上級者用エニアグラム理論            

( 改定版2007/11/23)

    
 努力重視かチャンスを狙うのか?


1 君は努力を重視するか、チャンスを狙うのか?


 
何事も、成功するためには、日頃の努力が要ります。そして、チ
ャンスを狙い、素早く掴まねばなりません。どちらも大切なことで
すから一方だけを重視しても、良い結果は得られません。 
  
 しかし、一方を重視して、もう一方を忘れやすい人がいます。す
なわち、努力に意識が傾いてチャンスを掴むことを忘れやすい人た
ちがいるのです。それがタイプ2・タイプ6・タイプ1です。
 チャンスを掴むことばかり狙い、それに意識が傾きやすい人がい
ます。それがタイプ8・タイプ3・タイプ7という3つのタイプで
す。
 さらに、どちらを重視しているとは言えず、どちらにも意識が片
寄りにくい性格があります。それが残りの、タイプ5・タイプ9・
タイプ4です。

努力することが大切        2・6・1 世界と肯定的に結ぶ

チャンスを掴むのが大切     8・3・7 世界と否定的に結ぶ

どちらも大切でどちらとも言えない5・9・4 世界と両価的に結ぶ


 

2 努力型の人たち

  タイプ2・6・1の3つのタイプは、とかく努力することに精進し
て、チャンスを掴むことが下手になりやすい傾向があります。例えば、
サッカーの試合のために練習を怠らず、真面目に努力を積み重ねます。
しかし、練習をし過ぎて、試合の当日には体力が続かず勝利を得られ
ないことがあるかもしれません。

タイプ1は、最も陰ひなたなく努力を惜しまない気質です。東京オリ
ンピック(1964年)のマラソンランナー・円谷幸吉選手を、タイプ1と
判定しています。彼は厳しい練習を休みなく続けたために、疲れ切っ
てしまい、最後まで頑張れませんでした。トレーナーや監督の言いつ
け通りに練習するような人ですが、まだ足りないと進んで練習する努
力家です。自分を追い詰めるために、周囲からも追い詰められると、
強いプレッシャーがかかります。
 タイプ1は、優等生にならねばという思いが強く、晴れの舞台では
背筋がシャンとして、まさに立派な優等生として勤めることができる
人が多いのです。なお、タイプ1は最も、努力信仰の篤い性格です。

タイプ6も、小学校の運動会の練習を、友だちと一緒になって、休み
時間を割いて練習する傾向があります。他のクラスに負けまいと、
友だちを励ましつつ、自分も懸命に練習します。人並みに努力はしま
すが、ライバルがいたり周囲から追い詰められないと、努力しないか
もしれません。周囲が怠けていると、自分も努力せず、周囲がガンバ
ルと、急に焦りだしてガンバルのかもしれません。
 徒競走の練習をしている時も、負けると悔しがります。が、運動会
の当日に、友だちが勝ち、自分が負けても、それほど悔しがらないこ
ともあります。つまり、友だちと良い関係であれば、勝ち負けは気に
ならず、ともに泣き、ともに祝うことができる気質です。別名は「絆
の人」で、まさに、絆を大切にする人たちです。

タイプ2は自分のやりたいことには努力しますが、自分に甘くなり、
やる気が起きないと、テコでも動かないことがあります。教師の言い
つけを破り、規則を守らず、自分の決めた方法で努力することがあり
ます。指導通りに真面目に取り組む人もいますが、いい加減となり、
自己流に稽古するかもしれません。独自の方法を開発したり、自分の
個性を生かした努力とか、自分らしさを追求した練習をする可能性も
あります。
          
 なお、1w2と2w1は「努力信仰」が強くなり、2w3や1w9
では、少し薄れます。ウイングが違うと、価値観が違い、行動の仕方
も違ってきます。
 円谷選手のライバルであった君原健二さんを、タイプ2w1と判定
しています。彼は「反逆児」と言われ、トレーナーの指導には反発し
て、練習をさぼったことがあるようです。なお、君原さんは引退して
も自分らしい走りを追求しているとテレビで報道されていました。

