仲間たちのつぶやきシリーズ                

                
                     

                                                   
                タイプ2w1の兄と弟 
                                                                     
by    琴の糸

私には二人の息子がいます。今年、長男は6年生、次男は3年生になりました。家族は4人で、全員がタイプ2w1です。エニアグラムを学ぶまで、二人の息子は全く違う性格だと思っていました。同じタイプだと分かった時、とても驚きました。実際、私の両親や友人からも「二人は似ていないよね」と言われてきました。
 そこで、兄と弟の日頃の生活ぶりから、対照的で似ていないと思われたことを紹介します。
 

    スイミングスクールの進級テスト 

息子たちは、同じスイミングスクールに通っています。スクールでは、2ヶ月に1度、進級テストがあります。観覧席から、母親たちは、子どもたちがテストを受けている様子を見ることができます。 

☆長男の場合 

当日、私が「今日はスイミングのテストがあるね」と声をかけると、「え、ほんと?」と、長男はちょっと驚いた表情をしました。一週間前に、先生から知らされているはずなのですが、すっかり忘れてしまったようです。そして、忘れていたと分かっても、気にしている様子は全く見られません。テストでは、一人ひとり順番に泳ぐのですが、並んで待っている間も、ニコニコと話をしたり、ふざけたりして、緊張している様子は見えません。泳ぎ終わるとすぐに「合格したよ!」と嬉しそうに教えてくれます。不合格でも少しがっかりした様子で、「だめだった!」と言うだけです。その後も、普段と変わりなく、すぐに友だちと遊び出します。仲の良い友だちが合格して自分が不合格でも、悔しがることはほとんどありません。長男にとっては、遊ぶことの方が大切で、進級テストはどうでもいいことのようです。

   
☆次男の場合

次男のほうは、進級テストが近づく頃になると、「今度はいつ?」と尋ねます。どうやらしっかりと前もって練習したいようです。プールに連れて行くと、私にアドバイスを求め、言われたとおり、一生懸命に泳ごうとします。当日は、「手をまっすぐ伸ばすんだよね!」などと言いながら、泳ぐジェスチャーをします。合格したい気持ちが、こちらに伝わってきます。そして、合格しなければという気持ちが強いせいか、本番になると体中に力が入ります。そのせいか泳ぎ方はメチャクチャで、当然にタイムも遅くなり、不合格になってしまいました。練習の時はとても上手に泳いでいたので、本人のショックは相当なものだったと思います。帰りの車の中で、「もう、ぼくはスイミングやめる!」と、家に着くまでずっと泣き続けていました。 

このように、次男はとても負けず嫌いです。家族でトランプをしているときも、負けると怒り出すのは次男のほうです。長男は、負けが続くとさすがに怒り出しますが、初めのうちは弟に負けても笑っているだけです。

講座で分かったのですが、短気で負けず嫌いなところが多いのは、1のウイングが重いのだそうです。長男のウイングは軽いみたいです。また、ウイング3の子ならば、勝負事に関心がないので、弟に負けても怒り出すことはないようです。同じタイプ2でも、そこまで違うのですから、他のタイプの人たちが全く理解できないのは、仕方のないことかもしれません。 

    水筒事件・その1 

長男が2年生で、次男が幼稚園の年中の頃のことでした。長男は学校の友だちがたくさんいて、いつも4〜5人で遊んでいます。バス通園の次男は、近くに友だちがいないため、兄たちと遊んでいました。 

季節は夏で、その日はとても暑かったことを覚えています。息子たちが外へ遊びに行くというので、長男に水筒を持たせました。数日後、近所に住む友人とバッタリ出会い、世間話をしました。友人から「そういえば、この間、二人を見かけたよ。○○くん(次男)が水筒を持って、お兄ちゃんの後について歩いていたよ」と聞かされました。水筒はステンレス製で、5歳の次男が持つにはやや大きく重いものだったので、体に不釣り合いで、友人にはおかしく見えたのかもしれません。後で聞いたのですが、長男が、弟に水筒を持たせたようです。

 
同じようなことが、日常的にいろいろなところで見受けられます。例えば、一つのリュックに二人のオモチャを入れて出かけたりします。そんな時、リュックを持つのは、次男です。スーパーで買い物をした時も、買い物袋を嫌な顔をしないで持つのも次男のほうです。どうやら、次男は荷物を持つのは嫌ではなく、それどころか持ってあげたいようなのです。長男のほうは、荷物を持つと自由にいろいろなものに触れないため、持ちたがらないのかもしれません。
 

