栽培方法
 栽培方法については研究が進んでいるので、それに従うのは当たり前ですが、それと、それらを自分の栽培環境に、いかに具体的に適用するかは別問題です。そこには、テクニックや工夫が必要でしょう。
 栽培については、とてつもなく難しいとは思いませんが、かなり気難しく、初心者向けの植物ではありません。生かすことはできますが、葉枯れや乱れが起きやすく、観賞価値が損なわれます。少なくとも観賞に耐えられる状態に作ろうとするなら原則、セオリーに忠実、かつ、植物や用土の状態を見て灌水や管理ができるクラスの人でないと難しいと思います。
 2006〜2008年頃には、栽培している人もぼつぼついて、いろいろなサイトやBLOGで見られたのですが、最近は検索しても古い記事しか見つかりません。いったいどうなっちゃったんでしょうね。枯らして捨てられちゃったんでしょうかね。
 今も生きていて更新しているのは、私のサイトだけだったら寂しい限りですね。

栽培環境・基本管理
■日照は50%遮光

 自生地は峡谷の谷底のため日照時間が短く、冷涼な気候なため、成木であっても、わが国(特に西日本太平洋ベルト地帯)の夏季の直射日光はキツいです。植物園でオリのようなものに入っているのは、(貴重な木だという意味もあるが、)夏場は、寒冷紗をかけて遮光するという意味もあります。
 屋外で、朝の日光とチラチラと日光が当るよう大きな木の根元に置いて育てる方がベストです。そういう環境がない場合は、特に盛夏は、枠を作って遮光率50%の寒冷紗で遮光して育てる方がよい思います。夕方、日が傾くと思わぬところに西日が差し込むので西側が遮蔽されているところがいいでしょう。

 この植物の優れたところは、長時間の直射日光を必要としないというところです。このため、冬季などは、室内で青々とした姿を楽しむことができます。
 なお、遮光下日陰が良いなら、年中室内でも十分育つと思っている方が多いと思いますが、まずムリというのが私の実感です。売るための宣伝文句としては、「室内でもOK」にしないと売れませんが、室内ではだんだん衰弱していきます。


夏の栽培場所。屋外の樹陰下

夏の栽培場所。寒冷紗による遮光ハウス

■風当たりの強いのは好まない

 前項のとおり、風当たり良いところに自生しているわけではないので、風当たりの強いところ(たとえばベランダとか。)での栽培は難しいと予想できます。
 屋外に置くような場合、風囲いでもしなければ、多少は風が吹くので、どの程度ならOKかどうかがよくわかりません。

■用土の過湿に弱い

 マニュアルでは、表土がかなり乾いてから(表面から5cm・・・それは乾きすぎちゃうか。)、水をたっぷり与えるという灌水方法とあります。あまり植物に詳しくない人であれば、鵜呑みにして、極端な灌水をしそうな気がします。
 森林下では、永い間に堆積した葉や枝、幹などによりフカフカの土壌を作っており、排水もよく通気も良い環境です。一般的に過湿に弱いというのは、根の呼吸が活発なため、用土の通気が悪くなると根腐れが起きやすいということを意味します。砂漠の植物とは違いますので、決して水が嫌いというわけでありません。
 加えて、どうも、被子植物の広葉樹に比べ、葉からの蒸散も少ないという感じです、このため、根から水を大量に吸わず、用土の水分が少なくなりにくいということもあるように思えます。
 また、用土に用いられるピートモスは、下手をすると過湿に陥りやすい用土でもあります。植物の特性として、ピートモスを使わなければならないのであれば、注意が必要です。我が家で観察したところ、1回灌水すると1週間を経ても、表土は湿ったままで、とても乾くという状態になりにくいようです。
 この植物において最もタブーは、用土に水を滞水させることです。鉢皿をおいて栽培するのは、まったくの愚の骨頂です。
 購入したての木の根元には飾りのためバークチップが敷いてあります。このために、どの程度乾いているかがまったく分からないので、表面のバークチップは半分ほど取り去ってしまいます。
 成長期には屋外栽培を基本として、鉢は直接、地面に置くのではなく、伏せ鉢の上に置いたりして、鉢穴を空中に置きます。
 室内に置く場合は、用土がいつまでも湿っぽく、どうしても鉢皿を置くために水がたまりやすい(灌水後すぐに水を捨てても、時間が経つとまた溜まる。)ので注意が必要です。屋外に鉢を置き、鉢皿を使用せず、様子を見ながら灌水すれば問題がありません。こういう環境では、雨ざらしでも問題ありません(梅雨期を除く)。雨が降れば、灌水を控えればいいのです。
 なお、梅雨期において雨ざらしにすることは、水分のコントロールができないので、避けなければなりません。梅雨期だけは、雨の当らない通風を図った場所に置くべきです。