 
この3つのタイプは、自分にも他人にも努力を強いる傾向がありま
す。結果よりも努力をしたのかを問う人たちです。従って、十二分に
努力して負けたなら悔いが残らず、努力しないで負けたとしたら、悔
いが残ります。
 また、勝利するにしても、正しい方法や節度ある態度で勝利しなけ
れば、その価値も喜びも半減します。真面目な人たちですが、精神性
ばかり強調して、合理的な判断力が低くなる恐れがあります。

 また、結果はやはり大切です。良い結果が得られなければ、何のた
めの努力なのか分かりません。それゆえ、目的がはっきりしない時で
も、ついつい努力してしまうことがあります。または、「努力のため
の努力」になってしまう恐れもあります。終には思い詰めて強迫的に
なり、自分をも他人をも追い詰めていくかもしれません。


3 チャンス型の人たち

  さて、タイプ8・3・7の3つのタイプは、とかくチャンスを掴む
ことばかり意識して、地道な努力に欠ける傾向があります。日頃の努
力を積み重ねなければ、勝利したり成功はできません。たとえば、サ
ッカーの練習は適当にやっているふりをして、試合の当日には張り切
って参加するかもしれません。                 

タイプ7は「ここぞ!」という活躍できる場になると、シャシャリ出
て、つらい練習には参加しないことがあります。運動具の後片付けや
掃除など、面白くない役目はスルリと抜けるかもしれません。しかし、
仲間が練習しない時に隠れて練習することがありますが、自分のポジ
ションが気に入らねば、活躍したい気持ちが薄れることもあるでしょ
う。タイプ7は要領がよくて、はしっこい気質です。汗水たらしてシ
ンドイ思いをしたくないほうです。努力しなくても勝利できるように、
チャンスだけを狙っている人もいます。しかし、瞬時に状況を掴む能
力が高いことがあり、ここぞという時に、チャンスをうまく掴むかも
しれません。

タイプ3にとって、汗水たらして努力する姿はカッコ悪く、スマート
に勝利しなければカッコよくありません。クラスの仲間との調和を無
視してまで、自分が目立つと、仲間たちからしっとされたり疎外され
る恐れがあります。みんなの動静を意識しながらも、自分の活躍でき
る場を探します。大勢が参加するものだと、自分の存在は目立たなく
なり、勝利も難しいので、他で活躍できるところを探します。また、
努力しても、それに見合った勝利を得られないなら、トライする価値
はないと考えます。

 
従って、少しの努力で難なく勝利できるものを捜し出す必要があり、
そうしたことでチャンスを掴むのがうまい気質です。また、一時の注
目を浴びたら、それだけで満足できることがあり、一位にならなくと
も、さほど気にしない傾向もあります。

タイプ8は、誰よりも強く誰よりも上に立たねば気持ちが収まらない
気質です。人知れず練習したり、自分を鍛えて、チャンスを逃さない
ようにします。命令されたり注意されるのを嫌い、人に合わせられな
いので個人プレータイプです。試合の当日に備えて、練習を調整して
体調を整え、準備も良いかもしれません。対戦相手の研究も余念なく、
全てのことに神経を尖らせて、万全の体制を取ろうとする人です。

 しかし、自らは努力せず、指図する側になりたがり傾向があります。
チームプレーならば、勝った時は、自分の指揮が良かったので勝利し
たと言えます。反対に負けた時は、自分の指図通りに「選手が動かな
かったから負けたのだ」と主張できます。タイプ8にとっては、指図
できる人間になるために、努力するのですから、指図できる立場にな
れないならば、そんな努力は無意味です。なお、織田信長をタイプ8
と判定していますが、「桶狭間の合戦」での勝利は、チャンスをうま
く掴んだためと考えられます。
              

 この3つのタイプにとって、すべては「結果のみ」です。十二分に
努力して、それで結果が悪ければ、そんな悲惨なことはありません。
また、努力せずに勝利できるほうが、優れていると考えます。

 自分だけの勝利や成功を追求する傾向があるため、欺いたり抜け駆
けするかもしれません。また、何かと策を巡すなど要領が良く計算高
いとも言えます。しかし、生きる目的を持ちやすく、意欲的でパワフ
ルになりやすいと言えるでしょう。

