置き場所(成長期屋外栽培の環境)
チランジアを屋内で長期栽培することはまず無理というのが、私の自論です。
置き場所(成長期屋外栽培の環境)は、もっとも栽培で大切な要素です。あなたの周りにベストな置き場所(栽培環境)が見つかれば(あるいは、作ることができれば)、チランジアの栽培の80%は成功したといってよいでしょう。私は、成長期の置き場所(栽培環境)として、以下のような場所をお薦めします。
 なお、私の地方は、中部地方で、特に気候に恵まれているところではなく、気温も降水量も平均的な場所です。夏場は、40℃近くに達する場合もあります。
 冬季は、-2℃~-5℃程度にまで下がりますので、冬季は屋外では管理できません。
チランジアの木
  • チランジアは、「インテリアプランツ」か何かは知りませんが、はっきりいって、室内で長期栽培できるような植物ではありません
  • チランジアを育てる上において、一番重要なのは、成長期の置き場所です。春10℃を切ることがなくなる時期(里桜が満開になる頃)から、秋10℃を切り始める時期までは、風通しのよい屋外で管理するのがベストです。屋外でも、日光もガンガン当たるようなところではすぐミイラになってしまいますし、あまりの日陰もヘロヘロになります。
  • 屋外では、あれば、庭木の幹にくくりつけて育てるのがベストです(右写真)。東向きで朝日が良く当たり、日中の陽射しは庭木の葉にさえぎられる場所が最高です。庭木は、それ自身の蒸散作用によって、良い環境を作り出してくれます
  • 庭木などがない場合は、庭やベランダにラティスやヨシズを用いて遮光所を作って栽培するとよいでしょう。鉢植えでも垣根でも樹木が近くにあるとベターです。下がコンクリートやアスファルトの場合は、照り返しや放射熱がひどいので注意してください。人工芝やマットのようなものを敷くとよいでしょう。
  • 庭木を使う場合は、庭木自体の手入れを怠らないようにしましょう。剪定もせずボサボサでは風通しも日の通りも悪く、最悪の場合、庭木に病害虫が発生して、チランジアに影響を与えます。庭木にしか付かない害虫でも、分泌物がチランジアに垂れて汚す可能性もあります。チランジアをくくるまえには、剪定を済まし、庭木には、定期的に薬剤を散布しましょう。
  • 梅雨の長雨だけは危険ですので、雨のかからない場所に移動するか、なにかの雨除けを工作します。梅雨以外の雨は、多少は当たってもへっちゃらです。台風が来るときも外して、室内に入れます(飛んでいってしまうから・・)。
  • 冬季、台風や長雨の場合、樹木に直接くくると、外すのが面倒です。この場合は、ホームセンター等で小型のラティスを購入し、それにくくりつけ、そのラティスを樹木に固定します。冬季等のときは、ラティスごと室内に入れます。

チランジアの置き場所
春10℃を切ることがなくなる時期?
秋10℃を切り始める時期?

 多くの場合、「最低温度」は人間が熟睡している明け方に記録されるので、普通はあまり意識しておらず、昼間の気温から、自分のところは「暖かい」と大きな誤解をしている人が多いものです。まず、あなたの地方の最近の最低温度を知りましょう。

気象庁・過去の気象データ検索

あなたの住んでいる地方を指定し、今年を選び、「○○年の月ごとの値を表示」メニューを選びます。表示された表の今月を選べば、今月の各日の最低温度が分かります(右図)。

私の場合、サトザクラが咲く頃を基準にします。サトザクラの開花に必要な温度は、ソメイヨシノの開花の温度よりも高く、開花は数週間遅れますが、確実な春を告げます。「自然の温度計」です。

以下のページには、一部地域の過去1年間の気温変化がまとめてあります。参考にどうぞ。
直近の最低・最高気温の推移(日単位)

