仲間たちのつぶやき                          

   

     私の知っているタイプ1の人たち

                                           ナウシカふみ 
 
 私にとって不思議な人たちがいました。どういうことを気にしたり、
何を大切にしているのかは、だいだいは見当がついたのです。ただ、
どうして、そんな性格の人がいるのか、それが長年の疑問でした。エ
ニアグラムを知って、それがタイプ1に当たる性格だと分かったので
す。私の家族や 親戚にはタイプ1は、一人もいません。身近にはい
ませんでしたから、どんな生活をしているのか、人生に何を求めてい
るのかなど、さまざまな点で分からない人たちでした。しかし、学校
や職場、その他の社会活動の場では、タイプ1の人たちが結構いまし
た。私から見ると、真面目過ぎて近寄りがたく、軽口をたたけない人
たちです。でも、一緒に仕事をすると信頼できることが分かり、頼り
にもできる人たちだったのです。そこで、私から見たタイプ1の知人
を9人、紹介したいと思います。
                                      
       
 一人目 
 私が八年間、働いていた某事務所で、十歳年長の男性がいました。
八年間一度も休むことがなく、遅刻も早退もなく、判で押したような
正確な働きぶりでした。朝、顔をチラリと合わせて、「お早う!」と
挨拶を交わし、帰りには「お先に!」と言ったり、「ご苦労さま!」
と声をかけ合うだけでした。
 彼の机の上はいつも同じ状態に整理されています。また、鉛筆を愛
用しており、削り機を使わず、小刀で削っていました。しかも、短く
なると補助具を付けて使い、2センチぐらいになっても捨てずに、
箱に保管しています。 報告書などの間違いを消しゴムで消し、書き
直すことが多いので、消しゴムの屑を羽根で払います。姿勢もずっと
変わらず、仕事がない時も、じっと何か別の書類を見つめています。

 彼は見積もり書を作成して、見積金額の計算間違いがないか、私に
確認させます。全くと言っていいほど、計算間違いはないのですが、
そんな人でも、一年に一度ぐらいは、間違えます。私が間違いを指摘
すると、かなりギョッとして、青ざめた顔つきになります。また、私
の計算があまりに早いので、キチンと確認しているのかと疑い、ある
日、試されました。わざと二箇所、間違えて私に手渡しします。消し
ゴムで消された痕があり、試されていると分かったのです。

 趣味は、祭りの写真を撮ることで、各地の祭りを調べては、休日に
なると出向いていたようです。殆ど、他の職員とも私語を交わさない
ので、彼の人となりを知る機会はありませんでした。一日中、話をせ
ずにいられるようで、無口でおとなしい人という印象がありました。
多分、タイプ1w9に当たるのでしょう。
         
  二人目
 あるタイプ1w2の二十代の男性は、大学で事務職員をしていまし
た。パーマをかけており、頭髪がいつも綺麗でした。仕事の行き帰り
はバイクです。長身で足が長くて、 端正な顔だちの人でしたから、
黒の革ジャンバーに黒のブーツを履くと、颯爽として見えます。

 そして、いつも、ここに居たと思ったら、すぐに別の所に出掛けて
行きますから、じっくり向き合うことが少ない人でした。しかし、話
かけると、いつも丁寧に答えてくれ礼儀正しいので、私の方でも、丁
寧な口調になったほどです。

 もうじき結婚するというので、彼女のことを話して欲しいと言うと、
恥ずかしそうな笑顔で少しだけ話してくれました。が、突っ込んで聞
くと、それには答えてくれません。仕事の話となると、饒舌になるの
に、個人的なことは話そうとしませんから、彼の生活ぶりは分かりま
せん。ただ、彼が書いた書類などを見ると、小さくて律儀な字が、ぎ
っちりとつまっています。

 ある日、その彼からFAXが届きましたが、なんと、右端の二列ぐ
らいの字がはみ出して、読み取れませんでした。それでも、なんとな
く、書かれていた字の予想がついたので、彼には黙っていました。一
週間後に、たまたま読めなかった字のことを告げると、彼はその夜、
すぐに電話して来ました。なんと、二列の消された字を、一字一句、
確認して私に再読させるのです。大した用件が書かれている訳ではな
いのに、そこまで確認するとは、タイプ1らしいなあと感じたもので
した。