 さて、先の3つのタイプ(2・6・1)が、「努力することに意義
がある」としたら、こちらは「良い結果を出すことに意義がある」の
です。

4 勝利の女神はどちらに

  3つのタイプ(8・3・7)が良い精神状態ならば、日頃からよく
努力するでしょう。しかし、精神状態が悪くなると、努力せずに成功
することを夢見ます。あるいは、少しのエネルギーで、最大の効果を
得ようとするので、エネルギーの保存がうまいかもしれません。
 
 この3タイプにとって世界は否定的ですから、せちがらい世の中な
らば何に勝利したらよいのか、よくよく考えねばなりません。そして
できるだけエネルギーを使い切るのを避けるのが、彼らにとって正し
い判断なのです。
 人生は一回戦ではなく、次なる戦いの場があります。燃焼しないよ
うにエネルギー配分を考慮せねば、次ぎは負けてしまうかもしれない
と危惧します。     
 また、チームの勝利よりは、自分の勝利のほうが大切と考えます。
彼らにとって、誰もが自分の利益だけを追求して、自分を守るだけで
必死です。自分だけが生き残る方法を探すのは、正当な考え方と言え
るでしょう。

 一方、努力信仰のある前の3タイプ(2・6・1)は、エネルギー
配分を考えずに努力する傾向があります。そのため、効果的に目的を
達成できず、あるいは達成できても、持続させることができない恐れ
があります。

 
この3つのタイプにとって、世界は肯定的ですから、互いに協力し
合い助け合うことができると考えます。その関係が作られれば、たと
え負けたとしても、互いの努力と友情を讃え合うことができます。
 それゆえ、自分だけ勝利しても、チームが負けては喜べない傾向が
あります。彼らにとって、人々は持ちつ持たれつの関係で、みんなの
幸せは自分の幸せに繋がります。助け合う関係を作り出せば、生き残
れる確率は高くなりますから、これも正当な考え方と言えます。


   

5 どちらに理があり、利があるか?

  最後のタイプ5・タイプ9・タイプ4の3タイプは、人生の目的や
基本方針が定まりにくい傾向があります。何のための成功なのか、勝
利しても意味がないかもしれないと、いろいろに考えて、迷いが出や
すい性格です。従って、やる気がないとか、怠惰になりやすく、とか
く努力もせずに、チャンスも逃すかもしれません。

                      
     
タイプ4は、虚しい思いにとらわれやすい性格です。勝利して、それ
で何が残るのか、どのような意味があるのかと、いろいろに考えを巡
らします。そして、努力する価値はなく、エネルギーの無駄使いだと
見て、何もしなくなる傾向もあります。何もできない自分、徒労にし
かならない努力であり、「所詮、何もかも虚しいことばかり…」と考
えやすいのです。従って、努力もしないが、チャンスが来ても掴もう
としない人もいます。無欲で怠惰となって、人生が虚しく、長すぎる
ように感じることもあるでしょう。

タイプ9も無欲で怠惰になりがちな性格です。欲張って、人を蹴落と
してまで勝利したいという気持ちにはなりにくいでしょう。また、努
力はしても、すぐにあきたり疲れてしまい長続きしません。要領悪く、
姑息なことは考えたこともなく、のんびりと過ごしたいのです。また、
自分だけ突出すると目立ち、敵を作り出すかもしれません。従って、
そこそこの成功で満足しやすく、人間関係を壊すことなく、何事にお
いても穏便に済ませようとします。           
    
タイプ5も、世俗的なことには無欲になりがちな性格です。知恵者が
多いので、物事を達成するには、合理的な判断が必要だと考えます。
理にかなったことをすれば勝利し、理にかなわなければ敗退すると考
える傾向があります。しかし、自分は指示するだけで、重い腰を上げ
ようとはしません。タイプ5は生来に無欲ですから、自分が勝利した
り成功したいのではありません。指示できる賢い人間であることを示
したいだけなのです。

  物事を成し遂げたり、競争で勝利するには情熱が要ります。また、
それを達成しようすると、人間関係を壊すこともあるでしょう。敵
を作ることを恐れるようでは、成功など、おぼつかないことです。

 また、「理」だけでは勝利できないことがあります。例えば、時
の運、情熱、人の気合なども要ります。この3つのタイプは、努力
一辺倒にはならず、かといって、要領が悪いので、チャンスを逃す
かもしれません。競争の場から外れて、マイペースに生きるのが、
もっとも自分らしい生き方かも知れません。

