仲間たちのつぶやき                                  

          
        タイプ4の子どもたち

       〜私の出会った思い出深い子ども〜  
 
                                      ー小学校教師としてー
                                       By 星の王子

  私は現在、,小学校の教員をしています。今年で10年目になります。
タイプ4の私は,クラスの子どもたちのことがなかなか理解できず,子ど
もたちとの関係もうまくいかず,悩んでばかりいました。私は教員には
向いてないのではないか。私のクラスの子はかわいそうだ,と元気ハツ
ラツ自信タップリの他の先生を見ては, 落ち込んでばかりいました。

 そんな時,エニアグラムと出会いました。そこで自分自身のタイプを知
り,子どもたちのタイプも何となくわかるようになって来ました。そして
子どもたちが取る行動の意味や、その行動の裏側にある心理を知ること
ができるようになって来ました。「子どもたちの個性に応じた接し方」
も、エニアグラムでは学ぶことができます。


 今回は,私が今までに出会った子どもたちの中で、印象深いタイプ4の
子どもについて書こうと思います。彼らは私と同じのタイプなので,エニ
アグラムを知る前から、何となく分かり合える存在と感じていました。 


 F1に夢中なY君

 3年生のY君。授業中はいつも鉛筆をF1カーにみたてて走らせています。
ある時は鈴鹿サーキット,ある時はモナコ,と彼の頭の中には世界各地のサ
ーキットがインプットされているようです。そんな時,先生の話は聞こえ
ていないので、「おーい、Y君」と現実の世界に呼び戻さないといけませ
ん。一斉に指導すると、必ず2テンポくらい遅れてしまいます。

 忘れ物は度々です。グループで何かに取り組む時には、みんなの足手ま
といになってしまいます。そんな時,友だちが少しでも責めようものなら、
大粒の涙をこぼし,赤ん坊のように、オイオイ泣きます。言葉のシャワー
をあびせると,ドンドンかたまって、なにも返事しなくなります。

 彼と出会ったころ,全く掃除をしない彼を、厳しく注意したところ,彼と
幼なじみの女の子が、「先生,Y君には優しくしてあげなくちゃダメなんだ
よ」と言いました。私より彼女のほうが、彼への接し方を心得ていました。
しばらくして,彼との距離を適度に保ち,「わたしはあなたを理解してい
るのよ」という態度をしめしていたら,Y君から話しかけてくるようになり
ました。でも、いつも三択クイズ式で私に尋ねてきます。

 例えば、「先生,問題です。昨日僕どこへ行ったでしょう。1番,動物園,
2番,水族館、3番科学館」という感じでした。そして、私から話しかけ
ると、ニコニコしながら何かぶつぶつ言い、すーっとどこかへ行ってしま
います。レーサーのセナが死んだ時,彼は心から悲しんでいました。


 想像力豊かなMちゃん

 3年生のMちゃんは、とにかく何をするにもゆっくりです。そして,いつ
どんな時でも自分のペースを乱しません。彼女が急いでいる様子や、大声
で騒いだり笑ったりしたところを見たことがありません。いつも落ち着い
て(というか動きがない)控えめでかわいらしい女の子です。

 授業中は,何か他ごとをしているわけではないのですが、何となく別のこ
とを考えていて,話が全く耳に入っていないことがあります。彼女はとても
想像力が豊かです。(空想をよくするとも言うかな)夏休みに地下鉄に乗
って、絵画教室へ行った帰りに、迷い子になったそうです。持っていたテ
レホンカードで電話をかけようとしたら、その電話が使えません。辺りは
暗くなり,泣きながら,ただ歩き回っていたそうです。歩きながら、自分が
いなくなっても、家族がいつもと変わらない様子で夕飯を食べたり、普通
に生活したりする様子を想像したようです。そんなことばかり思い浮かび、
よけい悲しくなった,と日記に書きました。

 Mちゃんは、意外にもユニークなところがあり,日記に「きのうわたしは,
上手にまきグソをしました」と絵も書いて来たこともあります。ある日,
隣の席の男の子(タイプ7で学習障害児)が、彼女のかわいいシャープペン
シルを、勝手に使って壊してしまいました。ちょっと障害のあるその男の
子は、彼女の肩を掴んで、「ごめんね!」と、何度もしつこく謝りました。
彼女は泣きながら、かたまってしまいました。私は男の子を引き離しまし
たが、彼女は怖がってトイレの個室にこもってしまいました。私が「席が
えするから」と言い、それを約束すると、やっとトイレから出てきました。

 私から見ると,彼女はとっても感性豊かで、かわいい子なのですが,彼女の
母親は「あの子のよさは私には理解できなくて・・・」と言っています。で
も彼女を理解しようと、いろいろな本を読んでがんばっていらっしゃいま
す。


 ヒステリックなR君

 1年生のR君も、やること成すことすべてゆっくりペースです。算数の時
間では、他の子が5〜6問やり終えたころに、「先生,どこやるの?」と尋
ねます。みんなが「さようなら」とランドセルを背負うころに、やっと用
具をしまい始める,といった具合です。でも,私や友だちが手伝ってあげよ
うとすると、ヒステリックに「いいの。僕、自分でできる!」と,遅くても
自分でやらないと気が済まないようです。

 とても優しいところもあります。家庭訪問に行くと,「先生が通る階段に
毒クモが居たから退治しといた。(毒クモではないと思うのだが)きれいに掃
除もしといた」など。何でもゆっくりなのですが、絵や粘土工作だけは一
番に取り掛かり,なかなか面白い作品を作りました。作り始めると素晴らし
い集中力で、話しかけても耳に入りりません。好きなことに熱中します。
粘土のときには,想像を働かせて物語を作ります。粘土で作った動物などを
動かし,一人でブツブツつぶやいたり,ニコニコ笑ったりしています。


 以上,私が出会ったタイプ4の子で,特に印象に残っている子のエピソード
を思い出して書きました。タイプ4の子は、学校では「ぜんぜん話を聞い
ていないやつ」とか、「やる気がない」「どんくさい」、または「何を考
えているのか!」と、批判の的になりやすいと思います。

 でも,彼らと同じタイプ4の私は,そんな要領の悪すぎる彼らを愛しく思い
ます。頭の中でいろいろな考えが渦巻いて,うまく表現できないのです。学
校教育の中に、もっとゆとりが生まれ,彼らの良さを引き出せるように、待
ってあげられるようになればと願います。

 今のところ,私がタイプ4の子に接するときに気をつけていることは、3
つあります。
@ 決して押し付けない。
A 指示を徹底したいときは「○○さん!」と注意を引きつけてからにする。
B 具体的には書けませんが,「あなたのことわかっているわ」という雰囲気
  をかもしだすこと。 

 ところで,私は詩が好きなので時々、子どもたちにも読んで聞かせていま
す。タイプ4の詩人はたくさんいるようですから、選ぶのに事欠かず、この
タイプの気持ちにピッタリくる詩はたくさんあります。タイプ4の方の詩で
すが、この詩を、紹介した3人の子どもたちに贈りたいと思います。 


       あなたはひかり
                      みつはし ちかこ

    そのままの あなたが好きよ
    自分の弱さと 戦いながら
    転んだり 傷ついたりしながら
    不器用に生きている あなた
    がんばって がんばって
    あなたの中に あたしをみつける

    人は みっともないから 可愛いと思う
    恥をかくから あったかいと思う

    好きなものを だいじにして
    あきらめないで 捨てないで
    あなたはひかり
    輝くほしの 一粒のひかり