上級者理論
      
                                  軍師タイプのタイプ5 (改定版2007/11/23)                

                               
                       注・以前のタイトルは「タイプ5と情報収集」です。
 
 
エニアグラムの他の研究者たちの著書には、これから紹介する
【タイプ5】に当たる性格がどこにも出てきません。当エニアグラム
性格学で解いている【タイプ5】と、ある部分は似ていますが、違っ
ている部分が多いのです。


 まず、当エニアグラム性格学での【タイプ4w5】が、【タイプ5】に
なっていることが多いと見ています。例えば、ある研究グループで
はタイプ5を「空虚さを避け、空虚への恐怖がある」と記載していま
すが、それはタイプ4の人たちに共通にあるものです。
 当方では、「虚無感」とか「無能感」や「無力感」、あるいは「寂寥
感」と表現しています。

 ある研究者の著書には「タイプ5は推量と解釈に頼り、現実と関
わることが少ない」など、タイプ4に共通にある傾向を述べています。
あるいは、「木を見て森を見なくなる」と書いている研究者がいます。
が、これもタイプ4の人が持つ傾向です。 


 
【タイプ5】は、常に実証的で現実的で、積み上げ型の思考タイプ
です。エニアグラム性格学では、「世界の中心にいると自己認識す
 るタイプ」ですから、自分の存在はいつも0Kであり、不安感や恐怖
感の少ない気質と考えています。
 また、遠くから全体を眺めて、常に事実のみを収集したがる傾向
 があり、客観性のみを追求する傾向の強いのがタイプ5です。ゆえ 
に、「木を見て森を見ない」とは考えられません。 
           

 
エニアグラム性格学では、タイプ5を「軍師タイプ」とも呼んでおり、
生来の資質が軍師向きです。軍師とは「木」も「森」も全て把握でき
 る性質があると考えねばなりません。
                                       

 ある研究者のタイプ5の記述には、「感情と向き合うのを恐れる」
などもあります。しかし、当エニアグラム性格学では、タイプ5は「
思考タイプ」であるため、「感情的になりにくい」と見ています。「感
情と向き合うのを恐れる」というのでは、感情的なタイプと言えるの
ではないでしょうか。なお、事実、自分の感情的なことで苦しむ傾
向が多いのがタイプ4です。しかも感情を外に発散できにくいため、
いつも自分の感情と向き合う、あるいは「自分と向き合う」という傾
向はあります。  


 以上から、当エニアグラム性格学が分析している「タイプ5」を特
に詳細に紹介する必要に迫られています。それゆえ、ここではタイ
プ4w5と比較しつつ説明を加えています。



           
 
        

                                        
1 情報を蔵のように蓄える・タイプ5
  

 
タイプ5はどんなことでも知っておきたい、知らねばならないと駆
り立てられる人たちです。より多くより深く、世界に起きる全ての現
象や知りたがります。
情報の獲得とキープに執拗で、知識として蓄
えていくこと自体が目的になっています。

 知識を蔵の中に蓄えて、蔵が満杯になったら、次の蔵を建てます
から、いつまでたっても満足できず、蔵を建て続けて行きます。終
生、情報を追い求めて知識を蓄え続けます。従って、正しい情報な
のか、虚偽の情報なのかもシッカリと把握しようとします。 
                   

 タイプ5は知的能力の高いことが、最も価値が高いと考えていま
す。学問好きで、学校や図書館や本屋などに行きたがります。最
近の傾向としてはインターネットでの情報収集も入るでしょう。辞典
類や全集ものをより多く持ちたがり、いわば「ウォーキング・ディク
ショナリー( 生き字引)」を目指していると考えられます。

 従って、書籍類はまずできるだけ買い揃えておきたがり、後か
らゆっくりと時間を取って読めばよいと考えます。しかし、なかなか
読めずに、ただ積み上げているだけの人もいます。

                                        
2 タイプ5は早起きで散策好き!  
 
                     

 
タイプ5の別称として「おじいさん気質」というものがあります。お
じさんゆえか、朝は早くから目覚めて、近所を散歩して実物観察
をします。書物や机上だけでなく、散策したり遠出して、農作物の
できや人々の暮らしぶり、季節の変化などもよく観察します。

 家や垣根、木々、飼っている犬、看板やその他、くまなく観察して
いることでしょう。また、散歩の途中で拾い物をすると、拾った日時
や場所なども日記に付けておく人もいます。いつどこで誰が何をし
たのか、正確に忘れないように記しておきます。

 また、書類その他は必ず、整理整頓しておき、番号を振って、何
かあったら必要な情報を直ぐに取り出せるようにしたがります。ど
こにどんな書類があるのか、正確に知っていなければ、必要なとき
にすぐに取り出せませんから、整理ができていることもタイプ5の
特長です。勿論、頭の中の知識も整理して把握していることでしょう。

 しかし、全ては無駄なことだと考えて、そんなことは一度もしたこ
とがないタイプ5も、当然ながら存在します。タイプ5は全てを知ら
ねばならないという、途方もない目標があるため、そこから早々に
降りている人も少なくないのです。

 従って、相当に怠惰で、どんな小さなことでも諦めてしまい、何か
をする前に結論を出してしまう傾向が多々あります。そして、結局は
何もしないという人が少なくありません。
  
 
                    
   
3 タイプ5は知らないとは決して言えない!