■成長期には毎日葉水を与える

 前項では、用土の過湿に注意すべきと書きました。この植物は、用土の過湿を嫌いますが、空中湿度や葉水は好みます。空気が乾燥すると、葉がねじれたり曲がったりしてきます。
 成長期の天気の良い日には、夕刻に葉水を与えるとよいでしょう。
 「用土の過湿を嫌うのに、どうやって水をかけるの?」と疑問を持つあなた!あなたの疑問は当然です。簡単にいえば、用土ができるだけ濡れないよう斜めや横から、ホースを使って植物の地上部にさっとシャワーすればいいのです。室内では無理な話なので、成長期は屋外管理が基本の植物と思ってください。

肥料
 この植物は、見た目に比べてかなり肥料を好みます。
 私たちが良く使う肥料は、成分的にはチッソ(N)、リン(P)、カリ(K)を含みます(肥料三要素)。市販の多くの肥料はこれらのバランスがとられているもの、またはリンがたくさん入っているものがほとんどです。
 自生地の環境から、この植物はリンを嫌います。このため、この植物用に肥料を選ぶ必要があります。肥料のチッソ(N)、リン(P)、カリ(K)比の記載を見ながら、観葉植物用等のリン比率が比較的少ない肥料を選びます。(注意:観葉植物用でもリンが多い肥料はいくらでもあるので注意が必要。)
 なんでもかんでもアンプル状植物活力剤を使う人は、下表に記載しましたが注意が必要です。
 以下は、市販の主要肥料とチッソ(N)、リン(P)、カリ(K)比です。評価の○、×は、予想であって、結果はなんら保証しません。

硫安の粉末を少量与える。
 我が家では、こうして選んだ「ハイポネックス・ハイグレード観葉植物」の1000倍希釈、また、「硫安」の1000倍希釈を、成長期に月1回与えています。まったく問題ありません。
 少し邪道ですが、「硫安」の粉末を鉢に沿ってほんの少量与えることもあります。


商品名 N:P:K 評価 コメント
配合化学肥料
ハイポネックス原液 6:10:5 × 一般の植物にとってはとても良い肥料です。でも、ウォレマイパインにはPが多すぎていくらなんでもダメでしょう。
ハイポネックス・ハイグレード観葉植物
7:4:4 もう少しリンが低いといいのですが。配合化学肥料では、これ以上P比が低いものは多分ありません。
プロミック観葉植物 10:8:8 × バランスとりすぎてダメでしょう。
マグアンプ 6:40:6 × ウォレマイパインにはPが多すぎていくらなんでもダメでしょう。
ハチパラエース等白粒肥料 10:10:10 × ウォレマイパインにはPが多すぎてダメでしょう。
化学肥料
尿素
硫安

Nのみ Nのみの即効性の肥料です。水に溶き与えます。与えすぎると過剰障害も招く可能性があります。濃度さえ気をつければOKでしょう。灌水によってすぐに亡失するのも特徴です。
有機質肥料
菜種油粕
5:2:1 油粕単独は、有機質のチッソ肥料です。与えてから発酵し、効き始めるまでに時間がかかります。このまま与えるのはどうかと思います。
発酵油粕、花ごころ、油粕玉肥 4:6:1 × 油粕にわざわざリン肥料である骨粉を配合して発酵させたものです。ウォレマイパインにはPが多すぎてダメでしょう。
ウォレマイ専用
自家製発酵油粕

5:2:1 何のことはない単に「菜種油粕」を発酵させたものです。市販の「発酵油粕」は、骨粉などリン酸肥料を混ぜて作られていますので、ふさわしくありません。そこで、自家製の「菜種油粕」単用の発酵油粕を作ったということです。
ただし!めちゃくちゃ臭すぎます!
植物活力剤
アンプル状植物活力剤 いろいろあり × !!安易に与えないよう特に注意!!
いろいろな商品がありますが、中身の主成分は肥料です。リンがとても高いものが多いため、成分を確認するべきです。元気にするつもりが、首を絞めることになります。

用土・移植
■用土は酸性のもの


垂れる枝を、冬、室内で楽しむ。
ジュラシックリスマスツリーバージョン2009
 自生地の土壌は、酸性でpH5.5〜6ということです。かなりの酸性です、幸いにしてわが国では、酸性の用土は手に入りやすいでしょう。ピートモス(pH未調整のもの)、鹿沼土等です。
 以下は、私たちの身近にある用土のpHです。