   三人目
 タイプ1w2のある中年女性は、自然食品の共同購入会の仲間です。
そこには環境部会というものがあり、私と彼女はともに環境問題をテ
ーマとした学習をしたり、いろいろな取り組みをしていました。私が
調べ物をしたり、真面目な議論をしていると、近寄って来て、熱心に
話しかけて来ます。
 しかし、そこに、騒々しい女性が割り込んで来て、世間話や芸能人
の話に移り変わると、彼女はその輪の中から抜け出してしまうのです。
どうも、そのような話は苦手というか、 嫌いのようです。ときに卑
猥な話となると顔つきが変わります。でも、それを周囲の人たちに悟
られずに、自然とそこから居なくなるのです。

 彼女はいつもセカセカと大股の早足で歩き、肩幅がガッシリとして、
色黒で健康的な雰囲気の女性です。でも、馴染みにくく、学習会に入
らなければ、彼女と会話する機会はなかったでしょう。
                                 
       
  四人目
 ホームレスの人たちを支援する組織があり、そこで知り合ったタイ
プ1w9の男性は、賢くてしっかりとしています。医療班にいて、冬
は野宿する人たちの支援に忙しく、それ以外では、行政に対して要求
運動をしたり、一般の人たちへの支援を呼びかけるなど、手弁当で活
躍しています。
 しかも、それが十年以上に渡り、「人権賞」で表彰されたほどです。
問題点や運動方針、 取り組み方など、自分の考えていることや、す
べきことを文章にまとめて、それを定期的に公表しています。いつ、
どこで何をしたのか、記録も綿密です。

 これは彼のライフワークになっており、きっかけは駅近くで、ホー
ムレスの人たちが凍死したニュースを聞いて、義憤に駆られたことだ
そうです。粘り強くて、自分の信念を曲げない生き方は、尊敬に値し
ます。でも、彼と会話すると、いつもなんだか話がかみ合わないので
す。信頼しているのに、なぜか気持ちの通い合いができません。私が
何か話しだしてもそれに対して受け答えはせずに、自分の考えをトウ
トウと何だか忙しそうに語ります。
 どうして、そのようになるのか、ずっと疑問でした。エニアグラム
を知って、価値観とか物事の視点が、まるで違うためであると知りま
した。  

       
    五人目
 タイプ1w2の彼女は普通の主婦です。子どもは二人で、夫と四人
暮らしです。コーラスグループに入っており、毎年、一度は発表会を
開いているので、彼女の美しい歌声を聴くとができます。主に賛美歌
が多く、タイプ1好みらしい、美しい旋律の曲目ばかりです。実際、
彼女の全体の雰囲気は清純そうで、いつも丁寧な物腰で、上品な奥様
ふうとも言えるでしょう。
 白いサテンのブラウスで、黒のロングドレスで歌うときは、ほんと
うによく似合っています。なお、タイプ1の知人たちは、ロックが好
きだとか、レゲエだとか、とにかく、うるさそうな音楽を好む人は少
なく、ナチュラルな美しいメロディを好むことが多いのではないでし
ょうか。

 さて、彼女は、えくぼのある笑顔をいつも絶やさず、誰に対しても、
やさしくゆっくりと受け答えしますから、多くの人たちから、よくで
きた人だと思われているはずです。私も、とても話しやすく、奥様ふ
うとは言っても、どこか少女のような可憐な印象さえあります。
               

   六人目 
 ある二十代のタイプ1w1の男性は、小柄で洗い立てといった感じ
の服装で、いつも清潔な雰囲気があります。郷里を出て、警備会社に
勤務しています。ボクシングジムに通って、筋肉トレーニングをして
いるので、体はガッシリとしていますが、外から見ても逞しい感じに
は見えません。はにかみ屋で、少し無表情で、口数も少なく、落ち着
いた雰囲気があり、誠実な人柄が滲み出ています。