遮光所
成長期屋外栽培における灌水
  • チランジアの管理では、水やりはきちっとする。ただし、通風をよくして、いつまでも濡れた状態にしない。というメリハリが重要です。その点、屋外はうってつけです(屋外以上に通風がよいところはありません。)。
  • 屋外の場合、乾燥しすぎるということはあっても、湿りすぎることはあまりありませんので、灌水は十分与えても失敗はありません。
  • 春と秋の成長期には、翌日、晴天になるのが確実な日の夕方(できたら日没後)にホースでたっぷり灌水します。したがって、気候が良い時期には、ほぼ毎日になります。特に晴天が続く乾燥が激しい時期には、早朝にも灌水します(つまり、1日2回)。
  • 夏季には、灌水を控えるというセオリーのようなものがありますが、屋外栽培の場合は、まったく逆です。毎日たっぷり灌水を行ないます。当然、「日没後」です。クールダウンの意味もあって、日没後に1回、就寝前に1回の場合もあります。
  • 水分の好きな種類は、樹やラティスの下の方に着けると便利です。そうすれば、その部分だけ灌水できるからです。
  • 灌水の方法は簡単です。庭の水撒きといっしょで、ホースで「ジャージャー」とシャワーするだけです。屋外栽培の場合、通気が良くて乾燥しやすいのでたっぷり灌水するのが基本です。ジョウロやら霧吹きなんて使っていたら、ミイラになります。
  • ソーキング(チランジア用語集を参照)は、我が家ではやりません。ソーキングは、「悪魔の業」です。我が家では屋外や温室での管理ですので、ホースでシャワーすれば十分なので必要ありません。自分の栽培環境も考えず、ソーキングをすると、葉の内側まで水が入り込み、風通しの悪い高温多湿の環境では、乾きにくくそのまま腐る場合もあるからです。チランジアについてあまり知らない初心者さんには絶対に薦めません。間違っても、掲示板に「ソーキングはどうやるんですか?」って書かないで下さい(笑)。
成長期屋外栽培における雨ざらし
  • 当家では、梅雨以外は雨ざらしです。梅雨を除けば、長い場合は、3日3晩雨が降り続くことがあります。そんなに雨に当たったら腐りそう・・・と思うかもしれませんが、まったく問題ありません。雨上がりに逆さにして振ったりしませんw
  • ソーキングすると腐るのになぜ3日3晩雨ざらしでも腐らないの?・・・それは簡単な理由。屋外だからです。
施肥(肥料やり)
噴霧器
  • チランジアにとって、大切なことは環境、管理であって、肥料は絶対的に必要という訳ではありません。環境、管理が上手くいっていれば、施肥しなくても成長不振になったりはしません。ただ、非常に状態がよく成長旺盛であるとき、施肥すると更に成長にアクセルがかかります。逆に、環境、管理が悪く弱っている株や休眠している株に与えるのは逆効果です。「調子が悪いから肥料をやる」という、ズレた考え方の人が意外に多いのが不思議です。
  • 環境や管理の悪さを肥料ではカバーできません。したがって、チランジアの栽培を始めたばかりの方は、施肥する必要はありません。環境、管理が上手く行ってすべて状態よく作れるようになってから考えれば十分です。
  • チランジアは根で肥料分を吸収するわけではないので、液肥を葉面に散布することによって施肥を行ないます。葉面に散布する場合は、乾燥によって葉面に残った液肥が濃縮され濃度障害を起こす可能性があるので、濃度を通常の園芸植物より薄くして与えるべきです。
  • 肥料としては、ハイポネックス原液を1000倍に希釈し、成長盛んな時期に、数週間に1度程度、調子のよい株に対してのみ、灌水の代わりに噴霧器を用いて全体に散布します。他のチランジア栽培家は、だいたい2000倍~4000倍程度の希釈とするようですが、その程度ならやらないのと変わりないと思っています。なお、チランジアを直射日光にさらすことはないと思いますが、散布後直射日光に当ててはいけません。また、散布後すぐに、雨が当たったり、灌水をしたのでは、流れ落ちてしまうので、意味がありません。24時間程度で灌水を始めます。
  • 希釈した液肥が残れば、日の当たらない室内においておいて次回(数週間後)使えばかまいません。ただ、何か月も残すのはやりすぎです。
着生栽培

