把握していないと、安心して前に進めません。学校生
活では「予習」を充分にしないと、不安に陥りやすいタイプです

 また、何に対しても満点にできないと、心の中にある厳父が自
分を監視していて、叱られる恐れがあります。そのせいもあり、
元々に完璧主義的でもあるため、100%できないのであれば、
何もせず一歩も動こうとしないかもしれません。
 また、相手の行動の先々まで読み取ろうとする傾向があります。
相手が右に行くのか、自分に近づくのかも重要なことなので、い
つも、他者の動きに敏感です。とくに後方から近づくと、驚き慌
てるかもしれません。
 従って、間近なところで人と接することを嫌がり、肌が触れ合
うのを避け、一定の距離を保とうとする傾向もあります。

 また、自分のすべきこと、今求められていることなど、懸命に
把握しようと注意をこらしています。他の人より、より多く学び、
より多く働かなくてはならないようです。従って、幼い頃には歳
に似合わぬしっかり者で、自分の考え方をしっかりと持った子ど
もに見えているでしょう。

 成長していくと、父親の監視の目から、次第に社会や人々から
見られていると感じ出します。従って、視線恐怖や赤面症などに
かかりやすく、「体臭は臭くないか」「汚い手をしてないか」な
どの恐怖心が出てくるかもしれません。
 また、タイプ1はエニアグラム性格学では、「長女気質」と呼
んでいますが、周囲の人間や物事の推移を見て、自分のすべきこ
とを察して先回りして行動します。

 例えば、母親が近所の人とおしゃべりしていると、「2時には
客が来るんでしょ!」と母親をうながします。母親がボウッとし
ていると、「鍋のものを焦がすよ!」と注意を喚起することもあ
るでしょう。従って、一瞬でもボウッとはせず、生真面目に、な
んでもしっかりとこなそうと努めます。

 タイプ1の子どもには、仕事や役割を任せると、信用されてい
ると思ってガンバってしまうのです。また、社会に出ても、仕事
への責任感が強く、命じられたことを確実にやり遂げる堅実な努
力家が多いので、順調な歩みをする人が多いと言えます。
☆キーワード「あなたは最後までやり遂げる人!あなたのこと信用
          しているよ! or   認めているよ」


2 転校生・タイプ4
 エニアグラム性格学では、タイプ4を「母親に意識を向けるタイ
プ」と分析しています。従って、母親が自分の生殺与奪の権利を持
っており、母の期待や意向に添わなければ、自分の存在は否定さ
れる恐れがあると感じます。

 ですから、新しい学校に行きたくなくとも、母親が登校すること
を願っているだろうと想像して、「行きたい!」と、心にもない嘘
をついてしまうことがあります。
 また、父親には本心を言うことができても、父親から母親に伝わ
ることを警戒して、父にも本音が言えないことがあるでしょう。

 タイプ4は、母親がきつい人であると、母親の監視の目を意識し
て、緊張しています。母親の前ではよい子を演じ、母親がいないと
ノビノビすることがあります。

 一方、母親に充分に受容されていると、母親を慕い後追いばか
りするかもしれません。母親の姿が見えないと不安になり、所在を
確かめます。 タイプ4の子どもにとって、母親とは電話がいつも
繋がっている状態、と考えると、その行動を理解できます。従って、
自分が何かを話したら、それを母親は聴いていたはず!  と思い込
んでしまうのです。母親が聞いていなかったと知ったら、とても失
望し立腹するかもしれません。

 タイプ4にとって、母親の不在は不安で、母親の視線は恐怖にも
なります。従って、どこにいても母親の存在を意識しており、母親
が病気にでもなると、自分も病気になったような気分になり、運命
共同体的です。

 タイプ4は母親とよい関係を結んでいると、友人も作りやすく転
校生気分にもなりにくく新しい場にも馴染みやすくなります。しか
し、そうでない場合は、母親を嫌い避けながらも母親の後追いをし
て、他に関心を向けられません。さらに、母親的な受容性のある雰
囲気の人に打ち解けやすい傾向もあります。

 タイプ4は周囲の人々が自分に関心を向けて、じっと見つめられ
ていると感じやすいので、転校生意識が強くあります。見つめられ
ていると言うよりも、監視されているみたいで怖くなってしまうこ
とさえあります。人から見られないように視線を合わさず、また、
関わらないようにと、さまざまに工夫します。

 教室ではなるべく目立たない隅を選び、声を掛けられても聞こえ
なかったふりをしたり、とぼけたりもします。能面のような仮面を
被り、誰からも関心をもたれないことを願っています。授業中はよ
く窓の外の景色ばかり見て、上の空でいることが多いのです。また、
他家を覗くなど、覗き見の多い子どもです。