 郷里にいる妹の心配をして、妹思いであることが分かります。なぜ
ジムに通っているのかと訊ねたことがあります。すると「自分を鍛え
上げたい」という趣旨の回答がありました。

 タイプ1の人たちは、ガンバリ屋さんが多いように見えます。例え
ば、自分にできないことを克服しようとします。怠けないように、次
々に自分に難題を課して行くのです。本当は少しも怠けていないのに、
本人には少しの怠けも許せないことになっているように思われるので
す。登山に同行したことがありますが、自分に叱咤激励していました。


   七人目 
 現在、アナウンサーをしている五十代の女性は、華やかな雰囲気が
あります。タイプ1w2なのに、2のウイングが重いので、まるでタ
イプ2のようです。長くタイプ2と間違えていたほどで、明るくて庶
民的で、会話の受け答えが 流暢です。とても、行動力のある元気な
人です。
 また、一時期、自宅を開放して、テーマを決めて話し合う「交流広
場」のような場を作っていました。話し合ったことは、テープに録音
され、それを文章に起こしていました。月に一度は開いていましたか
ら、テープ起こしは大変だったようです。しかも、それを参加者たち
のうちの希望する人に印刷して送付していたのです。すごい作業量で
す。彼女を見ていると、自分のすべき仕事を作り出すのがうまいなあ
と思います。本当に積極的な人で、怠惰なところは全く見られません
が、どうやら、これはタイプ1の人に共通の傾向のように思われます。
     
  
    八人目 
 近所に住む六十歳に近いと思われるタイプ1w9の男性がいます。
垣根の剪定をよくします。剪定しすぎて、枝が丸裸のようで、寂しい
垣根に見えます。私は通りかがりに、目が合ったように思ったので、
挨拶をしようと声を掛けました。しかし、聞こえなかったらしく、少
しも気づいてくれません。
 そんなことが三度もありました。もしかして、聞こえていたのに聞
こえなかった振りをしているのかもしれません。私と同様に、近所付
き合いが苦手らしく、いつも伏し目がちに歩いており、声をかけにく
い雰囲気を漂わせています。アナウンサーをしている女性と、同じタ
イプとは思えないほどで、少し暗くて陰気とさえ言えるでしょう。

 庭は雑草が生えないように、除草剤を散布しているらしく、庭は閑
散としています。確かに、ゴミや枯れ枝もなく、雑草も繁っていない
ので、清潔そうな佇まいには違いありません。広い庭なので、掃除が
行き届かないために、仕方なくそうしていると思われます。

                   
    人目
 自然観察指導員をしている女性は、1w2です。休日だけでなく、
求められれば、近くの森に一緒に出掛けて、木の名前や生き物た
ちの生態などを教えてくれます。小柄で細い体つきですが、元気で
活発です。早口ですが、口調がはっきりとして、分かりやすい説明
をしてくれます。また、この活動はほとんどボランティアであり、
社会に役立つことがしたいと語ったことがあります。 


 タイプ1とは言っても、さまざまに大きく違うので、同じタイプ
として一つに括ることができないと思うほどです。ですから、共通
の性格を見つけられないままだと、同じタイプだと分からなかった
でしょう。

 また、私の友人の娘さん(タイプ1w2)が、女の子と遊ぶより
も、男の子と一緒になって、男の子のような遊びを好むようだと聞
いています。幼稚園では、朝の登園の時に、友だちの父親に話しか
けて、母親には全く関心がないかのようで、その母親から「無視され
ているようだ」と聴かされたこともあります。


 タイプ1の人たちも多様だと思いました。陰気に沈んでいる、元
気のない堅物なタイプ1がいるかと思えば、華やかに活動している
人もいます。話し掛けにくい人もいれば、やさしさや賢さが表面に
出ていて、相談できやすい感じの人もいます。

 私がエニアグラムを学んで最初の頃に考えていたタイプ1は、と
ても狭くて、イメージが貧困だったようです。しかし、たくさんの
タイプ1を知るごとに、少しずつですが、イメージが広がって行き
ました。これからも、もっと周囲の人たちをよく見て、観察力を深
められるようにしたいと思います。