ぱんさのマイナー植物園

テマリカタヒバ
Selaginella lepidophylla

テマリカタヒバは、フッカツソウ(復活草)、ジェリコのバラ(ジェリコの薔薇)ともいいます。 日本にもあるイワヒバの仲間で、メキシコ付近の雨季、乾季のはっきりした土地に生きる植物です。

 
 このページは、アーガイブに収録しているものです。
 ぱんさは、テマリカタヒバの栽培に完全敗北してしまいました(つまり枯らしてしまいました。)。
 この植物は、夏以外は比較的調子が良いのですが、夏の暑さに極めて弱いようで、夏が訪れるたびに葉枯れが発生し、2年目には枯死してしまいました。
 自生地は、メキシコの高地1,000m〜1,600mの峡谷等に自生しており、そこは1年を通じて温度差のあまりない(10〜20℃)、冷涼な地域のため、成長させるには夏でも30℃を超えない冷涼な気候であることが必要なようです。日本のイワヒバとは、難易度に天地の差があります。
 成長させずにたまに復活させるようなドライフラワーもどきの栽培方法ならもっと永く持たせることが可能ですが、自生地のように元気いっぱい成長させることができなければ、栽培するだけの意味はありません。
 

更新情報

なんなのこれ!?

 まずは、以下をご覧ください。


カラカラに干からびた枯れ草のボール??鳥の巣?

水を与えると!
(画像のローディングに時間が必要です。ゆっくりお待ちください。)

テマリカタヒバとは


自生地は高地で、高山性のムシトリスミレ等と同居する
 テマリカタヒバ(Selaginella lepidophylla セラギネラ・レピドフィラ、シダ植物イワヒバ科)は、ニューメキシコ、テキサス、メキシコから中米の高地に自生する植物です。メキシコでは高地1,000m〜1,600mの峡谷等に自生しています。
 この植物は、場合によっては、Selaginella pilifera セラギネラ・フィリフェラと呼ばれることもありますが、これが誤用であるのか、別名であるのかはっきりしません。

 カラカラの乾季が訪れると、乾燥し茶色く枯れたようになり丸くなりますが、雨季には、葉を広げ劇的に緑色になります。その生態から、死んでも甦る植物とされ「復活草」とも呼ばれます。(実際は、カラカラに乾燥していても、本当に死んでいるのではない。)
 完全に丸くなった状態で、50年も100年も生きられるというように言われますが、「本当に確かめたんかい!」と聞きたくなります。

 日本にも、近縁のイワヒバという植物があり、テマリカタヒバよりも小型ですが、同じような性質を持っています。ただし、これは、テマリカタヒバほど極端な気候の土地に自生するわけではありません。


冷涼な自生地では、雨季には元気いっぱい成長する
 なお、乾燥したテマリカタヒバが風に吹かれコロコロと転がってオアシスを探すという「砂漠を旅する植物」というロマンチックな言われ方をする場合(販売ショップのトーク)もありますが、これは、ウソです。
 まず、この植物は雨季と乾季がはっきりした岩山に自生します。サハラのような砂ばかりの砂漠に自生するわけではありません。岩山で転がれば、尖った岩に当りまくり、10mもいかないうちに、植物はバラバラになってしまうでしょう。カラカラに乾いても根はしっかり大地に下ろし、人間が「出荷」のためにワザと切らなければ生えている地面から離れません。また、植物にしても、乾季には次の雨季を待てばいいので、あえてコロコロと転がって移動しなければならないという必然性がまったくありません。
 いかにも転がりそうな丸さや、西部劇などに出てくる、転がる玉状の枯れ枝(タンブル・ウィード 、Salsola collina)とイメージがごっちゃになってそんな空想が生まれたのかもしれません。

 なぜ、テマリカタヒバは、カラカラになっても、再び復活するのか?
 これには、トレハロースという物質が関わってくると言われています。
 テマリカタヒバは、細胞内に多量の糖トレハロースを持ち、この糖の作用により細胞及びその細胞を構成するタンパク質、核酸、膜などを、乾燥の極限状態の中で破壊から防いでいるらしいとされています。
 具体的にどうやってトレハロースが作用しているのかについては、現在2つの仮説、すなわち水置換仮説(細胞表面のタンパク質と水素結合することによって細胞膜を保護)とガラス状態仮説(細胞表面でトレハロースがガラス構造のようなものを形成し、それにより細胞内物質の破壊を防ぎ保護)があり、まだ明確になっているわけではないらしいです。