用土pH
自然
軽石7.0中性
鹿沼土5.75弱酸性
赤玉土6.25中性に近い弱酸性
川砂6.5中性に近い弱酸性
加工
パーライト7.0中性
バーミキューライト7.0中性
有機
腐葉土6.0弱酸性
ピートモス4.0酸性
 
ちなみに、マニュアル上の用土は、
ピートモス 60%
パーライト 40%
です。 なるほど。酸性に振った用土配合です。でも、ちょっと軽すぎます・・。これでは、鉢が倒れちゃうかも。


■移植

 ウォレマイパインは、あまり根が広がらないため、移植は数年おきで十分との旨が記載されています。
 我が家では、入手から2年目に入り、状態も非常によく、根がかなり張っているのが用土の表面から分かるようになりましたので、移植しました。
 移植適期は、完全に霜が降りなくなり、春の芽が動く前、4、5月ということですが、冬季は観賞のため室内管理でもあり、根鉢を崩すつもりもないので、2月の暖かい日に行ないました。屋外管理の場合は、セオリーのとおり4、5月が良いと思います。
 鉢は、プラ深鉢の8号で、現在の鉢より2号UPです。鉢が大きくなりすぎると、用土が増えて過湿になりやすく通気も悪くなりますので、このサイズがまず適当でしょう。より大きいほうがいいだろうという考え方は、逆効果です。
 用土は、マニュアルどおり、
ピートモス(pHを調整していないもの。) 60%
パーライト 40%
です。
 そのままでは、ピートモスがぱらぱら過ぎて配合できませんので、ピートモスは数時間前にやや湿らせておきます。
 ウォレマイパインを抜いてみると、かなり根が張っていて、根にすでに動きが見られます。
 根があまり強い植物でなく、現在と同じ用土を用いるので、根鉢を崩さずこのまま植えます。
 なお、用土が残った場合は、用土が締まって減ったときのため残しておきます。


病気・害虫・生理障害
 管理の不適切による生理障害以外では、病気・害虫はあまりないようです。ただ、情報があまりないために、異常な状態になったとき対処が非常に難しいのはしかたがありません。

葉先の枯れ
 葉先が茶色くなり枯れるのは、ウォレマイパインに最も出やすい生理障害です。これが発生するのは、基本的な栽培方法、栽培環境が間違っています。そのレベルでは、以降の栽培はおぼつかないでしょう。
 原因は、
●水不足
●用土のpHが不適切
●肥料の欠乏あるいは過剰
が公式アナウンスです。
枝落ち

まず、枝の先端の色合いが変化して枯れ始め、枝の根元(幹に付いている部分)に向かって進行します。

枯れ込みが止まらず。枝の根元(幹に付いている部分)まで到達し、枝が幹から枯れ落ちます。
 一部の枝の先端の色合いが変化して枯れ始め、枝の根元(幹に付いている部分)に向かって進行します。枯れ込みが止まらず。枝の根元(幹に付いている部分)まで到達し、枝が幹から枯れ落ちます。
 特に問題がない状態でも、成長に従って下枝は落ちます。
 枝落ちがどんどん進行していく場合は、生理障害と思われます。公式アナウンスにおける「枝落ち」と同じ障害なのかが、はっきりしませんが、
 公式アナウンスによる原因は、
●日光不足
●水の過剰あるいは水不足
です。
日焼け

 直射日光にいきなり当たる環境に移した時などに発生する。発生部分は変色し、度合いが強い場合はその部分は枯れる。
油点状斑点病 (仮称)

葉表

葉裏
 葉に油のシミの様な斑点が現れます。酷くなると、葉裏のその部分はカサブタ状に盛り上がります。
 原因や対処については分かりませんが、生理障害というより、真菌による感染症状ではないかと思われます。
コナカイガラムシ?
 晩秋〜冬に、極めて小さなコナカイガラムシ?の発生が見られました。それも僅かでしたので、ハンドリングで擦り落としました。

雑記

 あまり知らなくていいことなんですが、ウォレマイパインの繁殖方法は、一般的に種子による実生です。
 実際は、ナンヨウスギと同様に挿し木といった栄養生殖も成功率は高くありませんが可能です。挿し木苗が、色々なところに出ているようです。
 ただ問題は、ナンヨウスギの場合、枝を挿し木して発根・活着しても、その個体は枝が枝として伸びるだけで樹にはなりません(横たわって伸びていくだけ。ナンヨウスギは、大樹になると下枝が枯れて落下しますので、枝の寿命が来る可能性もあります。)。このため、挿し木は、貴重な天芽かひこばえから作る必要があります。
 ウォレマイパインの場合もおそらく同様でないかと思います。どうみても枝の挿し木らしきものが某オークションサイトで売られることがありますので、心配な場合は慎重になるといいかも知れません。