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『ぱんさ』の世界神話全集

Pantha's Complete Works of World Mythology

ギリシャ神話

ギリシャ神話は、聖書と並ぶヨーロッパの精神の源流です。 現在に伝わるギリシャ神話は、ヘレニズムの影響を色濃く受けており、素晴らしく甘美で、 現代人にも十分楽しめる物語となっています。
ここでは、こうしたギリシャ神話の神々の誕生神話を取り上げます。

世界のはじまり

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 はじめにカオス(混沌)が生まれ、カオスの中から、大地ガイアと地底の世界タルタロスと愛エロスが誕生した。 また、カオスから闇エレボスと夜ニュクスが生まれた。エレボスとニュクスが交わり、そこから光アイテルと昼ヘメラ が誕生した。

 ガイアは、天ウラノスと海ポントスを生んだ。ウラノスは全世界を支配しガイヤと交わり、はじめに3人のヘカントケイルを生んだ。 ヘカントケイルは巨人で、100の手と50の頭を持つ怪物であった。また、3人のキュプクロスを生んだ。キュプクロス も巨人で、額にひとつの目を持っていた。ウラノスは彼らを嫌い縛り地底の世界タルタロスへ投げ込んだ。

 その後、ウラノスとガイヤの間に、ティターン神と呼ばれる男女合わせ12人の神々が生まれた。長兄はオケアノス で末弟はクロノスである(*1)。
 ガイアは、タルタロスに投げ込まれた子どものことを思って、ティターン神たちに父であるウラノスを襲うように言い、 恐るべき金属の鎌を造り与えた。クロノスは、この鎌で、ガイアと交わろうとして降りてきたウラノスの男根を 切り取り海に投げ込んだ(*2)。こうして、全世界の支配権はウラノスから、クロノスに移った。
 クロノスは、ヘカントケイルとキュプクロスたちをタルタロスから連れ戻したが、すぐに彼らを縛り 再び地底の世界タルタロスへ戻してしまった。

 ときに、ガイアと去勢されたウラノスは、クロノスに「自らの子により、支配権を奪われる」と予言したので、 クロノスは自分の子どもをすべて呑み込むようになった。
 クロノスは、姉妹である女神レアと交わり、生んだ子はヘスティア、デメテル、ヘラ、プルトン、ポセイドンであった。これらの 子どもは生まれるとすべてクロノスに呑まれてしまった。最後に生まれたのがゼウスである。レアは、ゼウスが 生まれるとすぐに洞穴に隠し従者たちに育てさせた。クロノスには、大石を子どもと偽って渡し呑み込ませた。

 ゼウスが成長すると、ガイアの力添えを得て、クロノスを騙して吐き薬を飲ませ、いままで呑み込まれた、 ゼウスの兄弟たちを吐き出させた(*3)。その兄弟たちと、タルタロスから救い出したヘカントケイルとキュプクロスの 協力を得て(*4)、ティターン神族との戦いに勝利し、反逆のティターン神族をタルタロスに幽閉した。ヘカントケイルをこの タルタロスの牢番に任命し、地底に住まわせることとした。
 こうしてゼウスが全世界の支配者、神々の王となった。ゼウスの兄弟であるプルトンは冥界の支配者、ポセイドンは海の支配者 となった。

*1 兄弟の末っ子が勝利するというパターンの神話は多く見られる。古事記でも大国主命の話が有名。
*2 このため、大地ガイアにウラノスの血が注がれ多くの神や怪物が誕生して、神々を悩ませた。 海に捨てられた男根から出た精液の泡から、愛と美の女神アフロディティ(ビーナス)が生まれた。
*3 このため兄弟の順番が逆になり、ゼウスが長兄となった。
*4 キュプクロスが感謝のしるしとしてゼウスに送ったのが、ゼウスの最高の武器となる雷である。
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ゼウスと神々

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 ゼウスがはじめに交わったのは、知恵の女神メティスである。彼女は妊娠したが、ウラノスとガイア はゼウスに、「メティスの初めの子は女であるが、その後男が生まれゼウスからその地位を奪うであろう」 と予言したため、ゼウスはメティスと腹の子ともども呑み込んでしまった。これにより、ゼウスは知恵の 女神を腹に持つ、神々最高の知恵者となった。
 メティスの子の出産の時期となると、ゼウスの頭から、武装した女神が生まれた。これが女神アテナである。

 また、ゼウスは豊穣を司る女神デメテルと関係し、女神ペルセポネをもうけた。
 ある日、愛と美の女神アフロディティが息子のクビドと遊んでいて、冥界の神ハデスを見つけると、 いたずら心を起こした。息子クビドに「おまえが持つ恋の弓矢で、ハデスを射てやりなさい。」と言い、 クビドに、ハデスをその弓で射らせた。この矢に当たると誰でも、最初に見 たものに恋をしてしまうという力があった。矢はハデスに当たり、ハデスは最初に見た女神ペルセポネに恋をしてしまった。 ハデスはペルセポネをさらって、冥界に連れていった。