  • 栽培の基本は、できるだけ自生地や自生状態を真似るということです。栽培しているのであって、インテリアではありませんので、妙なガラス容器やオシャレ~なスタンドは利用しません。
  • チランジアを含め植物には、できるだけ触れないようにするべきです。植物は、触れたり磨れたりする等の物理的刺激に敏感で、よじれたり生長阻害が起きます。人間に触れまくっているチランジアが元気をなくし葉先を傷めたりヒネてしまっているのを目にすると思います。チランジアでは、着生させたり、なんらかのコンポストに植えて人間がチランジア自体に触れずに管理できるようにすべきです。
  • 多くの場合、ヘゴ材や枯れ木に針金でくくり着生させています。これが一番良いと思います。ヘゴ材は身近なホームセンター等で購入でき、強度、耐久性、保湿性から優れています。コルク材も耐久性がありよく使用されますが、どこでも手に入るというわけでもなく、水もしみこみにくく、根が表面を這うだけで中に差し込まれないのでやや安定性に欠けます。
  • ヘゴ材等にくくる場合、鉢植え等と比べて乾燥しやすいので、湿度保持のため根元にミズゴケを巻いたりする場合があります。ミズゴケは耐久性はありませんので、長い間には朽ちてしまいます。
  • 「くくり方」には、苦労します。グラグラしないように、かつ、植物に負担をかけないようにしなければなりません。私は、見た目をぜんぜん気にしませんし、チランジアも人間の思うようには発根しないので不安定を避けるために、発根しても針金を外すことはありません。ただ、開花後には子株が吹くのででその成長の邪魔にならないよう、ズラしたり緩めたりはします。
  • チランジアの管理では、風通しの悪いところで葉の間に水が溜まるのが怖いのですが、ヘゴ材や枯れ木に着ければ自然に株が横向きになります。こうすれば、葉の間に水が溜まることを防げます。屋外の風通しがいいところに置けば、多少、水をやりすぎても安心です。
  • 種類によっては、鉢とかカゴのようなものにヘゴくずをコンポスト(植え込み材料)に使って植えているものもあります(鉢にミズゴケ植えはしません。ホースでジャーの灌水方法の場合、鉢内のミズゴケがかなり過湿になりやすいためです。ヘゴくずの場合、どんなに灌水しても過湿になりません。)。こちらの方が調子が良いものがありますので、なんでもかんでも「くくり」にしない方がいいかもしれません。
ヘゴ着けの方法(ヘゴ角材縦使い)
チランジア、ヘゴ材(ノコギリでヘゴ支柱を適当な長さに切ったもの。写真は15cm位)、ミズゴケ(少量でよい。水に漬けて十分湿らせておく)を用意します。
このほか、被覆針金(極細)、アルミ針金、ペンチ(針金を切るため。)を用意します。