 水筒事件・その2 

運動会の朝のことです。私は麦茶を作るのを忘れてしまい、子どもたちにスポーツドリンクを待たせました。学校の指導によると、どうやらお茶以外のものは禁止されていたようです。二人ともちょっと不服そうでした。長男は「お茶しかダメだもん!」と抗議してきましたが、水筒に入れて渡すと、怒りながらもそのまま登校しました。次男のほうは怒っている様子もなく、特に何も言いませんでした。
 運動会が終わり、二人の水筒を見ると、長男のほうは空っぽで、次男はほとんど飲んでいません。長男は「友だちに透明なお茶だねと言われたけど、これはおいしい水だよと言っておいた。○○くん(仲のいい友だち)と一緒に飲んだよ!」と、嬉しそうに話してくれました。
 一方、次男に飲まなかった理由を尋ねると、「すぐそばに先生がいて、においがするから」なんだそうです。お茶ではないことを、先生に知られるのを恐れているみたいです。
 

    長男は忘れ物の天才! 

長男が4年生で、2学期が始まって一ヶ月ほど経った頃のことです。風邪をひいて学校を休んだので、友だちが翌日の予定表を持って来てくれました。そこに、宿題があると書いてありました。ところが、次の日の予定表にも書いてあり、私は初めて、毎日のように宿題が出ていたことに気づきました。どうやら、長男は半年もの間、宿題を忘れ続けていたようで、あきれてしまいました。   

 
5年生になったときの担任は、私と顔を合わせるたびに「忘れ物が多くて困ります」と言います。ある時、クラスの子たちが楽しみにしていた音楽会が、長男のせいで中止になってしまったそうです。長男が鍵盤ハーモニカを忘れてしまったからです。「しっかり叱っておきましたが、人気者なので、しょうがないと許されてしまうんですよ」と先生に言われました。帰宅した長男に、クラスの子たちから文句を言われなかったか尋ねると、「ドンマイ!と言われたよ」と、少しも懲りた様子がありません。そして、その後も忘れ物は続いています。
 一方、次男は私に言われなくても、必ず宿題をやってから、遊びに行きます。
 

    世話焼き次男 

次男は、人の世話を焼くのも、とても好きです。その日、家には私と次男しかいませんでした。私は用事があり、外出するためにバスのカードが要りました。私の様子を見ていた次男は、「カード、中に入れておくね」と言って、鞄の中に入れてくれるのです。また、「靴を揃えて置いてあげたからね」と言うので、玄関に確かめに行きました。すると、履きやすいように、玄関の手前に揃えてありました。「今、○時○分だよ」「忘れ物はない?」など、準備をしている間、私の後ろにずっと付いて、いろいろ世話を焼くのです。まるで子供の世話を焼いているお母さんのようでした。 

この「世話焼き」は、学校でも発揮されているようです。家庭訪問では、担任の先生から、毎年のように似たことを言われます。「教室を移動するとき、遅い友だちがいると、一緒に最後まで待ってあげているんですよ」「友だちの工作を手伝ってあげていましたよ」などです。でも、なぜかいつも「プンプン怒りながら」してあげているのだそうです。
 長男が私の世話を焼くことは全くありません。母親の世話を焼くどころか、いつも世話を焼かされています。本当に大変です。

 
ほかにも、まだまだ 

兄弟のちょっとした違いは、まだまだあります。母親が不在ならば、二人が遊びに出かける時は、玄関扉に鍵をかけなければなりません。しかし、長男は忘れてしまいます。キチンと鍵をかけて出るのは次男です。予防注射で泣き叫ぶのは長男で、ぐっと我慢するのは次男です。外出している私に、二人から電話がかかりますが、早口で何をしゃべっているか分からないのは、いつも長男のほうです。それに比べると、次男は、途中で何を話していたのか分からなくなるほど、ゆっくりしゃべります。勉強中に、目が宙に浮いているのは長男で、黙々と勉強に励んでいるのは次男です。次男のほうが長男より、真面目でしっかりしているとよく感じます。 

    二人の関係 

二人は、とてもよく遊びます。ゲームをしたり、闘いゴッコをしたり、いたずらをしたり。仲良く遊んでいたかと思うと、すぐケンカになり、ケンカしていたかと思うと、「仲直りしたよ」と言って、二人して仲良く遊びに出かけたりします。この繰り返しです。 
 
 
次男を頼りにする長男 

長男は、日頃から次男を頼りにしているように見えます。私に出かける予定が急にできたことがあります。長男は、次男もサッカーの練習で家を出ることを知り、「行かないで!」と頼みました。一人になるのを嫌がります。

