ぱんさのマイナー植物園/バオバブ王国

バオバブの種類

 
 
一口にバオバブといっても

 一口にバオバブといっても、知られているもので、アフリカに1種類、マダガスカルの固有種が8種類(諸説あり。)、オーストラリアに2種類(諸説あり。)が存在します。
 主に市販されているのは、「Adansonia digitataアダンソニア・ディギタータ」というアフリカ原産の種類で、それ以外になると、わが国で見ることは若干難しくなります。
 絵的に有名なのは、マダガスカルのムルンダヴァの「バオバブ・アベニュー」と呼ばれる場所に林立するバオバブで、これは「Adansonia grandidieriアダンソニア・グランディディエリ」という種類です。

 各種とも、見た目、性質とも異なっているので、ご自分のバオバブが何かは、把握しておきましょう。

 あるショップでは、「Adansonia grandidieriアダンソニア・グランディディエリ」の写真を表示して、「アダンソニア・ディギタータ」の苗を売っているという状況で、私に言わせると、「詐欺」とまでは言いませんが、「看板に偽りあり」という感じです。
 某オークションでは、「Adansonia zaアダンソニア・ザ」と称して、「Adansonia digitataアダンソニア・ディギタータ」が売られているようなこともあり、あなたのバオバブが、本当にその種であるのか疑ってみるのも必要かもしれません。

 ある沖縄の植物園のHPでは、「Adansonia digitataアダンソニア・ディギタータ」の説明ページに、マダガスカルのバオバブ・アベニューに林立する「Adansonia grandidieriアダンソニア・グランディディエリ」の写真を載せており、そのことをこのページで、よろしくない旨指摘させていただきました。最近、きちっとした補足説明を追加されました。さすが「学術施設」としてすばやい対応で関心しました。(というよりも、私のこの無名なホームページをしっかりチェックしているところがスゴイ。)

 星の王子様のバオバブのモデルになったのは「Adansonia digitataアダンソニア・ディギタータ」と思われます。しかし、「星の王子様バオバブ栽培キット」なるものが売られていますが、このキットのバオバブは、私が見るところ、「Adansonia digitataアダンソニア・ディギタータ」ではありません。(最初のロットでは、「Adansonia digitataアダンソニア・ディギタータ」でした。最近のロットは違います。これが、どの種かの予想はついています。お持ちの方は、このページの説明や他ページの写真を見られると多分わかると思います。探して見てください。)

 

バオバブの典型的な樹形

 バオバブの樹形というと、ズングリムックリといったイメージが湧きますが、すべてがそうではありません。  下図が、主要種の典型的な樹形ですが、育つ場所や人為(飼料のための刈り取り等)によってかなり樹形は変わってしまいます。

 
単葉と複葉

 バオバブの葉は、基本的には掌状複葉(3〜10出)です。種類によって、本葉数枚目で複葉となるものもあれば、若木は単葉で1年やそれ以上にならないと複葉にならないものもあります。

○本葉数枚目で複葉となる・・・・Adansonia grandidieriAdansonia perrieriAdansonia gibbosaなど
○1年やそれ以上にならないと複葉にならない・・・・Adansonia digitataAdansonia zaAdansonia madagascariensisなど

 また、複葉も、若木は「3出」で、木が成熟していくと「5出(あるいはそれ以上)」になっていきます。
 1年やそれ以上にならないと複葉にならない種類の場合、伸びやかに育つときは速やかに複葉になっていきますが、鉢植えなどの場合、複葉であったものが単葉に戻ったり、剪定が強いなどの場合でも単葉のままの場合があります。

単葉→3出の複葉→5出の複葉に変わりつつある、非常に充実した株の若木(Adansonia digitata

 

バオバブの種類

 以下が、現在までに記載があるバオバブ(Adansonia属)の全種です。ただ、きちっと調査されてるとは言いがたいので、別種とされているものが、同種であったりする可能性もあります。

 
 表中のジョウロのマークは、「バオバブの種類別栽培特性」に、栽培特性の記事や栽培品の写真があるものを示します。

種名 原産地 特徴
Adansonia digitata
アダンソニア・ディギタータ

アフリカ中部。西はセネガルから南は南アフリカの北部まで
アフリカに広く分布するバオバブ。星の王子様のバオバブのモデルと言われている。
日本で一般的に普及しているのがこれ。
マダガスカルにも自生があるが、人為的な分布と考えられる。
葉緑体ゲノムを中心とした分子系統学的な研究では、マダガスカル原産のバオバブより、オーストラリア原産のAdansonia gibbosaと近縁であることが分かってきている。
複葉化には、1年以上必要となる。
高さ:〜25m、高さより枝の広がりが30mを超えるものもある。

Adansonia grandidieri
アダンソニア・グランディディエリ

マダガスカル西部のムルンダバ〜モロンベの比較的狭い範囲
有名なマダガスカルのバオバブ・アベニューに林立する天を突くバオバブ。
樹形の変異でも有名。乾燥した石灰岩土壌では、ズングリムックリな樹形になることが知られている。
種子は、Adansonia suarezensisに次いで大きい。
複葉化は、本葉5枚目程度から起きる。
高さ:〜30m
IUCN RedList : EN A1c+2c
Adansonia za
アダンソニア・ザ

