実験:「Inkbird-mini」データロガー
 データロガー「Inkbird」は、温度・湿度が計測できるBluetooth接続方式の最も廉価なデータロガーシリーズです。計測インターバルは10秒、30秒、1分、2分、5分、10分、30分のいずれかが選択でき、本体内には30,000件のデータが保持できるという仕様です。
 本体の防塵防水機能はまったくありません。つくりはかなり軟弱なので、耐久性はあまりないと思われます。値段相応というところです。どうにか、過酷なハウスの中で1年程度はもって欲しいものです。
 「Inkbird」には、以下の3つのタイプがあります。


Inkbird
(IBS-TH1)
本体と温度センサーが別になっていて、本体のジャックに温度センサーケーブルを差込みます。温度は、ケーブル先端のセンサーで計測し、湿度は本体内蔵のセンサーで計測します。離れた場所の温度を計測するに便利です。実売価格は3,500円(2020年1月現在)程度です。
Inkbird-mini
(IBS-TH1 mini)
本体に温度・湿度センサーが内蔵されています。実売価格は3,000円以下(2020年1月現在)です。
IBS-TH1 Plus
Inkbirdに、液晶パネルがあって現在温度湿度が表示できるようになったものと考えていいでしょう。実売価格は4,000円(2020年1月現在)程度です。

 最も廉価であるということと、故障の原因箇所となりやすい接続部分や液晶パネルなどの不要な部品が少ない、「Inkbird-mini」を利用してみます。

「Inkbird-mini」データロガーのセットアップ
「Inkbird-mini」本体のサイズはこのくらいです。五百円玉サイズくらいでしょう。
裏蓋を開いて、付属のボタン電池をセットします。写真の赤い四角部分のツメが電池の+側の接触部分ですので、写真のようにやや起こしてボタン電池をはめます。電池の極性を間違えないように。
裏蓋を閉めて本体のセットアップは終わりです。
スマホ側のセットアップは、「Engbird」というアプリをダウンロードしセットアップします。
これでスマホ側セットアップは終わりで、このアプリを起動すれば本体とデータの通信ができるようになります。
アプリでは複数のデータロガーを管理することができます。
計測インターバルは10分にします。1日24時間×6件=144件のデータが蓄積されますので、208日に1回は接続してデータをスマホへ吸い上げる必要があります(実際は、もっと頻繁にやりますが。)。
計測インターバルが短いほど電池の消費量が多く、おそらくBluetooth通信が頻繁であればあるほど電池の消費量が多いと思われます。
本体は、ハウス内に設置しますが、直射日光、水かかりは厳禁です。風通しがよく土埃のあまりかからないところを作るなり考えるなりして設置します
スマホで「Engbird」というアプリを起動すると、本体のBluetooth通信範囲内にあれば、リアルタイムな温度、湿度を確認することができますし、それまでの計測データも送信されます。Bluetooth通信範囲内なければ、最後の状態が表示されます。
「Engbird」で温度変化のグラフを表示したところです。
「Engbird」でデータを取得するには、「履歴データ」画面の「データのエクスポート」ボタンを押下します。PCなどで利用するなら、メールに添付してPCに送るか、iCloud経由でPCに送ればいいでしょう。
データはCSV形式です。
ただし、データの内容には問題があります。「「Inkbird-mini」の評価/問題点」を参照。

「Inkbird-mini」の評価/問題点

2020/02/03追記 使用後1週間経ったので、ここまでに感じたことをまとめた。

●「Engbird」アプリについて
 「Engbird」アプリは、操作も単純明快ですっきりして使いやすい。欲を言えば、グラフ範囲など、ユーザによって見方は決まってくるので、その設定ができるとよい(いちいち初期値に戻るので面倒)。

●電池残量表示について
 電池残量表示はデタラメ。最初は100%を示すが、6時間後には40%、24時間後には20%を表示したりする。この分で行くと、3日で電池が無くなるのではないかと思うと、数日後には40%になったり、またいきなり数%になったりする。電池残量の算出は、電圧と電流量、消費量、電池の種類によってかなり複雑な計算をして求めるものなのであるが、センシングの問題なのか計算の問題なのかどの点に原因があるのか分からないが、デタラメすぎて使えない。したがって、いつ頃換え時なのか分からない。