チランジアの根元をミズゴケで包みます。
数年後にクランプになったときの姿を想像して、ヘゴに着ける位置を決めます。
チランジア本体の葉の間に被覆針金(極細)を通します。写真程度の位置です。これで不安定になってしまうか、安定するかが決まります。
下に向けて何回か巻いて固定します。さすがに、巻き過ぎるとみっともないので、適当にします。
つるすための針金を付けます。アルミ線です。
完成です。
横から見た姿。
正面から見た姿。
水にどぼんと着けて湿らせてできあがり。
3か月後の姿です。
葉数も増えて大きくなりました。
1年3か月後の姿です。
あれ?ちょっとヘゴ材が小さすぎた・・・
ここまで大きくなるものだと思わなかった。
ヘゴ材のサイズはよく考えてということだね。
1年5か月後の根元です。
ミズゴケが自然に朽ち果てて、根が見えている。これが理想の姿です。
2年後の姿です。
3年後の姿です。
そして開花の姿です。
ヘゴ材加工の方法(ヘゴ角材横使い)
 チランジアによっては、クランプが、もこもこと横に広がっていくものがあります。その場合、ヘゴ材を横に使うと見た目も安定性もいいでしょう。
同じ長さに切ったヘゴ材をを2本用意します。
2本束ねて使うので、通し穴を、千枚通しやキリであけます。
アルミ線を通して、しっかり固定します。
吊り金も取り付けできあがりです。
チランジアを着けます。
ヘゴ板加工の方法(ヘゴ板+横木)
 最近では、ヘゴ板は手に入りにくくなりましたが、大型になるチランジアには使いやすい材料です。
 普通はそのまま垂直面に着ければ問題ありませんが、形的に垂直面に着けにくいもの、着けると真横向きになって見た目が悪く我慢できない!という方は、横木を渡して着けると見た目や安定性が良くなります。
ヘゴ板と、横木になるようヘゴ材を適当な長さに切ったものを用意します。
横木を針金で固定するための穴、吊り金を付けるための穴を、千枚通しやキリであけます。
裏面はこんな感じになります。
横木をアルミ線で固定し、吊り金も取り付けます。
チランジアを着けます。
 実例・・ジュンセア。10年後の姿。
 途中、ヘゴ板が崩れました。横木にぎっちり根を張っていましたので、横木をチラを着けたたまま外して、新しいヘゴ板に替えてます。そのときだいぶ根は切りましたが。
ハンギングバスケット
 大きめのチランジアには、ハンギングバスケットを使うのもいいでしょう。ココマット(ヤシ繊維のマット)付きのハンギングバスケットに、バークやミズゴケ等のコンポストを多少入れてチランジアを置いています(根は張っています。)。
冬季管理
  • 冬は、最低温度5~10℃程度の加温制御の温室(室内温室を含む)で過ごさせるのがベストです。水は若干控えめとします。温風式の暖房装置(室内温室の場合、小型電気温風ヒータ)を用いる場合は、乾燥しすぎないよう注意が必要です。
  • 寒さに弱いチランジアを除き、最低温度を高くしすぎると花芽の分化がされず、花がなかなか咲かないこともあるようです。
  • 一般家屋内で管理する場合、かなり低温になることもあり(人間は、布団や電気毛布にくるまって寝るのでそれに気付いていないことが多い。)、湿度も低いため注意が必要です。最低でも5℃は保たないと春先に枯れるものが出てきます。
病害虫
  • 温室や室内栽培の場合コナカイガラムシやアブラムシが発生するということを聞きますが、我が家ではいままで病害虫が発生したことはありません。
  • コナカイガラムシ等は風や雨に弱いので、屋外栽培をすると発生しません。コナカイガラムシ等を大切に飼育したい人は温室や屋内等周りを囲んだ場所でチランジアを栽培してください。
その他
  • 成長にともなって枯株、枯葉や子株がでてきますが、私は基本的にとりません。そのままの方が、ワイルドで好きなためと、屋外栽培の場合、とると極端に乾燥しやすくなるため、株の環境バランスを保つのに必要で、また大株の方が管理しやすいからです。
  • チランジアは、株が成熟すると花芽を付けます。花茎が伸びる種類のチランジアは、花芽がついてから花茎が伸びて開花するまでに何か月も掛かる場合があり、イライラさせられます。開花すればその株の使命も終わりで、咲き終わってから数か月内外に子株を出して世代交代します。
  • 花芽が着いているとき、花が咲いているとき潅水はどうするの?と気にする方がいますが、私には何が気になるのかが理解できません。花が着いていようが着いていまいが、潅水は同じです。
  • 有茎のチランジアの場合は、花が咲くと脇芽が出て分岐します。咲かなくても分岐することもあります。また、成長して茎が伸びれば、茎の元の方から枯れていく性質があります(つまり、前進していくということで、つる性の植物とは違います。)。また、生きている茎が長ければ、生きている部分の元の方を長めにして2つに切断すれば、ほとんどの場合、元の方から脇芽が出てきます(右写真)。
  • 花の終わった後の花茎はどうするの・・・私の場合、実生する気もありませんし、そのままにすると子株に養分が向きにくいので、花茎が伸びる種類の場合、花茎ごとバッサリ切り捨てます。伸びない種類は切れないので放置です。すべての花が咲き切らないうちに切ると、子株に花がすぐ着いてしまい、株を衰弱させます。だいたい咲き終わってから切る方がいいでしょう。