 テマリカタヒバは、いわゆる、ドライフラワー的な装飾品という扱いで、日本に輸入されてきます。 私としては、インテリアや装飾品ではなく、植物として育てることを目標としています。

復活


もうあと少しで完全に開くという状態
 少なくとも植物として扱うのなら、復活させたら植付けなければならないので、春〜梅雨明けまでか秋の20℃以上30℃以下の気温時期に行います。その他の時期では、復活したとたんに、休眠させなければいけません。
 先ず、カラカラに枯れたテマリカタヒバの全体を濡らし、下半分を水につけておきます。  約12時間で開き、生きていれば緑色を復活させます。
 なお、完全に枯れている場合は、繊維が水を吸って(自動的に)葉は開きますが、緑色には戻りません。期待して待っていても腐敗が始まります。

メキシコの気候

 どうやって育てるかを検討するために、メキシコの気候を調べ、日本の気候と比較しました。

 日本の典型的な気候は、低温で雨の少ない冬と高温で雨の多い夏があり、その間に春と冬があります。つまり、四季があるということです。

 メキシコは一年を通して冷涼、温暖で、四季というものがありませんが、乾季と雨季がはっきりしています。

  • 一年を通して気温にあまり差がなく、あえて言うなら4月〜5月が比較的(ほんの少し)気温が高い。
  • 6月〜9月が雨が多く(雨季)、それ以外はかなり雨が少ない(乾季)。
「予想される」栽培方法

 自生地は、メキシコ産のサボテン(例えば、Echinocactus ingens 「巌」)とほぼ同じなので、同等の環境で栽培すればいいと考えてきました。
 ところが、栽培を続けてみると、とにかく気難しい植物で、どうやったら上手く栽培できるかのつかみ所がないような感じです。
 とにかく満足のいく結果が得られていません。なにか、逆転の発想のようなもので栽培すると上手くいくのではないかといようにも感じます。

 その後、海外のサイト等をさんざん調べた結果、どうやら、メキシコの高地1,000m〜1,600mの峡谷等に自生しており、そこは1年を通じて温度差のあまりない(10〜20℃)、冷涼な地域であることがわかりました。また、いろいな木々による森林もあり、かつ雨季、乾季のはっきりした場所でもあります。雨季は、日本の森林と変わりません(同様の場所には、高地性のPinguicula elizabethiaeというムシトリスミレが自生しています。)
 したがって、わが国において自生地のようにりっぱに成長させるためには、冷涼な気候の場所か冷房温室が必要となるでしょう。


鉢に植付けた状態
【植付け方法】

  • 春〜梅雨明けまでか、秋の、20℃以上30℃以下の気温時期に行ないます。
  • 水につけて葉が展開したら、速やかに植えつけます(24時間以内)。いつまでも水につけておくと、呼吸不足で腐敗し枯れてしまいます。
  • 培養土は、中性〜弱アルカリ性で、とにかく通気排水の良いものと思われ、自生地の状況から、サボテン用の培養土を用いるのが簡単です。使用した用土は、軽石、パーミキュライト、日向土、ゼオライトの混合でした。
  • シダ植物は、根が浅く広がるという性質があるため、鉢は、展開した葉の直径にほぼ等しい、通気性のよい素焼の浅鉢としました。
    当然、鉢皿をおいて水を溜めることをしてはいけません。
  • 植付けといっても根がまったくないため、用土に少し窪みをつけて植物を置き、十分な灌水をします。なにぶん根がないため強風でふっとんだり、グラグラしないようにします。私は、太目の輪ゴムで鉢に縛っておきました。発根するころ、輪ゴムは劣化して自然に切れると思います。
  • 植付け後、数週間は、園芸のセオリーどおり、木漏れ日〜半日陰の場所におきます。植物には、雨季が来たと認識させるという意味で、メキシコの6月の降水量(日本の梅雨なみ)として、灌水は、朝晩、たっぷりと行います。
  • 植付け後1か月くらいで、発根するようです。
春〜梅雨明け(成長期)の管理】
  • 自生地の状況から、木漏れ日程度の日光によく当てる風通しのよいところで栽培することが必要と思います。
  • 晴天の日には、1日1回夕方に頭から十分な灌水をします。雨天の場合は、灌水しません。
夏(休眠期)の管理】
  • 夏の蒸し暑さにかなり弱いので、冷涼地でなければ夏には休眠させて、遮光した風通しの良い乾燥した場所で過ごさせるのが得策のようです。
  • 梅雨明けからは乾季として灌水を完全に切ります。
秋(?)の管理】
  • 夏が終わり秋になり涼しくなってから冬までの期間、灌水し成長期にするべきかはっきり分かりません。
冬(休眠期)の管理】
  • 自生地の状況からは、冬季の最低温度は5℃〜15℃程度と予想します。
  • 完全に水を切れば、もっと耐寒性があるようです。完全に水を切った状態で、東京以南の雨の当らない屋外で越冬したとの情報があります。
【施肥】
  • イワヒバの仲間はとても肥当りしやすいので、肥料は与えない方が無難と思います。
【病害虫】
  • 病気については、あまり知られていませんが、害虫としてヨトウムシに注意します。イワヒバの仲間には寄り付きもしないヨトウムシですが、テマリカタヒバだけは異常に好むとの情報があります。