 クラスの中にいても、自分だけ浮いているとか、しっくりと行か
ないと感じて、腰を落ちつかすことができません。ソワソワと落ち
つきのない子もいますが、ボゥとして自分だけの世界にはまってい
たり、自分の内面を誰にも晒さず、警戒心を強く出している子もい
ます。従って、タイプ4の転校生意識は、外から見ても、はっきり
と分かることが多いでしょう。

 また、母親にとっての「よい子」をするように教室でも模範的な
生徒で、真面目で勉強好きな子がいます。活発でやる気があり、委
員に積極的に立候補する子もいます。
 しかし、外に出している優等生の自分と本来の自分との落差が
大きくなると苦しくなります。そして、自己嫌悪して自分を責める
ようになるかもしれません。

 他の子とぶつかってばかりいる子もいます。細かいことでも難癖
をつけて、ひんしゅくを買う、きらわれっ子もいます。おとなしい
子もいますが、激情的で、破壊的な子も存在します。かなり多様な
人物群がいると考えてください。

 タイプ4は自己評価が低くなりやすく、落ちこぼれの自分、何も
したくない自分、欠点だらけの自分を、社会や人々が受け入れるは
ずがないと恐れます。無能で情けない自分がいたり、自分は人間失
格で、人間社会から締め出されていると思い込む人もいます。

 あるいは、全ての人間が敵に見えたり、かんじがらめにされて身
動き動きがとれず、自分のベッドから終日出られなくなった人もい
ます。
しかし、自己評価が異様に高く、心の中では他人を見下している傲
慢な子もいます。やんちゃとか、天真爛漫そうに見える子もいます。

タイプ4はエニアグラム性格学では、「末っ子気質」とも呼んでい
ますから、「末っ子のミソッカス」というような疎外感を持ちやす
いと考えられます。

 この家は自分の居場所ではない、仮の居場所で、本当の居場所は
どこなのかと、心の中で探しています。 従って、タイプ4にとっ
て、母親を中心にして世界が回っていますから、まず母親の受容力
が重要なポイントになります。母親がその子をありのままに受容し
て、その言動を理解できたならば、家庭は確実に安心できる居場所
になります。

 また、「末っ子」ですから、自分のやるべきことがなかなか見つ
かりにくいようです。家族の中で、自分のすべき役割があるとは考
えてみたこともなく、そんな発想を欠如しやすいのです。「自分に
できることは何もない」「自分にはそんなことを言う資格がない」
などと、いつも自分が何もできない人間だと、思い込むことが多い
のです。

 従って、「ある仕事を手伝ってもらえたら助かる」「あなたの特技
はここですね」と、しっかりと伝えていき、それを意識づけること
が必要な子どもです。
 一方、「こんなにもボクはできるんだ!」とできる自分を吹聴する
子どももいるかもしれません。が、それは「できない自分」がまずあ
るために、「できる自分」に驚いたり、できることを確認したり誇張
して、アッピールするのではと考えられます。

 さらに、成長していくと、人々が自分を見張っていると想像し、
自分に何かをせよと要求し、がんじがらめに束縛して来るという恐
怖心を抱くこともあります。また、タイプ1と同様に視線恐怖にか
かりやすい傾向があります。

 タイプ4の子どもは担任教師と共感できる世界を持つとか、担任
がタイプ4の子どもの性格を充分に理解して、受け入れるならば、
担任に信頼を寄せます。担任と、電話線が繋がれば、まず、信頼関
係が築かれたと考えることができます。 そうなれば転校生気分は
軽減されるでしょう。友人もでき、多くの暖かい仲間の中で、自分
らしさを発揮して、自然体に付き合えるでしょう。

 タイプ4は想像力が高いので、その想像力が裏目に出ると反社会
的な想像をしたり自己破滅的な想像ばかりします。その想像力が良
い方面に活かされると、オリジナリティーのある誰も考えつかなか
ったアイデアがひらめき、物語、絵画、音楽などに結実します。

 自分の中にある隠れた能力を見いだし、やりたいことを見つけた
タイプ4は確実に独自の世界を築き、着実に歩み出します。ですか
ら、昔、転校生気分があったことを懐かしんでいるだけかもしれま
せん。

☆キーワードは「君の気持ちはよく分かるよ!君のことをもっと理
                        解したい!」


3 転校生・タイプ7
 タイプ7にとって、家には自分だけを愛してくれるやさしい母親
がいるとわかっていれば、どこにでも陽気に出掛けます。しかし、
母親が病気にでもなると、遊びに行ったとしても気もそぞろで、公
園と自宅を忙しそうに、行ったり来たりするかもしれません。母親
の枕元から離れられず、終日、遊びに行けないとこぼすかもしれま
せん。

