魔法と伝説の植物
マンドラゴラ・オータムナリス
Mandragora autumnalis

マンドレイク(英)、アルラウネ(独)

伝説のマンドレイク

花 2013.11.16

実生2年目秋の状況 2013.11.3

実生1年程度の根の状況 2013.7.7

本葉4枚程度の実生幼苗 2012.07.14
ナス科
地中海沿岸からトルコ原産

 マンドレイク、マンドラゴラとも呼ばれます。
 根は人の形をして地上にあると蠢き、年を経た株はその根を使って地上を徘徊します。
 この根は、魔法薬あるいは呪術等の原材料として非常に重要な役割があるため、魔術を目指す者にとって入手は必要不可欠です。
 ただ、マンドレイクの収穫には危険が伴います。マンドレイクは引き抜かれるとき悲鳴を上げ、その声を聞くと人は気絶、あるいは死ぬか気が狂うため(若い株では気絶程度で済みますが、年を経た株では聞く者は絶命するか生き残っても気が狂います。)、収穫には工夫が必要となります。古くは人が引き抜く代わりに、植物に犬をつなぎ、犬に引かせて引き抜く(当然犬は犠牲になります。)といった方法が取られ、中世では、収穫したマンドレイクの傍らに引き抜いた犬の死体を並べて売り、真正なマンドレイクであることを証明したほどです。
 マンドレイクは、土の精霊との関係も深く、引き抜くことにより土の精霊の怒りを招く可能性もあるため、抜いた大地の穴には、パンの欠片と硬貨を投げ込んで土の精霊の怒りを鎮める必要があります。
 近年では、ホグワーツ魔法学校を初めとし、人工的な栽培も盛んで、マンドレイクの死の悲鳴の効果を中和する抗マンドレイク耳当てが開発されているため安全に収穫できるようになりました。ただ、最も強力なマンドレイクは絞首台の下、受刑者の体液と精液の降り掛かる場所で育った天然ものであり、今でも高価に取引されます。

【マンドレイクの利用】
 マンドレイクは魔術、錬金術に使用される魔法薬の材料となり、また魔除けの護符、財宝の探索の護符にも利用されます。古くは創世記において不妊治療(催淫)に用いられた記録があります。



 願いを叶える魔法としては以下の方法があります。
 根を毎晩白ワインで洗い、絹とベルベットの布団に寝かせます。すると術者の夢の中、枕元にマンドレイクが現れますので、願いを伝えます。願いを叶える力は、マンドレイクの霊力に比例し、年を経たマンドレイクほど強力です。

 特に有名な利用方法は、想い人を振り向かせ自分のものとする魔術での活用です。ここから、わが国では「恋ナスビ」と呼ばれるようになりました。
 新月の夜明け前に特定の呪文を唱え収穫したマンドレイクを土に埋め、水とミルクを注ぎ術者の血をたらします。次の新月の夜明けに呪文を唱えつつ掘り出し乾燥させ、さらに次の新月の夜明け前に古釘を根の中央を突き刺します。これで想い人の心と身体は術者のものとなります。

 魔法薬としては、魔法により姿を変えられた、あるいは呪いにかけられた場合に対抗する解毒剤に配合されることもあります。
 一方、錬金術では、マンドレイクに術者の血や精液を注ぎ、術者のあらゆる命令に従う人造人間ホムンクルスを作るために利用されることもあります。

 このようにマンドレイクは、魔法等になくてはならない植物なのです。


 以上が、マンドレイクの伝説やら創作ですが、実際の植物は、地下に肥大し分岐した根をもつ多年草で、ある程度成長すると秋に紫色の小輪の花を咲かせます。
 古くは薬草、呪術薬として利用されましたが、毒性が強く現在では薬用としては利用されません。

 種子は新鮮であれば発芽率は悪くありません。ただし、発芽までに1~2か月を要し気が短い人には向かないかもしれません。
 栽培は、ごく普通の草花に準じます。成長期は秋から春の冷涼な季節で、盛夏には地上部が枯れ休眠する場合があります。特に早い株では、発芽から2年目に開花します。
 地中海沿岸の植物であり温暖な気候を好みますが、熱帯植物という訳ではなく冬季は、凍結、霜を避ければ-3℃前後で越冬します。温暖な地域では屋外での栽培が可能です。(寒冷地では、冬季は室内で管理した方がいいかもしれません。)
 
 病害虫は、同じナス科の畑作物のナス、ピーマン、トマト等と共通したものが多く、ヨトウ、ハモグリバエ、コナジラミ等が発生するので注意が必要です。