 
タイプ5は知的価値の高さが一番なのですから、他人を見るとき
も、頭がいいか悪い人かを判断の基準にします。また、自分も人
から頭の良い悪いを観察されていると考えます。従って、誰かに尋
ねられたり質問されると、「知らない」とは言えません。もし、知らな
いことであったら、「調べておきます!」と答えておき、すぐに新聞
や本を買って読むとか、その他の方法で調べることでしょう。

 仮に、タイプ5に対して「君は頭が悪いね!」とか「あの件を忘れ
たのですか?」「記憶力が悪くなったね」などと、知的能力に関する
ことを批判したり指摘すると、タイプ5にはかなりのショックになりま
す。
   

 タイプ5にとっては、どんなことも知っていて当たり前ですから、知
らないのは恥となります。ですから、「無知は最大の恥」と考えて、
物事を知らずにいても平気な人がいると、それはタイプ5にとって
は、とても「信じられない!」ことです。タイプ5にとって、「知識」や
「情報」の獲得は、最優先のことですから、優先順位がそうでない
人は、タイプ5に該当しません。


4 軍師タイプ!

 
なお、タイプ5のことを、エニアグラム性格学では、「軍師タイプ」
とも呼んでいます。権力者やリーダーにはなりたがらず、ただ、知
的能力の高さだけを追い求める人で、危機の時にその知識を役
立てられれば満足します。

 従って、「いつか役に立つだろう」と考えて、知識を蔵のように持
とうとするのです。また、軍師は、敵の情報をくまなく知る必要があ
りますが、自分や味方の情報はできるだけ、敵に知られないよう
にしなければなりません。

 タイプ5は相手方からの情報を得るだけで、自分の個人情報は
知られないようにしています。ですから、無口で愛想がなく、何か
尋ねられても、簡潔に答えるだけで、自分の個人的なことはあま
り話しません。

 また、熟慮しながら、言葉を選んで話すため、口ごもってなかな
か口を開かないという特長もあります。また、人から尋ねられてい
ないこと、余分なことは言いません。
 相手が意見を聞いているのに、極端には「分かりました」と言う
ことがあり、言葉のキャッチボールをしにくい傾向があります。

 おしゃべりなタイプ5も、たまには存在しますが、その話の内容
は、自分自身に関することではありません。極端に言うなら、自分
の話ばかりするのがタイプ4で、タイプ5は自分以外のことばかり
話します。タイプ4とタイプ5はよく間違えられていますから、この見
方を取り入れればタイプ誤認しないだろうと考えられます。

                                                                  

 5 タイプ5は自分の情報を流さない!

 
タイプ5は、自分を理解されたいとは思わず、相手がどんな人間
なのかだけは知りたがります。人間性よりも、職業とか仕事の内容、
自宅とか収入、交通手段と時間等々です。

 相手の情報を知ろうとして質問はよくします。しかし、相手からの
質問には簡潔に答えて饒舌にはなりにくいようです。

 
タイプ5をよく知ると、一種の「秘密主義」ではないかと予想される
ことがあります。本人はとくに秘密にしようと意識しているのではあ
りませんが、関心のない話題には乗らないからではないでしょうか。

 タイプ5にとっては、「人から理解されたい」という思いが少ないの
で、自分のことを語る必要に迫られません。また、人が自分のこと
を知りたがっているとは、考えられないのでしょう。

 タイプ5の秘密主義は、本能的なものであり、知らず知らず簡潔
に答えるのであり、性格=本能という意味が、ここでも明瞭です。

タイプ4が「存在の不安があるタイプ」なので、自分でも知らずに、
いつも自分の話をしてしまい、人から指摘されないと、そうしたこと
に気づかないのと同じです。タイプ4は「人から理解されたい」とい
う思いが強いタイプですから、この点からタイプ5と識別できます。

 そして、タイプ8も知らず知らず、自分の強さを誇示しているのに、
タイプ8自身が自覚していません。また、全てのタイプが同様に、
自分の言動にある大きな根源的な動機に気づいていないことが多
そうです。



 6 クールさは必須条件! 
                           

