仲間たちのつぶやきシリーズ               

 
       タイプ7w8の母親
                              by ミュジニー


 
結婚して、実家を離れたのは、十年以上前のことです。私の育った家には、両親と姉がいて、四人家族でした。父と姉と私の三人は、タイプ9で、母親のみがタイプ7です。母のことは、幼い頃から好きでしたが、成長するにつれ、他のお母さんと比較するようになりました。母親として見ると、どこか理解できない言動が多く、家族の中でも浮いた存在と言えるかもしれません。そこで、今回は、タイプ7w8の母親の日常を紹介してみたいと思います。

主婦としての母

 家事の仕方は、丁寧に細かくやるというよりは、素早く終わらせてしまうほうです。ですから、どこか雑さが残り、「これで掃除したの?」と言いたくなります。洗濯物も、なんだか「母には干してもらいたくない!」という不満が残ってしまいます。また、片付けや収納がうまくできないと、とても気になるらしいのですが、自分ではあまりしたがりません。家族にやらせようとする傾向があるようです。むろん、文句を言いながらも、家事をしているのですが、あまり得意な方ではないと思います。

 積極的で行動的な母

 母は、60代半ばを過ぎていますが、体操、パン作り、ガーデニング等の教室通いや、友人との旅行や食事など、毎日のように外出して忙しく過ごしています。パン教室では、30代の人たちに混じって習っています。初対面の人とも、抵抗なく明るく接することができるので、私はとても羨ましく思います。

  また、一度習ったものを、もう一度作りたがり、その方たちを家に招き、一緒に作っているようです。その材料は、全部、母が用意しており、気前のいいところがあります。私は、動き出そうかなと迷っているうちに時間が過ぎ、タイミングを逃してしまいがちなので、母の積極的なところ、すぐ行動に移すところは、良い刺激となっています。

 母は、数年前までは、父を誘って、国内外を問わず、よく旅行していました。しかし、父は70歳を過ぎて、わずかながら体に不自由を感じ初めたのか、少し出不肖になっているようです。最近では、母は父を誘わず、3〜4人の同級生グループで、頻繁に国内旅行に出かけるようになりました。なかでも気の合う人は、自分とよく似ている元気のよいタイプのようです。

 父は、釣りが好きでよく出かけますが、近頃、冬の釣りは避けるようになり、大半を家で過ごすことが多くなりました。外出しない日が続くようになると、老人特有の鬱状態になりかけます。母は、旅行するにあたり、父の世話の準備などについては、結構しっかりと用意します。しかし、さぞかし父は寂しい想いをしているのではないかと想像するのですが、父は、母に対して何も言わないようです。

人との関わり方

 母は、学歴や職業など、外見で人の価値を判断する傾向が強いと思います。関心が向くところが、性格とか人間性よりも、履歴書に載っているようなことです。そんな類の話をしていると、即座に、頭の中にインプットできるようです。
 当然ながら、我が子の成績に対しても、厳しい母親でした。テスト結果や成績が良いと、とても機嫌がよく、名前を呼ぶ声まで変わってしまう程でした。そして、自分の思い通りの「勉強のよくできる子」の方をかわいがってしまうきらいがあります。

 また、人の話を聞く姿勢が全くないときがしばしばあります。私が、愚痴を言っても、じっくりと聞くことができません。私が、どうしても聞いてもらいたくて、やっとの思いで話にこぎつけたとしても、母は、自分のことで頭の中が一杯らしく、耳に入っていないようなのです。突然、違う話をしはじめたり、心ここにあらずといった表情をするので、それを目の当たりすると、愕然としてしまいます。また、母が、悩みを聞いてくれてるような気がする時も、私の気持ちをあまり理解できないらしく、感情移入しているようには見えません。そこで、いつの間にか母には相談しなくなっていました。

 物との関わり方

 
私が中学校を卒業するまで、母は、私の担任や習い事の先生に届ける中元や歳暮を欠かしませんでした。近くに住んでいた先生には、自宅まで届けるのですが、私も連れて行きたがるので、それがとても苦痛でした。

 また、母は買い物好きで、他人から薦められると、ついつい買ってしまうところがあります。実家には、かなり以前から、いろいろな珍しい電化製品がありました。例えば、電動の浴室掃除機がありましたが、使いづらくて誰も使いませんでした。ビニール袋等を密封するための機器がありましたが、それは主に私が活用していました。美容関係では、スチームを出しながら、フェイスマッサージをするホームエステ用の機器がありました。一昔前の美容院で見かけた「おかま」と言われた機器もあり、姉と私とで、よく髪を乾かしたり、カール用に使っていました。しかし、本人はすぐに飽きてしまい、長く使うことはありません。

 美容院では、業務用シャンプーはもちろん、業務用のホットカーラーまで注文してくることもあります。雑誌に載っている物で、気に入ったもの物が見つかると、すぐに雑誌社に問い合わせます。頂き物で「美味しい!」と思うと、「いつか買おう」ではなく、すぐにお店に電話して取り寄せます。また、旅行から帰ると、お土産もので両手一杯となるのが常です。

 負けん気の強い母

 
知り合いが、かなり高価そうな指輪をしているのを見て、自分も負けじと思ったのか、翌日にはデパートの人を自宅に呼びました。そして、高価そうな指輪を購入してしまった時は、天晴、と思いました。
 特に、持ち物においては、人に勝っていたいようです。何かを頂いて、そのお返しをする時には、頂いた物よりも、豪華そうなものでないと、気が済まないようなところもあります。


ユーモアのセンス

 
私の娘が実家に行くと、母は孫と一緒に遊ぶことより、自慢のパンやケーキを何種類も作るのに時間を費やします。孫とじっくりとコミニュケーションをとることはあまりしません。孫の世話をするというより、時折からかったり、つまらないことを言っては笑わせているようです。その場にそぐわない面白いことを単発的によく言い出します。

