仲間たちのつぶやきシリーズ                                 

     
             タイプ9の子どもたち 

        
 
        by 月見 朗

 同じタイプでも、さまざまなバリエーションがあり、それを「個性」と言うのでしょうが、タイプ9の子どもたちも、一括りにはできません。私は20年以上も教師をしていますが、タイプ9の子どもたちの多くは、おとなしくて、あまり目立たず、記憶に残りにくいと言えるでしょう。しかし、同じタイプとはとても見えない子も、多々います。
 そこで、今回は、タイプ9の子どもたちの学校内での様子から、大まかに
3つに分けて、箇条書きにして紹介します。                   

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自信のないおとなし過ぎるタイプ9の子どもたち

4月は、担任が変わり、教室も変わります。友だちが作れず、教師に近寄り、身体接触してくる甘えんぼうの子どもたちがいます。しかし、それを遠巻きにして眺めているだけで、近寄らないのは、タイプ9の子どもたちによくあることです。人見知りがあり、幾日も付き合わないと、親しげな様子を見せません。

授業中も手を上げて答えることは、ほとんどありません。ノートを見ると、正確に書き出しているので、理解していると思って指名すると周りを見回してから、自信なさそうな声で、答えます。  

絵や工作などはほとんど最後までやり遂げますが、指示した課題通りのもので、あまり個性的とは言えない作品が大半です。  

教師が、他の教室に物を届けるなどの頼み事をすると、断ったり、嫌そうな顔をすることはありません。しかし、うれしそうにすることもなく、やる気満々に見える子もいません。  

運動好きな子が多く、体育の授業では、指示したことなら、すぐに取り組みます。しかし、指示されないことに取り組むことはなく、上達したいという意欲があまり見られません。  

宿題や提出物など、教師から指示されたことは忘れずにします。家に帰ると、まず宿題をやり終え、明日の用意をしてから、遊びに行くようです。なお、この子どもたちは、9w1に多く、9w8の子どもたちは、母親から「勉強をやりなさい」とせっつかれても、なかなかやろうとしないようです。

教師から、計算問題などが出題されると、他の子たちがやり始めても、なかなかやろうとせず、ボオーッとしている子がいます。ほとんど9w8の子どもです。そこで、「今日は、お残りしてもいいよ」と言うと、途端に、あわててやり始めます。「スロー・スターター」と言えます。


★活発なタイプ9の子どもたち

元気なタイプ9の子は、朝、登校中に教師と出会うと、自発的に「おはようございます」と声をかけてきます。

机の中や身の回りの整頓がよくでき、クラス全体で取り組む「整頓の時間」でも、すぐにやり終えます。そして、隣の子とおしゃべりをして、他の子がやり終えるのを待っているほどです。  

級友とトラブルを起こすことはなく、気まずい雰囲気になると、すぐに身をひいてしまうので、何事も起きないまま平穏に学校生活を送れるようです。

・球技が得意な子が多く、男児では、チームのキャプテンに選ばれたり、野球ならば、ピッチャーで4番を打つ子もいます。そして、女子が打席に立つと、ゆるいボールを投げるなどして、気を使うので、女子に人気があります。

ある子どもが、日記に次のように書いています。「(長縄に)ひっかかっても、みんながいやなことを言わなかったので、よかった。」 この日記にあるように、どうやら、いつも他の子たちを意識しているようで、クラスの子たちから好意的に見られていると安心でき、また、意欲も増すようです。


★優秀なタイプ9の子どもたち

学習態度は真面目で、テストの予告をすると、熱心に練習してきます。そして、ほとんど満点を取りますが、それを他の子に吹聴することはありません。

学業が優秀なので、授業中に理解できずに立ち往生している子に、そっと教えたりします。そのため人望があり、学級代表になれると思われるが、自分から立候補をしません。周りの子に押されて立候補したり、推薦されるまで待っています。

絵や工作を好む子は少ないのですが、たまにはいます。そんな子は最後までていねいに取り組み、作品展に出品されることもあります。どちらかというと、写実的な描写が得意で、抽象的な描写とか、想像して作り上げるものは不得意だと思われます。


 この文章を書くために、これまで出会ったタイプ
9の子どもたちを振り返り、思い出そうとしました。しかし、記憶に残りにくく、なかなか書き出せませんでした。

 タイプ9の子は、与えられた課題に対しては、誠実に最後まで取り組むため、学校内での評価は高くなるでしょう。また、習い事やお手伝いなど、親から言われたことや日課として決まっていることも真面目に取り組みます。そのため、親たちも安心しているようです。

 しかし、自分から率先して取り組まず、指示されないと気がつかない傾向があります。また、多少は熱心に練習することがありますが、熱中度は他のタイプの子どもと比べると、高いとは言えません。例えば、タイプ2や4や7などの中には、かなりの熱中度を見せてくれる子どもがいます。

 なぜ、彼らは、消極的なのでしょうか。1つには、「自分のやりたいことがつかめない。わからない」があるように思われます。好き嫌いがはっきりしていないようで、「これが好きだ!」と思えたら、のめり込めるかもしれません。しかし、どんなことでも、マイペースにはやれないらしく、周囲の思惑ばかり気にしており、周囲と軋轢が起きないようにと、いろいろなことで消極的になっています。

 2つ目には、自信がつきにくいように感じられます。他人の視線や評価が気になっていると思われます。
 3つ目には、「問題意識の低さ」があると考えられます。与えられた課題なら、最後までこなすことができるが、その中の問題点を見い出せません。また、うまく行かない場合も、その原因を追及せずに、立ち往生したり、迂回してしまうことが多いと考えられます。教師や専門家に頼ってしまい、自分の創意工夫があまり見当たりません。

上記は、私の知っている子どもたちのことで、タイプ9の人たち全てに当てはまるのか分かりません。問題点を把握できて積極的に行動できる大人がいると思います。タイプ9が成長するには、自分の能力を発揮できる分野を探し、思い切ってアッピールするなど、エニアグラムでの説明では「積極性がつく」ことのようです。

 周囲の大人たちのきめ細かい指導と励ましが必要です。やりたいことが見つかった子どもは励まし、まだ、見つからない子には活躍できる場を共に探してあげる必要があります。また、抽象的な言い方をすると理解できにくいらしく、何事にも、注意点をわかりやすく説明するのが大切だと思います。