 
ところで、正しい情報を得るには、より客観的でなければなりませ
ん。より冷静に観察しなければなりません。ですから、タイプ5はい
つも一定の距離を置き、当事者にならないとか、参加者にもならず、
遠くから観察していると考えると、その言動が見えてくるでしょう。

 たとえば、騒動の当事者になっても、当事者ではないような発言
をするため、誤解されることがあります。また、人に近づくと、その人
から観察されることになるので嫌がり、あまり近寄りません。そして
自分だけの個室を欲しがり、一人で思索できる時間を必ず確保した
がります。

  また、クールでいるために、実際にも暑いところを嫌がり、冷たく
て澄んだ空気が流通しているところを好みます。その逆で、狭くて
空気が濁って淀み、人の息が充満して、暑い空気で満ちている場
所を嫌い避けます。

 実際にも、あるタイプ5の人は「人肌の暖かいのが嫌だ」と語って
おり、クールであることは必須条件になっています。あるいは、暑い
日は、「脳みそがとけそう!」な感じがして、とにかく暑さを嫌うと言
えるでしょう。 


7 タイプ5は密着した関係を避ける 
                      

 
人間関係も、長い付き合いをしている人と、今日初めて出会った
人とを区別せず、同じような接し方をすることもあります。誰とも等
距離で、誰に対しても、密着した関係にならないようです。

  例えば、あるタイプ5の女性は、
「大学は、男子だけしかいない
学部を希望していた」と言います。同性であると、密着した関係を
求められると思い、男子ならそうならないだろうと見たためです。
誰とも密度しない薄い関係でいたいらしく、それでも相手のことを
知りたがるのですから、一種の「人間一般コンプレックス」があると
考えることができます。

  職場では二次会に参加せず、一次会もお義理で出席している
だけで、うちとけず取り澄ましているので、声をかけにくい人たちで
す。宴席では、人に酌をすることなど全く気がつかず、たまに気が
つくことがあっても、お義理で仕方なく相手しているといった様子を
露骨に見せているかもしれません。

  一緒に旅に出ると、個人行動をとったり、一人でさっさと断りもな
く、先に帰ってしまうこともあります。あるいは、一方的に自分の関心
あることを話すだけで、相手と議論したり交流する気がないかのよう
に見えます。
                                 

 家族の中にいても、居間でおしゃべりすることは少なく、ご隠居さ
んのような雰囲気で、何かの収集に没頭していることが多々ありま
す。
  しかし、仕事は確実で、責任感が強いので、途中で投げ出すこと
はありません。無論、遅刻や欠勤などもなく、一応は模範的な社員
をしていることでしょう。

 
タイプ5は、タイプ1や4のような優等生的な雰囲気はなく、模範に
もされにくく、何かの時には役に立つ人物だが、目立たず、おとなし
げなので、人々の記憶に残りにくいようです。ただ、協調性がなく羞
恥心も少ないので、非常識的で奇異な言動をとることがあります。
それゆえ奇人変人扱いされることはあるでしょう。しかし、全体とし
ては、あまり気にならない人物のようです。人々との密着した関係
を嫌がるため、どのような人なのかわからず、理解されていること
は少ないと考えられます。   

                                           

                             
8 知らない分野はあってはならない!  
                    

 
さて、より多くより深く世界を知るためには、合理的かつ効率的に
情報収集できる方法を考えねばなりません。従って、まず総論的な
こと、総括的なことを知りたがります。そして、最初に収集しなけれ
ばならないこと、重要度などを考慮して情報を収集します。

 また、自分の知らない分野を埋めて行かねばなりませんから、苦
手なこと、興味のないことでも、とにかく収集していかなくてはならず、
自分の興味や関心事だけに集中することができません。興味が薄
いことでも、それなりにキープする傾向があります。
 

 全てのことを「知らねばならない」のがタイプ5ですから、そんな途
方もない目的があるため、一か所とか、得意なものだけに限定して
情報を収集するということは考えられません。

 他のタイプと異なるのが、この点であり、よくタイプ4w5と間違えら
れるようですが、タイプ4は関心が片寄りやすい傾向があります。ま
た、タイプ6w5は知識をひけらかしますが、タイプ5は知識があるこ
とを隠していることさえあります。
 また、タイプ2は自分の興味と関心に集中したり、そこから視野を
広げていきます。つまり、タイプ2が一極から多面的に広げていくタ
イプだとしたら、タイプ5はその逆方向となります。自分の知らない
分野があってはならないため、知らない分野へ、分からない分野へ
と空白を埋めるのが、タイプ5の特長敵なところです。


9 怠惰であきらめやすい気質! 
                        