 この3タイプは、欲が少ないので成功や勝利はおぼつかないかも
しれませんが、無欲であるため、かえって成功することがあります。
 また、この3タイプのように、人々より離れたところから、客観
的に見る人たちも必要です。上記、二つの生き方とは違う人々の群
れがあるため、人間社会は安定し、繁栄したのかもしれません。


 

6 三つの型

  さて、チャンス型の3タイプ(8・3・7)のことを、「狩猟型」
と呼ぶことがあります。例えば、狩猟に成功するには、弓や槍など
の技能に上手くなる必要がありますから、日頃の訓練は必要です。
しかし、どんなに上手くなっても、確実に獲物を得ることはできませ
ん。チャンスを掴むことが大切で、機が熟さないと成功しません。

 次に、努力型の3タイプ(2・6・1)を「農耕型」と呼ぶことが
あります。毎日、少しずつでも耕せば、いずれ収穫できる可能性があ
ります。

 そして、残りの3タイプを「採集型」と呼ぶこともあります。情報
収集を重視するタイプで、季節や気候、地形など、さまざまなことを
記憶したり、理解しようとします。そして、人々と争わず、平穏な生
活ができて、自他ともに生き延びる方法を探します。
           
 なお、実際の人々のエネルギー配分は厳密に3つには分けられませ
ん。どのタイプも、他のタイプの方法を取り入れています。これらに
傾きやすいだけに過ぎません。硬直的に考えないでください。


      狩猟型タイプ ‥‥‥ 8・3・7
   農耕型タイプ ‥‥‥ 2・6・1
   採集型タイプ ‥‥‥ 5・9・4
 

     


7 エネルギー配分

  さて、3グループごとに傾向を掴むことができます。つまり、エネ
ルギー配分が、どこにあるのか違いがあります。また、その違いがタ
イプの違いと考えられます。違いがなければ、どの人も同じ気質にな
ってしまいますから、当然のことです。 
  
 また、エネルギー配分の違いは各人で違います。精神状態の良い人
と悪い人がいますから、個々人でエネルギー配分は違います。そうで
なくては、同じタイプは全て同じ気質となってしまいます。人はそれ
ぞれに個性的ですから、常に「個性」をも考慮しなければなりません。


  《努力とチャンスへのエネルギー配分》
       
  ・タイプ2・6・1のエネルキー配分
     努力へ六分、チャンスへ四分
     努力へ七分、チャンスへ三分
     努力へ八分、チャンスへ二分 
                 
               人間的に後退していくと、 
            ↓  だんだんと、強迫的になる  
                  
     努力へ九分、チャンスへ一分
                         
  ・タイプ8・3・7のエネルギー配分
     チャンスへ六分、努力へ四分 
     チャンスへ七分、努力へ三分 
     チャンスへ八分、努力へ二分 
                  
               人間的に後退していくと 
            ↓  だんだんと、ずるくなる

     チャンスへ九分、努力へ一分
                          
  ・タイプ5・9・4のエネルギー配分
     努力へ五分、チャンスへ五分
     努力へ三分、チャンスへ三分
     努力へ二分、チャンスへも二分
              
               人間的に後退していくと   
            ↓  だんだんと怠けて意欲がなくなる

     努力へ一分、チャンスへ一分


    

 
  
                   
 
さて、上記のような傾向は意識しているものでなく、無意識的な
行動の中にあります。例えば、「私は努力を重視しています」とタ
イプ7の人が語ることがあります。しかし、日常の様子を観察すれ
ば、努力信仰型ではないことが分かるでしょう。タイプ2も「チャ
ンスを狙っているだけだ!」と語るかもしれません。しかし、その
人の日頃の言動を見れば、全てのことが「そうではない!」と語っ
ているのです。
 また、無欲で怠惰とはとても言えないタイプ5・9・4の人も、
実際には存在します。しかし、良い結果を得られ、勝利したとして
も、満足感を得られず、虚しい気持ちに襲われている可能性もあり
ます。
 気質とは、無意識的な言動のことで、エニアグラム性格学では
「性格(気質)=本能」と定義づけています。