成長の記録

 枯死させてしまわなければ、段階的に記載を予定。


2006.7.8(復活から11日目)発根を確認

イワヒバの仲間は、一枚一枚の葉(本当は葉ではない)の付け根から発根し、重なる葉を貫いて全体として根の柱(塊)を作ります。
中心に近い葉の根元から、発根していることを確認しました。おそらく他の見えないところでも発根しているだろうと予想できます。
現在は、常に葉が濡れた状態になるように灌水していますが、少し控えめにする必要があると思います。


2006.8.16(復活から50日目)

屋外の日陰に置いています。朝、夕の2回灌水していますが、かなり乾燥します。
わが家の地域はとても暑いです。そのためなのか?かなり葉枯れしたので、その部分は取りました。
葉の伸長はしているようですが、とてもゆっくり。
涼しくなってからの成長がどうなるか。


2006.10.22(復活から117日目)

その後かなり葉枯れして、全体的に小さくなってしまいました。理由はわかりません。かなり気難しい植物です。ひとつの可能性として、夏の暑さが影響を与える気がしています。それが、かなりダメージを与えるような感じです。来年、無事復活したら、夏場も休眠させることを試してみたいです。
気温がかなり落ちてきた(最低気温15度)ので、休眠の必要性を感じましたので、断水して休眠させました。


2007.02.01(復活から219日目)

休眠は、温室内ですので、かなり日光が当ります。少し過酷と思われるので、チラシを1枚掛けて休眠させています。


2007.03.12(復活から258日目)

そろそろ暖かくなり始めました。日中はかなり暖かくなります。
最低温度も15度が保てますので、休眠から目覚めさせました。あくまで推測ですが、冷涼な気候を好み、夏の蒸し暑さを嫌うようなので、早めに復活させました。


2007.06.15(復活から353日目)

あまり調子がよくありません。ただ生きているだけで、成長が感じられません。
自生地の状況が分かりはじめてきたので、栽培方法の見直しをしています。

下図は、中心部の状態です。調子がよければ、もっと伸びてきてもいいはずです。


2007.06.26(復活から364日目)

枯れ込みが進んでいるのか、止まっているのか、成長しているのかが分からないため、枯葉は、カットしました。
栽培方法も模索しています。

下図は、中心部の状態です。左が、2007.06.15の様子。右が2007.06.26の状態。
「色」や「葉の立ち方」は、天候の関係だから関係ありません。小葉の先をじっくり比較すると、ほんの少し伸びてきているのは間違いないようです。

 

2007.07.16(復活から1年と19日目)

梅雨もそろそろ終わりに近づいています。雨ざらしにしています(それが良いのか悪いのか・・・)。
梅雨が終われば、酷暑がやってきます。さて、休眠させるべきか、日陰で管理するべきか・・・

下図は、中心部の状態です。左が、2007.06.26の様子。右が2007.07.16の状態。
小葉の先をじっくり比較すると、やはり伸びてきているのは間違いないようです。

 

 

 
 
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