 母であるデメテルは、世界中をペルセポネを探して歩いて、怒りのあまり最後に城に閉じこもり、 世界中を飢餓に陥れた。デメテルにペルセポネが冥界に居るということを教える者があり、 デメテルはゼウスのもとに上がり、ハデスから、娘ペルゼポネを返してもらえるように援助を求めた。 ゼウスは「まだ、冥界の食べ物をペルセポネが口にしていないのなら彼女は戻ることができる」と言っ た。しかし、ペルセポネは冥界のザクロを少しばかり食べてしまっており、完全に天上に戻ることかな わず、1年うち半年は母デメテルのもとで、あと半年は冥界の王ハデスの妃として暮らすことになった。

 ゼウスはまた、女神レトと関係を持った。レトがいよいよ出産というときに、ゼウスは、女神ヘラと 正式に結婚することとなったが、ゼウスとレトとの関係は、神々の女王となるヘラの嫉妬(*1)をかった。ヘラは世界 中の土地に、レトの出産の地とならないことを約束させた。レトは、生むための地を見つけることが できず世界をさまよい歩き、最後に、地中海に浮かぶ小さな浮島であるオルテュギュラ島(デロス島 *2)を見つけ、 そこで出産することとなった。
 彼女は9日間猛烈に苦しんだが、出産することができなかった。 なぜなら、お産の女神でありヘラの娘でもある女神エイレイテュイアをヘラが館に引き止め、 レトに力を貸さなかったためである。しかし、レトを哀れに思う他の女神が、女神エイレイテュイアを この場所へ連れてきた。  そして、2人の子が生まれた、最初に生まれたのが狩猟の女神アルテミスであり、次に生まれたのは 太陽と芸術の神アポロンである。

 この他にも。ゼウスは多くの女神、そして人間の女と交わり(*3)、多くの神、女神、英雄をもうけた。

*1 人間も神々も嫉妬深さは変らないようだ。
*2 この島は小さな岩礁に過ぎなかったため、ヘラに約束は強いられなかった。 また、この島はレトの妹神アステリアの変った姿でもある。
*3 ゼウスはとびきり好色であったというだけではなく、神々の社会を形成するため にも強力な協力者としての子が必要であったという理由もある。
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人類の誕生

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 人類が初めて誕生したのは、神々の王がクロノスであった時代である。この時代の人類は、死ぬこと はあっても不老で、自然が多くの食べ物を産したために労働も必要なく至福の生活ができた。
 この時代の人類は黄金の種族と呼ばれた。

 次の時代の人類は、黄金の種族よりも劣っており、神々をないがしろにしたため、ゼウスの怒り によって滅ぼされた。この時代の人類は銀の種族とよばれた。
 次の人類は、鋼鉄のような心と強靭な体を持つ種族で、戦争を好み、互いに戦い合って滅びた。 この時代の人類は青銅の種族とよばれた。

 その後に誕生したのがゼウスによってつくられた、現在の人類「鉄の種族」である。

 鉄の種族が生まれたとき、人類と神々の区別ははっきりしていなかった。神々は、神々と人類との 運命を分けることを考えた。神々のひとりであるプロメテウスは、人類に肩入れしており人類に有利 になるように裏心をもってこの役目を負った。
 プロメテウスは1頭の牛を殺し、その体を二つに分けた。神々と人類はそのどちらかを 選んでその運命を決めることとした。プロメテウスは、ひとつは肉と内臓、もうひとつは 骨に分け、人類がおいしそうな肉を当てられるように、食べられない皮の中にそれらを隠し、 役に立たない骨はおいしそうな脂の下に隠して出した。
 ゼウスは、そのたくらみを知りながら、おいしそうな脂の方を選んだ。その結果、人類は腐る肉や内臓 のごとく死ぬ宿命を与えられ、神々は、腐らない骨と同じく不死の運命を選ぶことになった。 プロメテウスのたくらみは、裏目に出たのである。

ゼウスはこのたくらみを怒り、自然に産した食べ物を人類から隠してしまった。この後、労働によらな いで人類は食べ物を得ることができないようになった。またゼウスは人類から火をも隠してしまった。
 プロメテウスは人の苦しみを知りゼウスに隠れて、天から火を運び出し人類たちに与えた。 こうして人類は火を使うようになった。

 プロメテウスは、ゼウスから罰を与えられた。柱に鎖で縛り付けられ、昼になると大鷲に生きながら 内臓を食い荒らされ、夕方になるとまた内臓が復元するという繰り返しの責め苦であった。(*1)

*1 プロメテウスは最後には、ヘラクレス(ゼウスと人類の女との間に生まれた英雄)に 救い出され、再び神々の中に迎え入れられる。
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