 私が娘を出産する際にも、陣痛が始まり苦しんでいるのに、母の話で、なぜか笑えてきたことを覚えています。どこか、ユーモアのセンスを持っているので、その場の雰囲気を明るくしてくれる存在です。

母と母性

 実家に行くと、私が家に帰ってから慌しく夕飯の支度をしなくていいように、1,2品作っておいてくれます。また、何でもかんでも持たせて、手ぶらで帰らせることはありません。しかし、感謝の言葉や何かを期待しているところがあり、私が言い忘れでもしたら、それをずっと覚えています。そして、何かの折に思いだし「折角してあげたのに……」という気持ちからなのか、不機嫌になってしまうことがあります。少し恩着せがましいところがあります。

 私は、10才の頃、盲腸で入院したことがあります。母は、家業が忙しいことを理由に、入退院の時に、来てくれただけで、父親と祖母に任せっきりだったように思います。それでも問題が起きなければ、良かったのですが、生憎、私は病院食が食べられなくて、入院しているにもかかわらず、痩せこけてしまいました。もう少し、病気の子供を心配する気持ちを、何かの形で表現して欲しかったのですが
……
。それに引き換え、父が骨折で入院した時は、毎日のようにおかずを作って運んでいたように思います。

見栄っ張りなところ

 母は、昔から美容院にはよく行く方で、評判のよい店と聞けば、少しぐらい遠くても、必ずかけつけます。私の担任と個人面談する時は、美容院で髪をセットして、新しい洋服で出かけるのが普通のことでした。

 毎年のように、同窓会に出席しますが、目立つ「勝負服なるもの」を用意します。先日も、ブランド品を扱っているお店に、姉を伴って行きました。母が、服をどの色にするべきか迷うので、姉が黒のほうを薦めたら、「同窓会に黒なんていやだわ!」と、ごく当たり前のように答えたそうです。

 私が小学生の頃のことですが、学校の身体測定の日には、その日のために特別に用意された「フリルいっぱいの下着」をしなければなりませんでした。運動会には、お弁当を他人から見られるだろうと見越して、かなり張り切って作ってくれました。お寿司、サンドイッチ、おにぎりだけでなく、おかずも、和洋取り揃えて豪華なものにします。しかも、あれもこれも食べるよう強要するので、午後からは、いつもお腹がパンパンになって苦しかったものです。今では笑い話になっていますが。


怖がりなところ

 
大抵は元気な母ですが、何か心配事があると、とたんに食欲が落ち、げっそり痩せます。また、無口で表情が少なく、どっしりとした感じの人を見ると、「怖い!」と、よく口にします。母のほうが、怖がられているかもしれないのに、自分が周りに与えている攻撃的なところは気がつかないようです。}

 そして、外出先で、トイレに入る時、鍵を掛けるのが怖いらしく、どこか子どもっぽくて、かわいらしいところもありました。昔、デパートなどのトイレに入った時に鍵をかけないで、「見ててね!」と、子どもの私に言ったことを覚えています。

 家族が風邪をひくと、うつることを心配するのか、近づこうとしないばかりか、ちょっと迷惑そうにすることもあります。
気分が悪い時に、私と姉が話をして盛り上がっていると、機嫌が悪くなることもあります。娘たちの仲間に入りたいのに、素直に加われないようです。しかも、良からぬことを言われているのではないかと、被害妄想に陥ってしまうらしいのです。

最後に

 私は、「笑顔で、じっくりと話を聞いてくれる包容力のある母親」をずっと求めていました。しかしながら、このような母親像とは違い、母は、とても怖い面と、子供っぽい面が同居しています。ですから、私は、そんな母親であることを、ずっと不幸に感じていたような気がします。その現実に、苛立ちさえ覚えていました。身内に対しては厳しく見てしまうのかもしれませんが、他人であったら許せるようなことも、ついこだわっていました。それでも、自分の母親だから仕方がないと、深く考えることを避けて来たのも事実です。

エニアグラムを学び、タイプ7の行動パターンを知るうちに、「母親はタイプ7では?」と、ふと思い、いろいろ検証していくと、「やっぱり!」でした。
 やがて、その時々の言動にある深層心理が理解できるようになり、それまでの謎が解け始めました。そして、母の性格を、正面から見つめ直すことができるようになったと思います。

 最近では、母に何か言われて嫌な思いをしないように、母をいつも気に掛けようと心がけています。タイプ7は、周囲のみんなの関心を自分に引きつけていると、満足できる性格だと分かったからです。それが功を奏したのか、私が接し方を少し変えたことで、母の態度が、とても柔らかく感じられるようになりました。

 理想と現実とのギャップからくる苛立ちも、こうして今では、随分緩和されています。そして、複雑だとばかり思っていた母親の性格が、意外にも単純に思えてきました。毎日を楽しく過ごして、いつまでも若々しくいられる母を羨ましくも思います。

 
親子、兄弟姉妹という関係は、夫婦のように、相手を選べません。離婚をしたり決着をつけられる関係でもありません。ほとんどの場合は、生涯、付き合っていかねばならない関係です。私のように、価値観の違う身内を持っている方は、少なくないと思います。家族関係を円滑にしたり、関係を改善するためには、相手にばかり期待をしないことも、大切ではないでしょうか。

 また、家族だけでなく、相手のタイプによって、こちらの対応の仕方を変えると、良い方向に行くかもしれません。そんなことも学び、少しずつ理解が進んでいますが、そのためにも、より一層、エニアグラムを理解できるようにしたいと考えています。そして、相手のタイプを正しく判定できる
を養っていけたらと思います。