 母親と良い関係でいると、友人も作りやすく、新しい学校にも馴
染むのが早いでしょう。さらに、母的な雰囲気のある人にはすぐに
近づき、きれいなお姉さんには、へばりついて離れないので、すぐ
にタイプ7と判別できるでしょう。
 また、担任の教師が母親のような暖かい雰囲気があり、その人か
らやさしく声を懸けられると学校に行きたがります。しかし、厳し
いだけの担任であると、学校を怖がり、うつうつとして悩み多い
学校生活となります。

 担任が叱ってばかりで、関係が悪くなると、「せんこう」呼ばわり
をして、注意されると「お前なんかあっちいけ!」とか、「バーカ」
と捨て台詞を吐いて、反抗的というべきか生意気な態度を取るかも
しれません。驚くほど敵愾心の強い子どもに思われてしまうのです。
むろん、地味で無口で、おとなしく、いつも教師の顔色ばかりみて
いる子もいます。

 タイプ7にとって、世界は否定的で怖いところです。そうなって
は学校は「戦場」になり、誰もが敵になってしまいハリネズミ状態
になって毛を逆立てるしかありません。ケンカや騒動を毎日のよう
に巻き起こす恐れがあります。同じような仲間とともに騒動を起こ
して「学級崩壊」にまでなった例はよく聞いています。

 学校の先生は、ハリネズミ状態になった男児には、いつも「理解
ある味方」として接する必要があります。一度でも厳しく叱られる
とタイプ7の子からは、「敵」になってしまうので関係改善できにく
い傾向があります。

 ところで、タイプ7はなかなか本音を見せないタイプで、楽天的
だとか陽気に思われ、神経質さや怖がりなところを見せません。
広く浅く付き合った方が傷つかないで済み、その方が安全だから
と言えます。また、楽しいことだけで繋がっていた方が、やはり楽
しいので、苦しんでいる側面はめったに見せません。

 タイプ7の女子は、クラスに女友だちができると、軽快な気持ち
で登校できるでしょう。女の子たちから受け入れられ、評価される
と転校生気分から抜け出られるかもしれません。

 タイプ7は陽気に騒ぎ、クラスのみんなの関心を得たいと、面白
いことをします。話題が豊富でウイットに長けた子どもが一杯いま
す。ですから、心の中に転校生気分があり、疎外感があることが、
外からは全く分からないことが多々あります。むろん、いつも静か
で陰気そうに見える子もいます。

 一方。「転校生」はみんなからの関心を得られる立場ゆえ、転校し
てきた当初のほうが、元気でイキイキしている場合もあります。な
ぜならば、タイプ7は、「注目を浴びたい」「目立ちたい」という
欲求も強い気質だからです。

 しかし、しばらくすると、クラスの子たちは、その存在に慣れて
しまい新鮮味がなくなります。そさうなると注目を浴びなくなりま
す。そんな時期になると落ち込み苛立ちます。これは、タイプ3に
もよくあることですが、母親のフォローが必要です。十二分に甘え
させ、ともに遊ぶようにしたほうがよいようです。

 また、クラスの子どもたちの一挙手一投足をよく観察しています
から、ほんの少しの目配せだけで、無視されたとか、疎外されたと
考えることがあります。そして、“よい子”をずっと演じているタ
イプ7も少なくありませんから、陽気で軽快なタイプ7だけしか知
らないと間違えます。

 タイプ7も視線恐怖にかかりやすく他人の目を強く意識して、外
出もままならないほど、人間を怖がることがあります。それでも、
タイプ7は家にじっとしておれずに人目をさけて町をうろつき廻り、
夜になって、賑やかな場所を徘徊するかもしれません。

 エニアグラム性格学ではタイプ7を「長男タイプ」と呼んでいま
す。男女問わず男っぽくてドライでさばけた人柄の人が多いようで
す。家族を大切にして家族を楽しませたり活気づける役割を担って
いるタイプです。皆を楽しませると、自分もハッピーになれます。
ですから、気性が広く見え誰にでも親しそうに話しかける子に見ら
れてしまいます。警戒心の強い怖がりなところ、転校生気分のある
子には見られないようです。

 タイプ7は、家族の中での細かな用事、例えば、片付けものや洗
濯、掃除など長女タイプがすることをやりたがりません。タイプ1
は弟や妹の面倒をよく見ますが、タイプ7にとって弟は自分のライ
バルになりますから、いじめるかもしれません。妹が母親から可愛
がられていたら、妹にかなり惨いことまでするかもしれません。

 そして、タイプ7が明るく元気で家族に笑いを振りまいて、母親
の面倒見がよいと転校生気分は確実になくなります。また、ハッピ
ーな気分を持続できるようになると仕事にも我慢強く打ち込め、周
囲の人たちに親切になります。
☆キーワード「あなたがいるだけで明るくなれる!あなたは幸せを
        運んでくれる人!」