 
他のタイプは自分が知っていることをもっと深く知りたい、追及し
たいと広げますが、タイプ5は「知らないことは、知らねばならない」
のです。従って、まずは、広く知るという傾向が強く、次第に深く追
及することになります。

  一方、タイプ7は広く浅く知る傾向が強いようです。または興味
が集中して、すぐに飽きてしまい、次もまた集中するというように、
広く深く、しかも継続させることが難しいところがあります。

 タイプ5にとって、タイプ7は後退の方向にいるタイプですから、広
く浅く知りたがる傾向は、元々内包しています。賢いタイプ5は知識
が広くもなり深くもなるようですが、そうでないタイプ
は、ただの収
集家に過ぎないかもしれません。

 エニアグラム図内の線の繋がっているタイプは、意外なところで
似ているもので、同じタイプ5とはいってもさまさまで、バラエティに
富んでいるのは他のタイプと同じです。

 従って、深く知るところまで手が回らないとか、あるいは不可能な
目的であるため、あきらめきってしまう人が沢山います。そんなタイ
プ5は、知識量も少なく怠惰で、何もしない人は予想以上にいます。
一日、テレビを見て情報収集したつもりで、それ以外のことには頓
着しないで、隠居部屋でグッスリと眠りこけている人もいます。

 タイプ5は「おじいさん気質」ゆえ、まさにおじいさんのような生活
をして、おじいさんのように淡々として、枯れた感じです。毎日、新聞
をせっせと切り抜いて、それだけで情報収集しているつもりの人もい
ます。
 しかし、まさに賢者で、どんな質問をしてもすぐに答えてくれる博学
の人もいます。あるいは、学者肌はしていても、学者だとはとうてい
見えない人もいるでしょう。
一方、タイプ4を「末っ子気質」と呼んでい
ますから、成人しても、おじいさんになっても、「永遠のティーンエイジ
ャー」とも言え「少年の心」を持つ人たちと言えるのではないでしょう
か。


10 傍観者になりやすい

 
タイプ5は何か行動を起こそうとする場合でも、メリットとデメリット
の両方を天秤にかけて予測しようとします。そして、ほとんどの場合、
あまりメリットがないと考え、自分がするほどのことではないとみて、
結局、何もしないことになります。

 タイプ5は、時間とエネルギーの無駄になるようなことはしたくないの
で、よほど価値のあるものでないと重い腰を上げません。また、相手
が自分の言うことを理解しないと思えば、何も言わず、注意も与えま
せん。もちろん、頭の中では理解力のないバカな人間だと思いつつ、
知らん顔をしています。人が失敗しても、それ見たことかと思いますが、
それも言わず顔色にも出しません。

 従って、タイプ5の顔の表情から何かの情報を得られることはない
でしょう。ほとんど、無表情に近く、熱情が感じられず、ある種の諦観
に達した人のようにさえ見えます。あるいは、口先だけで話している
ように見えることがあります。   

                         
 そして、自分の責任を回避したり、介入して無駄な軋轢を引き起こ
さないようにしています。従って、人に尋ねられない限り、自分の考え
を述べず、たとえ述べたとしても、単に自分の考え方を披露するだけ
に留まります。また、人に忠告とか支援などをせず、協力的な関係に
ならないようにしているところがあります。
 つまり、人とか物事に深く関わらないようにしており、傍観者でいるこ
とが多いのです。 
    
                

                                        
 
11 不測の事態に指示を与える人 
                        

  
 自分の人生に対しても傍観者になりやすく、他人事のように語る
ることがあります。しかし、危機的な状況が来たら、日頃の知識をフ
ルに活用して、的確な指示を与えることができるかもしれません。

  タイプ5はパニックにはなりにくく、危機的な状況になるほど、冷静
さや客観性が強く出てきます。それでなくては蓄えられた知識を生か
すことはできず、また、的確な指示もできません。
 

  また、タイプ5は「指示する人」であるため、指導する人ではあり
ません。自ら動かないのがタイプ5の特長であり、全体を遠くから見
て、全体を把握して指示せねばなりません。

 タイプ5は「攻撃タイプ」ゆえ、自分にふりかかる危機に対しては敏
速に反応します。もちろん、家族の危機にも対応して最も効率的で
合理的な判断力を示すこともできるでしょう。

 従って、その蓄えられた知識は、いつも不測のときのために蓄え
ているもので、目的はそこにあると考えられます。しかし、タイプ5も
成長していくと行動力がつき、重い腰を上げて活動的になります。
従って、非常に的確な行動ができ、人々を指導しているタイプ5もい
ます。

   
 
     
                                 

 さて、他のエニアグラム本を読んだ人なら、ここで述べている【タイ
プ5】と、相当に隔たりがあると分かるでしょう。あなたが別の性格診
断ではタイプ5であったとしても、ここではタイプ4に分類されることが
あります。そして、どちらが真実を語っているのか、それを判断するの
はあなた自身です。