マダガスカル西部から南部
ザーとも呼ばれる。マダガスカルでは比較的ポピュラーな種類で、多く植樹もされている。
マダガスカルでは、最も南部まで分布している。マダガスカルの南部は北部と比べ多少低温ではあるが、それでも最低温度は15℃程度。
複葉化は、伸びやかに育てても数年以上後になる。
高さ:10〜30m

写真(外部リンク)

Adansonia rubrostipa
アダンソニア・ルブロスティパ
【別名】
Adansonia fony
アダンソニア・フォニー

マダガスカル西部から南部の乾生林、石灰岩上
フニィとも呼ばれる。幹は、昔の漫画の原始人のこん棒をつき立てたような感じ。
木は、バオバブとしては小型。というのは、一定の大きさに達すると、成長が止まり、幹が肥大しつつ、そこから枝分かれが始まることが多い。
複葉化は、本葉数枚目ですぐに起きる。
高さ:5〜20m、比較的小型・・

写真(外部リンク)

Adansonia suarezensis
アダンソニア・スアレゼンシス

マダガスカル北端のディエゴスアレズの極めて限定された石灰岩台地
バオバブとしては、最も奇妙な樹形をもつ。一定の高さに達すると、枝を2方向に水平に伸ばす。成木はT字型に見える。
また、種子は、バオバブ中最大である。
石灰を多く含む土壌にしか自生しておらず、好石灰植物といわれる。
数が減りつつある希少種。
高さ:〜25m
IUCN RedList : EN B1+2c
Adansonia perrieri
アダンソニア・ペリエリ

マダガスカル北部のダンプル山の火山地帯の極めて限定された熔岩、石灰台地
樹形はバオバブらしくなく、普通の樹木のよう。
他のバオバブと異なり、湿潤な気候の地域に自生する。
数が減りつつある希少種。
複葉化は、本葉数枚目ですぐに起きる。
高さ:〜30m
IUCN RedList : EN B1+2c, C2a

写真(外部リンク)

Adansonia madagascariensis
アダンソニア・マダガスカリエンシス

マダガスカル北部
厚く艶やかな葉を持つ。まるで、サカキのよう。
複葉化は、伸びやかに育てても1年以上後になる。
高さ:10〜30m

Adansonia bozy
アダンソニア・ボジー
Adansonia za var. bozy(アダンソニア・ザの変種)として記載されたが、独立した種とされた。
複葉化は、本葉数枚目ですぐに起きる。
Adansonia alba
アダンソニア・アルバ

マダガスカルのサンビラヌ地帯といわれている(未確認)
記載は古いが、その後調査が行なわれておらず、実存しているのか、他の種と同じなのか確認されていない種。
Adansonia zaアダンソニア・ザと同種との説もあるが、分布がかけ離れている。
Adansonia gibbosa
アダンソニア・ギボーサ
【別名】
Adansonia gregorii
アダンソニア・グレゴリー

オーストラリア北西部のキンバリー地方
バオバブの仲間は、アフリカ、マダガスカル以外では、オーストラリアの北西部しか自生しない。アダンソニア・ギボーサは、アフリカからはるかに離れたオーストラリアに自生するバオバブ。オーストラリアでは「ボアブ」と呼ぶ。
日本では、ある商品のおかげで、Adansonia digitataに次いでよく普及している。
ゴンドワナ大陸の忘れ形見とも言われるが、被子植物が繁栄した新生代には、アフリカ、オーストラリアは、はるか離れていたので、疑問が残る。DNAの分析結果では、やはり、大陸がはるか隔ててからの種の分化と分かったので、海流に乗ってとか、鳥に運ばれてとか。謎はつきない。
若木は、一定の大きさになると、根元ではなく、幹の上の方が肥大するので、独特な姿になる。老木になると幹の全体が肥大する。
複葉化は、本葉2枚目ですぐに起きる。
高さ:5〜20m、比較的小型・・
Adansonia stanburyana
アダンソニア・スタンブラーナ
オーストラリアの北西部といわれている(未確認) Adansonia gibbosa(アダンソニア・ギボーサ)と若干違いがあり、独立した種とされる。
*学名の読みカナは、正式なラテン読みで表現している。
*原産地は、湯浅博士(進化生物学研究所)の記載による。

 

バオバブに近縁な植物

 バオバブと同じアダンソニア属ではありませんが、同じパンヤ科には、肥大した幹をもつ植物がいくつか存在します。
 観葉植物のパキラ(Pachira aquatica)も同じですが、ここでは紹介しません。
 
種名 原産地 特徴
Bombax ellipticum
ボンバックス・エリプティクム
【別名】
Pseudobombax ellipticum
プセウドボンバックス・エリプティクム
メキシコ
トックリ状の幹を持つ。
写真は、私の栽培品。 私がこの木の栽培を始めて 。つまり、これが、この木の樹齢。
Pseudobombax palmeri
ボンバックス・パルメリ
【別名】
Bombax palmeri
プセウドボンバックス・パルメリ
メキシコのソノラ州
トックリ状の幹を持つ。
写真(外部リンク)
Cavanillesia arborea
カバニレシア・アルボレア
ブラジル東部
写真(外部リンク)
トックリキワタ
Chorisia speciosa
コリシア・スペキオサ
ブラジル
南西諸島では、屋外に植栽される。 幹は肥大し、三角形の刺に覆われる。花は、ピンクのユリのようで美しい。
ボトル・ツリーズを参照

Chorisia ventricosa
コリシア・ベントリコーサ
アルゼンチン
幹は肥大し、樹形はバオバブに良く似る。

 

 
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