 書き出そうとすると、いろいろなことを思い出しますが、こんなこともありました。まだ、次男がベビーベッドに寝ている頃のことで、長男は2歳前でした。二人がグッスリと寝ているようなので、ちょっとだけならと思い外出してしまいました。帰宅してみたら長男がいないので驚いて探すと、なんと次男と一緒に寝ているのでした。ベッドには柵があり、2歳の子どもがよじ登るのは大変だったと思います。目を覚ましたときに誰もいなかったので、怖くなって、赤ちゃんでも頼りにしたのでしょう。今でも、長男にお使いを頼むと、たいていは「一緒に行こう!」と次男を誘っています。

☆次男は長男が大好き 

次男は、長男がおどけて面白いことをすると、とてもうれしそうで、兄の仕草を笑って見ています。長男が次々といろいろな遊びを考え出すところを、尊敬しているようです。外から帰ってくると、「お兄ちゃんいる?」と真っ先に聞きます。最近は、長男の「変な声」を真似します。母親や父親に、「お兄ちゃんだと思った?」と尋ねて、兄と同じように変な声が出せたと喜んでいます。「お兄ちゃんのどんなところが好き?」と質問すると、「楽しいところ!」と答えました。

    最後に 

今まで書いてきたように、息子二人は私からは対照的と思われる言動が見えます。しかし、よく考えてみれば、攻撃的なところなど、似たところもたくさんあります。一人ひとりを見ると、確かに2w1だと納得できるようになりました。
 私はエニアグラムを学んでから、もうすぐ4年になります。講座では、いろいろなタイプの人の話を聞くことができ、とても勉強になります。私とは全く違う性格の人だと思っていたら、同じタイプだったり、よく似ていると思っていたら、違うタイプだったりします。知り合いの二人の人が、ある時、同じタイプだと分かりました。しかも、この二人は面識がないのですが、お互いにそっくりなエピソードを巻き起こしていたのです。本当に驚くことがよく起こります。

また、現在の家族だけでなく、実家も全員が2w1だったためか、他のタイプのエピソードを聞くと、よく「目が点」になります。私には、絶対に考えられないことをする人や、思いもつかないことを言う人が、たくさん存在することがわかるようになりました。そのたびに「私はなんて狭い世界の中に生きていたんだろう」と実感するのです。   
 当然のことなのでしょうが、同じタイプでもいろいろと違いがあり、精神状態の良し悪しにも違いがあるみたいです。正確にタイプ判定ができるにはほど遠いですが、これからもエニアグラムを学び続けていこうと思っています。



               

    

  
   
補足説明    
                    y/りゅうとうまりこ 

 文の中に、「対照的」なる言葉が二つあり、下線をつけています。兄弟が対照的な性格だと書いています。しかし、「対照的」とは何を指しているのでしょうか? 
 色ならば、赤と青を対照的と言えるのか、少し疑問を感じますが、黒と白が対照的と言うならば、誰もが納得するでしょう。性格に関してなら、「強い性格」と「弱い性格」を対照的と言えるかもしれません。しかし、何をもって強いと言えるのか、どんなところを弱いと言えるのか簡単には判断できないことです。「テキパキしている」と「のんびりしている」ならば、比較的にわりきって判断できるかもしれませんが。

 たとえば、この兄弟の場合、二人ともスイミングスクールに通っています。二人ともスポーツが好きだとしたら、スポーツ好きではない子とは、対照的です。また、二人とも親たちから、スイミングに通いなさいと命じられたまま素直に疑問も持たずに通っていたとします。そうすると、対照的なのは、親に命じられても従わない子とは対照的です。叱られるのでイヤイヤしたがっている場合も対照的と言えるかもしれませんが。 

 二人とも、進級テストを受けていますが、テストは受けたくないと、頑固に拒否する兄弟がいたら、その子のほうが対照的です。家族でトランプをして、負けて悔しがる弟と、それほど悔しがらない兄がいます。しかし、トランプを家族としたがらない子どももいます。タイプ4のなかには、一人遊びをしたがり、自分の好きな遊びしかしない子もいます。また、タイプ5の中には、しばしば遊びなどしたがらない子も存在しているのです。 

 このように、「狭い世界」で比較しているために、「対照的」だと見てしまうことはよくあります。自分以外の他のタイプがまるで違う世界に生きていることを知らないためです。
 他のタイプは、自分の辞書には書いて無いことをする人たちです。思いがけない考え方をする人、考えられない価値観を持つ人たちが、自分とは違うタイプです。たぶん、エニアグラムを知って、初めて思い知らされることに違いありません。