●電池消費について
 1月25日から稼動させ、前述のような表示のでたらめさもあったが、2月17日にBluetooth通信ができなくなった。電池が切れたと思われたので交換すると正常に動作しはじめた。つまり、電池の寿命は24日間になる。ちょっと短すぎるかなとは感じる。
 電池は2個付属しているので、交換して検証してみる。

2020/12/29追記 使用後1年経ったので、ここまでに感じたことをまとめた。

●電池消費量について
 結果的に、ボタン電池CR1632では1か月保たない(通信ができないだけで、計測はされているようだが、意味があるのか?)。頻繁にボタン電池を交換するほど暇ではないので、実用に耐えない。

●CSVデータの問題(Engbird ver.2.2.6現在)
 以下の画像は、ダウンロードされたCSVデータだが、ダウンロードするたびに同一期間の測定日時が変わってしまうという現象が見られる。また、一部温度についても、へんてこな値に変わってしまう。
 前者は、本体内に保存されている温度データには、測定日時を持っておらず、ダウンロード日時から保存データ分を逆算して適当に時間を作り出しているのだろうと推定できる。後者のへんてこな値に変わる件については、不明である。
 CSVデータを使用する場合は注意が必要である。

「Inkbird-mini」の電源改造

 結果的に「Inkbird-mini」は、所定のボタン電池を電源とするようでは実用に耐えない。とはいえ、捨ててしまうのも惜しいので、電源部を改造することにした。
 当該ボタン電池は3Vなので、3V出力のACアダプタから電源を供給する。加工は以下のとおり。
 電池が切れてから、10か月程度ハウス内に放置してあったが、電源を供給したら問題なく動作した。意外と耐久性はあるのかもしれない。

ボタン電池を外し、端子にリード線をハンダ付けする。裏蓋に穴を空けてリード線を本体外に。
水が本体内に侵入しないように、リード線の引き出し穴はホットボンドで埋める。
ACアダプタを接続するためにDCジャックを取り付ける。
ACアダプタ(2,000円)を接続する。
露出した金属部分、水が浸入しやすい部分は癒着テープを巻く等の保護をして完成。
適当なところに設置。
「InkBird」データによるWebグラフの作成
 「InkBird」のデータを何か他のシステムで利用しようと考えると、アプリである「Engbird」を使用してデータをCSV形式でエクスポートするしかない。そのデータの取得(通信)方法でしくみが最も簡単なのは、作成されたCSVデータを添付してメールで送る方法になる。
 以下のグラフは、「Engbird」からCSVデータを特定のメールアドレスに手動で送信し、その後はサーバ側システムで自動でメールを読み出し作成するものである。私の圃場のどこかのハウス(検証のためあちこちに移動させている可能性があります。)の温度を表示している。

マル秘!ぱんさのサボテンランドのひ・み・つ
ぱんさのサボテンランドBハウス内の気温変化
●紫色の折れ線は、「InkBird mini」が計測したハウス内温度を示します。
●青色の折れ線は、気象庁の近隣気象台(距離10Km)が観測した気温(外気温)を示します。このため、ハウスの設置場所の外気温とは異なりますので、あくまで参考値です。

 これは、
  1. 私が圃場のハウスでスマホの「Engbird」アプリを使用して、「InkBird mini」データロガーからBluetooth通信によって得たデータをCSVデータとしてメールに添付して私の管理する専用メールアドレスに送信(手動。めんどくさい
  2. そのデータを、私が作ったプログラムによって自動で1日に数回メールサーバから取得し、気象庁の近隣の気象台が計測した気温とともにグラフ化したものを表示(前述のCSVデータの問題は、なんともならないので、すでに取得しているデータと期間の重なる部分は読み捨てることで対応)
 したがって、リアルタイムではない。

 このシステムの仕組みを図示したものが以下です。